親知らずの隣の歯が痛い原因は?放置するリスクや治療のタイミングも紹介

親知らずに痛みを感じて頬を押さえる女性

親知らずは誰にでも生えるわけではありませんが、生える・生えないに関わらず痛みを伴ったり、隣の歯や歯全体に影響を与える可能性があります。

どんな影響があるか事前に知っておくことで、予防したり早めに対応したりすることが大切です。

この記事では、親知らずの隣の歯が痛む原因や、放置することで考えられるリスクなどを紹介します。

親知らずが生えた人もそうでない人も、この記事を参考にしてさまざまなリスクの予防に努めましょう。

親知らずの隣の歯が痛くなる原因

親知らずの隣の歯が痛くなる原因について説明する医師

親知らずの隣の歯が痛むのには、以下のような理由があります。

虫歯・歯周病になっているため

親知らずがあると、隣の歯が虫歯や歯周病になりやすく、痛みを伴う原因になります。

親知らずがある状態では痛みを感じず、抜歯したことで隣の歯の虫歯が露出し、痛みを感じるようになるケースもあります。

親知らずは既にある奥歯のさらに奥に生えるため、歯と歯の間に食べかすが溜まりやすく、通常の歯ブラシではきれいに落としにくいです。

そのため、親知らずやその隣の歯や歯茎が清潔に保てず、虫歯や歯周病になるリスクが高まります。

また親知らずは目で見えにくいところに生えていることから異変を発見しづらく、痛いと感じないケースもあります。

気付くと虫歯が進行していた、発覚した頃には重症化していた、などの事態にもなりかねないため注意が必要です。

隣の歯を押しているため

親知らずは、隣の歯を押すことで痛みを伴ったり、歯並びを変えてしまったりする可能性があります。

親知らずが隣の歯を圧迫しながら生えると痛みを伴うほか、少しずつ歯並び全体が歪んでいくため、元々の歯並びがきれいな人でも将来的にガタガタになるリスクがあります。

歯並びが変わると、見た目だけではなく噛み合わせにも影響を及ぼすことで、間接的に肩こりや頭痛につながるケースも少なくありません。

歯根吸収が起こっているため

親知らずの生え方によっては、隣の歯の歯根吸収が起こり、痛みを伴う場合があります。

歯根吸収とは、歯の根元が溶けてしまう状態のことで、親知らずが隣の歯に食い込むような角度で出てきている場合に起こる症状です。

歯根吸収は軽度の場合では症状がありませんが、歯の根元が短くなることで神経に近づくため、痛みを感じるケースがあります。

歯根吸収が進行すると、親知らずに加えて隣の歯も抜歯する必要が出てくる可能性があるため、失う事態を避けるために対策することが重要です。

抜歯時に力が加わったため

親知らずの抜歯時に隣の歯に力が加わると、痛みを感じる原因になります。

親知らずの生え方によっては、抜歯する際にどうしても隣の歯に力がかかり、打撲のような状態で痛みとなって出現する可能性があります。

麻酔が効いている間は感じない痛みが後々現れるケースがありますが、特別な処置をしなくてもそのうち消失するため問題ないことがほとんどです。

しかし、ヒビが入っていたり、なんらかの損傷がある場合は対応が必要になるため、気になる場合は一度相談することを推奨します。

親知らずの抜歯により神経が過敏になっているため

親知らずを抜歯したことで隣の歯の根元が露出し、痛みを感じやすくなるケースがあります。

これは、歯茎に深く埋まっていた親知らずを抜歯した場合に起こりやすい症状です。

歯茎が再生することで再び根元が覆われていくと、自然に治癒します。

細菌感染を引き起こしているため

親知らずの抜歯後、細菌感染を引き起こすことで隣の歯が痛む場合があります。

親知らずを抜いた部分の神経は、隣の歯の感覚神経と繋がっているため、片方に刺激があるとどちらも痛いと感じる可能性があります。

これを関連痛といい、感染が治まると治りますが、重症化のリスクを避けるためにも歯科医院の受診が推奨されます。

親知らずが影響することによる痛み以外の問題

親知らずに痛みを感じて頬を押さえる男性

親知らずが隣の歯に影響をすると、痛み以外にも以下の問題が生じる可能性があります。

歯列矯正が必要になる

親知らずが原因で乱れた歯並びを戻すには、歯列矯正が必要です。

親知らずを抜いただけでは元の歯並びには戻らないため、抜歯したうえで時間をかけて矯正治療を行う必要があります。

歯並びは、親知らずが隣の歯を押し続けている間は変化し続けるリスクがありますが、親知らずを抜いて歯列全体を矯正することで、その後は整った状態で維持しやすくなります。

