
親知らずとは、永久歯の中でも最も後ろに生えてくる歯であり、正式名称は「第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)」です。
この親知らずが生えてくるまたは抜歯の後で喉の痛みを感じることがあります。
この記事では、親知らずで喉が痛くなる原因やどれくらい続くのか、注意点などを解説します。
親知らずが生えている方や喉の痛みを感じている方は、ぜひ最後までお読みください。
親知らずで喉が痛くなることはある?

喉の痛みといえば風邪などを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、親知らずが原因でも喉が痛くなることがあります。
親知らずが原因で喉が痛くなる原因には複数考えられますが、炎症が起きていることが多いです。
炎症を放置していると炎症が喉奥から顎、首、扁桃腺やリンパ節にまで進み気道が狭まり重篤な症状につながる可能性があります。
また、非常に稀な例ではありますが、炎症が胸元のあたりにまで進行すると心臓まで届くことがあり、急性心筋梗塞で最悪の場合は死亡することもあります。
親知らずが原因で喉の痛みが生じる可能性があることを知り、違和感を覚えた場合はすぐに歯科医院や内科などを受診し、原因を調べましょう。
親知らずで喉が痛くなる2つの理由

親知らずで喉が痛くなる理由は主に以下の2つが考えられます。
- 親知らず周辺に炎症が起きている
- 親知らずの抜歯で炎症が起きている
それぞれの理由について、より詳しく解説します。
親知らず周辺に炎症が起きている
親知らずを抜歯をしていない状態で喉が痛む場合、親知らず周辺に炎症が起きている「智歯周囲炎」の可能性が高いです。
智歯周囲炎とは、親知らず周辺に汚れや食べかすが溜まって細菌が増殖して炎症が起きる疾患です。
智歯周囲炎の主な症状は以下のとおりです。
- 嚥下時に喉や喉周辺が痛む
- リンパ節が腫れる
- 通常時でも親知らずが鈍く痛む
- 親知らず周辺に触れると痛む
- 歯茎が腫れる
- 歯茎から膿が出る
- 口が開けにくい など
適切な歯磨きやうがいなどの口腔ケアを行えば改善する場合もあります。
しかし、ストレスや睡眠不足、栄養バランスの偏りなどで免疫力が落ちると再発する可能性も高いです。
また、一時的には症状が改善しても親知らずを抜歯しなければ、汚れや細菌が溜まりやすい状況は変わりません。
再発を防ぐためには、適切な口腔ケアや免疫力を高める生活習慣の見直しだけではなく、親知らずの抜歯も検討しましょう。
親知らずの抜歯で炎症が起きている
親知らずの抜歯後に喉が痛む場合、抜歯による炎症が喉まで広がってしまっている可能性があります。
親知らずの抜歯は生え方によっては大きく切開したり顎の骨を削ったりすることもあり、身体には大きな負担がかかります。
特に以下のような場合、炎症が起きやすいです。
- 抜歯の際に骨に負担がかかった
- 元々炎症が起きていた親知らずを抜いた
- 根っこがしっかりしている親知らずを抜いた
また、下の親知らずは喉との距離が近いため、炎症は上顎よりも下顎側の抜歯を行った際に生じやすいといわれています。
親知らずによる喉の痛みはどれくらい続く?

親知らずによる喉の痛みは、炎症の理由によってどれくらい続くかが異なります。
ここでは、親知らず周辺に炎症が起きている場合と、抜歯によって炎症が起きている場合に分けて解説します。
親知らず周辺に炎症が起きている場合
親知らず周辺に炎症が起きる智歯周囲炎になっている場合、多くは放置しても痛みは改善しません。
適切な口腔ケアを心がけることで炎症が改善する場合もありますが、親知らずを抜歯するといった根本的な解決をしない限り再発する可能性が高いです。
治療せずに悪化すると、喉の痛みだけではなく発熱や倦怠感などの症状が現れることもあります。
痛みを改善したい場合は歯科医院で処置を受けましょう。
抜歯によって炎症が起きている場合
抜歯によって炎症が起きている場合、多くは2〜3日をピークに1週間ほどで治まります。
場合によっては痛みが治まるまでに2週間ほどかかることもありますが、徐々に痛みが弱くなっていれば、特に心配する必要はありません。
逆にどんどん痛みが増していたり、範囲が広がっていたりする場合は化膿している可能性があるため、できるだけ早く抜歯した歯科医院を受診しましょう。
親知らずが原因の喉の痛みに対する応急処置

