
歯を一本だけ失ってしまった場合、その治療方法に悩む方は多いのではないでしょうか。
例えば、インプラントやブリッジなど複数の選択肢がある中で、「できるだけ健康な歯を守りたい」「費用や治療期間を抑えたい」と考える方にとって、一本から作製できる部分入れ歯は有力な選択肢となります。
しかし、入れ歯と聞くと「違和感が強いのでは?」「見た目が気になるかも」といった不安を感じることもあるでしょう。
本記事では、一本のみの入れ歯に関する基礎知識や種類ごとの特徴、メリット・デメリット、費用面まで解説します。
一本だけ入れ歯を検討する方が知っておきたい基礎知識

歯を一本だけ失ってしまった場合、そのまま放置すると見た目や噛み合わせ、発音などさまざまな問題が生じることがあります。
ご自身に合った治療法を選ぶためには、一本用の部分入れ歯の特徴、部位ごとの違いなどを正しく理解することが大切です。
ここでは、一本だけ入れ歯を検討する際に知っておきたい基礎知識を紹介します。
一本から作製できる部分入れ歯の特徴
一本から作製する部分入れ歯は、隣接する歯にバネやクラスプと呼ばれる留め具をかけて固定するため、周囲の歯を大きく削る必要がない点が大きな特徴です。
また、取り外しができるため、日々のお手入れがしやすく、口腔衛生を保ちやすくなっています。
治療期間が比較的短いことや費用面での選択肢が幅広いことも、このタイプの入れ歯が選ばれる理由の一つです。
前歯・奥歯など部位ごとの違い
一本のみの入れ歯を作る際は、前歯か奥歯かによって選び方のポイントが異なります。
見た目に影響する前歯には、審美性を重視した素材やデザインが適しています。
金属のバネが目立たないノンクラスプデンチャーなどが選択肢となるでしょう。
一方で、奥歯の部分入れ歯は噛む力を支える役割が大きく、耐久性や安定感、噛み合わせの精度が重要です。
強度の高い金属床義歯や、しっかりと噛み合わせを再現できるタイプが適しています。
一本のみの入れ歯の4つの種類と特徴

一本のみの歯を補う入れ歯には、いくつかの種類が存在します。
それぞれの素材や構造によって、見た目や装着感、耐久性、費用などに違いが生じるため、ご自身のご希望やお口の状態に合わせて選ぶことが大切です。
ここでは、一本のみの入れ歯に使える代表的な4つの種類とその特徴について紹介します。
レジン床義歯
レジン床義歯は、保険適用が可能な義歯の基本的なタイプの一つです。
ピンク色のプラスチック(レジン)が歯ぐきの部分を覆い、そこに人工歯が取り付けられています。
費用を抑えたい場合や、短期間での作製を希望する場合に選ばれることが多くあります。
しかし、プラスチックは厚みが必要なため、装着時に多少の違和感が生じることがあるかもしれません。
金属床義歯
金属床義歯は、歯ぐきの部分が金属でできている自費診療の入れ歯です。
金属は強度が高いため、レジン床義歯よりも薄く作製することが可能で、装着時の違和感が少ないのが特徴です。
熱伝導性に優れ、食事の際に食べ物の温度を自然に感じやすく、より美味しく食事ができるという利点も持ち合わせています。
一本の歯を補う場合でも、金属床にすることで、入れ歯全体の安定感や耐久性が向上し、咀嚼機能をしっかりと支えることが期待できます。
シリコン義歯
シリコン義歯は、入れ歯の裏側に生体親和性の高い柔らかいシリコーン素材を貼り付けた自費診療の入れ歯です。
シリコーンが歯ぐきと入れ歯の間のクッションとなり、装着時の痛みを軽減し、より自然なフィット感を得られるよう工夫されています。
特に、歯ぐきに当たる部分が硬いと痛みを感じやすい方や、入れ歯が安定しにくいと感じる方に選ばれることがあります。
柔らかい素材のため、歯ぐきへの負担が少なく、長時間の使用でも快適に過ごしやすいのが特徴です。
ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーは、金属のバネを使用せず、歯ぐきの色に近い樹脂製の素材で入れ歯を支えるタイプです。
お口を開けた際に金属が見える心配がなく、審美性を重視する方に適しています。
素材に柔軟性があるため、装着時の違和感が少ないとされています。
しかし、保険適用外となるため費用は高くなる傾向にあり、修理が難しい場合や、他のタイプに比べて耐久性が劣る可能性も考慮する必要があります。
一本のみの入れ歯を選ぶメリット

