
出っ歯に悩んでいる方の中には、「マウスピース矯正で本当に治るの?」と疑問をもつ方は多いのではないでしょうか。
出っ歯といってもさまざまな症例があり、マウスピース矯正で治療可能なケースもあれば、治療が難しいケースもあります。
この記事では、マウスピース矯正による出っ歯の治療について、費用や期間、注意点などわかりやすく解説します。
マウスピース矯正で出っ歯は治るの?

マウスピース矯正による出っ歯の治療は、ケースによっては有効な選択肢です。
一般的に、軽度の出っ歯は、マウスピース矯正で十分な効果が期待できます。
ただし、すべてのケースに有効なわけではなく、出っ歯の原因や程度によって異なります。
しかし軽度であっても改善が見込めないケースもあるため、まずは歯科医師に相談することが大切です。
出っ歯の原因とは

出っ歯(上顎前突)には主に2つの原因があり、それぞれ治療のアプローチが異なります。
遺伝による原因
親や祖父母などの家族に出っ歯の方がいる場合、遺伝的な要素が関係している可能性があります。
遺伝による出っ歯の特徴は以下のとおりです。
- 上あごの骨が大きく成長している
- 下あごの骨が小さい、または後ろに位置している
- 歯が大きく、あごに収まりきらない
- 上下のあごのバランスが悪い
遺伝的な骨格の問題が大きい場合は、マウスピース矯正だけでは改善が難しいこともあります。
特に上あごが前方に大きく成長している場合や、下あごが極端に小さい場合は、ワイヤー矯正や外科手術の併用が必要な場合があります。
生活習慣による原因
日常の何気ない習慣が、出っ歯の原因になることがあります。
具体的な出っ歯を引き起こす主な習慣は、以下のとおりです。
- 長期間の指しゃぶり
- 爪を噛む癖
- 舌で前歯を押す癖
- 口呼吸の習慣
- 頬杖をつく癖
- 下唇を噛む癖
- 舌を前歯の間に挟む癖
習慣が原因の場合、マウスピース矯正で改善できる可能性があります。
ただし、矯正治療と同時に習慣を改善しなければ、治療後に後戻りする可能性があるため注意が必要です。
マウスピース矯正前に出っ歯の程度を判断する基準

オーバージェットという数値を使って、出っ歯の程度を判断します。
オーバージェットとは、上の前歯が下の前歯よりもどれだけ前に出ているかを示すものです。
測定は、上下の前歯を噛み合わせた状態で、上の前歯の先端から下の前歯の表面までの水平的な距離を測ります。
正常な状態では、オーバージェットは2〜3mmです。
オーバージェットが4mm以上になると、出っ歯と診断される傾向があります。
4〜5mmの場合は軽度の出っ歯で、見た目の問題や前歯で食べ物を噛み切りにくくなるなどの機能的な問題が出てくる可能性がある状態です。
それ以上になると、唇が閉じにくくなったり、口呼吸になりやすくなったりします。
マウスピース矯正だけでは治療が難しくなり、抜歯やワイヤー矯正、場合によっては外科手術が必要になるケースもあるでしょう。
ただし、骨格や歯の大きさ、唇の厚さなど、個人差があるため、同じ数値でも見た目の印象は大きく異なります。
正確な診断は、歯科医院にてレントゲン検査や歯型の分析など、総合的な検査を受けることが必要です。
マウスピース矯正で治療できない出っ歯

すべての出っ歯がマウスピース矯正で治せるわけではありません。
次のような場合は、別の治療法を検討する必要があります。
骨格に大きな問題がある場合
上あごの骨が極端に前に出ている、または下あごの骨が極端に小さい・後ろに下がっている場合は、歯を動かすだけでは改善が困難です。
骨格性の出っ歯は、外科手術の併用が必要な場合があります。
骨格性の出っ歯の場合、上あごの骨を後方に移動させる『ルフォーI型骨切り術』や、下あごの骨を前方に移動させる『下顎枝矢状分割術』などの手術が検討されます。
歯が小さすぎる場合
マウスピースは歯にはめ込んで力をかける装置のため、歯が小さいと十分な力が伝わりません。
矮小歯(わいしょうし)と呼ばれる小さな歯や、円錐状の形をした歯の場合、マウスピースがうまくフィットせず、思うように歯が動かないことがあります。
歯が小さい場合の対処として、アタッチメントと呼ばれる小さな突起を歯に付けることで、マウスピースの保持力を高める方法があります。
それでも難しい場合は、ワイヤー矯正の方が適している可能性があるでしょう。
インプラントがある場合
インプラントは人工の歯根をあごの骨に埋め込む治療法です。
一度埋め込まれたインプラントは骨と結合するため、矯正治療で動かすことができません。
前歯にインプラントがある場合は、マウスピース矯正での出っ歯治療は難しくなります。
ただし、インプラント以外の歯を動かすことで、ある程度の改善が可能な場合もあります。
インプラントの位置や本数によって治療できるかどうかが変わるため、マウスピース矯正を始める前に詳しい検査が必要です。
複数本のインプラントがある場合は、矯正治療自体が困難になることがあります。
マウスピース矯正の種類

