
「親知らずが原因で発熱することがある」と聞いたことがあるかもしれません。
実際に発熱することはあるのか、なぜ親知らずで発熱するのか、どういった注意点があるのか気になる方もいるでしょう。
この記事では、親知らずが原因で発熱する理由や注意点、予防方法などを解説します。
親知らずが原因で発熱することはある?

親知らずが原因で発熱することはあります。
発熱以外の症状は以下のとおりです。
- リンパ腺が腫れる
- 親知らず付近が熱を持つ
- 頭痛
- 倦怠感 など
一見風邪と間違われることも多い症状ですが、原因が風邪とは異なるため適切な治療方法が異なります。
解熱剤を服用すれば一時的に症状が改善するかもしれませんが、根本的な解決にはならないため、病院で治療を受ける必要があります。
放置することで炎症が悪化し、最悪の場合命を落とすこともあるため、できるだけ早急に治療を受けるようにしましょう。
親知らずが原因で発熱する理由

親知らずが原因で発熱する理由は大きく細菌による炎症の悪化と抜歯後の傷による炎症の2つに分けられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
細菌感染による炎症の悪化
親知らずを抜歯していない場合の発熱は、細菌感染による炎症の悪化によるものである可能性が高いです。
細菌感染は食べかすに細菌が増殖することで発症しますが、すぐに発熱することはほとんどなく主に4つの段階で症状が進んでいきます。
それぞれの段階でどのような症状が現れるのか、放置するとどうなるのかについても解説します。
1.最初は局所的な炎症
初期症状は歯茎の腫れや痛みが生じる局所的な炎症で、智歯周囲炎とも呼ばれています。
親知らず周辺に食べかすや歯垢が溜まり、細菌が増殖して歯茎が炎症を起こしています。
親知らず周辺にのみ症状が現れるため、親知らずが萌出する際の違和感や痛みに間違われやすいです。
2.智歯周囲炎の悪化
智歯周囲炎の初期症状である局所的な炎症を放置することで歯茎が赤く腫れ、どんどん痛みが増していきます。
炎症が首元に届くと風邪と似たような喉の痛みが現れ、場合によっては発熱が見られることも多いです。
また、智歯周囲炎を放置することで、歯周炎や歯周病を併発したり虫歯リスクが高まったりすることもあります。
3.顎骨骨膜炎の発症
智歯周囲炎を放置して感染が顎に届くと、顎の骨を覆っている骨膜が細菌感染を起こし、顎骨骨膜炎を発症することがあります。
顎骨骨膜炎になると輪郭が変わるほど頬や耳の裏が腫れあがり、強い痛みも生じます。
脈にあわせてズキズキと痛んだり、リンパ節が腫れたりすることも多いです。
特に下側の親知らずが智歯周囲炎になった場合に顎骨骨膜炎を発症しやすいです。
4.蜂窩織炎による発熱や頭痛などの全身症状
炎症が口腔内や頬粘膜など広範囲に見られる場合は、蜂窩織炎を発症している可能性があります。
蜂窩織炎は強い痛みや開口困難、嚥下困難などの症状だけではなく、38度以上の発熱や頭痛、倦怠感などの全身症状が現れることもあります。
蜂窩織炎の治療は抗菌薬の服用が基本で、軽傷であれば通院治療で1〜2週間ほどで回復する場合が多いです。
しかし、重症になると入院して静脈注射による抗菌薬の投与が行われます。
抗菌薬を投与すると症状が軽減していきますが、体内の菌をしっかりと殺すために中断せず、処方されたものは最後まで飲み切るようにしましょう。
5.放置は命に関わることも
蜂窩織炎を発症しても放置し続けるとさらに悪化し、発熱や倦怠感が強まっていきます。
稀なケースではありますが、炎症が胸元にまで届くと肺に膿が溜まる膿胸や急性心筋炎など命に関わる症状を引き起こす可能性があります。
この状態になるまで放置せず、痛みや腫れを自覚した時点でなるべく早めに歯科医院を受診しましょう。
抜歯後の傷による炎症
抜歯後の傷による炎症が理由で翌日から2、3日後に発熱することがあります。
抜歯後の炎症は48時間をピークに治まっていく傾向にあります。
このタイミングで長時間の入浴や激しい運動など血行がよくなる行為をしてしまうと、炎症が悪化し、発熱することもあるため避けましょう。
また、抜歯時には必ず麻酔を使用しますが、麻酔薬が合わない場合も発熱することがあります。
熱が続いたり高熱が出たりする場合は感染症や麻酔薬によるアレルギーを起こしている可能性があるため、早めに医師に相談しましょう。
親知らずが原因で発熱している際の注意点

