
親知らずを抜歯すると、骨や歯茎が完全に再生するまでに時間がかかります。
基本的にはゆっくり治癒しますが、元通りになるまでの期間には個人差があります。
治療後は傷口の状態を把握しながら、少しでも早く治すために適切な過ごし方をすることが大切です。
この記事では、親知らずの治療にかかる期間や、抜歯のリスク・注意点などを紹介します。
親知らずの抜歯後の治療期間がどれくらいか知りたい人や、なかなか治らずに不安を感じている人は参考にしてください。
親知らずの治療期間はどれくらい?

親知らずの治療期間には個人差がありますが、生え方や処置の仕方によって以下のように異なります。
抜きやすく簡単な抜歯の場合
親知らずが抜きやすく、簡単な処置で抜歯できる場合は、治療後1ヶ月ほどで傷口が塞がります。
真っ直ぐ生えている親知らずや、隣の歯へ影響していない親知らずは抜歯の難易度が低いため、数分で処置が完了し、治療期間も短い傾向があります。
周囲の組織にあまり負担をかけないため、痛みや不快感なども比較的少ないです。
歯茎の切開を要する難しい抜歯の場合
歯茎の切開を伴う難しい抜歯の場合、傷口が塞がるまでに1ヶ月〜半年ほどかかります。
斜めに生えた親知らずや歯茎に埋まった状態の親知らずを抜歯した場合など、処置の際に空いた穴が大きいと、その分長い治療期間が必要です。
神経に接触している親知らずを抜く場合は、慎重な事前準備と治療技術が必要となるため、小さなクリニックでは対応できない可能性があり、処置にかかる時間も長くなります。
親知らず抜歯後の経過

親知らずの抜歯後は、以下のような経過を経て傷口が治癒します。
傷口にかさぶたのような血の塊ができる(治療当日~翌日)
抜歯当日〜翌日には、傷口にかさぶたのような血の塊ができます。
この塊を血餅(けっぺい)といい、穴が塞がるまで傷口を守る役割を果たします。
血餅が傷口を保護しているあいだは、剥がれないように注意しなければいけません。
抜歯当日は出血により口内に不快感を感じやすいですが、血餅をしっかり形成させるためにうがいのしすぎに注意しましょう。
歯茎の再生が始まる(治療後約3日~4日)
治療から3日〜4日ほど経過すると、歯茎の再生が始まります。
抜歯で空いた穴の周囲から少しずつ上皮化が起こることで、傷ついた歯茎が徐々に回復していきます。
削った歯や抜いた永久歯がもとに戻ることはありませんが、歯茎は再生が可能な組織です。
血餅がより頑丈な組織に変化する(治療後約1週間)
治療から1週間ほど経過すると、血餅が肉芽組織と呼ばれる組織に変化します。
肉芽組織は毛細血管や線維芽細胞などの成分で構成されていて、血餅よりも頑丈な線維性の組織です。
血餅が肉芽組織に変わることで傷口への定着力が強くなるため、ここまで治療が進むと骨がむき出しになるリスクはほとんどありません。
骨の再生が始まる(治療後約2週間~1ヶ月)
治療後2週間〜1ヶ月ほどで、骨の再生が始まります。
同時に肉芽組織が変化し、歯茎の治癒が進行することで傷口が徐々に目立たなくなっていきます。
見た目では少しずつ治っていくように見えますが、人によってはまだ治っていないと感じたり、いまだに穴が空いているように感じたりする時期です。
傷口が歯茎で覆われる(治療後約1ヶ月~1ヶ月半)
抜歯後1ヶ月〜1ヶ月半ほど経過すると、傷口が再生した歯茎で覆われます。
歯茎が再生するとへこんだ状態で覆われることが多いですが、治癒が早い人だと盛り上がって見えるため、ほとんど治ったような見た目をしているケースもあります。
ほぼ治癒が完了した見た目をしていても、中の骨は完全に再生していないことを覚えておきましょう。
抜歯後の傷口が完全に塞がる(治療後約半年~1年)
治療後約半年〜1年が経過すると、抜歯後の傷口が完全に塞がります。
歯茎・骨が完成し傷口が完全に埋まり、レントゲンにも抜歯の痕跡が映らないくらいの回復が見込める時期です。
見た目でも穴が分からないほどに回復し、傷口付近の違和感もほとんど感じなくなります。
親知らずの抜歯の流れ

