奥歯の入れ歯は必要?メリットとデメリットを徹底解説

入れ歯 奥歯

「見た目には分からないから大丈夫」と思いがちですが、奥歯を失ったままにしていると、実はお口や全身の健康にさまざまな影響が及ぶことがあります。

噛み合わせのバランスが崩れたり、他の歯に余計な負担がかかったりすることで、徐々にトラブルが広がってしまうケースも少なくありません。

また、しっかり噛めないことで食事や会話に不便を感じたり、顔立ちや表情に変化が現れたりすることも考えられます。

この記事では、奥歯の入れ歯が必要な理由や選択肢、メリット・デメリットなどを分かりやすく解説します。

奥歯を失ったまま放置するリスクとは

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奥歯を失うと、見た目だけでなくお口や全身の健康にさまざまな影響が及びます。

自覚症状がなくても、気付かないうちにお口の環境は変化していくのです。

ここでは、奥歯を失ったまま放置するリスクについて紹介します。

噛む力が弱まり、他の歯に負担がかかる

奥歯がない状態では、食べ物を効率よく噛み砕くことが難しくなります。

無意識のうちに前歯や反対側の奥歯で食べ物を噛もうとするため、特定の歯に過度な負担が集中してしまいます。

その結果、負担のかかった歯がすり減ったり、欠けたりするだけでなく、歯の寿命を縮める原因にもなりかねません。

また、失った歯のスペースに隣の歯が倒れ込み、歯並び全体の乱れにつながることもあります。

顔のゆがみや老け見えにつながる

奥歯でしっかり噛む動作は、頬や顎周りの筋肉(咬筋)を鍛えることにもつながります。

しかし、奥歯を失うとこの筋肉が使われなくなるため、徐々に衰えてしまうのです。

筋肉が衰えると頬がこけて見えたり、フェイスラインが変化したりして、実年齢より老けた印象を与えてしまう可能性があります。

また、片方の歯だけで噛む癖がつくと、顔の左右のバランスが崩れ、ゆがみの原因になることも考えられます。

発音や食事に支障が出る可能性がある

歯が抜けた部分から空気が漏れることで、特定の音が発音しにくくなる場合があります。

特に奥歯がないと、はっきりとした会話がしづらくなるかもしれません。

食事の面では、食べ物を十分に噛み砕けないまま飲み込むことが増え、胃腸などの消化器官に負担をかけることになります。

奥歯の役割と入れ歯で補う重要性

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奥歯は、ただ食べ物を噛むためだけに存在するわけではありません。

お口の中のバランスを保ち、さらには全身の健康を支えるという重要な役割を担っています。

ここでは、奥歯の役割と入れ歯でその機能を補う重要性について紹介します。

咀嚼だけでなく全身の健康にも関係する

奥歯の主な役割は、食べ物を細かくすり潰し、消化しやすくすることです。

しっかりと噛む行為は唾液の分泌を促し、お口の中を清潔に保つ助けにもなります。

奥歯を失い咀嚼機能が低下すると、栄養の吸収効率が悪くなり、全身の健康状態に影響を及ぼすこともあります。

また、噛み合わせの乱れは体のバランスにも影響し、頭痛や肩こりを引き起こす一因となる可能性も指摘されているのです。

入れ歯は噛み合わせと骨の健康を守る

失った奥歯を入れ歯で補うことで、噛み合わせが安定し、他の歯が動いてしまうのを防ぎます。

噛み合わせが整うと、特定の歯に過度な負担がかかることもなくなり、残っている歯を守ることにつながるのです。

さらに、入れ歯を通して顎の骨に噛む力が伝わるため、歯を失った部分の骨が痩せていくのを抑制する効果も期待できます。

噛み合わせの崩れは顎関節にも悪影響

奥歯を失うと噛み合わせの高さや位置が変わり、顎の関節に不自然な力がかかりやすくなります。

このような状態が続くと、顎関節症を引き起こすリスクが高まるでしょう。

顎関節症になると、口を開けるときに音が鳴ったり、口が開きにくくなったりするなどの症状が現れます。

入れ歯で適切な噛み合わせを維持することは、顎のトラブルを予防する上でも大切です。

奥歯の部分入れ歯にはどんな種類がある?

