
失った歯の機能を補うために入れ歯を検討しているものの、「完成までにどれくらい時間がかかるのだろう?」「歯がない期間は見た目が気になる…」といった不安や疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
入れ歯は食事や会話といった日々の生活の質に直結するため、作製期間やその間の過ごし方について事前に知っておくことはとても大切です。
この記事では、入れ歯が完成するまでの一般的な期間と流れ、保険診療と自費診療での期間の違い、抜歯後から入れ歯を装着するまでの『歯がない期間』の対処法について解説します。
入れ歯の完成までにかかる期間とその流れ

入れ歯の作製には、いくつかの工程を踏む必要があります。
ここでは、入れ歯が完成するまでの標準的な期間と具体的な流れ、作製期間が通常より長くなるケースについて紹介します。
入れ歯製作の標準的な期間と通院回数
入れ歯の作製期間は、一般的に2週間~1ヶ月ほどが目安です。(保険適用の入れ歯の場合)
部分入れ歯か総入れ歯か、またお口の中の状態によっても期間は前後します。
作製には複数の工程があり、その都度通院する必要があります。
型取りから始まり、噛み合わせの確認、仮の入れ歯での試着など、段階を経て精密に調整していくため、数回の通院が必要になるのが一般的です。
作製工程の流れ
入れ歯の作製は、以下のような流れで進みます。気になる点があれば、事前に確認しておくと安心です。
1.診察・治療計画の立案 | カウンセリングでお悩みやご希望を伺い、お口の中全体を診察します。レントゲン撮影なども行い、現在の状態を正確に把握した上で、治療計画を立てます。 |
2.型取り | お口に合うトレーを用いて、歯や歯茎の精密な型を取ります。 |
3.噛み合わせの記録 | 蝋(ろう)でできた咬合床(こうごうしょう)という装置を使い、噛み合わせの高さや位置、顎の動きなどを精密に記録します。 |
4.人工歯の配列と試着 | 記録した噛み合わせに基づき、蝋の土台の上に人工の歯を並べます。この段階で一度お口の中に試着し、歯の色や形、歯並び、フィット感などを確認し、必要に応じて修正を加えます。 |
5.完成・装着と調整 | 試着で問題がなければ、最終的な入れ歯を完成させます。完成した入れ歯をお口に装着し、噛み合わせの最終調整や当たって痛い部分がないかなどを細かくチェックします。 |
期間が延びるケース
以下のようなケースでは、標準的な期間よりも作製に時間がかかることがあります。
抜歯が必要な場合 | 抜歯をした後は、傷口である歯茎や顎の骨が治癒して安定するまでに時間が必要です。一般的に、治癒には1ヶ月〜3ヶ月ほどかかるため、その間は最終的な入れ歯の型取りができません。 |
事前の治療が必要な場合 | 虫歯や歯周病がある場合、入れ歯作製の前にこれらの治療を優先して行います。 |
総入れ歯など複雑な症例 | 失った歯の本数が多く、広範囲を補う総入れ歯の場合は、部分入れ歯に比べてお口全体のバランスを考慮した精密な設計が求められます。そのため、作製工程が増え、期間が長くなる傾向にあります。 |
保険診療と自費診療で異なる作製期間

入れ歯には、健康保険が適用される『保険診療』のものと、全額自己負担となる『自費診療』のものがあります。
この二つは、使用できる素材や設計の自由度が異なるため、作製期間にも違いが生じます。
ここでは、保険診療と自費診療それぞれの入れ歯の作製期間の目安を紹介します。
保険診療での入れ歯完成までの日数
保険診療で部分入れ歯を作る場合は完成までにおよそ2週間〜1ヶ月、総入れ歯の場合は1ヶ月程度かかります。
保険診療では、使用できる素材や作製工程がある程度定められているため、比較的短期間で完成します。
費用を抑えつつ、比較的早く入れ歯を手に入れたい場合に適しています。
自費診療での入れ歯完成までの日数
自費診療の入れ歯はオーダーメイドで作製されるため、期間は2ヶ月〜3ヶ月ほどかかるのが一般的です。
自費診療では、見た目の美しさや装着感、耐久性などに優れたさまざまな素材を選べます。
例えば、薄くて丈夫な金属を使った金属床義歯や、磁石の力で固定するマグネットデンチャーなどがあり、より精密な設計と調整を要するため、作製に時間がかかります。
抜歯後から入れ歯装着までの『歯がない期間』の対処法

