
寝ているときや仕事中などに突然、親知らずが急に痛んだことはないでしょうか。
親知らずの急な痛みは、仕事や試験など大切な予定の前に限って起こることもあり、日常生活に大きな支障をきたします。
この記事では、親知らずが急に痛くなる原因や今すぐできる対処法、抜歯が必要なケースなどについてわかりやすく解説します。
親知らずの急な痛みに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
親知らずが急に痛くなる原因

なぜ親知らずが急に痛くなることがあるのでしょうか。
ここでは、親知らずの痛みの主な原因について詳しく解説します。
智歯周囲炎
智歯周囲炎(ちししゅういえん)とは、親知らずの周りの歯茎に起こる炎症のことです。
親知らずと隣の歯との間にできた隙間に食べかすや細菌が入り込み、細菌が繁殖することで炎症が起こります。
親知らずが斜めに生えていたり、半分だけ顔を出していたりすると発症しやすい病気です。
疲労やストレスで体の抵抗力が落ちたときは細菌が一気に増殖しやすく、炎症を引き起こし、急な痛みに襲われる場合があります。
歯茎が大きく腫れ上がり、ズキズキとした強い痛みや口の開けにくさなどの症状がある場合は、智歯周囲炎の可能性があります。
虫歯・歯周病
親知らずやその周囲で虫歯・歯周病が気づかないうちに進行し、ある日突然、急に痛み出す場合があります。
特に親知らずは最も奥に生える歯のため、見た目に変化があっても確認しづらいのが特徴です。
また、虫歯に関しては、表面は小さな穴だけで、内部だと大きく症状が進んでいることもあるため見た目では気づけないこともあります。
親知らずが生えてくるときの痛み
親知らずが生えてくるときに感じる痛みもあります。
歯が歯茎を突き破って出てこようとするため、押されるような鈍い痛みや違和感を覚えます。
また、痛みは断続的に続くことが多く、「昨日は痛みがあったのに、次の日になったら痛みがおさまった」というように波があります。
親知らずが生えるスペースに余裕がある場合は、痛みも自然に治まりますが、スペースが不足している場合は隣の歯を圧迫し続け、痛みが長期間に及ぶこともあります。
歯性感染症
智歯周囲炎や虫歯を放置すると、炎症が親知らずの周りだけでなく、顎の骨やリンパ節にまで広がることがあります。
このような状態になると、顔全体が腫れ上がり、高熱が出たり、全身の倦怠感を感じたりします。
唾を飲み込むことすら難しくなり、呼吸にも影響が出ることがあるため、症状が進行する前に早めの受診が大切です。
親知らずが急に痛みに襲われた時の対処法

親知らずの痛みが出た場合、すぐに歯科医院を受診することが大切です。
しかし、夜間や休日など、すぐに受診できない場合もあるでしょう。
そこで急な痛みが起きたときにできる対処法をご紹介します。
患部を冷やす
親知らずの痛みがあるときは、患部を冷やすことで痛みを和らげられます。
冷却シートを頬の外側に貼ったり、濡れタオルを当てたりすると効果的です。
ただし、氷を直接当てるなど冷やしすぎは血行を悪くして逆効果になることがあるので、15分程度を目安に適度に冷やしましょう。
炎症による熱を冷ますことで、腫れも少し引いてくることがあります。
市販の痛み止めを服用
歯科医院に行く前に痛みが強くなったときは、我慢せずに痛み止めを服用しましょう。
市販の痛み止めとしては、ロキソニンS、イブA錠、バファリンなどがあります。
薬を服用する際は、必ず説明書をよく読み、用法・用量を守ることが大切です。
また、妊娠中の方や胃が弱い方は、薬剤師に相談のうえ、適切な薬を服用しましょう。
痛み止めはあくまでも一時的な対処法であるため、薬で痛みが治まっても必ず歯科医院を受診してください。
→親知らずの痛み止めの種類は?痛みが生じる原因と悪化を防ぐ方法も解説
うがい・優しい歯磨きで清潔に
親知らずの周りに細菌が繁殖していることが痛みの原因になっていることもあるため、口の中を清潔に保つことが大切です。
洗口液でうがいをすると、殺菌効果により症状が改善することがあります。
ただし、アルコール成分の強いものは刺激になることがあるので注意が必要です。
歯磨きをする際は、痛みがある部分は優しくなでるように磨き、決してゴシゴシと強く磨かないようにしましょう。
強く磨くと歯茎を傷つけて、かえって症状を悪化させてしまいます。
十分な休息と栄養補給
親知らずの痛みは、体の免疫力が低下しているサインの可能性があります。
十分な睡眠を取り、体を休めることで、抵抗力を高めることができるでしょう。
また、痛みで食事が取りにくいときは、おかゆやうどん、スープなど柔らかくて栄養のあるものを選んで食べるとよいです。
親知らずの痛みを悪化させる行動