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奥歯を補う部分入れ歯には、保険が適用されるものから、見た目や快適性を追求した自費診療のものまでさまざまです。

代表的な種類を以下の表にまとめました。

種類保険適用特徴
レジン床義歯・厚みがあり違和感を覚えることがある
・費用が安い
金属床義歯(チタン床・コバルトクロム床)・床が薄く快適
・発音しやすい
ノンクラスプデンチャー・金属バネなし
・見た目が自然
マグネット義歯・着脱が簡単
・支える歯への負担が少ない

以下では、部分入れ歯の種類について詳しく紹介します。

保険適用のレジン床義歯

保険診療で作製できる一般的な部分入れ歯です。

歯茎にあたる床(しょう)と呼ばれる部分と人工の歯が、レジンという医療用プラスチックで作られています。

他の歯に金属のバネ(クラスプ)をかけて固定するのが特徴です。

費用を抑えられる点が大きな利点ですが、床に一定の厚みが必要なため、装着時に違和感を覚えることがあります。

金属床義歯(チタン床・コバルトクロム床)

自費診療の入れ歯で、床部分にチタンやコバルトクロムなどの金属を使用したものです。

金属を使うことで床を薄く作製できるため、保険の入れ歯に比べて違和感が少なく、発音しやすいという特徴があります。

また、熱が伝わりやすいので、食べ物の温度を感じやすく、食事をより楽しむことが可能です。

ノンクラスプデンチャー

金属のバネを使用しない、自費診療の部分入れ歯です。

特殊な樹脂素材で作られており、その弾性を利用して歯茎にフィットします。

バネがないため、入れ歯を入れていることが分かりにくく、見た目が自然なのが長所です。

金属アレルギーの心配もなく、残っている歯への負担も少ないといわれています。

マグネット義歯

マグネット義歯は、残っている歯根と入れ歯にそれぞれ磁石と磁性金属を埋め込み、その磁力で入れ歯を固定する治療法です。

部分入れ歯で一般的に用いられる金属製のクラスプ(バネ)がないため見た目が自然で、入れ歯であることが周囲に分かりにくいという利点があります。

磁力によって入れ歯がしっかりと吸着されるため、食事中や会話中にずれにくく、安定した噛み心地が期待できます。

奥歯に入れ歯を入れるメリット

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失った奥歯を入れ歯で補うことには、単に「噛めるようになる」以上の多くの利点があります。

お口の健康はもちろん、日々の生活の質を高めることにもつながるのです。

ここでは、奥歯に入れ歯を入れる具体的なメリットについて紹介します。

噛む力が回復し食事が楽しめるようになる

入れ歯を入れるメリットは、咀嚼機能を取り戻せることです。

奥歯がないことで避けていた硬い食べ物や、繊維質の多い野菜なども、再び口にできるようになります。

これにより食事の選択肢が広がり、栄養バランスの改善にもつながるでしょう。

見た目の自然さや顔のバランスが整う

奥歯がなくなると、頬がこけて顔の輪郭が変わってしまうことがありますが、入れ歯で補うことで内側から頬を支え、自然なふくらみが期待できます。

その結果、顔全体のバランスが整い、若々しい印象を保つ助けになるでしょう。

他の歯やあごへの負担を軽減できる

奥歯がないと、残された歯だけで全ての咀嚼を担うことになり、特定の歯に大きな負担がかかってしまいます。

入れ歯を入れることで噛む力が全体に分散され、残っている大切な歯を過度な負担から守ることが可能です。

また、正しい噛み合わせが回復することで、顎の関節にかかる不自然な力も軽減されます。

奥歯に入れ歯を入れるデメリット

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入れ歯は失った歯の機能を補う優れた方法ですが、ご自身の歯と全く同じように使えるわけではありません。

