インプラント治療は20代でも可能?メリット・デメリットや治療の条件

歯の模型をもつ歯科医師

歯を失うのは高齢者の方だけに限りません。

20代でも、事故やスポーツでの怪我、重度の虫歯などで歯を失う場合があります。

20代で歯を失い、「20代でインプラントって大丈夫なの?」という疑問をもっている方もいるでしょう。

結論から言えば、20代でもインプラント治療は可能です。

この記事では、20代でインプラント治療を検討している方に向けて、治療を受けるための条件やメリット・デメリット、歯科医院の選び方まで解説します。

20代でもインプラント治療はできる?

歯科医院で治療を受ける女性

インプラント治療は条件を満たせば20代でも可能です。

令和4年の厚生労働省の調査によると、20代でインプラント治療を受けている人は2.6%存在します。

30代では1.3%、40代では0.7%となっており、意外にも20代の装着率が高いことが分かります。

ただし、前述した通り条件を満たす必要があり、誰でも治療を受けられるわけではありません。

20代でインプラント治療を受けるための条件

インプラントの絵

20代でインプラント治療を受けるには、いくつかの条件を満たす必要があります。

次の条件をクリアしているか、まずは確認してみましょう。

顎骨の成長が完了していること

インプラント治療を受けるにあたって重要な条件は、顎の骨の成長が完全に止まっていることです。

インプラントは顎の骨に直接、人工歯根を埋め込む治療法になります。

もしも、成長途中の顎にインプラントを埋め込んでしまうと、その後の成長によって位置がずれてしまう可能性があるのです。

一般的に顎の成長は20歳前後で完了するとされていますが、個人差があるため注意が必要です。

特に20代前半の方は、事前の検査でしっかりと成長が完了しているか確認することが大切になります。

骨の量・密度が十分であること

インプラントを支えるためには、十分な骨の量と密度が必要です。

20代の多くの方は健康な歯槽骨(歯を支える顎の骨)を持っているため問題ないケースが多いです。

しかし、歯周病が進行していたり、事故で骨にダメージを受けていたりする場合は骨造成という追加の治療が必要になることもあります。

骨の状態は見た目では判断できないため、CTやレントゲンを使った精密検査で確認します。

全身の健康状態が良好であること

インプラント治療は外科手術を伴うため、全身の健康状態が良くなければ受けられません。

以下の病気をもつ場合は、受けられないことがあります。

  • 糖尿病(血糖値のコントロールが不良な場合)
  • 骨粗しょう症
  • 心疾患
  • 免疫不全
  • 血液疾患

また、喫煙習慣がある方も要注意です。

タバコは血流を悪化させ、傷の治りを遅らせるだけでなく、インプラント周囲炎のリスクを高めます。

持病や喫煙習慣がある場合は必ず歯科医師に申告してください。

20代でインプラント治療を受けるメリット

メリット

20代でインプラント治療を受けることには、多くのメリットがあります。

周りの健康な歯や組織を守れる

20代で歯を失っても、失った歯の両隣はまだ虫歯や歯周病になったことがない健康な状態であることも多いです。

ブリッジ治療や入れ歯も治療法の一つですが、ブリッジ治療では健康な歯を削る必要があり、入れ歯は金具で負担をかけてしまいます。

その点インプラントは、隣の健康な歯を削る必要がありません。

20代で健康な歯が多く残っている今だからこそ、残りの歯を傷つけずに治療できるインプラントはメリットが大きいと言えます。

体力・免疫力があり手術後の回復が早い

体力と免疫力がある20代は高齢者と比べて傷の治りが早く、術後の腫れや痛みも軽減されやすい利点があります。

また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を抱えている方も少ないため、手術のリスクも低く抑えられるでしょう。