親知らずが痛いときに避けるべき行動は以下のとおりです。
- 患部を温める(入浴・運動・飲酒)
- 刺激物を食べる(辛いもの・硬いもの)
- ゴシゴシ強く歯磨きする
- 患部を指や舌で触る
- タバコを吸う
特に注意したいのが、患部を温めることです。
お風呂に長く浸かったり、激しい運動をしたりすると、血行が良くなりすぎて痛みが増してしまいます。
シャワーで済ませるか、ぬるめのお湯に短時間入る程度にしましょう。
また、患部を触ることで細菌が入り込み、炎症を悪化させる可能性があるため、気になっても触らないようにすることが大切です。
親知らずが痛くなりやすいタイミング

親知らずは、以下のような状況だと急に痛みが出る可能性があります。
- 疲れ・ストレスがたまっているとき
- 夜にリラックスしているとき
- 体調が悪いとき
それぞれ解説していきます。
疲れ・ストレスがたまっているとき
『忙しい時期に限って親知らずが痛くなる』という経験をした方も多いのではないでしょうか。
偶然ではなく、疲労やストレスによって体の免疫力が低下することが原因です。
仕事で残業が続いていたり、試験前で睡眠不足になっていたり、引っ越しなどで環境が変わったりすると、体は大きなストレスを感じています。
このようなときは、普段は免疫によって抑えられている細菌が活発になり、親知らずの周りで炎症を起こしやすくなるのです。
夜にリラックスしているとき
昼間は我慢できた痛みが、夜になると急に強くなることがよくあります。
横になると血液が頭部に集まりやすくなり、炎症部分の血流が増えることで痛みが強くなります。
また、夜は副交感神経が優位になり、血管が拡張することも痛みが増す要因です。
さらに、日中は仕事や活動で気が紛れていても、夜は痛みに意識が集中してしまうため、より強く痛みを感じやすくなります。
体調が悪いとき
風邪をひいたときや、体調を崩したときも親知らずが痛くなりやすいです。
体が病気と戦っているときは、口の中の細菌に対する抵抗力も弱くなってしまいます。
特に女性の場合、妊娠中や授乳期はホルモンバランスの変化により歯茎が腫れやすくなります。
また、つわりで歯磨きが十分にできなかったり、授乳で夜間の睡眠が取れなかったりすることも、痛む一つの要因です。
親知らずは抜かないといけないのか

親知らずがあると必ず抜歯しなければならないと思っている方も多いですが、実際はそうではありません。
親知らずの状態によって、抜歯が必要な場合と抜かずに残せる場合があります。
ここでは、どのような場合に抜歯を検討すべきか、また残しておいても問題ない親知らずの条件について詳しく説明します。
抜歯が必要なケース
抜歯を検討すべき親知らずの状態は以下のとおりです。
- 繰り返し痛みや腫れが起こる
- 横向きや斜めに生えている
- 隣の歯を圧迫している
- 虫歯が進行している
- 歯並びに悪影響を与えている
特に注意が必要なのは、横向きに生えている親知らずです。
このような親知らずはどんなに頑張って歯磨きをしても汚れがたまりやすく、また、圧迫によって隣の歯の根を溶かしてしまうこともあります。
→親知らずは4本同時に抜歯できる?メリット・デメリットと治療法を解説
抜歯しなくてもよいケース
抜歯が不要な親知らずの条件は以下のとおりです。
- まっすぐ正常に生えている
- きちんと歯磨きができる位置にある
- 上下でしっかり噛み合っている
- 痛みや腫れなどの症状がない
- 将来ブリッジの土台として使える可能性がある
大切なのは、定期的に歯科医院で状態をチェックしてもらうことです。
今は問題がなくても、加齢とともに歯磨きが難しくなったり、歯茎が下がって虫歯になりやすくなったりすることもあります。
自己判断をせず、きちんと歯科医院で診てもらいましょう。
→埋まっている親知らずは抜かなくてもいい?判断基準と治療法を解説
親知らずを抜歯した後のケアと注意点

