
親知らずは歯列の一番奥に遅れて生える永久歯で、親が子どもの口内のお世話をしなくなる時期に、知らぬ間に生え始めることからこの名がつきました。
親知らずは、生える場所に十分なスペースがないと、他の歯に影響を与えたり、セルフケアが難しい生え方をする可能性があるため、状況に応じた抜歯の選択が必要です。
この記事では、中学生で親知らずが生えた場合の対応や、抜歯のメリット・デメリットを紹介します。
中学生のお子さんに親知らずが生えてきた方や、親知らずが問題を起こしている方は参考にしてください。
親知らずは何歳で生える?

永久歯は一般的に15歳前後で生え揃いますが、親知らずは20歳前後で生えることが多く、他の永久歯と比較して生え始めが遅いのが特徴です。
親知らずが生えることを萌出といいますが、萌出の年齢には個人差があり、30・40・50代など、20代以降で生える人もいれば、一度も生えてこない人もいます。
最大で4本まで生える場合があり、最も奥の歯のさらに奥に生えるため、親知らずが生えたことに本人が気づかない可能性も少なくありません。
親知らずは生え方によってはさまざまな口内トラブルを引き起こす原因になるため、抜歯の選択が必要になるケースがあります。
中学生で親知らずが生えたらどうする?

親知らずが生えた場合、問題がなければ無理に抜く必要はありませんが、将来起こりうるさまざまなリスクを考慮するならば、中学生のうちに抜くことが望ましいです。
大人でも親知らずの抜歯は可能ですがリスクが多いため、顎の骨がやわらかい子どものうちに抜くことで、痛みや歯並びへの影響を防ぐことにつながります。
親知らずへの対処は早いほうが身体への負担が少ないため、生える前から治療の有無を検討することが理想です。
親知らずは抜く・抜かないでそれぞれメリットがあり、どうするべきかは親知らずの生え方や口内の状態によって変わります。
症状がない状態からレントゲンを用いて歯科医師・歯科衛生士に診てもらうことが推奨されるため、早めにかかりつけの歯医者に相談しておきましょう。
親知らずを抜いたほうがいいケース

親知らずは、以下のケースでは抜いたほうがよいと判断される場合があります。
歯やその周辺が痛む場合
親知らずの本体、またはその周辺の歯や組織が痛む場合は、親知らずの抜歯を検討しましょう。
親知らずは、歯茎や隣の歯を圧迫しながら生えてくることで痛みを伴いやすく、プラークの蓄積や感染症によって痛みや腫れが発生するケースもあります。
親知らずがあるだけで開口時に痛みを感じる人もいるため、これらのケースでは親知らずの抜歯を選択する必要があります。
他の歯に影響がおよぶ場合
親知らずは、他の歯に影響がおよぶ生え方をしている場合、抜歯が要される可能性があります。
斜めや横向きに親知らずが生えると、隣の歯に力が加わることで歯並びが変わったり、噛み合わせのバランスが崩れたりします。
顎の大きさを考慮した際、親知らずが生えるスペースがないと傾いて生えやすいため、その場合は抜歯の検討が必要です。
セルフケアが難しい生え方をしている場合
親知らずが磨きにくい生え方をしている、またはセルフケアが難しい生え方をしている場合は抜歯が望ましいです。
不自然な生え方をすることで細菌が蓄積しやすい環境を作り出す可能性があり、奥に生えた親知らずはブラッシングするのが難しいため、きれいに保ちにくくなります。
その結果炎症を引き起こしたり、虫歯や歯周病になったりするリスクがあるため、セルフケアが適切にできないような親知らずが生えた場合は抜歯の検討が必要になります。
虫歯や歯周病になった場合
親知らずが虫歯や歯周病になると、ほとんどの場合で抜歯が必要になります。
虫歯や歯周病は周囲の歯に影響するリスクがあるだけでなく、奥に生える親知らずは治療が難しいため、軽度でも抜歯の選択をするケースが多いです。
親知らずは抜いても生活にそれほど支障がないため、他の歯の健康を守るためにも、虫歯や歯周病になる前に抜歯の選択をするのが有効です。
親知らずを抜かなくてもいいケース

