
スポーツを楽しむ際、歯や顎のケガをすることは少なくありません.
特にラグビーやボクシング、バスケットボールなど接触の多い競技では、歯が折れたり顎を痛めたりするリスクが高くなります。
そんな中、スポーツマウスガードはスポーツで口内がケガをするリスクを抑えてくれます。
しかし「費用はどのくらいかかるの?」「市販品と歯科医院で作るものは何が違うの?」といった疑問がある方は多いのではないでしょうか。
本記事では、スポーツマウスガードの基本的な知識から歯科医院での作製費用、市販品との違い、お手入れ方法まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
スポーツマウスガードとは

スポーツマウスガードは、スポーツ中に歯や顎を守るために装着する装置です。
シリコンなどの柔らかい素材で作られており、主に上の歯全体を覆うような形状になっています。
ラグビーやボクシング、アメリカンフットボールなど、接触の多いスポーツでよく使用されており、装着が義務付けられているスポーツもあります。
近年では、サッカーやバスケットボール、野球など、これまではあまり使用されていなかった競技でも、安全性を高めるためにスポーツマウスガードの使用が推奨されるようになってきました。
スポーツマウスガードの役割

スポーツマウスガードの役割は、外からの衝撃を吸収・分散させることです。
スポーツ中に起こる激しい接触や衝突による歯や口内のケガのリスクを抑える働きがあります。
また、スポーツ中は無意識に歯を食いしばることが多く、通常の数倍の力がかかることもあります。
そんな強い食いしばりから歯を保護し、歯の摩耗や損傷を防ぐのもスポーツマウスガードの役割です。
スポーツマウスガードの装着が義務・推奨されている競技

マウスガードの装着が義務付けられている主な競技は以下のとおりです。
- アイスホッケー(すべての選手)
- アメリカンフットボール(すべての選手、白・肌色・透明は不可)
- キックボクシング(すべての選手)
- ボクシング(すべての選手、赤色は不可)
- ラグビー(U-15中学・U-18高校、赤色は不可)
- ラクロス(女子のみ)
また、推奨・許可されている競技は以下のとおりです。
- 硬式野球(高校生、白・透明のみ)
- サッカー(特に女子サッカーで推奨)
- バスケットボール(透明のみ)
- 空手(一部団体)
上記のとおり、競技によって色の規定も異なるため、事前に確認することが大切です。
スポーツマウスガードの種類と費用

スポーツマウスガードには大きく分けて2つのタイプがあり、費用や特徴が異なります。
市販のスポーツマウスガード(1,000円〜5,000円)
スポーツ用品店やドラッグストア、オンラインショップで手軽に購入できるスポーツマウスガードです。
お湯で温めて柔らかくし、自分の歯型に合わせて成形するボイル&バイトタイプが一般的になります。
市販のスポーツマウスガードのメリットは以下のとおりです。
- 価格が安い
- すぐに手に入る
- 初心者でも試しやすい
一方で、デメリットは以下のとおりです。
- フィット感が不十分
- 外れやすい
- 呼吸や発音がしにくい
- 保護効果が低い
- 耐久性が劣る
歯科医院で作るカスタムメイドのスポーツマウスガード(15,000円〜50,000円)
歯科医院で個人の歯型を採取して作製する完全オーダーメイドのタイプです。
歯科医院で作るオーダーメイドのマウスガードは、15,000円〜50,000円程度が目安になります。
費用の内訳は、医院や地域によって異なりますが、一般的な価格帯は以下のとおりです。
- 単色タイプ:15,000円〜20,000円
- 2、3色のデザインタイプ:20,000円〜30,000円
- 特殊デザインやプレミアムタイプ:30,000円〜50,000円
歯科医院によってはリーズナブルな価格で提供している場合もあります。
また、スポーツマウスガードの作製は、保険適用外のため全額自己負担となります。
スポーツマウスガードの装着で期待できる効果

