親知らずは4本同時に抜歯できる?メリット・デメリットと治療法を解説

4を表す手

親知らずを4本同時に抜歯することはできるのでしょうか?

実は、さまざまな条件はありますが、親知らずの4本同時抜歯は可能です。

この記事では、親知らずの4本同時抜歯のメリット・デメリットや治療法について解説します。

親知らずを1本ずつ治療をする時間がもったいない、抜歯は怖いので一気に終わらせたいと考えている方は、ぜひご覧ください。

親知らずを4本同時に抜くことはできる?

オペ前のドクターの手元

親知らずは生える年齢や、生え方に個人差はありますが、一般的に、上下左右の奥歯のさらに奥に4本生えるとされています。

忙しくて歯科医院に行く時間がもったいないと感じている方からすると、1本ずつの抜歯ではなく、4本同時に抜歯してほしいと考えるのも当然かもしれません。

しかし、親知らずの4本同時抜歯は時間がないからといってすぐにできるものではありません。

その理由を以下に示していきます。

左右2本ずつ抜くのが一般的

親知らずの抜歯は、生え方や、服用している薬、全身疾患の有無などさまざまなことを考慮して判断します。

口腔内だけではなく、全身にも影響が出るリスクもあるため、基本的には片側1本、または左右それぞれの親知らずを2本ずつ抜くことが一般的です。

親知らずを4本同時に抜歯することが推奨されない理由は、以下の3点です。

  • 体への負担がかかる
  • 費用がかかる
  • 病院の設備の確認が必要

この理由を細かく見ていきます。

体への負担がかかる

親知らずの抜歯は、1本抜く場合であっても抜歯後の痛みや腫れなどが起こります。

親知らずの4本同時抜歯は、1本の時に比べても腫れや痛みを強く感じることが多くなり、体への負担が大きくなります

口腔内での痛みや腫れは、食事の際や日常生活にも支障をきたすことになるため、注意が必要です。

また、手術時間が長引いたり、広範囲の麻酔をしたりと、疲労を感じることが多いでしょう。

費用がかかる

親知らずを4本同時に抜歯することで、1本抜歯よりもその分費用がかさみます。

また、4本同時抜歯の場合は体の負担を減らすため点滴麻酔や全身麻酔を使用するケースがあり、麻酔には別途費用がかかるため事前に確認しておきましょう。

詳細な費用は後述していますので、ぜひご覧ください。

病院の設備の確認が必要

親知らずの4本同時抜歯では、体への負担を減らすために点滴麻酔、全身麻酔の使用や、1泊2日程度の入院をする場合もあります。

全身麻酔は完全に意識を失った状態で手術ができ、抜歯の痛みや恐怖心を持つ患者さんの場合や、複数本の抜歯、難易度が高く時間がかかる場合に用いられる方法です。

親知らずを4本同時に抜歯する際は、設備が整っていて点滴麻酔ができる歯科医院や、全身麻酔や入院設備のある大学病院を選ぶ必要があるため、事前に確認しておきましょう。

病院選びに迷ったら、口腔外科専門医が在籍するクリニックを選ぶのがおすすめです。

親知らずの4本同時抜歯ができるケース

親知らずの4本同時抜歯は、一般的には推奨されることはありませんが、条件が整えば可能になる場合もあります。

その条件は以下の3点です。

  • 口腔内の炎症がない
  • 全身の状態が良好
  • 病院の設備が整っている

口腔内に炎症が起きていると麻酔が効きにくく、抜歯後の炎症も強くなる可能性があるため、炎症を治療してから4本同時抜歯を行います。

また、持病などがなく、もしあったとしても十分に管理できていることや、免疫力が正常であることが条件となります。

患者さんの状態が条件を満たしていたとしても、病院の設備が整っていない場合には同時抜歯ができません。

親知らずの4本同時抜歯の際には点滴麻酔や全身麻酔が必要となるケースが多いため、設備が整っている歯科医院を選びましょう。

