
インプラント治療を受けた後、インプラントがぐらぐらして悩んではいませんか?
インプラントは本来、顎の骨にしっかりと結合しているため、正常であれば動いたりぐらついたりすることはありません。
もしインプラントにぐらつきを感じる場合は、何らかのトラブルが起きている可能性があります。
放置してしまうとインプラントが抜け落ちてしまうこともあるため、早めの対処が必要です。
この記事では、インプラントがぐらつく主な原因と、ぐらついた時の正しい対処法について解説していきます。
インプラントがぐらつく原因

インプラントのぐらつきは次のことが原因として考えられます。
インプラント周囲炎が進行している
インプラント周囲炎は、インプラントに接触している歯茎に炎症が起こった状態のことです。
口内の清掃状態や全身の健康状態、喫煙習慣など、さまざまな要因によって引き起こされます。
最初は歯茎が赤く腫れたり、歯磨きの際に出血したりする程度の症状しか現れません。
しかし、インプラント周囲炎が進行すると、インプラントを支える顎の骨が溶けてしまい、インプラントがぐらつく場合があります。
最終的には、インプラントが完全に抜け落ちてしまうこともあります。
アバットメントやネジが緩んでいる
インプラントは、外から見える人工歯(被せ物)、顎の骨に埋め込まれるインプラント体、そして両者をつなぐアバットメントの3つでできています。
このうち、アバットメントのネジの緩みや破損がぐらつきの原因の一つです。
噛み合わせの乱れや歯ぎしりなどでインプラントに負荷がかかり続けると、ネジがゆるんだり破損したりして、インプラントがぐらつく場合があります。
また、長い期間にわたってインプラントを使用することで劣化し、徐々にネジが緩んでくることもあります。
ネジの緩みが原因の場合、早めにネジを締め直すだけで改善できる場合も少なくありません。
インプラント体と骨が結合していない
インプラント治療は人工の歯根を顎の骨に埋め込むもののため、歯根と骨がしっかり結びつかなければなりません。
結合がうまくいかなければ、インプラントの土台が不安定になり、ぐらつきの原因となってしまいます。
骨の厚みが不足している
インプラントを安定させるためには一定の骨の厚みが必要です。
しかし、歯を失うとその部分の骨が減っていきます。
骨の厚みが不足するとインプラントが固定されず、ぐらつきを生じることがあります。
また、元々骨の量が少ない体質や歯周病で骨が溶けてしまうのもぐらつきの原因の一つです。
噛み合わせの不良・歯ぎしり・食いしばり
インプラントには天然の歯にある歯根膜というクッションの役割を果たす組織がありません。
そのため、噛む力が直接インプラントに伝わってしまい、負担がかかりやすくなります。
とくに就寝中の歯ぎしりは無意識に行われ、想像以上に強い力がかかっています。
日中の食いしばりも同様で、ストレスや集中しているときに無意識に歯を食いしばってしまう方は注意が必要です。
接着剤の接着力が弱まっている
セメント合着といって、インプラントの人工歯を専用の接着剤で付けている場合は、長期間の使用により接着剤が劣化したり、噛んだときの強い力で接着部分に負担がかかったりすることで、接着力が弱まることがあります。
接着し直せば改善されますが、市販の接着剤で自分で付け直すことは避けましょう。
歯科医院で専門的な処置を受けることが大切です。
インプラント手術時のミス
インプラントを埋め込む際に、稀ではありますがドリルの熱で骨が損傷することもあります。
オーバーヒートと呼ばれる現象で、骨がやけどのような状態になってしまった状態です。
オーバーヒートが起こると、インプラントと骨の正常な結合が妨げられてしまいます。
また、インプラントを埋入する位置や角度、深さが適切でない場合も、後々のぐらつきの原因となることがあります。
インプラントがぐらついた時にやってはいけないこと