抜歯をしてから最終的な入れ歯が完成するまでの間、『歯がない状態』で過ごさなければならない期間が生じます。
ここでは、歯がない期間を乗り切るための方法や生活上の注意点について紹介します。
仮歯や即時義歯による見た目と機能のサポート
歯がない期間の見た目や機能を補うために、『即時義歯』や『仮歯』などの選択肢があります。
【即時義歯】
抜歯をする前にあらかじめ型取りを行い、抜歯当日に装着できるように準備しておく入れ歯のことです。
メリットは抜歯後すぐに装着できるため、歯がない期間をなくせる点です。
見た目を損なわず、食事や会話への影響も少なくできます。
【仮歯】
最終的な入れ歯やブリッジなどが完成するまでの間、一時的に使用する歯です。
こちらも見た目を補い、隣の歯が動いてしまうのを防ぐ役割があります。
歯がない期間の食事や生活上の注意点
抜歯直後や歯がない期間は、お口の中がデリケートな状態になっています。
以下の点に注意して過ごしましょう。
食事 | ・硬いものや香辛料などの刺激が強い食べ物は避ける ・あまり噛まなくても食べられる柔らかい食べ物を選ぶ(おかゆ、スープ、ヨーグルトなど) |
生活 | 抜歯当日は激しい運動や長時間の入浴、飲酒を控える |
口腔ケア | ・傷口に直接歯ブラシが当たらないよう注意する ・他の歯は丁寧に磨き、お口の中を清潔に保ち感染を予防する |
歯科医院と相談して対処法を選ぶ
即時義歯や仮歯は便利な装置ですが、お口の状態によっては適用できない場合もあります。
また、治癒の過程で歯茎の形が変化するため、定期的な調整が必要になることも少なくありません。
ご自身の状況にどの方法が適しているか、またその期間をどう過ごせばよいかについては、自己判断せずに歯科医師としっかり相談することが大切です。
入れ歯を作り直す場合に必要な期間と注意点

長年使っている入れ歯が合わなくなったり、壊れてしまったりして、作り直しを検討することもあるでしょう。
入れ歯の作り直しは、基本的に新規作製と同じ工程と期間が必要ですが、特に保険診療の場合は知っておくべきルールが存在します。
ここでは、入れ歯の作り直しが必要になるケースや期間の目安、特に知っておきたい保険適用のルールについて紹介します。
作り直しが必要になる主なケース
入れ歯の作り直しが必要になるのは、主に以下のような場合です。
入れ歯の破損 | 落として割れてしまったなど、修理が難しいケース |
お口の変化による不適合 | 加齢などにより顎の骨が痩せたり、歯茎の形が変わったりして、入れ歯が合わなくなった場合 |
痛みや違和感の悪化 | 調整を繰り返しても痛みやガタつきが改善されず、快適に使用できない状態 |
残っている歯の状態変化 | 新たに入れ歯の支えとなる歯を抜歯したことで、現在の入れ歯では対応できなくなった場合 |
破損や口内の変化、痛みの悪化、支えとなる歯の状態変化などで現在の入れ歯が合わなくなったときに作り直しが必要となります。
作り直しの際の作製期間目安
入れ歯を作り直す場合の期間は、新規作製時とほぼ同じです。
種類によって異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。
- 部分入れ歯……2週間~1ヶ月
- 総入れ歯……1ヶ月
お口の中の状態を改めて精密に型取りし、噛み合わせを確認するところから始めるため、ある程度の期間が必要になります。
保険で作り直すときの『6ヶ月ルール』とは
保険診療で入れ歯を作り直す際には、『6ヶ月ルール』という大切な決まりがあります。
これは、『入れ歯を新しく作製してから6ヶ月以内は、保険適用で新しい入れ歯を作り直すことはできない』という健康保険法上のルールです。
このルールは、頻繁な作り直しによる医療費の増大を抑制する目的で設けられており、たとえ歯科医院を変更した場合でも適用されます。
ただし、以下のようなケースでは6ヶ月以内でも保険適用での再作製が認められる場合があります。
- 入れ歯が大きく壊れてしまい、修理が困難な場合
- 入れ歯を作った後に抜歯が必要になり、お口の状態が大きく変わった場合
- 上下どちらか片方の入れ歯を作った後、もう片方の入れ歯を新たに作る場合
なお、自費診療で入れ歯を作り直す場合には、この6ヶ月ルールは適用されません。
また、作り直しではなく、痛みや不具合に対する『調整』であれば、6ヶ月以内でも保険適用でいつでも受けられます。
入れ歯完成後の調整と快適な使用のためのアフターケア