ここからは、親知らずの抜歯の流れを紹介します。
問診
問診にて親知らずの状態を確認します。
痛みや気になる症状がある場合はお聞かせください。他院からの紹介状や、常用薬などの確認も行います。
診察・検査
適切な治療計画を定めるために、診察や検査を行い、親知らずの現状を把握します。
X線やCTで撮影を行うほか、検査器具を用いて歯やその周辺の状態を詳しく調べます。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、CT装置を用いた親知らずの精密な診査・診断が可能です。
治療計画の説明
問診と検査の内容や結果をもとに治療計画を決定し、ご説明させていただきます。
親知らずの抜歯にはさまざまなリスクが伴うため、医療機関によっては同意書の記入が必要になる場合があります。
抜歯の処置は検査当日に行えるケースもありますが、親知らずや歯茎の状態、全身の患者さんの健康状態が優れない場合は後日に決定するケースが多いです。
親知らずや歯茎の洗浄・消毒
抜歯を行う前に、対象の親知らずやその周辺の歯茎の洗浄・消毒を行います。
虫歯がある場合や歯茎に炎症がみられる場合は、抜歯後に菌が侵入したり、出血が多くなったりしやすいです。
事前の洗浄や消毒は、抜歯によりできた傷口への菌の侵入を防ぎ、傷の治りを早くするために重要な処置です。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、厳格なヨーロッパ基準を満たした滅菌体制で、院内感染を防止します。
抜歯
麻酔をし、抜歯を行います。
歯を抜くと聞くと痛そうなイメージがありますが、麻酔を打つため処置時の痛みはほとんどありません。
抜歯にかかる時間は、親知らずの状態によって5分程度で終わるケースや30分ほどで終わるケース、1時間以上かかるケースなどさまざまです。
歯の生え方や埋まり方によって、歯茎を切開する、歯を削る・割るなどの方法を駆使して抜歯を行います。
痛みが怖い方や不安な方は、カウンセリング時に「痛みに弱い」ことを伝えておくと安心です。
傷の洗浄・縫合
治療部分の洗浄や縫合など、抜歯後の処置を行います。
歯を削った破片が傷口に残ると痛みや腫れの原因になるため、数回洗浄して除去したのちに縫合します。
縫合は歯肉の切開をした場合に行い、約1週間経過して傷口が塞がったころに抜糸のための受診が必要です。
薬の処方
止血したら、処方された薬を受け取って処置は完了です。
抜歯後は、痛み止めと抗生剤が処方されます。
麻酔の効果が切れるまで飲食は避け、治療後は強いうがいや頻繁に口をゆすぐ行為をしないように注意しましょう。
必要に応じて、翌日や翌々日に傷口の消毒が必要になる場合があります。
親知らず抜歯のリスク

ここからは、親知らずを抜歯するリスクについて紹介します。
痛み・腫れ・内出血
親知らずを抜歯すると、痛み・腫れ・内出血などを伴う可能性があります。
親知らずの抜歯では歯茎の切開や顎の骨を削る処置を行うケースがあり、この場合は炎症による痛みや腫れを起こしやすくなります。
歯茎に埋まっている歯や真横を向いている歯など、抜歯の難易度が高い親知らずほど炎症を引き起こしやすく、大きく腫れるリスクが高いです。
また親知らずの抜歯後は、内出血により顎にあざができる場合があります。
このあざは基本的に痛みを伴わず時間経過で自然に治癒しますが、人目に分かる状態で出現するため、マスクやメイクで隠すなどの対策をとりましょう。
顎関節症
親知らずを抜歯してから1週間経っても顎の痛みが改善されない場合は、顎関節症を発症している恐れがあります。
親知らずの抜歯を行うと口が開けにくくなる場合がありますが、この際に無理に開口することで顎の炎症が悪化すると、顎関節症になるリスクがあります。
また、抜歯後の歯磨きは傷口に刺激を与えないよう気を遣う必要がありますが、それが原因による磨き残しも炎症を悪化させる要因です。
通常は抜歯後1週間ほど経過し痛みや炎症が治まることで顎の症状も改善されますが、長引く場合は一度歯科医院を受診しましょう。
ドライソケット
親知らずの抜歯後は、ドライソケットになる場合があります。
ドライソケットとは、抜歯後に血餅が形成されず中の骨や神経が露出した状態になることで、激痛や感染症のリスクが高い状態です。
抜歯後に口内の不快感からうがいをしすぎたり、口内が清潔に保たれていなかったりした場合に発症する可能性が高まります。
ドライソケットを予防するには、強いうがい・頻繁なうがい・硬いものを食べる・傷口を触るなどの傷口に刺激を与える行為や喫煙を避け、歯科医の指示に従って経過観察をすることが重要です。
唇や舌の麻痺
親知らずを抜歯した際、近くの神経を傷付けることで唇や舌などの麻痺が現れるリスクがあります。
親知らずの抜歯で損傷が懸念される神経には、下歯槽神経・舌神経・オトガイ神経が挙げられ、それぞれ下顎・舌・下唇の麻痺に関係しています。
抜歯直後の治療部分周辺の痺れは麻酔が原因である可能性もありますが、その場合は処置後数時間ほどで治るケースが多いです。
2週間以上経過しても症状が改善しない場合は、神経麻痺が懸念されるため歯科医院を受診しましょう。
親知らず抜歯後の注意点