インプラントのぐらつきを感じたとき、つい気になって触ってしまいたくなるかもしれません。
しかし、誤った対処をすると症状を悪化させる可能性があるため、次の行動は避けましょう。
インプラントを触る・動かす
インプラントのぐらつきが気になっても、手や舌で触ることは控えましょう。
指で触ると細菌が患部に付着し、炎症を悪化させる可能性があります。
また、舌で触るのもインプラントに余計な力がかかり、ぐらつきがひどくなることもあるため避けるべきです。
インプラントの部分で噛む
インプラントがぐらつくと感じた時は、そのインプラントで噛むのを避けましょう。
インプラントが傷つく可能性や、周りの歯肉や顎骨に悪影響を及ぼし、炎症や感染症を引き起こす原因になることがあります。
インプラント部分を使わずに食事をするのが難しいときは、スープやポタージュなど、できるだけ噛まなくてもよいメニューを選ぶとよいです。
外れた部品を自分で取り付ける
インプラントがぐらつくときに、自分で外れた部品を自分で取り付けようとするのはやめましょう。
間違った方向に力を加えてしまい、インプラントや周りの組織を傷つける可能性があります。
外れた部品は小さなジッパー付き袋などに入れて保管し、歯科医院で取り付けてもらうために持っていきましょう。
市販の接着剤で固定する
インプラントの外側である被せ物が外れてしまった場合、市販の接着剤で自分で付け直そうとする方がいますが、避けましょう。
市販の接着剤は口内での使用を想定していないため、体にとって有害な成分が含まれている可能性があります。
また、一度市販の接着剤で固定してしまうと、歯科医院でも取り外すことができなくなり、インプラント全体を除去しなければならなくなる場合もあります。
痛み止めだけで放置する
インプラントのぐらつきに伴って痛みがある場合、市販の痛み止めを服用することで一時的に症状を抑えることはできます。
しかし、一時的な対処のため、根本的な問題は解決できません。
むしろ、痛みを感じなくなることで受診が遅れ、症状が悪化してしまう可能性があります。
できるだけ早めに歯科医院を受診することが大切です。
インプラントがぐらついた時の対処法

インプラントのぐらつきを感じたら、次の内容を参考に対処しましょう。
すぐに歯科医院へ連絡する
インプラントがぐらついている場合は、何らかのトラブルが起こっており、放置しても元に戻ることはありません。
できるだけ早く歯科医院に行き、適切な治療を受けましょう。
インプラントを失うリスクを減らすためにも、できるだけ早い受診が望ましいです。
緩んだネジを締め直す
アバットメントの緩みでインプラントがぐらつく場合は、一度人工歯を外してアバットメントを締め直します。
処置後は噛み合わせの確認と調整も行い、再びネジが緩まないようにします。
インプラント周囲炎の治療をする
インプラント周囲炎が原因でぐらつきが生じている場合、症状の程度に応じた治療が必要です。
初期の段階では、専門的なクリーニングにより、インプラント周囲の汚れや細菌を除去します。
症状が進行している場合は、歯茎を切開して感染部位を直接除去したり、失われた骨を再生させる治療を行ったりすることもあります。
噛み合わせを調整する
噛み合わせが悪いことが原因でインプラントがぐらつく場合は、咬合紙という特殊な紙を使って、歯が接触する部分を見て噛み合わせが乱れていないか確認します。
確認後は、インプラントの人工歯が高すぎる場合は削って調整したり、横に顎を動かしたときに引っかかる部分がないかチェックして、必要があれば人工歯の形を整えます。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方には、マウスピースの作製をすすめることもあります。
インプラントの再手術を行う
原因によっては、インプラントを抜き取り、必要な治療を施してぐらつきを改善するための再手術を行うこともあります。
再手術が必要になるケースとして、インプラント体と骨の結合が失敗した場合、骨の量が著しく不足している場合、インプラントの位置や角度が不適切な場合などがあります。
インプラントを除去する
重度のインプラント周囲炎や、その他の治療で改善が見込めない場合は、インプラントの除去が必要になることがあります。
除去後は、患者さんの状態や希望に応じて、骨の回復後に再度インプラント治療を行うか、ブリッジや入れ歯などの他の治療法を選択することになります。
インプラントのぐらつきを防ぐ予防法