親知らずが原因で発熱している場合、風邪ではないため自然には治らない可能性があります。
ここでは、親知らずが原因で発熱してる際の注意点を2つ解説します。
38度を超える場合はすぐに医療機関を受診
体温が38度を超える場合は、すぐに歯科医院や内科などの医療機関を受診しましょう。
親知らずが原因の発熱だと分かっている場合は歯科医院を、風邪の可能性もある場合は内科を受診しても大丈夫です。
親知らず抜歯後の発熱は、抗生物質などの薬を使用することで症状が落ち着くことが多いです。
ただし、38度以上の発熱が抜歯後2〜3日以上続く場合は感染の疑いがあるため、歯科医院を受診しましょう。
自然治癒を期待しない
親知らずが細菌に侵されたことが原因の発熱の場合、自然治癒を期待して放置するのは避けましょう。
仮に抗生物質や鎮痛剤などを服用して症状が治まっても、炎症が治まっただけで一時的なものです。
親知らず周辺に食べかすが溜まって細菌が増殖したり、疲労やストレスなどで免疫力が下がったりすると炎症を起こし、発熱する可能性が高いです。
炎症を起こさないようにするためには、根本的な原因である親知らずを抜歯する必要があります。
薬を服用して症状が落ち着いたとしても安心するのではなく、再発させないためにも親知らずの抜歯を検討しましょう。
親知らずが原因の発熱を防ぐ方法

親知らずが原因の発熱を防ぐ方法は主に4つあります。それぞれ詳しく解説していきます。
細菌感染を防ぐ
親知らずによる発熱は細菌感染が原因である場合が多いです。
そのため、細菌感染を防ぐことができれば発熱も防げます。細菌感染を防ぐ効果的な方法は、口腔内を清潔に保つことです。
親知らずは一番奥に生える永久歯であるため、歯ブラシが届きにくい部分です。
意識的に親知らずまで磨くように心がけたり、デンタルフロスや毛先が細いタフトブラシなどの補助器具を使ったりするとよいでしょう。
また、親知らずがまだ歯茎に覆われている場合は、消毒効果のあるうがい薬を使用して汚れや細菌を除去する方法も有効的です。
細菌感染の可能性があればすぐに歯科医院を受診する
細菌感染した初期段階では、歯茎の腫れや痛みが生じる局所的な炎症のみで発熱することはほとんどありません。
そのため、細菌感染の可能性を感じたらすぐに歯科医院を受診するようにしましょう。
初期段階で治療を行えば腫れや痛みも少なく、早い段階で炎症を抑えられます。
ただ、炎症の初期段階は親知らずの萌出の症状と区別が付かないこともあります。
炎症を早期発見・早期治療ができるように、日頃から定期的な歯科検診を受けておくこともおすすめです。
免疫力を高める
免疫力を高めることで、炎症を抑制し発熱も予防できます。
免疫力を高める方法は以下のとおりです。
- 栄養バランスのよい食事
- 腸内環境を整える
- よく咀嚼する
- 適度な運動
- 質のよい睡眠
- 身体を温める
- 適度なストレス発散 など
特に食事は重要で、栄養バランスを考えながら以下のような免疫力を高めてくれるものを積極的に取り入れてみましょう。
たんぱく質 | 肉類・魚類・卵・大豆製品・乳製品など |
ビタミンA・C・E | 緑黄色野菜など |
発酵食品 | 納豆・みそ・ヨーグルトなど |
食物繊維 | 海藻・きのこ類・根菜類 |
身体を温める場合は、表面だけではなく芯から温めることが大切です。
ぬるめのお湯に肩までしっかり浸かったり、根菜類やショウガなど身体を温めてくれる食材を取り入れたりするのもおすすめです。
また、適度な運動は免疫力を高めることができますが、過度な運動は疲労から免疫力を下げてしまう可能性があります。
やり過ぎには注意して軽く汗をかく程度の運動にとどめておきましょう。
負担の少ない抜歯を行う
抜歯後の発熱を予防するためには負担を減らした抜歯が必要です。負担の少ない抜歯の条件は以下の3つです。
- スムーズな抜歯で骨や歯茎に負担をかけない
- 短時間での抜歯
- 歯科医師の技術が高い
親知らずは一番奥にある永久歯であるため、他の歯の抜歯よりも難易度が高いです。
抜歯時間が長いほど身体に負担がかかり、痛みや腫れが出やすいため、スムーズで短時間の抜歯が理想です。
歯科医院を選ぶ際には、親知らずの抜歯を得意としているところを選びましょう。
口腔外科専門医が在籍していたり最新機器の揃っていたりする歯科医院であれば、負担の少ない抜歯ができます。
公式サイトや口コミなどを参考にしてみましょう。
親知らずが原因で発熱した場合は何科を受診する?

