
硬いものを噛んだ時や、ふとした瞬間に歯の一部が欠けてしまった経験はありませんか?
痛みがないと「このままでも大丈夫かな」と思ってしまいがちですが、実は危険なサインである可能性があります。
この記事では、歯が欠けても痛みを感じない理由から、放置することで起こるリスク、そして適切な対処法まで詳しく解説します。
歯が欠けたけど痛くない場合は病院に行かなくていい?放置するリスク

結論、痛みがないからといって放置するのは避けた方が良いです。
実は、痛みがない状態は、すでに神経が機能していなかったり、内側で虫歯が進行していたりする可能性があります。
もし歯が欠けた状態で放置すると、次のような問題が起こる可能性があります。
- 口の中を傷つける危険性がある
- 虫歯になりやすくなる
- 歯がさらに破損して抜歯が必要になる場合がある
- 噛み合わせが乱れて顎関節症の原因になる
- 見た目が悪化し、発音にも影響する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
口の中を傷つける危険性がある
歯が欠けた部分は鋭利な形状になっていることが多く、舌や頬の内側を傷つける原因となります。
日中は意識的に避けることができても、睡眠中は無意識に舌が動くため、口腔内を傷つけてしまうリスクが高まります。
小さな傷であっても、口腔内は細菌が多い環境です。
傷から細菌が侵入すると、腫れや痛みを伴う口内炎ができることがあります。
さらに、毎日同じ場所を傷つけ続けると、慢性的な炎症状態となる場合もあります。
虫歯になりやすくなる
歯が欠けると、その部分に汚れがたまりやすくなります。
欠けた部分は複雑な形状をしているため、歯ブラシの毛先が届かず、食べかすが残りやすくなるからです。
さらに問題なのは、欠けが深い場合に歯の内側の象牙質という柔らかい部分が露出することです。
象牙質はエナメル質に比べて溶けやすく、虫歯菌の影響を受けやすい性質があり、通常よりも速いスピードで虫歯が進行してしまいます。
放置を続けると、気づいた時には歯の内部が虫歯でスカスカになっていることも珍しくありません。
→虫歯を確かめる方法は?自宅でできる簡単チェックと歯科医院での検査を徹底解説
歯がさらに破損して抜歯が必要になる場合がある
一度欠けた歯は弱くなるため、小さく欠けた歯でも、放置は禁物です。
毎日の食事で噛む力が繰り返し加わることで、小さな欠けが徐々に大きくなり、最終的には大きく割れてしまうことがあります。
特に深刻なのが、歯の根元まで割れてしまう歯根破折です。
この状態になると、歯を残すことは困難となり、抜歯以外に選択肢がなくなります。
早期に治療すれば数千円の詰め物で済んだケースが、放置したことでより高額な治療費がかかってしまうこともあります。
噛み合わせが乱れて顎関節症の原因になる
歯が欠けると、無意識のうちにその歯を避けて噛むようになります。
例えば、右の奥歯が欠けた場合、左側だけで噛むという偏った噛み方になってしまいます。
片側だけに力が集中すると、顎の関節や筋肉のバランスが崩れ、顎関節症を引き起こす可能性があるのです。
顎関節症の症状には、口を開けると顎がカクカク鳴る、朝起きると顎が疲れている、口が大きく開かないなどがあります。
重症化すると頭痛や肩こりの原因にもなり、日常生活に支障をきたすようになります。
見た目が悪化し、発音にも影響する
前歯が欠けてしまった場合、見た目の問題は避けられません。
笑った時や会話中に欠けた部分が見えることで、相手に与える印象が大きく変わってしまいます。
その結果、人前で笑うことを控えるようになり、コミュニケーションに消極的になってしまう方も少なくありません。
また、前歯は『サ行』や『タ行』の発音に不可欠です。
歯が欠けることで空気の流れが変化し、明瞭な発音が困難になってしまうこともあります。
営業職や接客業など、会話が重要な仕事に従事している方の場合、業務に支障が出てしまうかもしれません。
歯が欠けたのに痛くない理由

