横向きの親知らずは抜歯が必要?原因・リスク・対処法を解説

横向きに埋まった親知らず

多くの人にとって悩みの種となる歯の親知らず。

親知らずの生え方には主に3種類あります。まっすぐに生えるタイプ、斜めや横向きに生えるタイプ、そして歯茎の中に埋まっているタイプです。

それぞれの生え方によって、リスクや対処法が異なります。横向きの親知らずは特に注意が必要で、適切な対応が求められます。

この記事では、横向きの親知らずについて詳しく解説し、抜歯の必要性や対処法について解説します。

親知らずが横向きに生える理由

横向きに埋まった親知らずのれレントゲン

親知らずが横向きに生える主な理由は、顎骨のスペース不足です。

食生活の変化により、現代人の顎は過去の人類より小さくなる傾向にあります。

柔らかい食べ物の増加で咀嚼能力が低下し、顎の骨の発達が不十分になりました。

一方で、歯のサイズ自体は大きく変化していません。むしろ、高栄養・高カロリーな食事の影響で、歯が大きくなる傾向にあります。

結果として、顎のスペースに対して歯が大きすぎるというミスマッチが生じています。

親知らずは最後に生える永久歯です。他の歯より大きく、顎の奥に位置するため、十分なスペースがないと正常な方向に生えにくくなります。

親知らずが生えようとする際、前方にある歯や骨に阻まれると、横向きや斜めに方向を変えて成長を続けます。

この過程で、隣接する歯を押し、さまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。

横向きの親知らずによる問題

びっくりマーク

横向きの親知らずは、隣接する歯を圧迫し、歯列全体を前方に押し出すことで、歯並びを悪化させる原因となります。

虫歯のリスク増加

横向きに生えている親知らずは、歯ブラシが届きにくい位置にあり、清掃が難しいため、食べかすや細菌が蓄積しやすく、虫歯のリスクが高まります。

さらに、親知らずの周囲に蓄積された細菌や歯垢は、放置すると隣接する歯にも影響を及ぼしやすく、虫歯が広がる原因となるため注意が必要です。

歯周病の発症

横向きの親知らずは食べかすや細菌が蓄積しやすく、歯垢や歯石が形成されやすい環境です。

さらに、横向きに生えることで、隣接する歯との間に隙間ができ、そこにも汚れが溜まりやすくなります。

結果として、歯肉炎や歯周炎が発症しやすくなり、進行すると歯茎の腫れや出血、痛みなどの症状が現れます。また、歯周病菌が増殖することで、口臭の原因にもなります。

歯並び悪化

横向きの親知らずは、隣接する歯を圧迫し、歯並びを悪化させる原因となります。

顎のスペースが不足している場合、親知らずが横向きに生えることで、前方の歯を押し出す力が働き、徐々に歯列全体が前方に押され、特に前歯部分でのガタつきや重なりが生じやすくなります。