入れ歯は毎日使うものだからこそ、快適な入れ歯生活を送るためには、完成後の調整と継続的なアフターケアが不可欠です。
ここでは、完成後の調整や定期メンテナンス、快適に使い続けるためのポイントについて紹介します。
装着後に必要な調整回数と期間
新しい入れ歯の使い始めは、痛みや違和感などを感じることがありますが、これはお口が慣れていく過程で起こる自然な現象です。
調整の回数や期間は個人差が大きく、1回の調整でなじむ方もいれば、複数回の調整が必要な方もいらっしゃいます。
平均的には3~6回程度の調整を行うことが多く、1ヶ月〜3ヶ月ほどかけてお口に馴染ませていきます。
焦らず、気になる部分を歯科医師に伝えながら、根気よく調整していくことが大切です。
定期メンテナンスの重要性
入れ歯を長く快適に使い続けるためには、歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせません。
お口の中の状態は、歯茎が痩せるなど時間とともに変化していくため、それに合わせて入れ歯も調整する必要があるからです。
少なくとも半年に1回は歯科医院で検診を受けることをお勧めします。
定期メンテナンスでは、以下のようなチェックを行います。
- 入れ歯のフィット感や噛み合わせの確認
- 入れ歯の傷や汚れ、劣化のチェック
- 入れ歯を支えている歯や歯茎の健康状態の確認
- お口全体のクリーニング
定期的なチェックにより、小さな問題を早期に発見し、大きなトラブルを未然に防ぐことにつながります。
快適な入れ歯生活のためにできること
歯科医院でのプロフェッショナルケアと合わせて、以下のような毎日のセルフケアも重要です。
- 毎日の清掃
- 正しい着脱
- 入れ歯安定剤の使用
入れ歯は毎食後、専用のブラシを使って優しく洗いましょう。就寝時は外して、水や専用の洗浄剤を入れた容器で保管します。
着脱時に無理な力を加えると、入れ歯や残っている歯を傷める原因になります。鏡を見ながらゆっくりと正しく着脱してください。
入れ歯が安定しない場合や、慣れるまでの間は、入れ歯安定剤を使用するのも一つの方法です。
まとめ
入れ歯の作製には一般的に2週間~1ヶ月ほどの期間が必要ですが、お口の状態や選ぶ入れ歯の種類によって異なります。
特に保険で作り直す場合は『6ヶ月ルール』があるため注意が必要です。
入れ歯は作って終わりではなく、完成後も定期的な調整とメンテナンスを続けることで、長く快適に使用できます。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、患者さまのお口の状態やライフスタイル、ご希望を丁寧にお伺いし、一人ひとりに合った入れ歯治療をご提案いたします。
経験豊富な歯科医師が、カウンセリングから作製、完成後のアフターフォローまで責任を持って担当しているため、入れ歯に関するお悩みやご不安は何でもお気軽にご相談ください。
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