炎症が生じる

親知らずが原因で隣の歯が虫歯や歯周病になると、炎症が生じる可能性があります。

親知らずのみが虫歯になった場合は抜歯で治療が可能ですが、親知らずが生えなければ虫歯にならなかったかもしれない隣の歯まで症状がおよびます。

隣の歯を守るためには、虫歯や歯周病になるリスクが懸念される親知らずを早めに処置することが大切です。

日常生活に支障をきたす可能性がある

親知らずが原因で歯並びが変わると、日常生活の一部が不便になるケースがあります。

例えば、噛み合わせが悪いと食事の際に食べ物をよく噛まなくなり、胃腸に負担をかけたり、口・顎の成長を妨げたりする原因になります。

また、特定の音や言葉が発音しにくく、相手が聞き取りづらくなる可能性が懸念されるため、歯並びが原因で滑舌がコンプレックスという患者さんも少なくありません。

親知らずを放置することで生じる問題

ベッドに座り親知らずに痛みを感じて頬を押さえる女性

親知らずは、症状の有無に関わらず放置は禁物です。

ここからは、親知らずを放置することで生じる問題について紹介します。

口内炎ができる

親知らずを放置すると、口内炎ができる可能性があります。

噛み合わせが悪くなることで頬を噛みやすくなったり、斜めに生えることで口内の粘膜に当たったりすることで口内炎になります。

親知らずが虫歯になると、口内を刺激しさらに口内炎ができやすくなってしまうため注意しましょう。

顎関節症になる

親知らずが噛み合わせを悪くすることで、間接的に顎関節症を引き起こすリスクがあります。

噛み合わせが悪いと、顎を動かす筋肉や関節に負荷がかかり、口が開けにくくなったり顎に痛みを感じたりします。

親知らずの抜歯後に腫れて開けづらい口を無理矢理開けようとすることで顎関節症になる場合もありますが、このケースは稀です。

口臭の原因になる

親知らずがあると、さまざまな原因により口臭を引き起こしやすくなります。

親知らずの周辺はセルフケアが難しく汚れが落としにくいため、細菌が溜まりやすいです。

また、歯並びが悪くなることで口が開き気味になると口内が乾燥しやすくなり、においの元となる雑菌が繁殖しやすい環境を作ります。

さらに、噛み合わせの悪さによって普段からものを噛む回数が減ると、唾液の分泌量が減り、さらに口臭を悪化させます。

普段通り歯磨きをしても口臭が気になる人は、親知らずが原因かもしれません。

激痛を伴う可能性がある

親知らずを放置すると、激痛を伴う場合があります。

親知らずのブラッシングが不十分になることで智歯周囲炎になると、周辺の歯茎に炎症を引き起こします。

智歯周囲炎は、重症化することで激しい痛みを伴ったり、顎付近が腫れたりするリスクがあるため、放置するのは禁物です。

治療に時間がかかる

親知らずを放置すると、矯正治療をするタイミングになった場合に時間がかかる可能性があります。

矯正治療をする際に親知らずに虫歯があると、虫歯を一度治療したり親知らずを抜歯したりしたのちに行う必要があります。

親知らずは虫歯を繰り返しやすい歯であるため、矯正治療前に抜歯の選択をするケースが多いです。

親知らずを抜歯した場合、矯正治療は傷口が塞がってから行うため、治療にかかる時間が長くなります。

早い段階で親知らずを抜いておくと、いざ歯列矯正をするとなった場合にスムーズに治療が受けられます。

親知らずや隣の歯の痛みを予防する方法

鏡を見ながら歯磨きする男性

ここからは、親知らずや隣の歯の痛みを予防する方法を紹介します。

抜歯する

親知らずが隣の歯の痛みの原因になると判断される場合は、予防のために抜歯するのが合理的です。

親知らずを事前に抜歯することで、痛み予防のほか、隣の歯が押されることで歯列が乱れる、きれいにブラッシングができないことで虫歯ができる、隣の歯の歯根が吸収する、などの問題を予防できます。

