マウスピース矯正は虫歯になりやすい?原因と対処法を解説

マウスピースをつける人

マウスピース矯正を検討中の方や、すでに治療を始めている方にとって、虫歯は心配事の一つではないでしょうか。

マウスピース矯正をすると虫歯になりやすいと耳にして、余計に不安に感じた方もいるでしょう。

そこでこの記事では、マウスピース矯正と虫歯の関係について、なぜ虫歯になりやすいと言われるのか、その原因と対処法、予防策まで解説します。

マウスピース矯正は虫歯になりやすい?

悩んでいる女性

結論から言うと、マウスピース矯正はワイヤー矯正と比べて虫歯になりにくい治療法ですが、ケアを怠ると虫歯になるリスクが高まることも事実です。

マウスピース矯正の大きな特徴は、装置を自由に取り外せることです。

食事や歯磨きの際にマウスピースを外せるため、ワイヤー矯正のように装置に食べかすが引っかかる心配がありません。

歯ブラシが届きにくい部分も少なく、通常どおりの歯磨きが可能となります。

しかし、ケアを怠ると虫歯の原因となってしまいます。詳しい原因については次項で見ていきましょう。

虫歯の原因とは?放置するリスクや治療法を紹介

マウスピース矯正で虫歯になりやすい3つの主な原因

歯を押さえる女性

マウスピース矯正中に虫歯リスクが高まる原因は主に3つあります。

唾液の作用が機能しなくなる

唾液には、殺菌作用と食べかすを洗い流す自浄作用をもっています。

さらに、歯の表面を修復する働きもあるため、虫歯予防には欠かせません。

一般的に、唾液は1日に1〜1.5リットル分泌され、口の中を常に潤しながら細菌の繁殖を抑えています。

しかし、マウスピースを長時間装着していると、歯が唾液に触れる時間が大幅に減ります。

その結果、唾液の作用を受けにくくなり、虫歯になるリスクが高まってしまうのです。

特に就寝中は唾液の分泌量が減るため、夜間のマウスピース装着時は虫歯リスクがさらに高くなります。

マウスピース自体の汚れによる影響

マウスピースは1日20〜22時間装着するため、マウスピース自体をキレイにしておかないと細菌の温床になってしまいます。

食事の際に外したマウスピースをそのまま放置したり、水洗いだけで済ませたりすると、唾液や食べかすが付着したままになります。

繁殖した細菌が歯に密着した状態が長時間続くことになるわけです。

歯のケアだけでなくマウスピース自体のケアもきちんと行うようにしましょう。

不十分なケアのままマウスピースを装着

食後に歯磨きをせずにマウスピースを装着すると、食べかすや糖分が歯とマウスピースの間に閉じ込められます。

この状態が20時間以上続けば、細菌が糖分をエサに増殖し、歯を溶かす酸を作り出し、虫歯の原因になってしまいます。

食事や間食の後に簡単なうがいだけで済ませてマウスピースを装着する方も多いですが、不十分です。

プラークは粘着性が高く、うがいだけでは除去できません。

毎日の歯磨きだけに加え、歯科医院で定期的にメンテナンスを受けることが大切です。

マウスピース矯正前に虫歯がある場合の対処法

治療をする歯科医師

マウスピース矯正を始める前に虫歯が見つかることは珍しくありません。

ここでは、虫歯が見つかった場合どのように対処するのかを解説します。

基本的には虫歯治療を優先する

マウスピース矯正を始める前に虫歯が見つかった場合、基本的には虫歯治療を優先することになります。

理由は、以下のとおりです。

  • 治療中に虫歯が進行してしまう可能性があるため
  • 矯正中に虫歯治療を行うと、歯の形が変わりマウスピースが合わなくなるため

虫歯は自然に治ることはなく、放置すれば徐々に進行します。

初期の虫歯であっても、マウスピース矯正中の口内環境では進行が早まる可能性が高いでしょう。

また、虫歯治療では、詰め物やかぶせ物、歯を削る治療を行うことがあります。

元の歯の形に合わせたマウスピースが治療後に合わなくなり、再びマウスピースを作る必要が出てくるため、矯正前に治療した方が金銭面でもメリットがあります。

軽度の虫歯なら経過観察で矯正開始も可能

ごく初期の虫歯で、歯の表面が少し変色している程度であれば、経過観察をしながら矯正治療を開始できる場合もあります。

『初期う蝕』と呼ばれ、適切なケアを行えば進行を止めることができ、場合によっては再石灰化により改善することもあります。

ただし、定期的な観察を行い、少しでも進行の兆候があれば、すぐに治療が必要です。

経過観察となった場合は、いつも以上に丁寧なケアが必要です。

フッ素入り歯磨き粉の使用、歯科医院での定期的なフッ素塗布、食生活の見直しなど、積極的な予防策を実践することが求められます。

マウスピース矯正中に虫歯になったときの対処法

歯科医院内の歯科医師と患者

マウスピース矯正中に虫歯が発見された場合、虫歯の進行度や位置により対処法が異なります。

虫歯の進行度は、以下に分けられています。

  • C0:初期のむし歯
  • C1:むし歯が表層のエナメル質まで達した状態
  • C2:むし歯が内側の象牙質まで達した状態
  • C3:むし歯が神経まで達した状態
  • C4:むし歯が歯の根まで達した状態