スポーツマウスガードには、単に歯を守るだけでなく、さまざまな効果があります。
歯や口内のケガのリスクを抑える
激しい衝突や接触のあるスポーツの場合、歯が折れたり欠けたりするリスクは高くなります。
特に前歯は衝撃を受けやすく、一度失ってしまった歯を元に戻すことはできません。
しかし、マウスガードを装着すると、衝撃が分散されて歯を失うリスクを抑えることができます。
また、歯だけでなく唇や頬、舌といった口の中の柔らかい部分も、スポーツ中にケガをする可能性があります。
そこでマウスガードはクッションのような働きをして、口の中の切り傷や出血を減らしてくれるわけです。
脳震盪のリスク軽減
頭部や顎への強い衝撃は、振動となって頭部に伝わり、脳震盪を引き起こす可能性があります。
マウスガードは顎や歯を通じて伝わる衝撃を吸収・分散することで、頭部への振動を和らげる働きがあります。
脳震盪は一度起こすと再発しやすくなるため、予防がとても大切です。
特にラグビーやアメリカンフットボールのような激しいコンタクトスポーツでは、選手の健康を考えると、マウスガードの使用は欠かせないと言えるでしょう。
顎関節の保護
顎関節は、強い衝撃を受けると損傷しやすい部位です。
マウスガードは顎に加わる圧力を分散させ、一点に集中する衝撃を和らげます。
顎関節症の予防にもつながります。
歯科医院で作るスポーツマウスガードの特徴

歯科医院で作製するカスタムメイドのマウスガードには、市販品にはない次のような特徴があります。
カスタムメイドによるフィット感
歯科医院では、専門的な技術で精密な歯型を採取します。
歯型をもとに、一人ひとりの歯並びや顎の形状に合わせたマウスガードを作製します。
市販のスポーツマウスガードと比べて、装着時の違和感が少なく、長時間使用しても疲れにくいのが特徴です。
また、競技中に外れる心配もほとんどありません。
高い保護性能と耐久性
歯科医院で作るオーダーメイドのマウスガードは、歯型や口内にぴったりとフィットし、高い保護性能が期待できる点も特徴です。
また、高品質な素材を使用しているため、市販品と比べて耐久性も優れています。
きちんとお手入れをすれば、1年以上使用することも可能です。
呼吸や発音への影響が少ない
歯科医院で製作されたカスタムメイドのスポーツ用マウスガードは、口内にぴったりとフィットするように作られています。
そのため、呼吸や発音に与える影響を抑えられ、競技中のコミュニケーションや、激しい運動時の呼吸に支障をきたしにくくなっています。
チームスポーツにおいてコミュニケーションに支障をきたさない点は大切な要素でしょう。
歯科医院でのスポーツマウスガード作製の流れ

歯科医院でのマウスガード作製は、一般的に2〜3回の通院で完了します。
1:初診・口腔内診査
はじめに歯科医師が口内の状態を調べます。
虫歯や歯周病が見つかった場合は、マウスガードを作製する前に治療を行うことが推奨されます。
治療で歯の形が変わると、せっかく作ったマウスガードが合わなくなる可能性があるためです。
また、どのようなスポーツを行っているか、ポジションは何か、使用頻度はどの程度かなど、詳しく聞き取ります。
2:マウスガードの種類・色選び
競技の特性や個人の好みに応じて、マウスガードの種類や色を選びます。
スポーツによっては使用できる色に制限があるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
マウスガードの色は、単色のシンプルなものから、複数の色を組み合わせたデザイン性の高いものまでさまざまな選択肢があります。
3:型取り
型取りはマウスガードのフィット感を左右する大切な作業です。
専用の材料を使用して、精密な歯型を採取します。型取り自体は10〜15分程度で完了します。
4:完成・フィッティング調整
製作期間は、およそ10日間です。
完成したマウスガードを実際に装着し、噛み合わせや頬・歯茎への当たり具合を確認します。
必要に応じて微調整を行い、違和感なくフィットするマウスガードに仕上げます。
スポーツマウスガードと歯ぎしり用マウスピースの違い

スポーツマウスガードと歯ぎしり用のマウスピースは、見た目は似ていますが、まったく異なる目的で作られています。
用途の違い
歯ぎしり用のマウスピースは、主に睡眠時に使用されるものです。
無意識のうちに行われる歯ぎしりや食いしばりから歯や顎を守ることが目的で使われます。
一方、スポーツ用マウスガードは、運動中における激しい衝撃や衝突から歯を守るために使用されます。
素材と厚さの違い
歯ぎしり用マウスピースは、硬めの素材で薄く作られています。長時間装着しても違和感が少ないことが重要なためです。
一方で、スポーツ用マウスガードは、衝撃吸収性を高めるため、柔らかい素材で厚め(通常2〜4mm)に作られています。
装着感の違い
歯ぎしり用は睡眠中の快適性を重視し、できるだけ薄く軽量に作られています。
スポーツ用は保護性能を優先するため、しっかりとした厚みがあり、口内の広範囲をカバーします。
スポーツマウスガードのお手入れ方法

