
インプラント治療は失った歯の機能を取り戻せる選択肢ですが、高額な費用のために治療をためらう方も少なくありません。
しかし、実は医療費控除を利用することで、治療費の一部が戻ってくる可能性があります。
この記事では、インプラント治療の基礎知識から医療費控除の仕組み、具体的な還付額の計算方法まで詳しく解説します。
これから治療を検討されている方や、既に治療を始められた方も、ぜひ参考にしてみてください。
インプラント治療の基礎知識

インプラントは、歯を失った方に希望をもたらす治療法の一つとして注目されています。
治療費は決して安価ではありませんが、天然歯に近い機能と見た目を取り戻せる可能性がある選択肢です。
一方で、手術が必要なことから治療開始前にリスクと向きあい、十分な理解のもとでの意思決定が大切です。
以下では、インプラント治療に関する基本的な情報を紹介します。
インプラント治療とは
インプラント治療は、おもにチタン製の人工の歯根を顎の骨に埋入し、その後骨との結合を待って、最終的に人工の歯を装着します。
外科手術を伴う治療であり、歯科医との十分な相談が欠かせません。
インプラントは入れ歯やブリッジとは異なり顎の骨に直接固定されるため、より自然な状態に近づけます。
ただし、治療期間には一定の期間を要し、個人差はありますが通常3〜12ヶ月程の期間が必要となります。
治療費の目安
インプラント治療は保険適用外の自由診療となるため、費用面での心配が大きくなりがちです。
1本あたりの標準的な費用は30万円から50万円程度で、これには診察や検査、手術、そして人工歯の製作や装着までが含まれます。
ただし、骨の状態によって骨移植が必要になったり、複数の歯を同時に治療したりする場合には、この金額以上の費用がかかることもあります。
また、治療後のメンテナンスや定期検診の費用も考慮に入れる必要があるでしょう。
インプラントのメリット・デメリット
インプラント治療をより深く理解するため、メリットとデメリットについて説明します。
メリット | デメリット |
・天然歯に近い見た目と噛み心地 ・入れ歯のような着脱が不要 ・食事や会話が自然に楽しめる ・人工歯根自体は虫歯にならない ・周囲の健康な歯を削る必要なし ・適切なケアで長期使用が可能 | ・治療期間が3〜12ヶ月程と長い ・手術後の腫れや痛みの可能性 ・治療費が高額 ・全身の健康状態により適用できない場合あり ・定期的なメンテナンスが必須 |
個人の状態や生活環境によってそれぞれの重要度は変わってきます。
インプラント治療を検討する際は、これらの要素をご自身の状況に照らしあわせながら、歯科医と相談することをおすすめします。
また、事前に複数の歯科医院で相談すると、より適切な治療法の選択肢が広がるでしょう。
保険適用の可能性
インプラント治療は一般的に保険適用外ですが、例外的に保険が適用されるケースも存在します。
生まれつき顎の骨が3分の1以上欠損している場合や、顎の骨に形成不全が認められる場合、また事故や病気により顎の骨が大きく欠損した場合などが該当します。
通常の虫歯や歯周病、加齢による歯の喪失では保険適用の対象とはなりません。
保険適用の判断が難しいこともあるため、治療を検討する際には必ず事前に歯科医院での相談をおすすめします。
費用負担を軽減する医療費控除とは