C0〜C1の初期虫歯の場合、フッ素塗布や適切なブラッシングで、矯正治療を継続しながらの管理が可能です。

定期的に経過観察を行い、進行していないことを確認しながら矯正を進めます。

C2の中程度の虫歯では虫歯の部分を削り、詰め物をする必要がありますが、削る量が少なければマウスピースの適合に影響しないこともあります。

治療は通常1〜2回の通院で完了し、すぐに矯正治療を再開できることが多いです。

C3の重度の虫歯では、神経まで達しているため歯の根や神経を治療する根管治療が必要になります。

この場合、虫歯治療が優先され、矯正治療は一時中断です。根管治療は複数回の通院が必要で、治療期間も1〜2ヶ月かかることがあります。

治療後は被せ物をするため、マウスピースの作り直しが必要になることがほとんどです。

C4まで進行してしまった場合は、抜歯が必要になることもあります。

抜歯により歯並びが大きく変わるため、矯正計画の大幅な見直しが必要になります。

マウスピース矯正中の虫歯予防法7つ

マウスピースと歯ブラシ

ここでは、マウスピース矯正中にできる虫歯予防7つをご紹介します。

1. 飲食中はマウスピースを必ず外す

食事や間食の際は、必ずマウスピースを外しましょう。

「ちょっとだけなら」と思っても、マウスピースを装着したまま飲食すると、食べかすや糖分がマウスピース内に閉じ込められ、虫歯の原因となります。

飴やガムなども、マウスピースを外してから食べる必要があります。

どうしても間食したい場合は、短時間で食べ終わり、すぐに歯磨きができるタイミングを選ぶようにしましょう。

水以外の飲み物を飲む時も、マウスピースは外すことが大切です。

特に炭酸飲料は酸性度が高く、歯の表面を溶かしやすいため要注意です。

2. 積極的に水を飲む

口内の乾燥を防ぐために、こまめに水分補給を心がけましょう。

水分補給により唾液の分泌が促進され、虫歯になりにくい口内環境を保つことができます。

マウスピース装着中でも、糖分を含まない水であれば飲んでも問題ありません。

特に起床時、食後、就寝前の水分補給は大切です。

また、エアコンの効いた部屋で過ごす時間が長い方は、意識的に水分補給の回数を増やすようにしましょう。

3. マウスピース装着前は歯磨きをする

食後は歯磨きをしてからマウスピースを装着しましょう。

歯に汚れが残ったままマウスピースを装着すると、細菌が繁殖しやすい環境を作ってしまいます。

歯の表面だけでなく、歯と歯茎の境目、歯の裏側、奥歯の溝など、すべての面を意識して磨くことが大切です。

外出先で歯磨きが難しい場合でも、うがいをして口内をすすいだり、キシリトール配合のガムを噛んで唾液の分泌を促すとよいでしょう。

4. デンタルフロスや歯間ブラシを使用する

歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れを完全に取り除くことはできません。

歯ブラシのみでは歯垢の約60%しか除去できないと言われています。

デンタルフロスや歯間ブラシを使用することで、除去率を80%程度まで高めることができます。

アタッチメント周辺も汚れがたまりやすいため、タフトブラシ(毛束が1つの小さなブラシ)を使用して清掃することもおすすめです。

5. フッ素塗布・フッ素入り歯磨き粉を活用する

フッ素は歯の再石灰化を促進し、初期虫歯の進行を抑える働きがあります。

日本で販売されている歯磨き粉の多くにフッ素が配合されていますが、濃度を確認して選ぶことが大切です。

成人の場合、市販であれば1400~1500ppmの高濃度フッ素配合歯磨き粉を歯ブラシ全体の1.5~2㎝使用することが推奨されています。

歯磨き後のうがいは1回程度にとどめ、フッ素を意図的に歯に残すようにしましょう。

歯科医院で定期的にフッ素塗布を受けることも一つの選択肢です。

歯科医院では9000ppm以上の高濃度フッ素を使用するため、家庭でのケアよりも強力な予防効果が期待できます。