また、矯正治療後でも、横向きの親知らずが残っていると、治療の効果を損なう可能性があるため注意が必要です。

横向きの親知らずの治療

歯科医療器具

横向きの親知らずの治療には、主に経過観察と抜歯の2つの選択肢があります。治療方針は、患者の状態や症状によって歯科医師が判断します。

ここでは、横向き親知らずの治療内容に関して詳しく解説します。

経過観察

症状がなく、周囲の歯に悪影響を与えていない場合は、定期的な検診を行いながら経過を観察することがあります。

レントゲン撮影を通じて、親知らずの位置や周囲の骨の状態を確認し、問題が生じていないかを慎重に監視します。

抜歯

多くの場合、横向きの親知らずは抜歯が推奨されます。抜歯手術の流れは通常、以下のようになります。

  1. 局所麻酔の投与
  2. 歯肉の切開
  3. 骨の一部除去(必要に応じて)
  4. 歯の分割(必要に応じて)
  5. 抜歯
  6. 縫合

横向きの親知らずの抜歯は、通常の抜歯よりも複雑な場合が多いため、口腔外科専門医による処置が必要になるケースもあります。

抜歯中の痛みと抜歯後の経過

歯科用麻酔注射

横向きの親知らず抜歯は、通常の抜歯よりも複雑な処置となるため、施術中や抜歯後の痛みについて理解しておきましょう。

ここでは、施術中や抜歯後痛みについて解説します。

抜歯中は痛みをほとんど感じない

抜歯中は局所麻酔を使用するため、痛みをほとんど感じません。歯科医師は麻酔の効果を確認してから処置を開始します。

横向きの親知らずの場合、歯茎を切開し、骨を一部削って歯を取り出す必要があるため、施術時間が長くなることがあります。

麻酔が切れると痛みを感じる

麻酔が効いている間は痛みを感じませんが、2〜3時間後に麻酔の効果が切れ始めると、徐々に痛みを感じるようになります。

痛みのピークは通常、抜歯当日の夜から翌日にかけてです。

多くの場合、3〜4日程度で痛みは軽減していきますが、個人差があり、1週間程度痛みが続くこともあります。

横向きの親知らずは、まっすぐ生えている場合よりも抜歯が複雑になるため、痛みが長引く可能性があります。

抜歯後の注意点とケア

コップに入った歯ブラシ

親知らずの抜歯後は、適切なケアと注意を行うことで痛みの発生を抑えられるでしょう。ここでは、抜歯後の重要な注意点とケア方法を解説します。

出血のコントロール

抜歯直後は、清潔なガーゼで30分から1時間程度圧迫止血を行います。

ガーゼが血で濡れた場合は新しいものに交換しましょう。出血が続く場合は、歯科医院に連絡することが重要です。

安静にする

一般的に、抜歯後2〜3日間は安静に過ごすことが推奨されます。この期間中は、激しい運動や重労働を避け、できるだけ横になって休みましょう。

安静にすることで、出血のリスク低減や腫れの低減、痛みの緩和、治癒の促進が期待できます。

軽い日常生活動作は問題ありませんが、長時間の入浴やサウナ、アルコールの摂取は血行を促進し、腫れや出血のリスクを高める可能性があるため避けるべきです。

口腔ケア

抜歯当日は、口腔内を刺激しないよう、歯磨きやうがいは避け、出血を抑えるためにガーゼを噛むことに集中しましょう。

抜歯の翌日からは、慎重に口腔ケアを再開します。

歯磨きは柔らかい歯ブラシを使用し、抜歯部位を避けて他の歯を丁寧に磨きます。力を入れすぎず、優しく磨くことが大切です。

抜歯24時間後から、塩水でのうがいを開始します。

ぬるま湯1カップに小さじ1/2の塩を溶かし、1日4〜5回程度行い、強いうがいは避け、口を軽くゆすぐ程度にしましょう。

歯科医師の指示があれば、1週間後から専用のシリンジを使用して抜歯部位を洗浄します。

歯間ブラシやフロスは、抜歯部位の治癒が進むまで使用を控え、抗菌作用のあるマウスウォッシュを使用する場合は、歯科医師に相談してから使用しましょう。

処方された薬の服用

親知らずの抜歯後、適切な回復を促進し合併症を予防するために、処方された薬の正しい服用が重要です。一般的に、薬は痛み止めと抗生物質の2種類が処方されます。

痛み止めと抗生物質の服用に関する注意点は以下の通りです。

痛み止め抗生物質
痛みを感じ始めたら服用を開始 6時間以上の間隔を開けて服用 痛みが和らいだら服用を中止して問題なし処方された薬はすべて飲み切る 決められた間隔で規則正しく服用する 症状が改善しても、途中で服用を中止しない

痛み止めは痛みが和らいだら服用を中止しても問題ありませんが、抗生物質は症状が改善しても途中で服用を中止せずにすべて飲み切ることが重要です。

他の薬を服用している場合は、相互作用について確認が必要です。副作用が現れた場合は、すぐに歯科医師に相談しましょう。

食事

抜歯直後は、麻酔の効果が残っている間は飲食を控えましょう。麻酔が切れてから、以下の点に注意して食事をとってください。

  • やわらかい食べ物を選択:おかゆ、雑炊、ヨーグルト、柔らかい麺類など
  • 抜歯部位の反対側で噛む
  • 熱すぎる、冷たすぎる食べ物を避ける
  • 刺激物を控える:辛い物、酸っぱいものなど