骨造成が不要な場合が多い

一般的に20代の顎の骨は健康で、十分な厚みと密度を保っています。

高齢になると顎の骨が痩せてしまい、インプラントを埋入する前に骨造成という骨を増やす手術が必要になることがあります。

骨造成は追加の手術となるため、治療期間も費用も増加してしまいます。

若いうちなら、こうした追加治療なしでスムーズにインプラント手術を進められる可能性が高いため、20代でインプラント治療を受けるメリットと言えるでしょう。

審美性が高く自然な見た目を取り戻せる

インプラントは天然歯とほとんど見分けがつきません。

特に前歯をインプラントにする場合、セラミックの人工歯は透明感があり、天然歯のような自然な仕上がりになります。

入れ歯のような金具も見えないため、自信をもって笑顔になれるでしょう。

長期的に使えて費用対効果が高い

インプラントの平均寿命は10~15年とされていますが、適切なメンテナンスを続ければ20年以上使用できるケースもあります。

実際、日本口腔インプラント学会の調査では、20年以上経過しても78%の方が「問題ない」と回答しています。

初期費用は高額ですが、長期的に見れば再治療の回数が少なく、結果的に費用対効果が高くなることがあります。

20代でインプラント治療を受けるデメリット

デメリット

メリットが多いインプラント治療ですが、デメリットもしっかり理解しておく必要があります。

治療費が高額(保険適用外)

インプラント治療は原則として保険適用外の自由診療となります。

1本あたりの費用は50万円~75万円程度が相場です。

20代は社会人になって間もない方も多く、高額な治療費は大きな負担となるでしょう。

ただし、治療目的のインプラントは医療費控除の対象となるため、確定申告により一部が還付される可能性があります。

インプラントでローン・分割払いは可能?費用負担を軽減する方法と医療費控除まで解説

治療期間が長い

インプラント治療には通常3ヶ月~1年程度の期間が必要です。

顎の骨とインプラント体が結合する『オッセオインテグレーション』という過程に時間がかかるためです。

ブリッジなら2週間程度、入れ歯なら1~2ヶ月で完成するのと比べると、長い治療期間です。

とはいえ、待機期間中は仮歯を装着できるため、日常生活に大きな支障はなく過ごせるでしょう。

定期的なメンテナンスが必須

インプラントは治療が終わってからが本番とも言えます。

3~6ヶ月に1回の定期メンテナンスは欠かせません。

定期メンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎という歯周病のような症状が発生し、インプラントが脱落してしまうことがあります。

20代は転勤や結婚、引っ越しなどライフイベントが多い時期です。

継続的なメンテナンスを受けられる環境を整えることも課題となるでしょう。

インプラントはどのくらいもつ?20代で治療した場合の寿命

インプラントの模型

特に20代の方にとって、インプラント治療にかかる費用は気になるポイントです。

できるだけ長く快適に使いたいと考える方が多いでしょう。

ここでは、インプラントや他の治療法の寿命、長持ちさせるポイントについて解説します。

インプラントの平均寿命は10~15年

インプラントの平均的な寿命は10~15年とされています。

しかし、適切にメンテナンスを続けている方であれば、20年以上使用できる可能性もあります。

逆に、メンテナンスを怠ったり、喫煙習慣があったりすると、インプラントの寿命が縮まってしまう可能性があるため、しっかりメンテナンスすることが大切です。

インプラントの平均寿命は?長持ちさせる方法やNG習慣・再手術について解説

他の治療法の寿命は?

インプラントと他の治療法の寿命を比べると、以下のとおりです。

  • インプラント:10~15年
  • ブリッジ:7~8年
  • 入れ歯:3~5年

インプラントが長持ちしやすい治療法であることが分かります。

インプラント・ブリッジ・入れ歯|失った歯の治療法3つを比較

長持ちさせるためのポイント

インプラントを長持ちさせるためのポイントは以下のとおりです。

  • 毎日の丁寧な歯磨き
  • デンタルフロスや歯間ブラシの使用
  • 定期的なメンテナンス(3~6ヶ月に1回)
  • 禁煙
  • 歯ぎしり対策としてナイトガードを使用
  • 全身の健康管理