一本のみの入れ歯は、他の治療方法と比較していくつかのメリットがあります。
ここでは、一本のみの入れ歯を選ぶ主な3つのメリットについて紹介します。
健康な歯をほぼ削らず治療できる
一本のみの入れ歯のメリットの一つは、失われた歯の両隣にある健康な歯をほとんど削ることなく治療が進められる点です。
ブリッジの場合、失われた歯を補うために、両隣の歯を大きく削って土台とする必要があります。
入れ歯の場合は隣の歯にバネをかけるなどして支えるため、ブリッジと比べると天然歯への負担が格段に少なくなります。
そのため、健康な歯を温存できる可能性が高まり、将来的な歯の寿命を延ばすことにもつながります。
費用も抑えられ短期間で仕上がる
一本のみの入れ歯は、保険が適用されるレジン床義歯を選べば、経済的な負担を抑えられます。
また、治療期間も比較的短いことが多いです。
インプラントのように手術を伴う治療とは異なり、型取りから作製、装着までがスムーズに進むため、急いで歯の機能を回復させたい場合にも適しています。
取り外しができ口腔衛生を保ちやすい
入れ歯は、取り外しができる点が大きな特徴です。
入れ歯を外して専用のブラシや洗浄剤で清潔に保つことができるため、入れ歯自体に汚れが蓄積するのを防ぎます。
また、残っている天然歯もブラッシングしやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを軽減することにもつながります。
清掃性を重視し、将来的な口腔トラブルのリスクを減らしたいと考える方にとって、入れ歯の取り外しやすさは大きなメリットと言えるでしょう。
一本のみの入れ歯を選ぶデメリット

一本のみの入れ歯には多くのメリットがありますが、一方で考慮すべき課題も存在します。
ここでは、一本のみの入れ歯を選ぶ際に知っておきたいデメリットについて紹介します。
違和感が出やすく噛む力も弱くなる場合がある
入れ歯は、ご自身の天然の歯とは異なる異物であるため、装着した直後は多少の違和感を覚える場合があります。
特に、舌触りや厚みに慣れるまでには時間が必要かもしれません。
入れ歯は歯ぐきの上に安定させて噛む力を支えるため、天然歯のように直接顎の骨に力が伝わるわけではありません。
そのため、天然歯に比べて噛む力がやや弱くなる可能性があります。
見た目や発音、慣れるまでの課題
入れ歯の種類によっては、見た目に影響が出ることがあります。
例えば、保険適用となるレジン床義歯の場合、金属製のバネが隣の歯にかかるため、お口を開けた際にその金属が見えてしまう場合があります。
また、入れ歯が口腔内の空間を一部占めるため、最初は発音がしにくくなったり、話し方に変化が生じたりする可能性もあります。
お手入れやメンテナンスの負担も増える
入れ歯を清潔に保つためには、食事のたびに取り外して洗浄したり、専用の洗浄剤に浸したりなどのお手入れが必要です。
お手入れを怠ると、入れ歯に汚れや細菌が付着し、口臭の原因になったり、残存歯や歯ぐきに炎症を起こしたりする恐れがあります。
また、入れ歯は使用しているうちに劣化したり、口腔内の変化によってフィット感が変わったりすることがあります。
そのため、定期的に歯科医院を受診し、調整や修理、場合によっては作り直しが必要となるなど、継続的なメンテナンスの負担が生じることも理解しておく必要があります。
一本のみの入れ歯にかかる費用と他の補綴方法の比較

