インプラントは虫歯にならないって本当?注意すべきリスクと正しいケア方法

指を立てる歯科医師

インプラントは人工の歯ですが、虫歯になることはあるのでしょうか?

天然の歯と同じようにケアが必要なのか、それとも特別な注意点があるのか、気になる方も多いと思います。

そこで今回は、インプラントと虫歯の関係について解説します。

また、インプラントを長持ちさせるために知っておくべきリスクや正しいケア方法についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

インプラントは虫歯にならないって本当?

結論から言うと、インプラントは虫歯になりません。

しかし、インプラントの周囲ではトラブルが起きる可能性があります。

インプラントが虫歯にならない理由

虫歯は、口の中にいるミュータンス菌が食べ物の糖分を栄養にして酸を作り出し、酸が歯を溶かすことで起こる病気です。

インプラントは人工物で、人工歯根(インプラント体)はチタンやチタン合金、人工歯(上部構造)はセラミックやジルコニアなどでできています。

虫歯菌が作り出す酸では、インプラントの材料は溶けません。そのため、インプラント自体が虫歯になることはないのです。

インプラント周囲の歯は虫歯になる可能性がある

インプラント自体は虫歯になりませんが、インプラントの周りにある天然の歯は当然ながら虫歯になる可能性があります。

インプラントと隣の歯との間には汚れがたまりやすく、そこからミュータンス菌が繁殖して周りの歯を虫歯にすることがあるのです。

虫歯によって抜歯が必要になれば、インプラントへの負荷が高くなり、破損の原因になります。

直接的にインプラントには影響がないとしても、日頃からのケアが大切です。

インプラント周りで起こり得る5つのトラブル

歯を押さえる女性

ここでは、先述したインプラント周りの虫歯を含む主なトラブルを5つご紹介します。

インプラント周囲炎

インプラントの周りの歯茎に細菌が感染して炎症を起こす病気で、天然の歯でいう歯周病のようなものです。

インプラント周囲炎の特徴として、天然の歯と違ってインプラントには歯根膜(歯と骨をつなぐ組織)がないため、細菌に対する防御力が弱くなっています。

そのため、歯周病よりも進行が速く、重症化するとインプラントが抜け落ちる原因になることがあります。

インプラント周りの虫歯

先述したように、インプラントの周りにある天然の歯は虫歯になる可能性があります。

特に注意が必要なのは、インプラントと天然の歯の境目やインプラントの隣の歯の根元、歯と歯の間です。

歯ブラシが届きにくく、汚れがたまりやすい場所のため、日頃のケアが大切です。

歯茎の腫れ・出血

インプラント手術では歯茎を切開するため、手術直後は腫れや出血が起こることがあります。

通常は2週間程度で治まりますが、いつまでも症状が続く場合は要注意です。

長期間続く腫れや出血は、インプラント周囲炎の発症、細菌感染、インプラントが骨とうまく結合していないなどの原因が考えられます。

症状が続く場合は、すぐに歯科医院で診察を受けましょう。

インプラントの破損・脱落

インプラント治療では、顎の骨に人工歯根を埋め込み、骨と結合するのを待ってから人工歯を取り付けます。

しかし、骨との結合が不十分なまま人工歯を取り付けたり、強い力が加わったりすると、インプラントが破損や脱落することがあります。

また、インプラント周囲炎が進行した場合や、歯ぎしり・食いしばりの習慣がある場合も破損や抜け落ちるリスクが高まります。

インプラントのぐらつき・不安定

インプラントがぐらつく主な原因は、インプラント周囲炎による骨の減り、過度な力がかかっていること、骨との結合が不十分であること、上部構造(人工歯)のネジが緩んでいることなどです。

ぐらつきを感じたら、早めに歯科医院で検査を受けることが大切です。

インプラント治療と他の治療法

歯科医師と患者

インプラントは虫歯にならないというメリットがありますが、虫歯で歯を失った場合の治療法はインプラント以外にもあります。

それぞれの治療法には特徴があり、費用や治療期間、メリット・デメリットも異なります。

ここでは、インプラントと他の治療法を比較して、どのような違いがあるのか見ていきましょう。

インプラント治療

インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療法です。

インプラントのメリットは、天然の歯と同じような噛み心地が得られる点です。

また、見た目が自然で、他の歯を削る必要がありません。

さらに、顎の骨が痩せるのを防ぐ効果があり、インプラント自体は虫歯になることもありません。

一方で、費用が高額になることや、治療期間が長く6か月~1年程度かかるデメリットもあります。

ただし、インプラントはきちんとケアを続ければ10~15年以上もつこともあるため、入れ歯の平均寿命が4~5年、ブリッジが7~8年程度であることを考えると、長期的にはコストパフォーマンスが良いといえるでしょう。