歯が欠けても痛くない理由は、主に以下の2つに分けられます。
- 表面が欠けただけだから
- 欠けた歯の神経が死んでいるから
それぞれの理由について見ていきましょう。
表面が欠けただけだから
歯が欠けても痛くない最も一般的な理由として、欠けた部分が歯の一番外側の層であるエナメル質だけにとどまっていることが挙げられます。
歯は表面からエナメル質、象牙質、歯髄(神経)という3層構造です。
エナメル質には神経が通っていないため、エナメル質だけ欠けても痛みを感じません。
しかし、最初は表面だけでも、もろくなって欠けやすくなるため、放置すると象牙質、歯髄と露出しやすくなります。
象牙質が露出すると虫歯になりやすく、冷たいものがしみる知覚過敏の原因にもなるため、早めの治療が必要です。
欠けた歯の神経が死んでいるから
過去に神経を取る治療を受けた歯や、重度の虫歯で神経が死んでしまった歯は、欠けても痛みを感じません。
そもそも痛覚がないため、大きく欠けても自覚症状が出ないのです。
定期的な歯科検診を受けていない場合、知らないうちに大きく欠けていることもあります。
気づいた時にはすでに手遅れということも少なくないため注意が必要です。
歯が欠ける5つの原因

歯が欠ける5つの原因は以下のとおりです。
- 歯ぎしり・食いしばり
- 虫歯によって歯が弱っている
- 酸蝕歯によって歯が弱っている
- 外傷・衝撃によるダメージ
- 噛み合わせの不良
原因を知って、再発と悪化を防ぎましょう。
歯ぎしり・食いしばり
無意識のうちに行っている歯ぎしりや食いしばりが、歯が欠ける一つの原因です。
特に睡眠中の歯ぎしりは、通常の噛む力の3〜4倍もの力が加わると言われています。
過度な力が毎晩のように歯に加わることで、歯に少しずつ亀裂が入り、やがて欠ける原因となります。
朝起きた時に顎が疲れている、歯が浮いた感じがする、といった症状がある方は要注意です。
ストレス管理や、マウスピースの使用などの対策を行いましょう。
虫歯によって歯が弱っている
虫歯は最初は表面に小さな穴が開く程度ですが、進行すると歯の内部で大きく広がり、歯を弱らせます。
特に、エナメル質の下にある象牙質は柔らかく、虫歯が到達すると急速に進行します。
結果として、見た目は健康そうな歯でも、内部はスカスカなことは珍しくありません。
このような歯は、普通に食事をしているだけで突然欠けることがあり、「なぜ欠けたのか分からない」という状況を生み出します。
酸蝕歯によって歯が弱っている
酸蝕歯(さんしょくし)とは、酸性の飲み物や食べ物によって歯が溶けて弱くなる状態のことです。
コーラやスポーツドリンク、レモン、お酢など、酸っぱいものを頻繁に口にしていると、歯の表面が少しずつ溶けていきます。
溶けた歯は薄くなって弱くなるため、普通なら問題ない硬さの食べ物でも簡単に欠けてしまいます。
酸で柔らかくなった歯を歯ブラシでゴシゴシ磨くとさらに削れてしまうため、酸性のものを摂った後は30分以上待ってから磨くのが理想的です。
外傷・衝撃によるダメージ
スポーツや事故、転倒などによる直接的な衝撃も歯が欠ける原因となります。
特に前歯は位置的に衝撃を受けやすく、欠けやすい部位です。
また、一見大きな損傷がないように見えても、衝撃によって歯の内部に亀裂が入っていることがあります。
亀裂は時間の経過とともに広がり、後になって歯が欠ける原因となることがあります。
噛み合わせの不良
噛み合わせが悪いと、特定の歯に過度な力が集中します。
本来、噛む力は全体の歯で分散されるべきですが、噛み合わせに問題があると一部の歯だけに負担がかかり続けます。
こうした状態が長期間続くと、負担のかかっている歯から欠けていってしまうのです。
また、噛み合わせの不良は顎関節症の原因にもなるため、矯正治療や調整が必要になります。
歯が欠けた時の治療法