親知らずの4本同時抜歯が困難なケース

親知らずの4本同時抜歯が困難になるのは以下の場合です。

  • 親知らずの生え方が正常ではない
  • 全身の健康状態に問題がある

親知らずが横向きや斜めに生えていたり、埋伏していたりする場合は、通常よりも抜歯に時間がかかり、歯肉の切開や歯の分割、顎を削る処置を行うこともあります。

そのため、術後の腫れや痛みが増し、体に負担がかかることが懸念されます

また、糖尿病や心臓病、高血圧などの全身疾患がある場合は、全身麻酔にリスクが伴います。

このようなケースでは、親知らずの4本同時抜歯は難しくなるでしょう。

親知らずの4本同時抜歯のメリット・デメリット

膿盆と医療器具

親知らずを4本同時に抜歯することにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

ここでは、4本同時抜歯のメリットとデメリットについて詳しく解説します。

メリット

親知らずを4本同時に抜歯するメリットは以下のようなものがあります。

通院回数を減らせる

親知らずの抜歯は通常1本か2本の抜歯を何回かに分けて行います。

通院の時間を割けない方は4本同時に抜歯を行うことで1回の手術で済みます

点滴による無痛抜歯

親知らずの4本同時抜歯は点滴麻酔や全身麻酔により、眠っている間に終わらせることが可能です。

痛みが怖い方でも安心して抜歯にのぞむことができます。

親知らずによる口腔内トラブルがなくなる

親知らずが原因で口腔内の炎症が起こることがあります。

これは「智歯周囲炎」と呼ばれており、腫れや痛み、膿が出てくるなどさまざまな症状を引き起こします。

親知らずを4本同時に抜くことにより、トラブルを避けられます

デメリット

親知らずを4本同時に抜歯するデメリットは以下の通りです。

腫れや痛みが増える

親知らずを1本抜く場合よりも、4本同時に抜歯するほうが術後の痛みや腫れは増します

また、通常であれば痛みや腫れは2~3日、長くても1週間以内で治まりますが、それよりも回復期間が長くなる可能性があります。

日常生活に支障

痛みや腫れがあることにより、口が開きにくくなる、顎が痛むなど、日常生活に支障が出る場合があります。

手術や合併症のリスク

親知らずを4本同時に抜歯する場合、大がかりな手術になることもあります。

出血や細菌感染、神経の損傷などのリスクがありますので、事前に医師とよく相談してください。

入院が必要になる場合も

親知らずの4本同時抜歯は、難易度が高い手術になるケースもあります。その場合には体の負担を減らすために入院が必要となることもあります。

親知らず4本同時抜歯の費用

豚の貯金箱と計算機

親知らずを4本同時に抜歯する際の費用はどのくらいかかるのでしょうか。

ここでは、かかる費用を保険診療と自由診療に分け、細かく見ていきます。

保険診療の場合

親知らずによって炎症や痛みなどが出現している場合や、将来的に重大なトラブルを引き起こす可能性のある場合には、保険診療の対象となります。

この場合は、4本で6,000~20,000円が目安と言われています。

しかし、親知らずが斜めや横に生えている場合はこの限りではなく、難易度によって費用は変動します。

また、親知らずが埋まっている「完全埋伏智歯」や「半埋伏智歯」の場合には1本3,500円程度となります。

自由診療の場合

特に炎症や病気につながる可能性がなく、歯列矯正や移植のために親知らずの抜歯をする場合は自由診療となり、保険が適用されません

自由診療の場合では、まっすぐ生えている親知らずが1本5,000円、斜めに生えている場合は1本10,000円、横向きに生えている場合は1本15,000円程度の費用がかかります。

