マウスピース矯正で歯並びは治らない？トラブル例と失敗しないためのコツ

近年、ホワイトニングと並んでマウスピース矯正を2大看板とするデンタルクリニックが増えています。

しかし、マウスピース矯正では治らないのではと心配される方もいらっしゃいます。

マウスピース矯正は高額な治療費がかかるため、治るかどうかわからない治療法を躊躇されるのは理解できます。また、多くの問題点があることも残念ながら事実です。

そこで今回は、マウスピース矯正のトラブルが起きる原因と、治らないという失敗をしないためのコツをご紹介します。

マウスピース矯正を真剣に検討されている方は、ぜひご一読ください。

マウスピース治療でよくあるトラブル例

まずは、よくあるマウスピース治療のトラブル例を取り上げます。原因も合わせて解説しています。

出っ歯になった

「マウスピースで矯正治療したら出っ歯になった」という話をよく聞きます。

出っ歯になった理由は、診断が正しくなかった可能性があることは否めません。この失敗は、主に部分矯正治療でよく起こります。

前歯が咬まなくなる

これも出っ歯の原因と同じように、治療で歯を前に出すことが原因であることが多いです。特に多いのが、上の歯を前に出したばかりに下の歯と咬まなくなった状態です。

噛み合わせを作る場合、基本的に部分的な矯正ではなく、奥歯を含めた全体の噛み合わせをコントロールする必要があることが多いです。

しかし、診断が正しくないと、歯並びはきれいになっても、前歯の噛み合わせが悪くなることがあります。

下の前歯のぐらつき

これも主に、全体的に歯が前方に移動していることが原因です。基本的に歯は歯茎や骨に埋まっているのですが、下の前歯の歯茎や骨は非常に薄いことが多いです。

それにもかかわらず、下の歯をどんどん前に送り出すと、歯が骨や歯ぐきから出てきてしまうのです。その結果、前歯が揺れ、歯茎が下がってしまいます。

歯が変色してしまった

これは主に、強い力が加わることが原因です。特にマウスピースを頻繁に外すことや、外し方が雑だったりすると、歯に強い力が加わります。

一般的に、歯の変色は矯正治療だけでなく、歯の中にある歯髄（血管や神経の集まり）の血流が乱れたり酸化したりすると変色することがあるといわれています。

歯髄の場合、部分的な炎症から全身的な歯髄炎に広がり、感染していなければ歯髄壊死、感染していれば歯髄壊疽を起こし、痛みなどの症状が出ることもあります。

後戻りした

矯正治療を経験した知人から、後戻りしたと聞いたことはないでしょうか。たしかに、わずかな後戻りはどうしようもないことです。

しかし、治療後に後戻りが目立つ一番の原因は、保定と呼ばれる処置が十分に行われていないことでしょう。

最も多い原因は、保定装置（リテーナー）が適切に使用されていなかったことです。使用期間は、骨が固まり、歯肉繊維の緊張が取れるまでですが、個人差があります。

リテーナーの使用期間は2年程度が目安ですが、3年以上使用することが指示されることもあります。

マウスピース矯正で治らない根本的な原因

マウスピース矯正で治らない場合には、根本的な原因が隠されていることがあります。ここでは、主な3つの原因を解説します。

治療可能な症例が限られている

マウスピース矯正は、一般的なワイヤー矯正に比べて適用範囲が狭い特徴があります。

その理由は、マウスピース型矯正装置には、歯を動かすための得意・不得意がはっきりしているからです。

マウスピース矯正は、非抜歯矯正の患者さん、特に歯列を拡大したり奥歯を少し後ろに動かしたりすることで治療できる中程度の歯並び、軽度の出っ歯、軽度の開咬（前歯がない）の患者さんに向いています。

一方、抜歯症例、特に前歯を大きく後方に移動させて口元をすっきりさせる症例には不向きです。

矯正の知識がない歯科医が多い

マウスピース矯正であっても、矯正の専門的な知識と技術は不可欠です。

しかし、マウスピース矯正ならマウスピースを作っている会社に任せれば良いと勘違いしている医師が多くいます。

例えば、インビザラインのマウスピース矯正治療ですが、インビザラインは患者さんの歯型を取り、それをインビザライン会社に送り、クリンチェックという治療計画を立ててもらいます。