親知らずが原因で発熱した場合、基本的には歯科医院を受診しましょう。
もし、発熱の原因が親知らずなのか分からない場合は、内科を受診しても問題ありません。
しかし、内科では抗生物質を処方してもらい、炎症を抑えることはできますが、親知らずの抜歯はできません。
炎症が治まり、熱が下がっても親知らずがある限り再発する可能性が高いです。
炎症が治まったら歯科医院を受診し、内科を受診して薬を処方してもらったことを伝え、親知らずの抜歯を検討しましょう。
親知らずが原因で発熱した場合の治療方法

親知らずが原因で発熱した場合の治療方法は主に3つです。最後にそれぞれの治療方法について解説していきます。
抗菌薬を使用した薬物療法
炎症が起きている原因は細菌感染であるため、まず抗生物質を服用し原因となっている菌を抑える薬物療法が行われます。
親知らずによる炎症は食べかすに細菌が増殖したことが原因であり、特定の菌ではなく複数の菌に関している状態です。
そのため、使用する薬剤は複数の菌に対して効果のあるペニシリン系やセフェム系です。
基本的には経口投与による服用方法が用いられますが、重症化した炎症に対しては1日の数回の点滴投与を行う場合もあります。
歯肉膿瘍があれば外科的治療
歯肉膿瘍がある場合は、外科的治療が必要です。
歯肉膿瘍とは、歯肉(歯茎)に傷がついて細菌感染を起こし、歯肉部分に膿が溜まってしまった状態です。
傷による細菌感染だけではなく、炎症の刺激が繰り返されることで歯肉の中に膿が溜まってしまうこともあります。
歯肉が赤く腫れあがりぶよぶよとした触感になることが特徴で、内部の膿が透けて見えることもあります。
基本的な治療方法は、麻酔をしたうえで歯肉膿瘍部分を切開し、生理食塩水で洗浄しながら膿を排出させて、異物があれば摘出するという流れです。
治療後は抗生物質を服用して感染拡大を予防します。
原因である親知らずの抜歯
炎症が起きる根本的な原因は親知らずが横や斜めに生えてしまい、汚れが溜まりやすい状況だからです。
そのため、親知らずの抜歯をしなければ、炎症も歯肉膿瘍も再発する可能性があります。
親知らずの抜歯は基本的に炎症や歯肉膿瘍を治してからの治療になります。
なお、親知らずの抜歯にはメリットだけではなくデメリットやリスクもあるため、事前に十分理解したうえで治療を検討しましょう。
まとめ
親知らずが原因で発熱することがあり、理由は大きく「細菌による炎症の悪化」と「抜歯後の傷による炎症」の2つに分けられます。
親知らずが原因で発熱している場合は、自然治癒を期待して放置するのではなく、歯科医院を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、大学で口腔外科の経験を積んだ日本口腔外科専門医が在籍しているため、親知らずの抜歯が不安な方もぜひご相談ください。
#親知らず #親知らず熱