マウスピース矯正にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
ここでは、主な3つのタイプをご紹介します。
インビザライン
インビザラインは、世界中でもよく使用されているマウスピース矯正システムです。
インビザラインの最大の特徴は、治療開始前に3Dシミュレーションで治療後の歯並びを確認できる点です。
クリンチェックと呼ばれるソフトウェアを使用して、歯がどのように動いていくかを映像で見ることができます。
治療のゴールが明確になるため、モチベーションを保ちやすいでしょう。
全体矯正と部分矯正の両方に対応しており、幅広いケースに適用できます。
インビザラインGO
インビザラインGOは、前歯を中心とした部分矯正に特化したシステムです。
2018年に日本で導入され、軽度の歯並びの問題に対応しています。
治療範囲は前歯から数えて5番目の歯(第二小臼歯)までに限定されています。
奥歯は動かせないため、噛み合わせの大きな改善は期待できません。
しかし、前歯の見た目を改善したいという方には適しているでしょう。
格安マウスピース矯正
最近では、格安のマウスピース矯正サービスも増えています。
キレイライン矯正やhanaravi、Oh my teethなど、さまざまなブランドがあります。
前歯12本程度を対象とした部分矯正が中心で、軽度の歯並びの問題に対応しています。
ただし、治療できる範囲が限定的で、噛み合わせの改善は期待できません。
また、治療前に総費用や期間がはっきりしないことがあり、追加費用が発生する可能性もあるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
出っ歯のマウスピース矯正の注意点

マウスピース矯正で出っ歯を治療する際は、いくつか注意点があります。
治療を成功させるために、次の点をしっかり理解しておきましょう。
装着時間を守る必要がある
マウスピース矯正では、1日20〜22時間マウスピースの装着が必要で、食事と歯磨きの時以外は基本的につけたままにする必要があります。
装着時間が短いと、歯が予定通りに動かないためです。
また、マウスピース矯正は1~2週間ごとにマウスピースの交換が必要ですが、マウスピースを長時間外していると歯が元の位置に戻ろうとし、新しいマウスピースが入らなくなることもあります。
対策として、装着時間を記録したり、交換時期をリマインドしたりする機能があるアプリを使うと、自己管理がしやすくなるでしょう。
外出先でマウスピースを外した際は、必ず専用のケースに入れて保管しましょう。
紛失した場合は、すぐに歯科医院に連絡しましょう。
症状によっては治療できない
マウスピース矯正は万能ではありません。
重度の出っ歯や骨格に問題がある場合は、治療が困難です。
歯周病が進行している場合は、歯周病の治療を優先する必要があります。
また、顎関節症がある場合も注意が必要です。
マウスピース矯正によって噛み合わせが乱れると、顎関節症の症状が悪化することがあります。
事前に顎関節の状態を検査し、必要に応じて顎関節症の治療を行ってから矯正治療を始めなければなりません。
出っ歯と口ゴボの違い

出っ歯(上顎前突)は、主に上の前歯が前方に出ている状態を指します。
上の前歯だけが前に傾いていたり、上あごの骨が前方に位置していたりすることが原因です。
横から見ると、上の前歯だけが目立つのが特徴です。
一方、口ゴボは上下の歯全体が前方に出ており、口元全体が前に突き出して見える状態です。
医学的には「上下顎前突」と呼ばれます。
横顔を見たときに、鼻先とあごを結んだライン(Eライン)よりも唇が前に出ている場合、口ゴボと呼ばれることがあります。
口ゴボの原因は、歯の傾きだけでなく、上下のあごの骨が前方に位置していることが多いです。
そのため、マウスピース矯正だけでは十分な改善が難しく、抜歯を伴う矯正治療や、場合によっては外科手術が必要になることもあります。
マウスピース矯正による出っ歯治療についてのよくある質問

マウスピース矯正による出っ歯治療について、よくある質問をまとめました。
Q1:マウスピース矯正で出っ歯は悪化しますか?
適切な治療計画のもとで行えば、出っ歯が悪化する可能性は低いでしょう。
しかし、歯のガタガタを前方向に広げて整える『前方拡大』という方法で、もともと出っ歯の方に用いると、さらに前歯が前に出てしまう可能性があります。
他にも、経験の少ない歯科医師による不適切な治療計画や、装着時間を守らなかった場合は、思わぬ結果になることがあります。
こうした失敗を防ぐためには、信頼できる歯科医院を選ぶことが重要です。
Q2:歯ぎしり用マウスピースを使うと出っ歯になりますか?
歯科医院で作製した歯ぎしり用マウスピースは、歯を保護するためのもので、歯を動かす力はありません。
適切に作られたものであれば、出っ歯になる心配はほとんどないでしょう。
ただし、市販のマウスピースは要注意です。
お湯で温めて歯に合わせるタイプのものは、個人の歯に正確に合わせることが難しく、長期間使用すると歯に悪影響を与える可能性があります。
Q3:マウスピース矯正で治る出っ歯か見極める方法はありますか?
自分で状態を判断するのは難しいため、歯科医院での診断が必要です。
歯科医院によっては、矯正相談を実施しており、初回は無料のところも少なくありません。
診断では、レントゲン撮影で骨格の状態を確認し、歯型を取って今の歯並びを分析します。
近年は、口腔内スキャナーを使って、その場で簡単なシミュレーションを見せてくれる歯科医院もあります。
まずは一度歯科医院で相談してみましょう。
まとめ
マウスピース矯正による出っ歯の治療は、ケースによっては有効な選択肢となります。
一般的に軽度の出っ歯では十分な効果が期待できますが、すべてのケースに適応があるわけではありません。
出っ歯の原因が遺伝的な骨格である場合や歯が小さすぎる場合、インプラントが入っている場合は、マウスピース矯正のみでの治療は困難です。
出っ歯の治療を考えている方は、まず専門医の診断を受けましょう。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、マウスピース矯正の経験豊富な医師が、症状に合わせた治療法を提案します。
無料相談も実施しているため、出っ歯で悩んでいる方は一度ご相談ください。