ここでは、歯が欠けた時の治療法を欠けの程度ごとに解説していきます。
小さく欠けた場合:レジン充填
欠けた部分が小さく、エナメル質に留まっている場合は、コンポジットレジンという白い樹脂材料で修復します。
レジン充填のメリットは、即日で治療が完了し、見た目も自然に仕上がることです。
ただし、レジンは経年劣化により変色することがあるため、定期的なメンテナンスが必要です。
中程度の欠損:詰め物・被せ物
欠けた部分が大きく、象牙質まで達している場合は、型取りをして詰め物や被せ物を作ります。
材料は保険適用の金属から、自費診療のセラミックまで選択肢があります。
セラミックは見た目が自然で、変色もしないため前歯におすすめです。
大きく欠けた場合:根管治療後の被せ物
歯髄まで達するような大きな欠損の場合、歯の保存のため根管治療(感染した神経を取り除き、根の中を清掃・消毒する治療)が必要になります。
根管治療後は、土台を立てて、その上に被せ物を装着します。
治療期間は2〜3ヶ月かかることもあり、他の治療と比べて通院回数も必要です。
保存困難な場合:ブリッジ・入れ歯・インプラント
歯根まで破折している場合や、残っている歯質が少なすぎる場合は抜歯となります。
抜歯後は、失った歯を補う治療が必要です。
- ブリッジ:両隣の歯を削って橋渡しのように人工歯を固定する治療
- 入れ歯:取り外し可能な人工歯をつける治療
- インプラント:顎の骨に人工歯根を埋め込む治療
それぞれにメリット・デメリットがあるため、患者さんの状態や希望に応じた治療法が選ばれます。
歯が欠けたときにできる応急処置

歯が欠けてしまった場合の応急処置をご紹介します。
- 欠けた部分には絶対に触らない
- 痛みが強い時は痛み止めを飲む
- 取れた歯の欠けらは乾燥させずに保管
- 欠けた側では噛まないようにする
- できるだけ早めに歯科医院へ行く
欠けた歯の破片は、状態が良ければもう一度つけられる可能性があります。
そのため、破片がある場合は必ず牛乳か生理食塩水に浸して保存してください。水道水だと歯の組織が傷んでしまいます。
破片が見つからない場合や、粉々になっている場合は無理に探す必要はありません。
歯が欠けた時にやってはいけないこと

歯が欠けた時、間違った対処をすると状況を悪化させる可能性があります。
以下のNG行為は避けるようにしましょう。
- 自分で治そうとする
- 欠けた部分を舌や指で触る
- 1年以上放置する
- 通常通り歯磨きする
- 硬いものを食べる
特に危険なのが瞬間接着剤の使用です。
口の中での使用を想定していないため有害物質が溶け出す可能性があります。
さらに、誤って歯茎や隣の歯に付着すると悪影響を及ぼしてしまう可能性があるため、自分で治そうとせず、早めに歯科医院で相談しましょう。
歯が欠けたけど痛くないときのよくある質問

歯が欠けたけど痛みがない場合に関する、よくある質問をまとめました。
Q1. 奥歯が欠けたけど痛くないので放置しても大丈夫ですか?
できるだけ早めに歯科医院の受診をおすすめします。
痛くないのは、表面だけが欠けた、すでに神経が死んでしまっているといったことが要因として考えられます。
奥歯は噛む力が強くかかる部位で悪化しやすいため、早めに受診しましょう。
Q2. 歯が欠けた時、歯磨きをしてもいいですか?
歯磨きはしてもよいですが、磨き方に注意が必要です。
欠けた部分は優しく、柔らかい歯ブラシで小刻みに磨いてください。歯磨き粉は低研磨性のものを選び、強くこすらないよう心がけましょう。
痛みがある場合は、ぬるま湯でゆすぐ程度にとどめ、早めに歯科医院を受診してください。
Q3. 歯が欠けてから1年放置してしまったんですがまだ間に合いますか?
1年経過していても、諦める必要はありません。ただし、虫歯が進行し、複雑な治療が必要になる可能性があります。
抜歯を避けるためにも、早めに現状を把握して治療を始めることが大切です。
まとめ
歯が欠けても痛くない理由はさまざまですが、どのケースも放置してよいものではありません。
痛みがないということは、すでに神経が機能していない可能性があり、より深刻な状態かもしれないのです。
放置すれば、虫歯の進行、歯の破損、顎関節症などの問題を引き起こし、最悪の場合は抜歯が必要になることもあります。
しかし早めの治療なら簡単な処置で済むことが多いです。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、歯が欠けた原因を正確に診断し、状態に応じた治療を提供しています。
もし今、歯が欠けているけど痛くないという状態なら、大切な歯を守るためにも、お早めにご相談ください。
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