インプラント治療の費用負担を軽減する方法として、医療費控除制度の活用が挙げられます。
この制度は、1年間の医療費が一定額を超えた場合に、税金の一部が戻ってくる仕組みです。
ここでは、医療費控除の仕組みや申請方法について、分かりやすく説明します。
医療費控除の仕組み
医療費控除は、インプラント治療も含め、医療費全般に適用される制度です。
年間を通じて支払った医療費が10万円を超えた場合(または所得が200万円未満の方は所得の5%を超えた場合)に適用されるものです。
会社員は年末調整で所得税を精算していますが、医療費控除の還付申請をすると払い過ぎた所得税と住民税が戻ってきます。
医療費控除には上限がありますが、実際に還付される金額は個々の医療費や条件によって異なるため、具体的な状況を考慮する必要があります。
対象となる条件
医療費控除を受けるためには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 自分または生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費である
- その年の1月1日から12月31日までの間に実際に支払った医療費である(未払いの医療費は、支払った年の医療費控除の対象)
- 治療目的であることが明確である
とりわけインプラント治療では、審美目的ではなく失われた歯の機能回復が目的であることが重要です。
適用範囲と限度額
医療費控除の適用範囲と限度額は、以下のように定められています。
- 年間の医療費から保険金などで補填される金額を差し引いた額が対象
- 10万円(所得200万円未満の場合は所得の5%)を超える部分が控除の対象
- 控除額の上限は200万円
実際の計算では、インプラントの治療費用に加えて、他の医療費や通院交通費なども合算します。
他の医療費との合算方法
医療費控除では、インプラント治療費だけでなく他の医療費との合算が可能で、これによりより多くの還付を受けられる可能性があります。
対象となる医療費には以下のようなものが含まれます。
- 病院や診療所での診療費
- 薬局で購入した医師の処方箋による薬代
- 通院時の公共交通機関の運賃(自家用車のガソリン代やタクシー代は対象外)
- 入院時の食事代や差額ベッド代
合算の際は、家族全員の医療費を一つにまとめることも可能です。
家族のなかで所得の多い方が申告すると、税率の関係で還付額が大きくなる場合があります。
申請手続きの流れ

医療費控除による還付を受けるには、確定申告の手続きが必要です。
最近は電子申告(e-Tax)の利用も増え、自宅からの申請も可能になりました。
ここでは、還付を受けるための手続きの流れを説明します。
必要書類の準備
書類の不備は申請の遅れや手戻りの原因となるため、申請前に必要書類を漏れなく準備することが重要です。
- 医療費の領収書(原本)
- 医療費通知
- 医療費控除の明細書
- 確定申告書
- 源泉徴収票(原本)
- マイナンバーが確認できる書類
- 印鑑(認印)
- 還付金の振込先口座情報(申告者名義)
領収書は、金額や受診日などが明確に記載されているか、事前に確認しましょう。
申告方法のステップ
申告方法には、税務署への直接訪問、郵送、電子申告(e-Tax)の3つの方法があります。
それぞれの特徴を踏まえて、ご自身に適した方法を選びましょう。
■税務署への直接訪問
- 窓口で直接相談が可能
- 不明点をその場で解決
- 混雑時期は待ち時間に注意
■郵送での申告
- 自宅から手続き可能
- 時間に縛られない
- 書類の到着確認が必要
■電子申告(e-Tax)
- 24時間申告可能
- 自宅からインターネットで完結
- マイナンバーカードが必要
確定申告の期限
確定申告の期限は毎年2月16日から3月15日までとなっていますが、この期間を過ぎても、医療費控除に限っては5年以内であれば遡って申告が可能です。
早めに申告することで、還付金を早く受け取れるだけでなく、税務署の混雑を避けられます。また、申告内容に不備があった場合でも修正時間を確保できます。
スムーズな還付金受け取りのためにも、本来の期限内での申告を心がけましょう。
申請時の注意点
申請時には以下のポイントに注意が必要です。
- 領収書は申告年の1月1日から12月31日までのものに限定
- 医療費通知は保険組合から届くものを使用
- 公共交通機関の領収書は通院日と金額を記録
- 家族の医療費を合算する場合は関係を明記
- 保険金で補填される場合はその金額を差し引く
医療費控除は、確実に手続きを行えばインプラント治療の経済的負担を軽減する有効な手段となります。
不明な点があるときは、税務署への事前相談をおすすめします。
具体的な還付額の計算方法