親知らずの治療期間中は、以下の点に注意しましょう。
血行を促進する行為は控える
激しい運動や長時間の入浴など、血行を促進する行為は控えましょう。
血行がよくなると再び出血する可能性があります。特に抜歯当日は、できるだけ安静にして過ごすことが大切です。
強いうがいや、うがいのしすぎを控える
抜歯後に強くうがいをしたり、頻繁にうがいをしたりすると傷の治りが遅くなる可能性があります。
うがいのしすぎや強いうがいは血餅が傷口に形成されるのを妨げるため、治療期間が長引くだけではなく、細菌感染を引き起こしやすくなるリスクもあります。
出血により口内に不快感を感じるかもしれませんが、なるべくうがいは我慢し、必要な場合は血餅が剥がれないように優しく口をすすぐようにしましょう。
傷口をむやみに触らない
抜歯後の傷口を指や舌で押したり、触ったりすることは避けましょう。
むやみに刺激を与えると、傷口の治りを妨げ感染症を引き起こす原因になるほか、空いた穴に食べ物や汚れが入り強い痛みを伴う可能性があります。
また触ることで血餅を剥がしてしまうと、ドライソケットのリスクも高まるため注意が必要です。
抜歯後の傷口に食べ物が入り込んだ場合、爪楊枝や箸などで無理に取ったり、歯ブラシで直接磨いたりせず、歯科医院で対処してもらいましょう。
食事に気を付ける
親知らずの抜歯後は、食事内容に気を遣いましょう。
処置してすぐの飲食は、血餅の形成を妨げる可能性があるだけではなく、麻酔の影響で口内から飲食物がこぼれたり、熱いもので火傷をしやすくなったりします。
そのため、麻酔が切れて出血が落ち着くまでの2〜3時間は飲食を避けることが大切です。
ゼリーやヨーグルトなどの流動性がある食べ物や、お粥や蒸しパンなどの軟らかい食べ物を抜歯した反対側の奥歯で噛むようにしましょう。
香辛料を多く含む食べ物や辛い食べ物、硬い食べ物は傷口への刺激になるためしばらくは控えることをおすすめします。
麺類を強くすすって食べる行為や、吸って食べるゼリーやストロー付きの飲料などは、圧力がかかることで血餅を剥がしてしまうリスクがあるため注意しましょう。
飲酒や喫煙は控える
親知らずの抜歯後は、飲酒や喫煙を控えることが推奨されます。
特にタバコに含まれるニコチンは、血液の供給を阻害することで傷の治りを遅くするほか、血餅の形成を妨げることでドライソケットのリスクを上昇させます。
細菌感染による病気の原因になる可能性も懸念されるため、歯科医の指示に従って禁煙することが大切です。
また飲酒には、血管を拡張させて止血を遅くする働きがあります。
喫煙と同様に、傷の治りを悪くしたり感染のリスクを高めたりする可能性があるため注意しましょう。
まとめ
親知らずの治療期間や、抜歯後の注意点について紹介しました。親知らずの抜歯後は、歯茎や骨が再生するまで時間がかかります。
かかる期間には個人差がありますが、傷口へ負担をかけない過ごし方で少しでも早く治療が完了するように努めましょう。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、CTを用いた詳細な事前診断により患者さんの親知らずの状態に合わせた治療が可能です。
親知らずの抜歯にはメリットとデメリットがあるため、状況を判断したうえで最適な治療方法を提案します。
親知らずの悩みは、ぜひ一度当院にご相談ください。
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