以下のケースでは、親知らずを抜く必要がないと判断される可能性があります。
他の歯に影響がない場合
親知らずは、他の歯に影響を及ぼさなければ残しても問題ありません。
斜めや横向きではなく、まっすぐ生えた親知らずや、噛み合わせに問題のない親知らずは、他の歯に影響を与えづらいと考えられます。
このように、歯の一部として正常に機能している親知らずはあえて抜く必要がなく、残す選択をするケースが多いです。
セルフケアで健康に保てる場合
親知らずは、ブラッシングがしっかり行き届く状態で清潔に保てる場合は抜歯をしなくても問題ありません。
斜めに生えていたり、横向きに生えたりすることで隣の歯に当たっている状態では、プラークや細菌が溜まりやすいため、虫歯や歯周病になりやすいです。
親知らずの生え方や口内の状況次第では、セルフケアをしっかり行う前提で残す選択も可能です。
痛みや腫れなどの症状がない場合
痛みや腫れなどの症状がない場合は、親知らずを無理に抜く必要はありません。
親知らずが生えると、智歯周囲炎や歯性感染症などが原因で痛みや腫れ、炎症などが起きやすくなります。
これらの症状がなく、日常生活に問題がない場合は、親知らずを温存する選択が可能です。
骨に埋まっていて、特に異常がない場合
親知らずが骨に埋まっていて、腫れや痛みなどの異常がない場合は抜歯せずに様子をみるケースが多いです。
レントゲン撮影によって埋まっている親知らずが発覚した場合、それがまだ萌出(歯が生えること)しておらず、他の歯に影響を及ぼす可能性が低いのであれば、抜歯をせずに経過観察を行います。
しかし、埋まった状態で細菌感染を引き起こしたり、生えてくることで状態が悪くなったりする場合は抜歯を検討する必要があります。
親知らずを早めに抜いたほうがいい理由

親知らずは必ず抜かなくてはいけないわけではありません。
しかし、抜いた方がいいケースの親知らずの場合、以下の理由から早めに処置することが大切だとされています。
全身の健康を守るため
親知らずの虫歯や歯周病は、放置すると全身に悪影響を及ぼす可能性があるため、健康を維持するためにも早めに抜歯を検討することが重要です。
虫歯が悪化し、虫歯菌が血管に侵入すると、脳梗塞や糖尿病などのリスクが上昇する恐れがあります。
さらに歯周病は、細菌感染により心筋梗塞や動脈硬化、感染性心内膜炎を引き起こすリスクがあります。
口内の健康が損なわれると、免疫力の低下によって病気を発症しやすくなるため、口内環境は全身の健康に大きく関係すると言っても過言ではありません。
虫歯や歯周病になる前に抜歯することでリスクを軽減できますが、親知らずを抜かずに温存する場合は、歯科検診で定期的にチェックすることが大切です。
治療後の回復が早いため
親知らずは、抜くタイミングが早いほうが治療の回復が早いとされています。
年齢によって抜歯後の傷の回復速度が異なり、年を重ねるほど傷口の治癒に時間がかかります。
また、生えたばかりの親知らずは根元部分が未完成なため、早いうちに抜いたほうが治療後の痛みを軽減できます。
治療のリスクが低いため
親知らずは、早めに抜くことで治療のリスクが低下します。
特に下顎の親知らずは、成長するほど下歯槽神経が通る下顎管に近付くため、抜歯が遅くなると下顎管を損傷し、麻痺が生じるリスクが高まります。
そのため、根元が完成する前に抜歯の選択ができるのが理想です。
親知らずを抜くメリット