インプラント治療にかかる費用の一部を医療費控除で取り戻すには、正確な計算が重要です。
還付額は所得税率によって変わるため、適切な計算方法を知ることでより多くの還付を受けられる可能性もあります。
ここでは、具体的な計算方法から実例まで、分かりやすく解説します。
基本的な計算式
医療費控除の還付額を導き出すための、基本となる3つの計算式は以下の通りです。
1.『医療費控除額』 = 『その年に支払った医療費の総額』 - 『保険金などで補填される金額』 - 『10万円(または所得金額の5%のいずれか少ない方)』
2.『還付される所得税額』 = 『医療費控除額』 ✕ 『所得税率』
3.『還付される住民税額』 = 『医療費控除額』 ✕ 『10%』
所得金額に応じた税率は以下の通りです。
所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円超〜330万円以下 | 10% |
330万円超〜695万円以下 | 20% |
695万円超〜900万円以下 | 23% |
900万円超〜1,800万円以下 | 33% |
1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
具体的な計算例
以下のケースでの還付額を具体的に計算してみましょう。
■例1:年収300万円(税率10%)/インプラント治療費30万円/保険金等の補填なし
1.医療費控除額 = 30万円 - 0円 - 10万円 = 20万円
2.所得税の還付 = 20万円 × 10% = 2万円
3.住民税の減額 = 20万円 × 10% = 2万円
合計還付額 = 4万円
■例2:年収400万円(税率20%)/インプラント治療費30万円/保険金等の補填5万円
1.医療費控除額 = 30万円 - 5円 - 10万円 = 15万円
2.所得税の還付 = 15万円 × 20% = 3万円
3.住民税の減額 = 15万円 × 10% = 1万5千円
合計還付額 = 4万5千円
住民税の減額について
住民税の減額率は、所得に関係なく一律10%となります。
医療費控除の申請をすることで、翌年度の住民税から減額されます。
夫婦のように生計を一にする場合は合算しての申告が可能です。
補助制度の活用と注意点

インプラント治療の費用負担を軽減するために、医療費控除以外にもさまざまな制度があります。
ただし、それぞれの制度には適用条件や制限があるため、特徴と活用方法について理解することが必要です。
高額療養費制度との違い
高額療養費制度は、医療費の自己負担額が一定金額を超えたときに利用できる制度です。
ただし、インプラント治療に関しては重要な注意点があります。
インプラント治療は原則として保険適用外の自由診療となるため、高額療養費制度の対象外です。
ただし、事故や先天性疾患による顎の骨の欠損など、限定的な条件下では保険適用となり、その場合にかぎり高額療養費制度が利用できます。
医療費控除とは異なり、毎月の医療費が対象となる点も大きな違いです。
デンタルローンの活用
インプラント治療の費用を一括で支払うことが難しいときは、デンタルローンの活用が選択肢となります。
デンタルローンを利用して治療費を分割払いする場合でも、医療費控除を申請することが可能です。
ただし、控除の対象となるのはローン契約が成立した年というのがポイントで、金利分は医療費控除の対象外です。
保険の補填について
けがや病気をした際、民間の医療保険からの給付金が受け取れるケースがあります。
この場合、医療費控除の計算ではその金額を医療費の総額から差し引く必要がある点に注意が必要です。
例えば、30万円の治療費に対して保険から20万円の給付があったときは、医療費控除の対象は残りの10万円から計算します。
生命保険や医療保険からの給付金も同様の扱いとなります。
経費処理の可否
個人事業主や会社経営者の方は、インプラント治療費の経費処理に関する疑問があるかもしれません。
インプラント治療費は、原則として経費として処理することはできず、補助金もありません。
これは、法人・個人事業主のいずれの場合も同様で、治療費はあくまでも個人的な医療費として扱われるためです。
ただし、従業員の健康診断費用など、事業主が負担する法定の健康管理費用は経費として認められます。
インプラント治療については、医療費控除制度の検討をおすすめします。
まとめ
インプラント治療は高額な費用がネックとなりがちですが、医療費控除制度を活用することで治療費の一部が戻ってくる可能性があります。
医療費控除の申請には、適切な書類の準備と手続きが重要です。
領収書の保管や確定申告の期限に注意を払い、正しく申請を行いましょう。
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インプラント治療では、3000本以上の埋入経験がある熟練した歯科医師と、現在大学病院に勤務している歯科医師が対応します。
治療費や医療費控除についても、気になる点がありましたら、お気軽にご相談ください。
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