6. マウスピースのお手入れをする

マウスピース自体の清潔さを保つことも、虫歯予防には欠かせません。

マウスピースには唾液や食べかすが付着し、放置すると細菌が繁殖してしまいます。

お手入れは、使用後すぐに指で優しくこすりながら水で洗い流しましょう。

マウスピースが変形する原因となるため、熱湯は避け、週に2〜3回は、専用の洗浄剤を使用してきれいにするとよいです。

保管する際は、清潔な専用ケースに入れ、乾燥した状態で保管しましょう。湿った状態で保管すると、カビや細菌が繁殖する原因となります。

ケース自体も定期的に洗浄し、清潔に保つようにしましょう。

7. 定期検診とクリーニングを受ける

矯正治療中も、定期的な歯科検診は欠かせません。

口内の状況によって異なりますが、1〜2ヶ月に1回の頻度での受診がおすすめです。

歯科医院でのクリーニングでは、自分では取り除けない歯石や着色を除去することができます。

また、新たな虫歯の早期発見も可能です。

初期虫歯であれば、削らずにフッ素塗布などの予防処置で対応できることが多いため、矯正治療への影響を抑えることができます。

マウスピース矯正中の虫歯に関するよくある質問

Q&A

マウスピース矯正中の虫歯に関するよくある質問をまとめました。

Q1. マウスピース矯正で虫歯になりやすい箇所はどこですか?

虫歯になりやすい箇所は、歯と歯の間、歯と歯茎の境目、奥歯の溝、アタッチメント周辺、被せ物や詰め物の境目です。

特に注意が必要なのは歯と歯の間です。

歯ブラシが届きにくく、マウスピースで唾液の流れが妨げられるため、通常より虫歯リスクが高くなります。

歯と歯茎の境目もプラークがたまりやすく、磨き残しが多い場所です。

アタッチメントを装着している場合は、周りに段差ができて汚れがたまりやすくなるため、丁寧なケアが必要です。

Q2. 間食の頻度や甘い飲み物はどう管理すべきですか?

間食の回数は1日1〜2回程度に抑えましょう。

間食のたびにマウスピースを外し、歯磨きをする必要があるため、頻繁な間食は虫歯リスクを高めるだけでなく、マウスピースの装着時間も短くなってしまいます。

間食をする場合は、できるだけ食事の直後にまとめて摂るようにし、だらだら食べを避けることが大切です。

甘い飲み物については、マウスピース装着中は完全に避けるべきです。

ジュース、スポーツドリンク、加糖コーヒーなどは、糖分が歯とマウスピースの間に残り、虫歯菌の餌となってしまいます。

Q3. マウスピース矯正中に虫歯以外の口内トラブルはありますか?

虫歯以外の口腔トラブルとして、歯周病、口内炎、知覚過敏、口臭、顎関節症などがあります。

歯周病は、プラークの蓄積により歯茎が腫れたり出血したりします。

口内炎は、マウスピースの縁が口腔粘膜に当たって発生し、新しいマウスピースに交換した直後は注意が必要です。

知覚過敏は歯が動くことで一時的に起こりますが、多くは時間とともに改善します。

清掃不良による口臭も起こりやすいため、マウスピース自体の洗浄も大切です。

まとめ

マウスピース矯正は取り外しができるため、ワイヤー矯正より虫歯になりにくい傾向があります。

しかし、歯やマウスピース自体のケアが不十分だと虫歯のリスクが高まるため、丁寧なケアを心がけましょう。

虫歯予防には、飲食時のマウスピース取り外し、こまめな水分補給、装着前の歯磨き、デンタルフロスの使用、フッ素の活用、マウスピースの適切なお手入れ、定期検診が重要です。

マウスピース矯正中の虫歯が心配な方は、予防管理を徹底している歯科医院での治療がおすすめです。

下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、矯正治療中も虫歯予防に力を入れ、定期的なチェックと専門的なケアを実施しています。

虫歯リスクを抑えながら、美しい歯並びを目指しましょう。