
虫歯や歯周病で多くの歯を失ってしまった方、総入れ歯が合わなくて困っている方の中には、「全部の歯をインプラントにできるのかな?」と考える方も多いのではないでしょうか。
歯を失うことは日常生活に大きな影響を与えますが、インプラント治療によって天然歯に近い機能と見た目を取り戻すことができます。
この記事では、全部の歯をインプラントにする方法について、費用やメリット・デメリット、総入れ歯との違いなどを分かりやすく解説します。
全部の歯をインプラントにする目的

全ての歯をインプラントにする治療は、次の目的で行われています。
見た目をきれいにして自信を取り戻すため
見た目をきれいにして自信を取り戻すため、インプラントで全部の歯を回復する方も多くいらっしゃいます。
人と会うことを避けるようになったり、写真を撮ることを嫌がるようになったりと、精神的にも大きな影響を受けてしまいます。
しかし、全部の歯をインプラントすることで、理想的な歯並びと白さを目指せます。
見た目が改善されれば、失っていた自信を取り戻し、人前で思い切り笑えるようになり、様々な場面で前向きに行動できるようになるはずです。
失った歯を補い、快適な生活を取り戻すため
虫歯、歯周病、事故などによって、歯を失うことがあります。
歯を失うと食事が困難になり、会話もしづらくなるなど、日常生活に大きな支障をきたします。
硬いものが噛めなくなることで食事の楽しみが失われ、栄養バランスも偏りがちです。
また、発音が不明瞭になったり、人前で笑うことを躊躇するようになったりと、社会生活にも影響が出てしまうでしょう。
インプラント治療は、こうした問題を解決し、快適な生活を取り戻すための治療でもあります。
総入れ歯の不具合を解消するため
総入れ歯を使用している方の多くが、外れやすい、しっかり噛めない、痛いといった不満を抱えています。
さらに総入れ歯の噛む力は天然歯の20~30%程度といわれ、硬い食べ物が食べられなくなってしまうのがデメリットです。
また、合わない入れ歯を使い続けると、顎の骨が徐々に痩せていき、ますます入れ歯が合わなくなるという悪循環に陥ります。
インプラント治療は、こうした総入れ歯の問題を根本的に解決できる治療法として選ばれています。
全部の歯をインプラントにするメリット

全部の歯をインプラントにすることで得られるメリットは以下のとおりです。
1本あたりの治療費を抑えられる
通常のインプラント治療では、1本の歯に対して1本のインプラントを埋入するため、全ての歯をインプラントにすると1000万円近い費用がかかってしまうこともあります。
しかし、複数の歯をまとめて治療する方法を選択することで、費用を大幅に抑えることができます。
例えば、複数の歯を連結したブリッジタイプにしたり、特殊な固定方法を用いたりすることで、必要なインプラントの本数を減らすことができるのです。
なお、理論上は最大28本のインプラントを入れられますが、実際に28本すべて埋め込むケースは少なく、少ない本数で多数の歯を支える方法が選ばれることが多いです。
天然歯に近い噛み心地を実現
インプラントは顎の骨に直接埋め込まれ、骨と強固に結合するため、天然歯の80~90%の噛む力を発揮できるといわれてます。
一方、総入れ歯の噛む力は20~30%程度です。
インプラントの優れた噛む力により、ステーキや硬い野菜、せんべいなど、今まで諦めていた食べ物を楽しんでいる方もいます。
しっかり噛めることで消化も良くなるため、健康にもつながるでしょう。
自然な歯並びや白さを実現できる
全部の歯をインプラントにする場合、ゼロから理想の歯を目指すことができます。
歯の色は患者さんの肌の色に合わせて自然な白さを選べ、歯の形も顔立ちに合わせてカスタマイズが可能です。
歯並びも笑った時に美しく見えるように設計でき、歯茎の形も含めて全体的にバランスの取れた口元を作ることができます。
身体への負担が少ない(手術回数・治療期間の短縮)
最小4本のインプラントだけを用いるオールオン4の場合、片顎1回の手術で完了し、治療期間も3~6ヶ月と短期間で済みます。
通常のインプラントで全部の歯を治療する場合、10回以上の手術が必要になることもあり、2~3年かかることも珍しくありません。
また、手術当日に仮歯が入るため、歯がない期間がないのも大きなメリットです。
顎の骨が痩せるのを防げる
歯を失うと、噛む刺激が伝わらなくなるため顎の骨が徐々に痩せていきます。
総入れ歯では骨の痩せを防ぐことができませんが、インプラントは噛む力を直接骨に伝えるため、骨が痩せるのを防ぐ効果が期待できます。
全部の歯をインプラントにするデメリットと注意点