とくに親知らずの虫歯は、仮に治療しても再発するリスクが高く、抜いてしまっても基本的には問題がないため、抜歯を選択するケースが多いです。

適切な方法で欠かさず歯磨きを行う

親知らずや隣の歯が虫歯にならないように、適切な方法で歯磨きを行うことが大切です。

親知らずがあるとその隣の歯にも虫歯が発生しやすくなりますが、少しでもリスクを減らすために歯ブラシやデンタルフロスを用いて清潔に保ちましょう。

歯磨きには、より効果を発揮するための適切なタイミングや回数があります。

自分のセルフケアの仕方が適切なのか不安な場合は、行きつけの歯科医院で一度指導をしてもらうと安心です。

定期的に歯科医院を受診する

親知らずやその他の歯の健康を維持するために、定期的に歯科医院を受診することが推奨されます。

自分でどれだけ丁寧に歯磨きをしても親知らずの磨き残しは発生しやすいため、歯科医院でクリーニングを受けることでより親知らず周辺を清潔に保てます。

定期的に通院していれば、口内にトラブルがあった際、早めに対応することが可能です。

親知らずが隣の歯に痛みを及ぼした場合の対処法

歯科治療中の様子

親知らずが原因で隣の歯が痛む場合は、歯科医院で以下のような適切な治療を受けましょう。

虫歯になった歯の治療を行う

親知らずと隣の歯が虫歯になった場合、基本的には親知らずを抜歯したうえで隣の歯の虫歯治療を行います。

親知らずの虫歯治療は不可能ではありませんが、再び汚れが溜まり虫歯を繰り返す可能性が高いため、抜歯を選択するケースが多いです。

親知らずを隣の奥歯の代わりに使用する

親知らずの隣の歯に歯根吸収が起こった場合、抜歯をして親知らずを移植する治療ができる場合があります。

歯根吸収がみられる奥歯は、状態によっては抜歯を余儀なくされるケースがありますが、健康な親知らずが残存していた場合、それを奥歯の代わりに使用できるような処置を受けられる可能性があります。

また隣の歯を抜歯したあとの矯正治療では、親知らずが正常な位置に生えていれば矯正装置の軸として使用できるため、抜かずに済む親知らずを温存することは場合によってはメリットにもなります。

親知らずは埋まっていても隣の歯に影響する?

親知らずは埋まっていても隣の歯に影響するのかどうか患者に説明している医師

親知らずは、歯茎に完全に埋まった状態でも隣の歯に痛みを引き起こす可能性があります。

歯茎から頭を出していない親知らずを完全埋伏智歯といい、他の歯に影響していない場合は、わざわざ歯茎を切開して抜歯する必要はありません。

しかし、歯茎に完全に埋まった状態の親知らずも萌出している親知らずと同様、横向きに生えている場合(水平埋伏智歯)は歯並びに影響を与え、顎関節症を引き起こす可能性があります。

また隣の歯の歯根吸収に関与し、腫瘍になったり、痛み・腫れ・違和感を伴ったりするケースもあります。

完全埋伏智歯は目で直接確認できないため、症状がないと発覚が遅れる可能性が高いです。

隣の歯が歯根吸収によりグラついた状態になることで初めて発覚するケースもあるため、親知らずが萌出していない人でも歯科医院で定期的に検査してもらうことをおすすめします。

親知らずの予防的抜歯に適したタイミング

歯科治療中の様子

さまざまなリスクを回避するために親知らずを抜歯する場合、適したタイミングは一般的に20歳前後とされています。

親知らずの抜歯ができる年齢には特に制限がありませんが、歳を重ねるほど治療のリスクが高まり、傷口の治りも遅くなる傾向があります。

20歳前後で親知らずの抜歯を受けると、顎の骨が柔らかいため開口によってかかる負担が軽減され、治療に要する時間や周辺組織への影響も少ないです。

親知らずは、成長するにつれて歯根が形成されていくと、下に通っている歯槽骨や下顎管など、大きな神経が通っている組織に近づいていきます。

歯根がこれらに近づいた状態で抜歯を行うと、損傷による麻痺のリスクが高まるため、危険を回避するためにも歯根が完成する前の早い段階で抜歯を選択できるのが理想です。

まとめ

親知らずの隣の歯が痛む原因や、予防法・対処法などを紹介しました。

親知らずは他の歯へ悪影響を及ぼすリスクがある歯ですが、場合によっては温存することで入れ歯やブリッジの土台として使ったり、抜歯した奥歯の代わりになったりするメリットがあります。

しかし、親知らずを残す・残さないは自己判断せず、歯科医に直接歯の状態を診てもらったうえで判断してもらいましょう。

下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、難症例にも対応可能な口腔外科専門医が在籍しているため、生えかけの親知らずや水平埋伏智歯の予防的抜歯が可能です。

親知らずの隣の歯が虫歯になった場合も、痛みや削る量を可能なかぎり抑えた治療で患者さんの大切な歯を守るよう努めます。

さらに中性電解機能水を用いた殺菌治療で、親知らずの隣の歯を虫歯の再発から守ります。

親知らずについて、気になる点や不安がある方はぜひ一度ご相談ください。

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