親知らずの抜歯後は、適切なケアが大切です。
抜歯後は抜歯当日から翌日にかけてが痛みのピークで、腫れは2~3日目が強い傾向があります。
抜歯から約1週間後に抜糸を行い、普通の食事も1週間ほどで可能になることが多いです。
処方される痛み止めは我慢せずに服用し、抗生物質は症状が改善しても最後まで飲み切りましょう。
また、抜歯後は強くうがいをしないことも大切です。
抜歯した部分にできる血餅(けっぺい)という血の塊が傷口を保護していますが、強いうがいで取れてしまうと、さらに痛みを悪化させることがあります。
その他の注意事項は以下のとおりです。
- 飲酒、喫煙を控える
- 激しい運動を避ける
- 柔らかい食事から始め、抜歯した反対側で噛む
- 処方されたうがい薬を使用する
親知らずが複数ある場合は、通常1本ずつ抜歯を行います。
片側ずつ抜歯することで食事に支障が出ないようにし、抜歯後のケアは状態や体調を考慮して歯科医師と相談しながら決めていきます。
親知らずの痛みを放置するとどうなるか

放置することで起こりうるリスクは以下のとおりです。
- 炎症が広がり全身に影響が出る
- 周りの歯が虫歯や歯周病になる
- 口臭の原因になる
- 重度の病気になることもある
最初は親知らずの周りだけの炎症でも、放置すると顎全体に広がり、最悪の場合は入院が必要になることもあります。
また、口の中の細菌が血液に入り込む菌血症により、心臓の病気や脳の病気を引き起こすリスクもあるため、早めの治療が大切です。
親知らずの急な痛みに関するよくある質問

親知らずの急な痛みに関するよくある質問をまとめました。
Q1: 親知らずが急に痛くなったのですが、すぐに歯医者に行くべきですか?
はい、できるだけ早く歯科医院を受診することをおすすめします。
急な痛みは智歯周囲炎や虫歯などが原因のことが多く、放置すると炎症が拡大したり、隣の歯にも影響が出たりする可能性があります。
夜間や休日で受診できない場合は、痛み止めを服用し、患部を冷やすなどの応急処置をして、診療時間になったらすぐに受診しましょう。
Q2: 歯が痛くなったら親知らずを全部抜いた方がいいですか?
痛みが出ている親知らずは、場合によっては抜歯が必要です。
繰り返し痛みが出る、横向きに生えている、虫歯が進行しているなどの場合は抜歯を検討します。
ただし、他の親知らずについては、痛みがなく正常に生えていれば抜く必要はありません。
まずは痛んでいる親知らずの状態を診てもらい、他の親知らずも含めて歯科医師と相談して、判断することが大切です。
Q3: 親知らずの急な痛みはストレスや疲れと関係ありますか?
関係あります。
ストレスや疲労によって体の免疫力が低下すると、口の中の細菌が活発になり、親知らずの周りで炎症を起こしやすくなります。
大事な仕事の前や試験前など、ストレスがかかる時期に親知らずが痛くなることが多いのはこのためです。
日頃から規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠と栄養を取ることが、親知らずのトラブル予防にもつながります。
まとめ
親知らずの急な痛みは、智歯周囲炎や虫歯、親知らずが生えてくるときの痛み、歯性感染症などが原因で起こります。
特に疲れやストレスで免疫力が低下したときや、夜間に痛みが強くなることが多いです。
急に痛みが出た場合は、患部の冷却や痛み止めの服用、うがいなどで対処しましょう。
ただし、あくまで一時的な対処法のため、痛みが治まっても必ず歯科医院を受診することが大切になります。
親知らずの痛みを放置すると、炎症が広がって全身に影響を及ぼしたり、周りの歯にも悪影響を与えたりする可能性があるため、早めの治療が必要です。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、レーザーを使った痛みに配慮した治療と、口腔外科専門医による親知らずの抜歯を実施しています。
親知らずの急な痛みで困っている方も、まずは気軽にご相談ください。
#親知らず #親知らずが急に痛い