
親知らずは、元々ある歯列の一番奥に遅れて生えてくる歯で、しばしば痛みを伴うことがあります。
普段痛くない親知らずでも噛んだ時に痛む場合があるため、痛みを対策したり歯科医院で適切な処置を受けたりすることが大切です。
この記事では、噛んだ時に親知らずが痛む原因や対処法、親知らずの痛みを放置するリスクなどを紹介します。
親知らずが痛むけれど、歯科医院を受診するのが不安だと感じる人や、対処法を知りたい人は参考にしてください。
親知らずが噛んだ時に痛む原因

噛んだ時に親知らずが痛む原因には、以下が考えられます。
歯茎や周囲の歯を押し出して生えてくるため
親知らずは生えてくる際に歯茎や周囲の歯に圧がかかるため、痛みを生じやすいです。
また顎に十分なスペースがないと、手前の歯を圧迫して生えてくるため、痛んだり、歯並びが悪くなったりする可能性があります。
斜めや横向きに生えてくることで痛みが続くケースがありますが、真っすぐ生えてくる場合は、圧迫による痛みはじきに治まるでしょう。
智歯周囲炎を起こしているため
親知らずが智歯周囲炎を起こすと、痛みを感じる原因になります。
親知らずが斜めや横向きに生えると、隣の歯との間に歯ブラシが届きにくい隙間ができます。
智歯周囲炎は、この隙間にプラークが溜まることで歯茎が炎症を起こし、痛みを伴っている状態です。
炎症が広がると顎の骨や筋肉内に膿が発生し、歯や喉の痛み・腫れに加えて、口が開けづらくなるなどのリスクがあります。
特に生えかけの親知らずの場合は歯茎の溝が深いため、細菌が繁殖しやすく炎症を引き起こしやすいです。
親知らず周辺の歯茎を押すと痛い場合は、智歯周囲炎が疑われます。
歯茎に当たっているため
親知らずは、噛み合わせの際に歯茎にあたることで痛みを伴うケースがあります。
例えば、上の顎にだけ親知らずが生え、下の顎には生えていない状態では、噛み合わせの際に下の歯茎や粘膜に歯が当たり、痛いと感じる可能性があります。
また上下の親知らずのどちらかが、もう片方の親知らずの周辺の歯茎を噛み合わせの際に噛んでしまう配置になっている場合も痛みを引き起こしやすいです。
虫歯になっているため
親知らずの虫歯が内側へ進行し、神経に感染すると強い痛みを生じます。
親知らずの虫歯は、放置すると周囲の組織や健康な他の歯に悪影響を及ぼす危険があるため注意が必要です。
歯根に膿が溜まっているため
親知らずの根元に膿が溜まっている場合、噛むことで痛みを感じる可能性があります。
根元に膿が発生していると、歯に物がしみなくても噛みしめた際に痛みを感じます。
この場合は、抗生剤や歯根治療、歯茎のクリーニングなどが必要です。
親知らずの痛みを放置してはいけない理由

親知らずが痛む場合、場合によっては放置すると危険な可能性があります。
虫歯や歯周病が他の歯に影響するため
親知らずは虫歯や歯周病になりやすく、治療せずに放置すると他の健康な歯に影響を及ぼす可能性があります。
悪くなった親知らずを放置すると、親知らずだけではなく隣の歯の虫歯や歯周病のリスクも高まり、さらに放置することで口臭や全身疾患につながる恐れがあります。
親知らずは生えなくても問題がない歯ですが、他の永久歯は末永く守っていく必要があるため、悪影響を及ぼす前に対策することが大切です。
歯並びが悪くなるため
親知らずが隣の歯を押し出して生えてくると、歯並びが変わる可能性があります。
親知らずは、顎に生えるスペースがなかったり斜めや横向きに生えてきたりすると、他の歯を押し出しながら無理矢理出てくるため、歯並びが悪くなる原因になります。
親知らずにより歯並びが変わると、抜歯だけではもとに戻せず、矯正治療が必要になるため、必要に応じて予防的に抜歯することが必要です。
急に痛みが強くなる可能性があるため
親知らずの痛みを我慢して放置していると、突然痛みが強くなる可能性があります。
虫歯が原因で親知らずが痛む際、一時的に痛みがなくなる場合がありますが、これは虫歯が治ったのではなく、反対に進行したことを表しています。
痛みがない・少ないからという理由で親知らずの虫歯を放置すると、ある日突然激しい痛みを感じる可能性があり、それが大切なイベントの予定と被るといったケースは否定できません。
また旅行や出張など、すぐに対応できない場面で急に痛みが襲ってくる場合もあります。
親知らずの痛みを予防する方法