ここからは、親知らずを抜くメリットを紹介します。
虫歯や歯周病の予防
親知らずを抜くことで、親知らず本体とその隣接している歯の両方の虫歯や歯周病を予防できます。
親知らずは隣の歯とのあいだに歯垢が溜まりやすく、ブラッシングも届きにくい位置に生えているため、磨き残しやすく虫歯や歯周病の原因になります。
親知らずが原因でその他の歯が虫歯や歯周病になるのを回避するためにも、抜歯の選択をするのが得策です。
口臭の軽減
親知らずの抜歯は、口臭の軽減につながります。
親知らずがあるとブラッシングが不十分になりやすいため、食べカスが口臭の原因になる可能性があります。
また歯茎が汚れた状態だと腫れや炎症が起こりやすく、膿ができることで口臭が発生する場合もあるため、いずれも親知らずを抜くことで改善が可能です。
口内トラブルの改善
親知らずを抜くと、口内トラブルの回避・改善に効果が期待できます。
親知らずの生え方によっては、口内の粘膜にあたることで口内炎の原因になったり、歯並びが悪くなったりする可能性があります。
歯並びは修正するのに時間がかかるため、トラブルが起こる前に抜歯を検討することが大切です。
肩こりの解消
親知らずを抜くことで、肩こりが解消される可能性があります。
噛み合わせが悪くなると顎に余分な負荷がかかり、筋肉が緊張したり血行が悪くなったりして肩こりにつながる恐れがあります。
親知らずを抜いたからといって、必ず肩こりが解消されるわけではありません。
しかし、親知らずが生えてから肩こりを感じるようになった場合は、抜歯によって改善が見込める可能性があるでしょう。
小顔効果
親知らずを抜いて小顔効果を得られるのはごく一部の人ですが、稀にいます。
親知らずが生えていることで、エラや頬骨が通常時より出っ張っている場合、抜歯によりフェイスラインがすっきりする可能性があります。
また、親知らずが原因の食いしばりが癖づいている方や、噛むときによく親知らずを使っていた方などは、抜歯後に咀嚼する筋肉が衰えることで顎まわりが痩せて見える可能性があります。
親知らずの萌出・成長に合わせ、それを支える骨も一緒に成長するため、周辺の骨がまだ柔らかいうちに抜くことで、顎や骨の成長を抑えられます。
親知らずを抜くデメリット

ここからは、親知らずを抜くデメリットを紹介します。
腫れや痛みを伴う
親知らずを抜くと、治療後に腫れや痛みを伴います。
これらの症状は時間が経つにつれて自然に治まりますが、飲食に支障が出る場合があります。
単に痛みがつらいことで生活に支障が出る可能性や、頬の腫れで一時的に顔の輪郭が違ってみえる可能性も懸念されるため、親知らずの抜歯後は人に会う予定を避けたほうが無難です。
周囲の組織を傷つける可能性がある
親知らずを抜く際に、周辺の組織を傷つける可能性があります。
歯を抜く処置は外科治療にあたり、骨の神経や血管に損傷を与え、神経麻痺や多量出血を伴う危険があります。
特に萌出していない親知らずを除去する場合、リスクをしっかり理解したうえで医師と相談し、判断することが大切です。
場合によっては健康保険が適用されない
親知らずの抜歯は、場合によっては保険が適用されない可能性があります。
腫れや痛みがみられる、歯並びや周囲の組織に影響を及ぼしている、虫歯・歯周病になったなどのケースでは、3割負担で治療を受けられます。
しかし、予防のために健康な親知らずを抜く場合や、審美性を求めて抜歯を選択する場合は自費診療で受けなければいけません。
自分の親知らずの状態や抜歯の目的によって、保険適用の有無をよく確認しましょう。
他の歯の治療に使用できなくなる
親知らずは他の永久歯の治療に利用できますが、抜いてしまうとそれができなくなります。
永久歯を失う事態になった際、親知らずが健康な状態で保てていれば、移植や入れ歯、ブリッジの土台などに利用できます。
しかし、虫歯や歯周病があったり抜歯したりしている場合はこの選択ができません。
そのため、将来永久歯を失うことになった場合に治療法が制限される可能性があります。
まとめ
中学生で親知らずが生えた場合の対処法について紹介しました。
親知らずは人によっては生えないケースもあるため、お子さんの親知らずが生えなくても心配いりません。
しかし、抜歯のタイミングが早いほうが治りが早く、虫歯や歯周病のリスクも軽減できるため、生える前から対応を検討しておくことが大切です。
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初めての抜歯で不安な方も、お気軽にご相談ください。
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