一本の歯を失った際、どの治療法を選ぶかは機能面や見た目だけでなく、費用面でも慎重な検討が必要となります。
ご自身の希望やライフスタイルに合った治療を選ぶためには、それぞれの費用相場や特徴を知っておくことが大切です。
治療法 | 保険適用の費用相場(1本) | 自費診療の費用相場(1本) |
レジン床義歯 | 約5,000~15,000円 | 約15万円~30万円 |
ノンクラスプデンチャー | 保険適用なし | 約8万円〜30万円 |
シリコン義歯 | 保険適用なし | 約10万円〜50万円 |
金属床義歯 | 保険適用なし | 約20万円〜50万円 |
インプラント | 原則保険適用なし | 約50万円~75万円 |
ブリッジ | 約10,000~30,000円 | 約5万円~15万円(ハイブリッド・セラミック等) |
ここでは、一本のみの入れ歯にかかる費用と、他の補綴方法との違いについて紹介します。
保険適用と自費診療で異なる費用相場
一本のみの入れ歯を作製する際の費用は、保険が適用されるかどうかで大きく異なります。
保険診療で作る入れ歯は、自己負担割合が3割の場合、おおよそ5,000〜15,000円が相場です。
一方で、自費診療の入れ歯は、審美性や装着感の向上を目的とした高品質な素材や精密な設計が用いられるため、費用は高くなります。
例えば、ノンクラスプデンチャーは8万円〜30万円程度、歯ぐきに当たる部分が柔らかいシリコン義歯は10万円〜50万円程度が一般的な相場です。
さらに、薄くて丈夫な金属床義歯なども選択でき、使用する金属の種類によっては20万円〜50万円程度になる場合もあります。
インプラント・ブリッジとの違い
一本の歯を補う選択肢として、入れ歯の他にインプラントやブリッジがあります。
インプラントは、失った歯の顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する方法です。
周囲の歯を削らず、見た目も天然歯に近く、安定した噛み心地が得られることが多いですが、手術が必要であり、費用は他の方法よりも高額になる傾向があります。
ブリッジは、失われた歯の両隣の歯を削って土台とし、橋をかけるように人工歯を連結して装着する方法です。
固定式で違和感が少ないですが、健康な歯を削る必要があります。
費用はインプラントよりは抑えられますが、自費診療を選択する場合は高額になります。
費用を抑えるためのポイント
費用を抑えることを重視する場合、保険が適用される入れ歯を選ぶのが選択肢の一つです。
ただし、保険適用の入れ歯は初期費用は安いものの、耐久性の面から修理や作り直しの頻度が高くなる可能性があり、「違和感がある」「金属のバネが目立つ」などのデメリットもあります。
自費の入れ歯は初期投資は大きいですが、耐久性に優れているため長期的に見れば追加費用が抑えられる場合もあります。
毎日の食事で使う入れ歯はQOL(生活の質)にも大きく関わるため、費用だけでなく、耐久性や快適さといった要素も含めて総合的に判断し、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
なお、治療目的の入れ歯治療でかかった医療費は医療費控除の対象となることがあります。対象となる場合は、医療費控除を活用することで、費用負担を抑えられるでしょう。
まとめ
一本歯を失った際に選ばれる部分入れ歯には、素材や構造により複数の種類があり、見た目や使用感、費用、治療期間に違いがあります。
ただし、装着時の違和感や噛む力の変化、日々の丁寧なお手入れといった課題もあります。
保険と自費による費用差も含め、ライフスタイルや口腔内の状態に合った治療法を見極めることが大切です。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、患者様の状況に寄り添い、丁寧なカウンセリングを通じて治療プランをご提案しております。
一本の歯に関するお悩みや、入れ歯について詳しく知りたい方は、どうぞお気軽に下高井戸パール歯科クリニック・世田谷までご相談ください。
お子様連れの方にも安心してご来院いただけるよう、保育士による一時託児サービスも行っております。
ご自身の健康な口元を取り戻し、笑顔で毎日を過ごせるように、私たちがお手伝いいたします。
#入れ歯 #入れ歯一本