ここからは、親知らずの痛みを予防する方法を紹介します。
虫歯にならないよう清潔に保つ
親知らずを守るためには、適切に歯磨きをして清潔に保つことが大切です。
虫歯や歯周病がなく、他の歯に影響を及ぼしていない親知らずであれば、抜かずに残せる可能性が高まります。
親知らずの歯磨きは難しいですが、口を小さく開け、斜めに歯ブラシをあてて細かく動かして磨くのがコツです。
この方法で親知らずの全面を優しく丁寧に磨くことで、きれいに保ちやすくなります。
定期検診を受ける
親知らずを健康に保つためには、定期的に検査を受けて歯を観察しましょう。
歯磨きが適切に行えなくても、歯科医院に定期的に通うことで親知らずのメンテナンスやクリーニングが可能です。
親知らずを抜かなければいけない状況になった場合、定期検診を受けていれば早めの判断が可能なため、他の歯への影響も少なくて済みます。
抜歯する
親知らずが原因で生じる痛みは、親知らずを抜歯することで予防できます。
親知らずがあると虫歯や歯周炎による炎症が起こりやすく、正しく生えてこなかった場合はさらにそのリスクが高まります。
抜歯してしまえば、これらの痛みの原因を根本から予防でき、抜歯後の傷が塞がることで普段の生活に戻ることが可能です。
親知らずが痛い場合の対処法

ここからは、親知らずが痛い場合の対処法を紹介します。
優しくブラッシングをする
親知らずに付着した汚れや細菌を除去することで、痛みが緩和する可能性があります。親知らずを優しくブラッシングしてみましょう。
痛みがある状態でブラッシングをする場合は、歯茎を傷付けないように患部周辺を柔らかい歯ブラシで磨きます。
うがい薬で消毒する
うがい薬を用いた消毒は、親知らずの痛み緩和に効果的です。
痛みや腫れの原因が細菌による炎症であれば、消毒することで改善が期待できます。
アルコール成分を含む市販薬は反対に刺激になるため、成分をよく確認してアルコールが含まれていないものを使用しましょう。
患部を冷やす
頬の上から患部を冷やすことで、痛みが和らぐ可能性があります。
親知らずにより周辺組織が炎症を起こし腫れている場合、保冷剤を包んだタオルや氷水、冷却シートなどで冷やすことで痛みの緩和が可能です。
肌に氷や保冷剤を直接当てると凍傷になるリスクがあるため、必ず間接的に当てるようにしましょう。
痛み止めを服用する
痛みがつらい場合は、痛み止めを服用しましょう。
市販のものを使用しても良いですが、歯科医院で過去に処方されたものがあり、それが使用期限内であれば相談のうえ服用することも可能です。
親知らずの痛みには、ロキソプロフェンナトリウム・イブプロフェン・アセトアミノフェンなどの有効成分を含有した痛み止めが効果的です。
歯科医院を受診する
親知らずが痛む場合は、歯科医院を受診し、適切な処置を受けることで痛みを根本的に解決することが大切です。
痛みを一時的に緩和しても、大元の原因を解決しないと同じ状況を繰り返すことになります。
その場しのぎで痛みを和らげることで治療が遅れ、さらに強い痛みを伴う可能性もあります。
痛みが治まったからと放置せず、早めに歯科医院で詳しい原因を調べてもらい、適切な治療を受けましょう。
親知らずが痛む場合に歯科医院で行われる治療法