その他の費用

親知らずを4本同時に抜歯する場合には、通常と異なる費用がかかる場合があります。

大学病院で手術を行う場合には、その紹介状代に1,500円〜3,000円の費用がかかります。

また、4本同時抜歯では全身麻酔や点滴麻酔を使用することが多いため、点滴麻酔では20,000円、全身麻酔では50,000円程度の追加費用が必要です。

入院が必要と判断されると、追加で入院費がかかりますので準備をしておきましょう。

親知らず4本を抜歯する方法

点滴

親知らずを4本同時に抜歯する場合は、通常の抜歯と何が違うのでしょうか。

大きく異なるのは、通常の抜歯では局所麻酔を使用するのに対し、4本同時に抜歯する際には静脈内鎮静法(点滴麻酔)、もしくは全身麻酔を使うことが多いことです。

ここでは、親知らずを4本同時抜歯する方法を解説します。

点滴麻酔を使う

親知らずの4本同時抜歯では、通常の局所麻酔に加えて静脈内鎮静法(点滴麻酔)を併用します。

点滴麻酔では、点滴で鎮静剤を投与してリラックスした状態で抜歯にのぞむことができます。

全身麻酔と異なり、完全に意識がなくなるわけではないので、医師からの呼びかけに応えることも可能です。

点滴麻酔の場合は回復が早く、術後の意識が戻りやすいことから、日帰りで処置できることが多い半面、難易度が高い長時間の手術には向いていません。

全身麻酔を使う

全身麻酔は完全に意識を失った状態で抜歯を行うため、不安や不快感を感じないようにできます。

長時間かかる手術に対応でき、手術中の動きを抑制できるため、高い安全性を確保できます。

しかし、全身麻酔はリスク管理が必要で、全身の状態をきちんと把握しなければ使うことができません。

また、術後の回復観察が必要のため、入院が必要となる場合があります。

抜歯自体は1本の場合と同じ

抜歯自体は、4本同時の抜歯とそのほかの本数で変わりはありません

麻酔を行い、まっすぐに生えていない場合には歯肉の切開も必要となります。さらに大がかりになる場合には、歯の分割をしてからの摘出や、顎の骨を削るケースもあります。

抜歯が完了したあとには必要に応じて傷口を縫合し、抜歯後30分ほどガーゼを噛んで止血をします。

徐々に出血が止まることがほとんどですが、30分以上経っても出血が止まらない場合には、医師に相談してください。

親知らず4本同時抜歯後の注意点

黄色い標識

親知らずを4本同時に抜歯後には以下の4点の症状が出ることがあります。

  • 痛みや腫れを感じる
  • 食事がとりにくい
  • 喉が痛くなる場合も
  • 顎が動かしにくい
  • 術後の疲労

痛みや腫れを感じる

親知らずを抜く際に、歯だけではなく周りの歯肉を剥がす、顎を削ることもあります。

抜歯中は麻酔がかかっているため痛みを感じることはありませんが、術後には痛みや腫れが出現することがあります。

親知らずを4本同時に抜歯した場合は、痛みや腫れは増え、回復にも時間がかかるでしょう。

食事がとりにくい

上下左右の親知らずを同時に抜くことにより、口腔内では多くの傷口がある状態になっています。

そのため、食事がとりにくくなるなど、日常生活にも支障が出ることが懸念されます。

喉が痛くなる場合も

親知らずを抜いた後に喉が痛くなる場合があります。

これは、抜歯処置による炎症が、親知らずに近い喉のリンパにまで広がってしまうことで起こります。

処方された抗生物質や痛み止めを服用し、口腔内を清潔に保って安静にしましょう。

顎が動かしにくい

親知らずを4本同時に抜歯する場合、大きく口を開けている時間が長くなります。

顎関節に負担をかけることになり、顎に痛みが出る、動かしにくくなるなどの症状が出ます。

術後の疲労

親知らずを4本同時に抜歯するには、長時間の手術になる場合もあります。

1本抜くよりも術後の疲労を感じやすくなり、免疫力の低下にもつながるため、しっかりと安静にすることが大切です。

親知らず4本同時抜歯後のセルフケア

鏡を持ち笑顔で歯を見る女性

親知らずを4本同時に抜歯した後には、自宅でできるセルフケアが大切です。

処方薬は用法用量を守り服用

術後は抗生物質や抗菌剤、痛み止めなどの薬が処方されます。

麻酔が切れてから痛み止めを飲むと、痛みを感じたり麻酔が効きにくくなったりするため、初回の痛み止め服用は麻酔が切れる前をおすすめします。

抗生物質や抗菌剤は、術後の細菌繁殖や炎症を起こすのを食い止める効果があります。

用法・用量を守ってしっかりと服用するようにしましょう。

過度なうがいをしない

親知らずを4本同時抜歯した箇所は穴が空いたままになっており、そこに血餅(けっぺい)と呼ばれるかさぶたができます。

血餅は丈夫なものになるまで24時間程度かかりますが、その間にうがいをしすぎてしまうと剥がれてしまいます

抜歯当日は、過度なうがいは避けましょう。

長時間の入浴・運動は避ける

親知らずの4本同時抜歯の後は、傷口から出血が起こっています。

出血を増やさないために、血行がよくなる行動は避けましょう

長時間の入浴や激しい運動は血行をよくしてしまうため、注意が必要です。

喫煙をしない

たばこに含まれるニコチンには血管収縮作用があります。

この血管収縮作用によって傷の治りが遅くなったり、血餅の形成を阻害、細菌感染リスクが高まるなど、さまざまな影響があります。

食事に気を付ける

親知らずを4本同時に抜歯した後には、食事に気を付ける必要があります。

手術直後は、出血があるため固い食べ物や刺激の強い食べ物は避けましょう

具体的に抜歯後に適した食べ物、適さない食べ物は以下の通りです。

抜歯後に適した食べ物抜歯後に適さない食べ物
・ヨーグルト ・おかゆ ・スープ ・プリン ・ゼリー・固いもの ・炭酸飲料 ・スパイシーな料理 ・アルコール

また、4本同時に抜歯した直後は上下左右の奥歯すべてに傷や負担がかかっているため、できるだけ噛むことの少ないものを選んでください。

安静に過ごす

親知らずを4本抜歯した後は術後の疲れも通常よりも増えています。

疲れが出ると免疫力が下がり、細菌感染が起こりやすくなります

炎症など口腔内のトラブルにも繋がりやすくなりますので、安静に過ごし免疫力を上げることに努めましょう。

まとめ

親知らずを4本同時に抜歯することは一般的には推奨されませんが、条件が揃えば行うことが可能です。

親知らずの4本同時抜歯は体に負担もかかりやすく、抜歯可能な病院の設備も関係するため、歯科医院とじっくり相談することが大切です。

下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、精密な診断を行えるCT機器を導入し、精度の高い抜歯を行っております。

また、日本口腔外科医が在籍していますので、難しい症例であっても対応可能です。

親知らずの4本同時抜歯をご検討の方は下高井戸パール歯科クリニック・世田谷にぜひ、ご相談ください。

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