特に重要なのは定期メンテナンスです。

自分でのケアでは完全に綺麗にすることは難しいですが、定期的にプロのクリーニングと状態チェックを受けることで、問題の早期発見・早期治療ができます。

20代でインプラント治療を受ける際の歯科医院の選び方

歯の絵と歯ブラシ

インプラント治療を成功させるには、歯科医院選びが大切です。

特に20代でこれから先の長い人生を考えると、信頼できる歯科医院で治療を受けるのは必要不可欠といえるでしょう。

では、歯科医院を選ぶ際のポイントを見ていきます。

インプラント治療の実績と専門性

まずは、歯科医院のインプラント治療実績を確認しましょう。

年間のインプラント手術件数や、担当医の経験年数、専門資格の有無などを歯科医院の公式HPなどでチェックします。

日本口腔インプラント学会が認定する専門医資格を持つ歯科医師がいるかどうかは、特にチェックしておきたいポイントの一つです。

また、症例写真を見せてもらうのも良い方法です。

実際の治療結果を確認することで、医院の技術力を判断できるでしょう。

設備と検査体制の充実

インプラント治療には充実した設備が欠かせません。

なかでもCTが備わっていれば、顎の骨の状態を3次元的に把握でき、より正確な治療計画を立てられます。

また、専用の手術室があるか、感染対策は徹底されているかも確認ポイントです。

デジタル技術を活用したシミュレーションシステムがある医院なら、事前に治療結果を予測できるため、より精度の高い施術が期待できるでしょう。

丁寧なカウンセリングと説明

信頼できる歯科医院は、治療前のカウンセリングに十分な時間をかけます。

20代でインプラント治療を受ける場合の特有のリスクや、長期的な視点での治療計画について、分かりやすく説明してくれる医院を選びましょう。

質問に対して真摯に答えてくれるか、デメリットも詳しく話してくれるかが大切です。

料金体系が明確で、追加費用の可能性についても事前に説明してくれる医院なら、金銭的な不安も軽減できるでしょう。

アフターケアと保証制度

インプラント治療は、手術が終わってからが本当のスタートといえます。

ケア次第でインプラントの寿命が大きく左右されるためです。

そのため、定期メンテナンスの体制が整っているか、緊急時の対応はどうなっているかを確認しましょう。

また、保証制度の有無と内容もポイントです。

10年保証などの長期保証がある医院なら、万が一のトラブルにも安心です。

保証内容や保証を受けるための条件もあわせて確認しておきましょう。

20代でのインプラントについてよくある質問

Q&A

インプラント治療について、20代の方からよく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 20代でインプラントをすると老後はどうなりますか?

20代でインプラント治療を受けた場合、適切なメンテナンスを続ければ30代~40代でも問題なく使用できる可能性があります。

その後、50~60代で再治療が必要になることもありますが、技術の進歩で、将来はより良い治療法が登場している可能性もあります。

重要なのは、定期的なメンテナンスと毎日自宅でのケアを欠かさないことです。

口内の健康を保つことで、老後も快適な食生活を送れるでしょう。

Q2. 歯を失った時インプラント以外の選択肢はありますか?

インプラント以外にもブリッジや入れ歯などの選択肢があります。

ブリッジは両隣の歯を削る必要がありますが、治療期間が短く、保険適用なら費用も抑えることが可能です。

入れ歯は安価ですが、違和感や見た目の問題があります。

また、条件が合えば接着ブリッジという、ほとんど歯を削らない治療法もあります。

それぞれにメリット・デメリットがあるため、歯科医師とよく相談して自分に合った治療法を選ぶことが大切です。

まとめ

20代でもインプラント治療は可能ですが、顎骨の成長が完了していること、骨の量と密度が十分であること、全身の健康状態が良好であることが条件となります。

20代でインプラント治療を受けるメリットは、周りの健康な歯を守れること、体力・免疫力があり回復が早いこと、骨造成が不要な場合が多いことです。

一方で、治療費が高額、治療期間が長い、定期的なメンテナンスが欠かせないなどのデメリットもあります。

20代でインプラント治療を考えている方は、下高井戸パール歯科クリニック・世田谷にご相談ください。

日本口腔インプラント学会認定専門医が、長期的な視点でアドバイスします。

CT設備による精密な検査と丁寧なカウンセリングで、リラックスして治療を受けられるように配慮していますので、少しでも気になることがあればお気軽にご来院ください。