入れ歯で喋りにくい原因とは?発音しやすくする方法を解説

入れ歯 喋りにくい

入れ歯を使い始めたけれど、「滑舌が悪くなり以前のようにスムーズに話せない」「特定の言葉が言いづらい」と感じていませんか?

入れ歯による発音の悩みは、多くの方が経験するものです。

しかし、原因を正しく理解し、適切な対策を行うことで、会話のしづらさは改善できます。

この記事では、入れ歯で喋りにくくなる原因から、具体的な改善方法、さらには発音しやすい入れ歯の種類まで詳しく解説します。

なぜ入れ歯だと発音が難しくなるのか

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入れ歯を装着すると、これまでと口腔内の環境が大きく変わるため、発音に影響が出ることがあります。

舌の動きが制限されたり、入れ歯の厚みが邪魔になったりすることが主な原因です。

ここでは、入れ歯によって発音が難しくなる具体的な理由について紹介します。

舌の動きを妨げる形状・スペース不足

言葉を発する際、舌は複雑に動き、口蓋(口の天井部分)や歯に触れることでさまざまな音を作り出します。

しかし、入れ歯、特に上顎を広く覆うタイプの総入れ歯は、口腔内のスペースを狭めてしまうことがあります。

そのため、舌が自由に動くための空間が不足し、滑らかな発音が難しくなるのです。

また、入れ歯の縁が長すぎると、舌の側面や奥の動きを妨げ、特定の音が出しにくくなるケースも見られます。

入れ歯の厚み・噛み合わせが不適合

入れ歯の床(ピンク色の歯茎部分)が厚すぎると、口腔内の容積が減少し、舌を圧迫してしまいます。

舌の置き場が狭くなることで発音がしにくくなるほか、空気の流れも変わるため、意図しない音が出てしまう可能性があるのです。

さらに、噛み合わせが合っていない入れ歯も発音の妨げになります。

話している最中に入れ歯がずれたり、カタカタと音を立てたりすると、言葉が不明瞭になるだけでなく、会話に集中できなくなってしまいます。

初期段階での慣れ不足や唾液の減少

新しい入れ歯を装着した直後は、お口がその存在を異物と認識します。

そのため、唾液が一時的に過剰に分泌されることがあり、これが発音のしにくさにつながる場合があるのです。

逆に、唾液が減少して口の中が乾燥し、舌の動きが滑らかでなくなることも考えられます。

喋りにくい・言いづらい音と入れ歯の関係

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入れ歯を装着すると、特に特定の音が発音しにくくなる傾向があります。

これは、それぞれの音を作り出すための舌や唇の精密な動きが、入れ歯によって妨げられるためです。

ここでは、入れ歯の影響を受けやすい音の種類と、その原因について具体的に見ていきましょう。

サ行・タ行・ラ行は入れ歯の影響を受けやすい

サ行(さしすせそ)・タ行(たちつてと)・ラ行(らりるれろ)の音は、舌先を上の前歯の裏側や歯茎に近づけたり、弾いたりして発音します。

入れ歯が入ることで、舌を当てるべき場所の形状や感触が変わってしまうため、発音が難しくなります。

特にサ行は、歯と歯のわずかな隙間に息を通して出す繊細な音です。

入れ歯の厚みや位置が不適切だと、空気の流れが乱れてしまい、『シ』や『ス』が不明瞭になったり、息が漏れるような音になったりすることがあります。

カ行・ンは舌の位置と入れ歯の隙間が影響する

カ行(かきくけこ)は、舌の奥の部分を上顎の奥の柔らかい部分に持ち上げて発音する音です。

上顎を覆う入れ歯の床が厚すぎると、舌が十分に上がらず、クリアな『カ』の音が出しにくくなることがあります。

さらに、『ン』などの鼻音は、口からの空気の流れを塞いで鼻から音を出すことが必要です。

しかし、入れ歯と上顎の粘膜との間に隙間があると、そこから空気が漏れてしまい、正しく発音できない場合があります。

話すときに空気が抜けにくい入れ歯の形状も原因になる

発音には、適切な空気の流れが不可欠です。

入れ歯の設計によっては、この空気の流れが阻害され、音がこもったように聞こえることがあります。

例えば、入れ歯が上顎に密着しすぎていたり、歯と歯茎の間に必要な空間がなかったりすると、音の響きが悪くなる原因となり得ます。

入れ歯の喋りにくさを改善する具体的な対処法

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入れ歯による発音のしにくさは、多くの場合、慣れや少しの工夫で改善が見込めます。