不安な点がある場合は、担当の歯科医師に相談することをおすすめします。

禁煙の重要性

喫煙は抜歯後の回復過程に悪影響を及ぼし、合併症のリスクを高める可能性があるため、少なくとも傷口が完全に治癒するまで禁煙を続けましょう。

喫煙は血管を収縮させ、血流を悪化させます。抜歯部位の治癒に必要な血液供給が減少すると、回復が遅れる原因となります。

また、タバコに含まれる有害物質は免疫力を低下させ、抜歯部位の感染リスクを高めるため、1〜2週間程度の禁煙が必要です。

痛みが治まらない場合は歯科医師に相談

親知らずの抜歯後、通常は3〜4日程度で痛みが和らぎ始めますが、1週間以上痛みが続く場合は歯科医師への相談が必要です。

長引く痛みの原因として、細菌感染やドライソケットの可能性があります。ドライソケットは抜歯後の穴が適切に治癒せず、骨が露出することで起こる合併症です。

歯科医師は、抜歯部位の洗浄や消毒、抗生剤や鎮痛剤の追加処方など、適切な処置を行い、ドライソケットの場合は特殊な軟膏を塗布する場合もあります。

自己判断で処置を続けるのは危険なため、痛みが長引く場合や腫れが悪化する場合は迷わず歯科医院に連絡しましょう。早期の対応が合併症のリスクを軽減し、回復を早めます。

定期的な経過観察も重要なため、歯科医師の指示に従い、必要に応じて再診を受けることが大切です。

横向きに生えた親知らずの抜歯にかかる費用

計算機とお金

横向きに生えた親知らずの抜歯費用は、通常の抜歯よりも高くなる傾向にあります。

保険診療を適用した場合、一般的に1本あたり約1,500円〜5,000円程度が相場です。痛み止めや抗生物質の費用を含めると、4,000円〜5,000円程度かかります。

横向きの親知らずは難抜歯に分類されるため、通常の抜歯よりも処置が複雑です。

歯茎の切開や骨の削除、歯の分割などが必要になる場合があり、これらの処置が費用に反映され、骨の中に完全に埋まっている場合は、6,000円前後まで上がるケースもあります。

費用を正確に把握するためには、歯科医院での診察とレントゲン撮影が必要です。事前に詳細な見積もりを確認すると良いでしょう。

よくある質問(FAQ)

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横向きに生えた親知らずは多くの人にとって悩みの種となり、さまざまな疑問が生じます。ここでは、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

横向きの親知らずは必ず抜歯が必要?

横向きの親知らずは必ずしも抜歯が必要というわけではありません。抜歯の必要性は、親知らずが及ぼす影響や症状によって判断されます。

以下の場合は抜歯が推奨されます。

  • 痛みや腫れがある場合
  • 虫歯や歯周病のリスクが高い場合
  • 隣接する歯に悪影響を与えている場合
  • 歯並びに問題を引き起こしている場合
  • 歯磨きが困難で、口腔衛生を維持できない場合

横向きの親知らずの処置については、歯科医師による詳細な診断と個別の状況評価が必要です。

レントゲンやCT検査を通じて、親知らずの位置や周囲の状態を確認し、患者さんに合った治療方針を決定します。

抜歯の所要時間はどのくらいですか?

横向きに生えた親知らずの抜歯にかかる時間は、親知らずの位置や状態、歯科医師の技術によって異なりますが、一般的には15〜60分程度が目安です。

親知らずが部分的に埋まっている場合や完全に埋伏している場合には、歯茎や骨を切開する必要があるため、処置が複雑になり時間が延びることがあります。

特に完全埋伏している親知らずの場合、30〜90分程度かかるケースもあります。

抜歯後の痛みや腫れはどの程度ですか?

横向きの親知らずは、歯茎や骨を切開して抜歯することが多いため、まっすぐ生えている場合と比べて痛みや腫れが強く出る傾向があります。

ただし、適切な処置と術後ケアにより、多くの場合1週間程度で日常生活に支障のない程度まで回復します。

痛みや腫れが1週間以上続く場合や、急激に悪化する場合は、細菌感染やドライソケットの可能性があるため、歯科医院に相談しましょう。

妊娠中でも抜歯できますか?

妊娠中の抜歯は可能ですが、時期や薬の使用に注意が必要です。

痛みによるストレスと抜歯のリスクを比較し、適切な判断が必要です。可能であれば妊娠前に抜歯することをおすすめします。

まとめ

横向きに生えた親知らずは、虫歯や歯周病、歯並びの悪化などのリスクがあります。症状や状態に応じて抜歯が推奨されますが、必ずしも全ての場合で必要ではありません。

抜歯を行う場合は、適切な術後ケアが重要です。定期的な歯科検診を受け、早期発見・早期対応することで、問題を最小限に抑えられるでしょう。

下高井戸パール歯科クリニック・世田谷は、日本口腔外科学会専門医が在籍し、CTを活用した精密な診断を行っています。

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