インプラントのぐらつきを防ぐには、普段からのケアが大切です。
次の予防法を実践し、インプラントがぐらつかないようにしましょう。
歯科医院での定期的なメンテナンスを受ける
定期的なメンテナンスはぐらつき予防だけでなく、インプラントの健康を保つために不可欠です。
メンテナンスでインプラント含む構内の状態、噛み合わせなどを確認し、必要に応じた処置が行われます。
定期メンテナンスの推奨される頻度は3~6ヶ月に1回です。
問題がなくても年2回は受診し、専門的なケアを受けることで、インプラントのトラブル予防につながります。
自宅でしっかり歯磨きをする
インプラント周囲炎を防ぐためには、毎日の丁寧な歯磨きも大切です。
1日2回以上、特に就寝前は時間をかけて丁寧に磨きましょう。
歯ブラシは柔らかめのものを選び、インプラント周りはより丁寧に磨きます。
歯磨き時間は最低でも3分以上かけ、歯磨き粉は研磨剤の少ないものを選ぶようにしましょう。
デンタルフロスや歯間ブラシを活用する
歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れは約60%しか除去できないといわれています。
デンタルフロスは1日1回以上使用し、インプラントと隣の歯の間を丁寧に清掃しましょう。
歯間ブラシは、隙間の大きさに合わせてサイズを選ぶことが重要です。
マウスピースを使用する
歯ぎしりや食いしばりがある方は、マウスピースの使用が強く推奨されます。
マウスピースを使用することで、インプラントへの過度な力を分散させ、歯のすり減りを防ぎ、顎関節への負担を軽減することが可能です。
歯科医院で型取りをして、オーダーメイドで作製するため、自然な装着感が得られ、違和感なく使用できます。
違和感があればすぐに歯科医院に相談する
インプラントのトラブルは、早期発見・早期治療が成功の鍵となります。
わずかなぐらつきをはじめ、違和感、歯茎の腫れや赤み、出血、噛むと痛い、口臭が気になるなどの症状があれば、遠慮なく歯科医院に相談しましょう。
「この程度なら大丈夫だろう」と自己判断せず、少しでも気になることがあれば、早めに受診することが大切です。
インプラントのぐらつきに関するよくある質問

インプラントのぐらつきに関するよくある質問をまとめました。
Q1:インプラントのぐらつきは自然に治りますか?
インプラントのぐらつきは自然に治ることはありません。
ぐらつきは何らかの問題が起きているサインであり、放置すると症状が悪化する可能性が高いです。
インプラント周囲炎が進行したり、骨が溶けたりすると、最終的にはインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
ぐらつきを感じたら早めに歯科医院を受診することが大切です。
Q2:インプラントがぐらついた時の治療費用はどのくらいかかりますか?
治療費用は、インプラントがぐらつく原因によって大きく異なります。
軽度のぐらつきで、ネジの締め直しなど簡単な調整で済む場合は、少ない費用で済むでしょう。
一方、インプラント周囲炎の治療が必要な場合は、症状の程度により治療内容が変わるため、費用も幅があります。
また、再手術の場合はインプラントを一度除去して、骨の回復を待ってから再度入れる必要があるため、初回の治療と同程度の費用がかかることもあります。
インプラントは多くの歯科医院では保証制度を設けており、保証期間内で条件を満たしていれば無償で対応可能です。
まずは治療を受けた歯科医院に相談し、保証内容を確認することをおすすめします。
Q3:インプラントがぐらついて痛い時はどうすればよいですか?
痛みがある場合は、炎症や感染が起きている可能性が高いため、早めに対処しましょう。
応急処置として市販の痛み止めを服用し、腫れがある場合は冷やすことで症状を和らげることができます。
ただし、これらはあくまで一時的な対処です。
できるだけ早く歯科医院に連絡し、適切な治療を受けることが、インプラントを守る最善の方法です。
まとめ
インプラントがぐらつく原因は、インプラント周囲炎の進行、アバットメントのネジの緩み、インプラント体と骨の結合不全、噛み合わせの不良や歯ぎしりなどです。
正常なインプラントは動かないため、ぐらつきを感じたら何らかのトラブルが起きている証拠となります。
ぐらつきを感じたら、触ったり動かしたりせず、すぐに歯科医院を受診することが大切です。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、経験豊富な口腔外科専門医が診察し、ぐらつきの原因に応じた治療を行っています。
定期メンテナンスから緊急時の対応まで、インプラントを長く快適に使えるようにサポートしていますので、少しでも異常を感じたらお早めにご相談ください。