実際には、この治療計画はあくまでシミュレーションであり、歯科医師が患者さんの骨格などに基づく診断に基づいて修正しなければなりません。

このとき、誤った診断に基づくクリンチェックであれば、当然、患者さんは全く治らないことになります。

まだ十分に検証されていない技術

マウスピース矯正の患者さんの中には、噛み合わせに問題を感じる方がいます。

その原因はまだ完全には解明されていませんが、矯正の失敗を避けるためにも、このようなことが起こりうるということを知っておくことは重要です。

マウスピース矯正は、一般的なワイヤー矯正とは異なり、歯全体にマウスピースを被せます。つまり、歯を噛む動作をした時にマウスピースを噛むことになります。

マウスピースの厚さは、約0.5mmですので、上下歯列に装着すると1mmの厚さになります。上下の噛み合わせが1mm変化することは、生体にとって大きな変化です。

マウスピース矯正が向いていない方の特徴

患者さんの状態によっては、マウスピース矯正に適さない場合もあります。

また、マウスピース矯正が可能な歯並びであっても、患者さんのライフスタイルがマウスピース矯正に適していないケースもあります。

以下に、マウスピース矯正が適さないケースを紹介します。

顎の骨に問題がある

下顎や上顎が前に出ているなど、顎の骨格そのものに問題があり、その骨格の影響で歯並びが悪くなっている場合もあります。

顎の骨格が原因で起こる不正咬合（歯並びや噛み合わせが悪い状態）は、マウスピースを使った矯正治療など、歯科矯正だけでは治療が困難です。

顎の骨格に問題があり、骨格が原因で歯並びが悪くなっている場合は、矯正治療に加えて口腔外科や形成外科、美容外科などで手術を受けることで、顎の骨格や歯並びを改善できる可能性があります。

装着時間が確保できない

マウスピース矯正は、1日に20～21時間程度マウスピースを装着する必要があります。

つまり、食事や歯磨きの時以外はずっとマウスピースを装着していることになります。しかし、マウスピースの装着時間が短い患者さんが時々いらっしゃいます。

マウスピースの装着時間を守らないと、治療計画通りに歯が動かず、マウスピースを新しいものに交換することができなくなります。

計画通りに歯が動かず治療期間が延びてしまうだけでなく、治療の途中でマウスピースが歯に合わなくなることもあります。

決められた時間マウスピースを装着できないということは、矯正治療が根本的に進まないことを意味します。

マウスピースを繰り返しなくす

マウスピース矯正では、食事や歯磨きの際にはマウスピースを外して行います。このとき、どこに置いたかわからなくなり、紛失してしまう患者さんがいます。

マウスピースを外すときに、単純にどこかに置いてしまい紛失することがあるようです。また、学校でマウスピースを外すときに紛失してしまう患者さんもいらっしゃいます。

紛失した場合、患者さんは前のマウスピースに戻すか、次のマウスピースに移るかのどちらかになります。

しかし、どちらも歯に合わない可能性もあり、その場合は新しいマウスピースを作ってもらうことになります。

インビザラインの場合、アメリカから空輸されるため、患者さんの手元に届くまでに2週間ほどかかることもあります。

特定の数のアライナー（マウスピース）だけが必要な場合は、もう少し時間がかかることもあります。

ただし、その間にマウスピースを全く装着できないと、歯がさらに動いてしまい、その後の治療に支障をきたす可能性があります。

マウスピース矯正で「治らない」を避けるためのコツ

ここでは、マウスピース矯正で失敗しないための対策を3つご紹介します。マウスピース矯正に挑戦しようか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

信頼できる歯科医院を選ぶ

マウスピース矯正は、装具をつけるだけなので治療が簡単な印象がありますが、実は、場合によってはワイヤー矯正よりも難しいと言われることもある治療方法です。

そこで、実績と経験、技術のある歯科医師を選ぶことが成功のポイントです。また、歯科医師と良好な関係を築くことも大切です。

歯科医師が話をよく聞いてくれない、患者様の希望を理解してくれない、悩みを明確に伝えられないという状況では、理想的な歯並びを手に入れることはできないでしょう。

マウスピース矯正ができる資格や安心感だけでなく、医師との信頼関係も大切です。歯科医師任せにせず、必ず質問をして、納得した上で治療を進めるようにしましょう。

装着時間を観察する

患者さんのセルフケアが治療の成否に大きく影響します。

治療の失敗を防ぐためには、患者さん自身が責任をもち、歯科医師から指示された装着時間やルールを守ることが大切です。

リテーナーの使用は必須

歯並びを整えたばかりの頃は、歯を支える骨が安定していないため、何もしないと歯が元の位置に後戻りすることがあります。

そのため、マウスピースによる矯正治療を終えた後は、リテーナーと呼ばれる装置を装着して、並んだ歯をしっかりと固定する保定期間に移行します。

リテーナーは指示された装着時間だけ装着する必要があり、矯正治療後は1日中装着する必要があることが多いです。

自己判断で装着をやめたり、さぼったりすると後戻りの原因になるので、必ずリテーナーを使用するようにしましょう。

まとめ

マウスピース矯正は、経験と技術が必要な治療法です。そのため、歯科医院を選ぶ際には、実績があり信頼できる矯正歯科医院を選ぶようにしてください。

また、マウスピース矯正で失敗しないためにも、装着時間や交換のタイミングは必ず守るようにしましょう。

とはいえ、「美しい歯並びを手に入れたい」という切実な思いで矯正治療を決意したものの、何らかの事情でそれが叶わなくなってしまった方もいらっしゃることでしょう。

世田谷・下高井戸パール歯科では、1回 3.85万円(税込)の費用で後戻り矯正治療が可能です。また、後戻りを改善するための「短期間」の矯正治療も行っています。

歯並びや治療費、治療期間など、気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。