治療を選択する前に、いくつかの注意点や懸念される点を理解しておくことが大切です。

ここでは、奥歯に入れ歯を入れる際に知っておきたいデメリットについて紹介します。

違和感や痛みを感じることがある

新しく入れ歯を装着した当初は、お口の中に異物感や違和感を覚えることが少なくありません。

特に保険適用の入れ歯は、強度を保つために床部分が厚くなる傾向にあり、違和感が強くなる場合があります。

慣れるまでは発音しにくさを感じたり、入れ歯が歯茎に当たって痛みが出たりすることもあります。

手入れや定期調整の手間がかかる

入れ歯は毎日取り外して清掃し、清潔に保たなければなりません。

手入れを怠ると、バネをかけている歯が虫歯や歯周病になるリスクが高まります。

また、時間とともに顎の骨や歯茎は少しずつ変化していくため、入れ歯が合わなくなってくることがあります。

快適に使い続けるためには、歯科医院で定期検診を受け、必要に応じて調整してもらうことが必要です。

噛む力が天然歯に比べて弱くなる

入れ歯で回復できる噛む力は、健康な天然の歯に比べるとどうしても弱くなる傾向があります。

一般的に、部分入れ歯は天然歯の30~40%程度の力になるといわれています。

そのため、極端に硬い食べ物や、ガムのように粘着性の高い食べ物は、入れ歯が外れたり壊れたりする原因になる可能性があるため注意が必要です。

奥歯の入れ歯にかかる費用と期間

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入れ歯治療を検討する際、費用や期間も重要なポイントです。

保険診療と自費診療では費用や作製期間に違いがあるため、比較して理解することが必要です。

項目保険診療自費診療
費用目安約5,000~15,000円約8万円~50万円以上(素材による)
作製期間約2週間~1か月約1か月~2か月以上(症例により異なる)

ここでは、それぞれの治療法の特徴や選び方のポイントを詳しく見ていきましょう

保険診療と自費診療の費用相場の違い

保険診療で作製する部分入れ歯の費用は、負担割合によって異なりますが、一般的に5,000円から15,000円程度です。

費用が全国で統一されているため、どの歯科医院で治療を受けても大きな差はありません。

一方、自費診療の入れ歯は、使用する材料や設計の自由度が高く、歯科医院によって費用が大きく異なります。

例えば、金属床義歯は20万円〜50万円、ノンクラスプデンチャーは8万円〜30万円が目安とされていますが、あくまで一例です。

作製・装着までにかかるおおよその期間

入れ歯の作製期間も、保険診療と自費診療で異なります。

保険適用の入れ歯の場合、型取りから完成までにおおよそ2週間から1ヶ月程度かかるのが一般的です。

自費診療の入れ歯は、より精密な型取りや噛み合わせの確認など、複雑な工程を踏むため、完成までに1ヶ月から2ヶ月、あるいはそれ以上の期間を要することもあります。

なお、保険のルール上、一度入れ歯を作ると原則として6ヶ月間は新しい入れ歯を保険で作り直すことができません。

費用対効果で選ぶべき入れ歯とは

どの入れ歯を選ぶべきかは、患者さんが何を優先するかによって変わります。

まずは費用を抑えて失った機能を回復したいという場合は、保険適用の入れ歯が第一の選択肢となるでしょう。

一方で、見た目の美しさ、快適なつけ心地、より良い咀嚼機能、長期的な使用などを望むのであれば、初期費用はかかりますが自費診療の入れ歯が適している場合があります。

ご自身の口腔内の状態や生活習慣、予算などを総合的に考慮し、歯科医師と十分に相談して決めることが大切です。

まとめ

奥歯を1本失うだけで、噛み合わせのバランスが崩れ、他の歯や顎、さらには全身の健康にまで影響が及ぶ可能性があります。

入れ歯にはさまざまな種類が存在します。それぞれに長所と短所があるため、一概にどれが一番良いと言えるものではありません。

大切なのは、ご自身のライフスタイルやお口の状態、何を重視するかを考え、納得できる治療法を選択することです。

下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、患者さん一人ひとりのお悩みやご希望を丁寧にお伺いすることを何よりも大切にしています。

カウンセリングを通じて、それぞれの患者さんに合った入れ歯治療をご提案し、ご納得いただいた上で治療を進めてまいります。

入れ歯に関するご不安や疑問、費用に関することなど、どうぞお気軽に下高井戸パール歯科クリニック・世田谷へご相談ください。

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