虫歯や歯周病などを防ぐためにも、スポーツマウスガードを清潔に保つことは大切です。
次の内容を参考に、使用ごとにスポーツマウスガードをお手入れしましょう。
基本的な洗い方
使用後の基本的なお手入れ方法は以下のとおりです。
- 流水でしっかりとすすぐ
- 柔らかい歯ブラシや指で優しく汚れを落とす
- ティッシュやガーゼで水分を拭き取る
- 専用ケースに入れて保管する
注意点として、歯磨き粉は研磨剤が含まれているため使用を避けましょう。
細かい傷がつき、雑菌が繁殖する原因になります。
臭いや雑菌が気になる場合は、マウスガード専用の洗浄剤や入れ歯洗浄剤を使用することをおすすめします。
保管時の注意点
マウスガードは熱に弱い素材でできているため、保管時は以下の点に注意が必要です。
- 直射日光の当たる場所を避ける
- 車内など高温になる場所に放置しない
- 暖房器具の近くに置かない
- 熱湯での洗浄は絶対に避ける
外したら専用のケースに入れて、涼しく乾燥した場所で保管しましょう。
使用時の注意点
マウスガードを装着したまま、糖分を含むスポーツドリンクを飲むのは避けましょう。
歯とマウスガードの間に糖分が残り、虫歯の原因になります。
スポーツドリンクを飲む際は、一度マウスガードを外し、飲んだ後は水でうがいをしてから再装着することが大切です。
スポーツマウスガードの寿命と交換時期

マウスガードは消耗品であり、定期的な交換が必要です。
一般的な交換頻度(6ヶ月〜1年)
目安として、大学生以上の成人は1年に1回の頻度で作り直すとよいです。
一方、中高生の場合は成長にともなって歯並びが変化してくる場合があるため、定期的な検診と歯科医師による指導のもと、必要に応じて再製作をおすすめします。
使用頻度や競技の激しさによって交換時期は異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。
- 激しいコンタクトスポーツ:6ヶ月〜1年
- 中程度の接触がある競技:1年〜1年半
- 接触の少ない競技:1年半〜2年
交換が必要なサインと定期チェック
交換が必要なサインは以下のとおりです。
- ひび割れや穴が開いている
- 変形して元の形に戻らない
- 装着時にゆるくなってきた
- 変色がひどい
- 臭いが取れない
定期的に歯科医院でチェックを受けることで、適切な交換時期を判断できます。
スポーツマウスガードについてよくある質問

スポーツマウスガードについてよくある質問をまとめました。
Q1:スポーツマウスガードの作製では保険は適用されますか?
スポーツマウスガードの作製には保険が適用されず、全額自己負担となります。
治療目的ではなく予防目的での使用となるためです。
ただし、初期費用が高くても、歯の損傷による治療費を考えると、長期的にはコストパフォーマンスが良いといえるでしょう。
Q2:スポーツマウスガードは子供も歯科医院で作製できますか?
はい、作製可能です。
小学生から高校生まで、年齢に関係なく作ることができます。
ただし、成長期の子どもは歯の生え変わりや顎の成長があるため、大人より頻繁に作り直す必要があります。
特に永久歯への生え変わり時期は、3〜6ヶ月ごとにチェックを受け、必要に応じて再作製することが推奨されます。
Q3:スポーツマウスガードの作製期間はどのくらいかかりますか?
一般的に、初診から完成まで約2週間かかります。
歯科医院によっては急ぎの対応も可能です。
試合日が近くて急遽必要な場合など2~3日で完成させたい場合、追加料金で対応してくれる医院もあります。
しかし、大会や試合の予定がある場合は、余裕をもって1ヶ月前には相談しましょう。
まとめ
スポーツマウスガードは、スポーツ中の歯や顎のケガを防ぐための保護装置です。
市販品は1,000円〜5,000円と手軽に購入できますが、フィット感が不十分で外れやすく、保護効果も低いという欠点があります。
一方、歯科医院で作るカスタムメイドのマウスガードは15,000円〜50,000円と市販と比べて高額ですが、違和感のないフィット感や高い保護性能、耐久性を備えています。
スポーツマウスガードは、歯や口内のケガ予防だけでなく、脳震盪のリスク軽減や顎関節の保護にもつながるためスポーツ時には装着がおすすめです。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、フルオーダーメイドのスポーツマウスガードを提供しています。
スポーツマンを応援する当院では、1回目の来院で検診と歯の型取り(約3,000〜4,000円)、7〜10日後に納品という流れで対応しています。
スポーツマウスガードの作製を検討している方は、ぜひ当院での作製をご検討ください。