全部の歯をインプラントにすることには、以下のようなデメリットや注意点もあります。
対応可能な歯科医院が限られている
インプラント治療には高度な技術と経験が必要です。
特にオールオン4などの治療は、より高度な技術と経験が求められるため、対応できる歯科医院は限られています。
全身疾患があると治療できない場合がある
重度の糖尿病、心疾患、骨粗しょう症などの全身疾患がある場合、インプラント治療が難しいことがあります。
ただし、病気をコントロールできていれば治療可能な場合もあるため、まずは歯科医師に相談してみましょう。
インプラント周囲炎のリスクがある
インプラントは虫歯にはなりませんが、周りの歯茎が炎症を起こすインプラント周囲炎になるリスクがあります。
天然歯と比べて血液の供給が少ないため、発症しやすい傾向があります。
インプラント治療後、インプラント周囲炎を予防するためには、毎日の丁寧なケアと定期的なメンテナンスが欠かせません。
治療費が高額になる
インプラント治療は保険適用外のため、費用が高くなります。
1本1本独立したインプラントの場合は1000万円程度、オールオン4の場合は片顎で200~300万円、全顎では400~600万円ほどが目安です。
ただし、医療費控除を活用すれば実質的な負担を抑えることができ、デンタルローンによる分割払いも可能です。
残っている歯の抜歯が必要な場合がある
全部の歯をインプラントにする場合、治療方法によっては残っている少しの歯を抜歯しなければならないことがあります。
ただし、虫歯が大きく進行していたり、歯周病でグラグラになっている歯を無理に残すよりも、抜歯して新しい歯を入れた方が結果的に良い予後が得られることも少なくありません。
全部の歯をインプラントにする3つの治療法

ほとんどの歯を失ったとき、全部の歯を1本1本インプラントに変える治療だけが選択肢ではありません。
他にも、オールオン4/オールオン6やインプラントオーバーデンチャー、インプラントブリッジ(セグメント埋入)にする方法もあります。
ここでは、それぞれの治療法についてご紹介します。
オールオン4/オールオン6|最小4本のインプラントで全ての歯を支える
オールオン4は、片顎あたり最小4本のインプラントで、12本分の歯を支える治療法です。
従来は失った歯の本数分のインプラントが必要でしたが、大幅に本数を減らすことができます。
オールオン6は、オールオン4と同じ原理で、6本のインプラントを使用する方法です。
骨の状態や噛む力が強い方、より安定性を求める方はオールオン4よりも適しています。
インプラントの本数が増える分、費用は高くなりますが、より強固な固定が得られます。
インプラントオーバーデンチャー|取り外し可能なインプラント入れ歯
インプラントオーバーデンチャーは、2~4本のインプラントを土台として、磁石などで入れ歯を固定する方法です。
一般的な入れ歯よりも安定性が高く、噛む力は通常の入れ歯の2~3倍とされています。
取り外して清掃できるため衛生的で、費用も片顎50~150万円程度と比較的抑えられるのが特徴です。
ただし、入れ歯の要素が残るため、機能性ではオールオン4に劣ります。
インプラントブリッジ(セグメント埋入)|通常のインプラント治療
全顎を前歯部と左右奥歯部の3つに分けて治療する方法です。
合計8~12本のインプラントを使用し、問題が生じた部分だけを外して修理できるのがメリットです。
しかし、治療期間は長くなり、費用も高額になる傾向があります。
インプラント治療法別の費用相場と1本あたりの費用