親知らずが原因で喉が痛い場合、抜歯直後でなければできるだけ早い歯科医院への受診をおすすめします。
しかし、どうしても予定が合わなかったり、今すぐの受診が難しかったりすることもあるかもしれません。
そういった場合は、ここで解説する応急処置を行い、歯科医院を受診するまでの期間を過ごしましょう。
仮に応急処置で痛みが治まっても、痛みの原因が解決したわけではないため、歯科医院は必ず受診してください。
痛み止めの服用
どうしても喉が痛み、日常生活に支障が出る場合は痛み止めを服用しましょう。
歯科医院で処方された痛み止めが望ましいですが、ない場合は市販のものを服用しても問題ありません。
特にロキソプロフェンを主成分とした医薬品は鎮痛作用が強く、しっかりと痛みを鎮めてくれます。
痛み止めは歯科医師や薬剤師の指示に従い、用法用量を守って服用しましょう。
うがい薬での消毒
殺菌や消毒効果のあるうがい薬を使用したうがいも応急処置としては有効です。
この時、アルコール成分が含まれた刺激のあるうがい薬は逆に痛みが増すことがあるため、避けるようにしましょう。
おすすめは、クロルヘキシジンを有効成分とするコンクールやポビドンヨードを有効成分とするイソジン®などです。
しかし、うがいをやり過ぎることで抜歯後の穴を防ぐための血餅(けっぺい。かさぶたのようなもの)を剝がしてしまう可能性があります。
軽いうがいをしても痛みが改善しない場合は違う応急処置を行うようにしましょう。
冷やす
痛みや腫れがひどい場合は冷やすのもおすすめです。
耳や顎の付け根部分を冷えピタや濡れタオル、タオルで包んだ保冷剤などを当てて冷やすことで炎症を抑え、痛みを和らげてくれる可能性があります。
ただし、氷を直接口に含んだり、保冷剤を直接頬に当てたりして冷やしすぎないようにしましょう。
冷やしすぎると、凍傷や神経損傷、血行不良などで治癒を遅らせたり低温やけどを引き起こしたりするかもしれません。
氷は直接当てず、必ずタオルやガーゼなどを巻いて使用しましょう。
安静にする
炎症が起きて喉が痛む場合は血行がよくなるような行動を避けて、しっかりと睡眠時間を確保して安静にすることを心がけましょう。
炎症は細菌に対して身体の免疫機能が正常に働いている状態です。
安静にして体力を回復することで免疫力が高くなり、炎症が少し治まることもあります。
逆に、疲労や睡眠不足、ストレスは免疫力を下げ、炎症が強くなることもあるため注意しましょう。
親知らずで喉が痛い場合の治療方法

基本的な治療は、喉の痛みに対しての治療ではなく、原因となっている親知らずに対して治療が行われます。
ここでは、良く行われる3つの治療方法について解説します。
抗生物質の使用
親知らずが原因の喉の痛みは、まず抗生物質を使用して炎症を抑えます。
親知らずが原因で喉の痛みが起こっている場合は抜歯する必要がありますが、炎症が起きている状態は麻酔が効きにくく、治療ができません。
そのため、まずは抗生物質を使用して炎症を抑える必要があります。
治療には抗生物質を含んだ塗り薬や抗生剤、消炎鎮痛剤などを使用します。
歯茎の切開
親知らずが原因で喉の痛みが生じた場合、親知らず周辺の歯茎に細菌(膿)が溜まっていることがあります。
この場合は、歯茎を切開して膿を出す処置が必要です。
歯茎を切開して、膿を排出するだけで痛みが劇的に改善することがあります。
しかし、あくまでも一時的に改善するだけで、また食べかすが溜まり細菌が増殖すれば痛みが復活することもあるため、注意が必要です。
なお、炎症や膿がかなり喉元まで広がっている場合は、切開ではすべての膿を排出することは難しいです。そういった場合は、抗生物質を併用します。
炎症を抑えてからの抜歯
親知らずが原因の炎症を根本的に治めるためには、抜歯する必要があります。
炎症が起きている状態で抜歯をすると、麻酔が効きにくいだけではなく、抜歯後の痛みや腫れ起きやすいです。
しかし、抜歯せずに放置していると、何度でも痛みが再発する可能性があります。
抗生物質や歯茎の切開で炎症が治れば、麻酔も効くようになるため親知らずの抜歯を行います。
親知らずの抜歯後も喉が痛むことがありますが、痛みのピークは2〜3日で1週間程度で治まることがほとんどです。
ただし、どうしても炎症が治まらないケースでは炎症が顎の骨まで到達してしまっていることがあり、この場合は入院が必要になることもあります。
親知らずが原因の喉の痛みを予防する方法