ここからは、親知らずが痛む場合に歯科医院で受けられる処置を紹介します。
薬の処方
歯科医院では、親知らずの痛みや腫れなどの症状に対して、痛み止めや抗生剤などを処方してもらえます。
市販の痛み止めを飲むのが不安な人は一度相談してみましょう。
患部の洗浄・消毒
歯科医院では、親知らずの痛みを改善する洗浄・消毒などの処置が受けられます。
患部を清潔にすることで痛みや炎症が抑えられるため、自分の判断で対応するよりもおすすめです。
加えて抜歯の必要性も検討できるため、クリーニングを受けてから改めて治療方針を決定できるメリットがあります。
噛み合わせを調整する
親知らずが隣の歯を押すことで痛みが発生している場合、噛み合わせを調整することで解決できる可能性があります。
親知らずを含む部分矯正または全体の歯列矯正が必要になりますが、これを行うことで痛みのほかにも歯周ポケットや歯と歯の隙間の調整も可能です。
できるだけ抜歯をしない方法を選択したい方や、親知らずを有効活用したい人は一度歯科医にご相談ください。
削る・抜歯する
ケースによっては、歯を削るか抜歯をするしか選択肢がない場合もあります。
削ることで他の歯への影響が防げると判断された場合は、親知らずを削る処置だけで済みます。
親知らずが原因で引き起こされる問題が、痛みだけではなく他の歯への影響や将来的なトラブルにつながるリスクがある場合は、基本的には抜歯の選択がとられるでしょう。
特に、親知らずが横向きで埋まったままの状態になる埋伏歯の場合、時間が経過しても生えてくる見込みがほとんどないため、抜く選択をした方が効率的です。
親知らずが痛い場合のNG行為

ここからは、親知らずが痛い場合のNG行動を紹介します。
痛みがある部分を触る
痛みがある部分をむやみに触るのは避けましょう。
炎症がある歯茎は敏感になっているため、刺激を与えることで症状が悪化する恐れがあります。
また、指で触れることで細菌が付着・侵入し炎症を助長させる可能性があるため、腫れが気になる場合も触らないように注意しましょう。
強い力で患部を磨く
痛みがある親知らずを強い力で磨くことはやめましょう。
歯ブラシで力を入れて磨くと患部への刺激になり、痛みが増す可能性があります。
親知らずの汚れはしっかり落とすのが大切ですが、痛みや炎症がある場合は力加減に気を付けて、優しく丁寧に磨くことが大切です。
刺激のある食べ物を口にする
親知らずが痛い場合は、刺激になる食べ物は避けましょう。
熱い食べ物や辛い食べ物は、患部への刺激になったり血行を促進したりするため、腫れや痛み、炎症を悪化させる恐れがあります。
親知らずに痛みがある場合や腫れている場合は、辛くない・熱くない食事を心掛け、硬いものも極力避けるのが推奨されます。
親知らずの痛みに関するよくある質問

ここからは、親知らずの痛みに関するよくある質問を紹介します。
Q.親知らずの痛みを繰り返す場合どうしたらいい?
A.親知らずが痛んだり、落ち着いたりする場合は智歯周囲炎の可能性があるため歯科医院を受診しましょう。
智歯周囲炎では、抵抗力が弱まっている時に痛みが生じ、その後落ち着くケースがあります。
自宅で痛みに対する応急処置を行っていても、根本を解決しなければ痛みが再発する可能性は常にあります。
智歯周囲炎を放置し重症化すると、発熱や倦怠感、呼吸困難などの症状を引き起こすリスクもあるため、早めに相談してください。
Q.親知らずが生えていないのに痛むことはある?
A.親知らずは、歯茎に埋まっている状態でも痛むことがあり、レントゲンで発見するまで気が付かない患者さんもいます。
しかし、埋まったままの状態の親知らずは隣の歯の歯根を溶かしたり、膿を発生させたりする可能性があるため、ケースによっては対処が必要になります。
痛みがある場合は、親知らずが生えていなくても歯科医院を受診しましょう。
まとめ
親知らずを噛むと痛い原因や対処法について紹介しました。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、日本口腔外科学会専門医が在籍しているため、他院で難しいと言われる難症例にも対応します。
精密な診査診断を可能とするCTを導入することで、親知らずの状態を詳細に分析し、症状に適した治療の提供が可能です。
なかには、歯医者が苦手でできるだけ避けたいという方や、歯を抜くのに抵抗があるという方もいると思います。
親知らずの抜歯は必ず選択されるわけではありませんが、将来的な口内の健康を守るために必要な場合は避けるべきではありません。
そのため、怖いと感じる方も勇気をもって一度ご相談ください。
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