ご自身でできるトレーニングから、歯科医院での専門的な調整まで、さまざまなアプローチがあります。

ここでは、喋りにくさを改善するための具体的な対処法を見ていきましょう。

発音トレーニングで口腔内環境に慣れる

新しい入れ歯に脳と口の筋肉を慣れさせるためには、意識的な練習が効果的です。

新聞や本などを声に出して読む音読は、手軽に始められる良いトレーニングになります。

最初はゆっくり、はっきりと発音することを心がけ、慣れてきたら徐々にスピードを上げていきましょう。

特に言いにくいと感じる単語や音を繰り返し練習するのも一つの方法です。

鏡の前で自分の口の動きを確認しながら行うと、舌や唇の正しい使い方を視覚的に理解しやすくなります。

歯科で入れ歯を薄く調整してもらう

セルフケアで改善しない場合や、入れ歯が明らかに口に合っていないと感じる場合は、我慢せずに歯科医院で相談しましょう。

専門家による微調整で、喋りにくさが改善されることも少なくありません。

例えば、入れ歯の床が厚くて舌が動かしにくい場合は、その部分を薄く削る調整が可能です。

また、入れ歯の縁が長すぎて舌や頬の粘膜に当たる場合は、少し短く整えることで、口の動きがスムーズになります。

改善しない場合は自費入れ歯やインプラントも検討

保険適用の入れ歯の調整を重ねても発音の問題が解決しない場合、より精密な作製が可能な自費診療の入れ歯を検討するのも一つの選択肢です。

自費の入れ歯は、使用できる素材や設計の自由度が高く、個々のお口の状態に合わせて、より薄く、よりフィット感の高いものを作ることが可能です。

また、インプラント治療も選択肢の一つです。

インプラントは独立して埋め込むため周囲の歯に負担をかけず、入れ歯のように発音や滑舌に影響することも少ないです。

自分の歯に近い感覚で会話や食事を楽しめることもメリットです。

発音しやすい入れ歯に使われる技術や素材

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喋りにくさを解消するためには、入れ歯そのものの素材や構造にこだわることも有効な手段です。

ここでは、発音しやすい入れ歯に使われる代表的な技術や素材について解説します。

薄くて軽い金属床義歯は発音に有利

保険適用の入れ歯は主にレジン(プラスチック)で作られますが、強度を保つためにある程度の厚みが必要です。

一方、金属床義歯は、上顎や下顎の骨格部分をコバルトクロムやチタンなどの薄い金属で作る入れ歯です。

金属は強度が高いため、レジンに比べて非常に薄く作ることができ、お口の中を広く保てます。

これにより、舌の動きが妨げられにくく、自然な発音が可能になります。

また、金属は熱を伝えやすいため、食べ物の温度を感じやすく、食事がより楽しめるという利点もあります。

マグネットやロケーターで固定する方法もある

残っている歯の根や、埋め込んだインプラントに磁性金属を取り付け、入れ歯側に埋め込んだ小型磁石の力で固定する方法をマグネットデンチャーと呼びます。

強い磁力でしっかりと固定されるため安定性が高く、発音の際もずれにくいのがメリットです。

着脱も比較的簡単なため、ご高齢の方でも扱いやすい場合があります。

また、ロケーターと呼ばれるボタン状の装置をインプラントに取り付け、入れ歯側と連結させて固定する方法や、摩擦力を利用して固定するコーヌスクローネ義歯などの方法もあります。

喋りにくさに悩まない入れ歯を目指すには

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快適で発音しやすい入れ歯を手に入れるためには、治療後の調整だけでなく、治療を始める前の段階からの準備と、その後の継続的なケアがとても大切です。

ここでは、喋りにくさに悩まない入れ歯作りと、その後の快適な使用を維持するためのポイントを紹介します。

治療前に発音や使用目的についてカウンセリングで相談する

入れ歯治療を始める前に、歯科医師とのカウンセリングでご自身の希望や悩みを詳しく伝えることが重要です。

例えば、お仕事で人前で話す機会が多い方であれば、発音のしやすさを優先した入れ歯の設計を検討する必要があります。

「見た目を自然にしたい」「硬いものも食べたい」「喋りやすさを重視したい」など、入れ歯に求める機能は人それぞれです。

治療前にご自身のライフスタイルや使用目的を共有することで、歯科医師はあなたに合った治療計画や入れ歯の種類を提案しやすくなります。

一時的な治療用義歯で違和感を事前に確認する

歯を抜いた後すぐに入れ歯を作るのではなく、まずは『治療用義歯』や『即時義歯』と呼ばれる一時的な入れ歯を使用する場合があります。

これは、抜歯後の歯茎が治癒して落ち着くまでの間に使うもので、最終的な入れ歯を作るための重要なステップです。

治療用義歯を使いながら、噛み合わせの高さや見た目、そして発音のしやすさなどを実際に確認し、違和感や問題点があれば歯科医師に伝えます。

この段階で得られた情報を基に調整を重ねることで、最終的に完成する入れ歯の満足度を高められます。

定期的な調整とメンテナンスで快適さを維持する

入れ歯が完成した後も、お口の中は少しずつ変化していきます。

歯を失うと、歯を支えていた顎の骨は時間とともに痩せていくため、それに伴い入れ歯と歯茎の間に隙間ができて、入れ歯が合わなくなってくるのです。

合わない入れ歯を使い続けると、発音がしにくくなるだけでなく、歯茎に痛みが出たり、残っている他の歯に負担をかけたりする原因にもなります。

定期的に歯科医院で検診を受け、お口の状態に合わせた入れ歯の調整を行うことで、快適さを長く維持できます。

まとめ

入れ歯を装着した際の喋りにくさは、多くの方が経験する悩みです。

その原因は、入れ歯の厚みや形状による舌の動きの制限、噛み合わせの不一致、さらには慣れるまでの期間に生じる違和感など、多岐にわたります。

しかし、こうした喋りにくさは、発音トレーニングや入れ歯の微調整、さらには発音しやすい素材や構造の入れ歯を選ぶことで改善が期待できます。

下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、患者さん一人ひとりのご要望やお悩みに丁寧に向き合い、精密な型取りや細やかな調整を重ねることで、より自然な発音と快適な装着感を目指しています。

入れ歯に関するお困りごとがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

あなたの毎日が、より豊かな会話と笑顔で満たされるよう、スタッフ一同サポートいたします。

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