各治療法の費用相場は次のとおりです。
オールオン4/オールオン6の費用(片顎200万〜300万円)
オールオン4は片顎200~300万円、全顎400~600万円が相場です。
費用には、CT検査、手術費用、インプラント本体、仮歯と最終的な人工歯などが含まれます。
例えば12本の歯を200万円で治療した場合、1本あたり約17万円となり、通常のインプラントと比べて費用対効果は優れています。
インプラントオーバーデンチャーの費用(50万〜150万円)
入れるインプラントの本数で異なりますが、片顎50~150万円程度が相場です。
磁石式やボール式など、連結方法によって費用は変動しますが、3つの中で一番費用を抑えられる方法のため、費用を抑えたい方に選ばれています。
インプラントブリッジの費用(280万〜420万円)
セグメントごとの費用を合計すると、全顎で280~420万円程度になります。
部分的な修理が可能なため、長期的なメンテナンス費用を抑えられる可能性があります。
医療費控除を活用して費用負担を軽減
インプラント治療は治療目的であれば基本的に医療費控除の対象となるため、確定申告により実質的な負担を軽減できます。
医療費控除は、年間の医療費が10万円を超えた分について、所得に応じて税金が還付される制度です。
還付される金額は所得によって異なりますが、治療費が高額な場合、数十万円単位で負担が軽減されることもあります。
インプラントと総入れ歯の違いを比較

インプラントと総入れ歯をさまざまな観点から比較してみましょう。
機能性・快適性の違い(噛む力、違和感など)
総入れ歯の噛む力は天然歯の20~30%程度ですが、インプラントは80~90%の噛む力を発揮できます。
また、総入れ歯は上顎全体を覆うため異物感が強く、食べ物の温度や味を感じにくくなります。
一方、インプラントは固定式で外れる心配がなく、天然歯と同じような感覚で食事や会話を楽しめることが魅力です。
費用と保険適用の違い
保険の総入れ歯は片顎1~2万円で作製できますが、インプラントは片顎200~300万円と高額です。
ただし、長期的な視点で、機能性や生活の質の向上も考慮に入れるとインプラントの費用対効果は高いと言えるでしょう。
見た目の違い
総入れ歯は人工歯茎の部分が目立ちやすく、顎の骨が痩せると口元が老けて見えてしまうことがあります。
インプラントは天然歯と見分けがつかない自然な見た目で、顎の骨も維持されるため若々しい口元を保ちやすいことも特徴です。
メンテナンスと耐久性の違い
総入れ歯は毎食後の洗浄が必要で、5~7年ごとに作り替えが必要です。
一方インプラントは、通常の歯磨きでケアと3~6ヶ月のメンテナンスで10年以上使用できることが多いです。
全部の歯をインプラントにするのが向いている人

次のような方には、全ての歯をインプラントにする治療が向いています。
若いうちに多くの歯を失った人(20代〜50代)
若い世代で歯を失った場合、今後の長い人生を考えると、機能的で審美的に優れたインプラントが推奨されます。
顎の骨もまだしっかりしていることが多く、良い治療効果が期待できます。
総入れ歯が合わずに困っている人
総入れ歯の違和感や不具合に悩まされている方は、インプラントによって生活の質が上がる可能性があります。
食事の楽しみを取り戻し、人前でも自信を持って話せるようになるでしょう。
歯がボロボロ・ほとんどない人
重度の虫歯や歯周病で多くの歯を失っている方は、残っている歯も状態が悪いことが多いです。
部分的な治療を繰り返すよりも、インプラントに変えて回復させる方が良い結果が得られるケースもあります。
短期間で治療を終えたい人
インプラント治療の中でも、オールオン4なら手術当日に仮歯が入り、3~6ヶ月で最終的な歯が入ります。
忙しい方や大切なイベントを控えている方にとって、短期間で結果が得られるのは大きなメリットです。
まとめ
全部の歯をインプラントにする治療には、オールオン4、インプラントオーバーデンチャー、インプラントブリッジなどの方法があります。
インプラントは天然歯の80~90%の噛む力を発揮できるといわれ、見た目も自然で、顎の骨が痩せるのを防ぐ効果もあるため、若い世代で歯を失った方や総入れ歯が合わない方に適しています。
ただし、全身疾患がある場合は治療できないことがあり、インプラント周囲炎のリスクもあるため、定期的なメンテナンスが欠かせません。
対応できる歯科医院も限られているため、経験豊富な専門医を選ぶことが大切です。
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