インプラントの平均寿命は?長持ちさせる方法やNG習慣・再手術について解説

差し歯・入れ歯・ブリッジ

インプラント以外にも、歯を失った場合の治療法があります。

各治療法にはメリット・デメリットがあるので、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。

治療法メリットデメリット
差し歯・歯の根が残っていれば可能
・比較的短期間で治療完了
・保険適用が可能な場合もある
・歯根がないと選択できない
・歯根が弱いと長持ちしない
入れ歯・手術が不要
・取り外して洗える
・保険適用の場合は費用を抑えられる
・噛む力が弱い
・違和感を感じやすい
・見た目が気になることがある
ブリッジ・固定式で違和感が少ない
・保険適用が可能な場合もある
・比較的短期間で治療可能
・健康な歯を削る必要がある
・支えの歯に負担がかかる
・清掃が難しい

これらの方法はインプラントと比べると、初期費用は抑えられますが、長期的に見れば噛む力や見た目の自然さ、耐久性の面でインプラントが優れています。

どの治療法を選ぶかは、口内の状態や予算、ライフスタイルなどを総合的に考慮して決めましょう。

「インプラント・ブリッジ・入れ歯|失った歯の治療法3つを比較」

インプラントを長持ちさせる正しいケア方法

歯磨き指導をする歯科衛生士

インプラントの寿命は、10〜15年程度とされていますが、適切なケアをすれば20年以上使用できるケースもあります。

ここでは、インプラントを長持ちさせる方法をご紹介します。

手術直後にやることと避けるべきこと

手術後2週間は特に注意が必要な時期です。

インプラントと骨が結合し始める大切な時期であり、傷口も完全に治癒していないため、不適切なケアをすると感染症や治癒の遅れ、最悪の場合インプラントの脱落につながる可能性があります。

手術直後の注意点は以下のとおりです。

  • 処方された薬は指示通りに服用する
  • 激しいうがいは避ける
  • 手術部位で硬いものを噛まない
  • 喫煙・飲酒は控える
  • 激しい運動は避ける

歯磨きについても、手術直後は特に配慮が必要です。

手術部位だけ柔らかい歯ブラシを使用し、優しく汚れを取り除きましょう。

刺激の強い歯磨き粉は避けて、傷口に負担をかけないようにすることが大切です。

定期的に歯科医院でメンテナンスをする

自宅でのケアだけでは限界があるため、定期的に歯科医院でプロのケアを受けることが、インプラントを長持ちさせる重要なポイントです。

歯科医院でのメンテナンスでは、自分では取れない頑固な汚れも、専門の器具を使って徹底的にきれいにしてもらえます。

また、インプラント周りの状態をチェックし、噛み合わせの調整も行います。

インプラントのタイプによっては、ネジの締め直しが必要です。

歯科医院でのメンテナンスは、一般的に3~6か月に1回が推奨されています。

ただし、喫煙者や歯周病の既往がある方、糖尿病などの全身疾患がある方、口腔清掃が苦手な方は、通常よりも頻繁にメンテナンスが必要です。

自宅での日々のケア

インプラントを長持ちさせるには、日々のセルフケアは大切です。

基本的なケアとしては、1日2回以上の歯磨きを行い、歯間ブラシやデンタルフロスも使用します。

歯磨きのポイントは以下のとおりです。

  • 歯ブラシは鉛筆を持つように軽く握る
  • インプラントと歯茎の境目を重点的に磨く
  • 力を入れすぎない
  • 小刻みに動かす

インプラントについてよくある質問

Q1:インプラント治療の費用相場はどのくらいですか?

インプラント1本あたりの費用相場は50万円~75万円程度です。

また、顎の骨が薄い場合は、骨を増やす処置に5~15万円程度の追加費用が必要になることもあります。

保険は基本的に適用されませんが、医療費控除の対象になるので、確定申告をすれば一部が還付されます。

Q2:インプラントの寿命はどのくらいですか?

Q&A

適切なメンテナンスを行えば、インプラントの平均寿命は10~15年以上です。

寿命に大きく影響するのは、日々のセルフケアの質と定期メンテナンスの受診状況です。

また、喫煙の有無や全身の健康状態、歯ぎしりの有無なども寿命を左右します。

実際には20年以上使い続けている方も多く、中には30年以上問題なく使用している例もあります。

Q3:インプラント治療後も普通に歯磨きできますか?

はい、インプラント治療後も普通に歯磨きができます。

手術直後の2週間は専用の柔らかい歯ブラシを使用しますが、その後は通常の歯ブラシで問題ありません。

電動歯ブラシも使用可能です。歯間ブラシやデンタルフロスも必要に応じて使用してください。

むしろ、天然の歯よりも丁寧なケアが必要だと考えて、しっかりと清掃することが大切です。

まとめ

インプラントは人工物であるため虫歯になることはありませんが、周囲の天然歯は虫歯になる可能性があります。

また、インプラント周囲炎という歯周病に似た病気にかかるリスクがあり、進行が早く重症化しやすいため注意が必要です。

インプラントを長持ちさせるためにも、毎日の歯磨きや歯間ブラシでのケアに加え、3~6か月ごとの定期メンテナンスを受けましょう。

インプラント治療をご検討の方は、専門的な知識と技術をもつ歯科医院での相談をおすすめします。

下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、インプラント認定専門医が在籍し、治療後のメンテナンスまで一貫してサポートしています。

虫歯で歯を失った方も、安心してご相談ください。