親知らずが原因の喉の痛みを予防する方法としては「炎症を起こさない」ことが重要です。
主な行動としては以下の3つです。
- 親知らずを抜歯する
- 適切な口腔ケア
- 生活習慣を整える
レントゲン検査で親知らずが斜めや横に生えていることがわかった場合、今後炎症が起きる可能性が高いため、炎症が起きる前に抜歯を検討してもよいでしょう。
また、炎症は食べカスに細菌が増殖することが原因の1つであるため、適切な口腔ケアで常に清潔に保つことも予防としては効果的です。
これに加え、十分な睡眠時間の確保や栄養バランスの整った食事など生活習慣を整えることで免疫力が上がり、炎症が起きにくくなります。
親知らずが原因の喉の痛みに関する注意点

親知らずが原因の喉の痛みに関する注意点は3つあります。最後にこの3つを解説していきます。
口腔内を清潔に保つ
親知らずが原因の喉の痛みを改善させたり予防したりするためには、適切な口腔ケアで口腔内を健康に保つようにしましょう。
日々のセルフケアだけでは、歯垢や歯石など除去が難しい汚れもあるため、定期的な歯科検診もおすすめです。
定期的な歯科検診では親知らずを含めた口腔内の健康もチェックしてもらえるため、炎症が起きる前に異常を発見できます。
また、抜歯後に炎症が起きている場合は、患部を歯ブラシでごしごしと擦ってしまうのは逆効果です。
できるだけ刺激を与えないためにも、柔らかい毛先の歯ブラシで優しく磨くことを心がけましょう。
冷やし過ぎない
「親知らずが原因の喉の痛みに対する応急処置」でも触れましたが、炎症が起きた際の応急処置として冷やすことは効果的です。
しかし、冷やしすぎると血行が悪くなって治癒が遅れてしまう可能性があります。
冷やす時間は15〜20分程度を目安に1時間以上は間隔を空けましょう。
1時間以上の間隔を空けることで、皮膚の適切な温度回復を促し、血行不良や凍傷などのリスクを軽減できます。
放置しない
親知らずが原因の喉の痛みは放置しないようにしましょう。
痛み止めの服用やうがい薬での消毒などで一時的に回復することはありますが、治ったわけではありません。
放置すると痛みが増すだけではなく、以下のようにさまざまな疾患や症状に繋がる可能性があります。
- 風邪のような症状を伴う発熱
- 頬が腫れて強い痛みを伴う顎骨骨膜炎
- 発熱・頭痛・倦怠感など全身症状が伴う蜂窩織炎
- 肺に膿が溜まる膿胸
- 心臓への感染による急性心筋炎 など
親知らずが原因の喉の痛みは基本的に歯科医院での治療になりますが、症状が進むと入院が必要になることもあります。
喉の痛みは放置せず、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。
まとめ
親知らずが原因でも喉が痛くなることがあり、主な理由は親知らず周辺の炎症と抜歯による炎症の2つがあります。
抜歯による炎症は1週間ほどで自然に改善すれば特に心配ありませんが、親知らず周辺の炎症は放置しても痛みが改善しない場合が多いです。
喉の痛みや親知らずが気になる場合は、放置せずできるだけ早く歯科医院を受診しましょう。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷は、痛みを抑え、削る量を少なくし、可能な限り神経を守ることをモットーに治療を行っています。
日本口腔外科専門医が在籍しているため、歯の悩みや親知らずの抜歯を検討している場合は、ぜひ一度下高井戸パール歯科クリニック・世田谷にご相談ください。
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