
球技や格闘技では、ボールが当たったり相手とぶつかったりして、歯が欠けたり折れたりする危険性があります。
そんな時に頼りになるのがスポーツマウスガードです。
しかし、いざマウスガードを選ぼうと思っても、種類が多くてどれを選べばいいか迷ってしまいますよね。
スポーツ用品店で売っている安いものから、歯科医院で作る高価なものまで、価格も性能もさまざまです。
この記事では、スポーツマウスガードの基本的な知識から、市販品とカスタムメイドの違い、選び方のポイントまでわかりやすく解説します。
スポーツマウスガードとは?

スポーツマウスガードは、運動中に歯や口の中を守るための保護具です。
シリコンやEVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)という柔らかい素材で作られており、主に上の歯全体を覆うように装着します。
ボールが顔に当たったり、相手選手とぶつかったりした時の衝撃を吸収し、歯の折れや欠けのリスクを軽減します。
スポーツマウスガードの種類

スポーツマウスガードには大きく分けて『市販品』と『カスタムメイド』の2種類があります。
それぞれに特徴があり、メリット・デメリットを理解したうえで選ぶことが大切です。
市販品(既製品)のマウスガード
市販品は、スポーツ用品店やインターネットで手軽に購入できるタイプです。
価格は1,500円〜5,000円程度と比較的安価で、すぐに使い始められるのが魅力です。
また、市販品のマウスガードには、ストックタイプ、マウスフォームドタイプ(ボイル&バイト)があります。
ストックタイプ
ストックタイプは、既に形が決まっているゴム製の製品で、購入してそのまま口に入れて使用します。
価格は1,000円〜2,000円程度と安く、特別な準備も必要ありません。
しかし、個人の歯並びに合わせて作られていないため、フィット感が悪く、常に噛んでいないと落ちてしまいます。
呼吸や会話もしづらく、本来の保護効果を十分に発揮できません。
また、噛み合わせの位置が定まらないため、かえって顎に負担をかけることもあります。
長時間の使用では顎が疲れやすく、実際の競技には向いていないのが実情です。
マウスフォームドタイプ(ボイル&バイト)
お湯で温めて柔らかくしてから、自分の歯型に合わせるタイプです。
お湯に浸して柔らかくなったら口に入れて噛み、歯型をつけます。
価格は2,000円〜5,000円程度で、ストックタイプよりもフィット感が高めです。
ただし、うまく成形するには慣れが必要で、温度を誤ると火傷の危険もあります。
また、素人が調整するため噛み合わせが適切でない場合が多く、顎関節に負担をかける可能性があります。
耐久性も低めで、3〜6ヶ月で交換が必要になることが多いです。
それでも、ストックタイプと比べれば格段に使いやすいため、初めてマウスガードを使う人には選ばれやすいタイプです。
歯科医院で作るカスタムメイドのマウスガード
カスタムメイドは、歯科医院で歯型を取って作るオーダーメイドのタイプです。
歯科医師や歯科技工士が専門的に製作するスポーツマウスガードのため、市販品と比べて保護効果と快適性の点で優れています。
バキュームタイプ(シングルレイヤー)
1枚のマウスガードシートを加熱し、歯型に吸着させて作る基本的なタイプです。
個人の歯型にフィットするため、装着感が良く、呼吸や会話への影響も小さいです。
製作工程がシンプルなため、カスタムメイドの中では比較的安価(1万円〜2万円程度)で、1〜2週間で完成します。
シートの厚さは競技に応じて2〜4mmから選べますが、1枚のシートで作るため、部分的に厚みを変えることはできません。
それでも、多くのスポーツにおいて十分な保護効果を発揮し、コストパフォーマンスに優れた選択肢といえます。
ラミネートタイプ(マルチレイヤー)
複数枚のシートを重ねて作る高機能タイプです。
前歯部分を厚くして保護力を高め、奥歯部分を薄くして装着感を良くするなど、部位ごとに調整できます。
チームカラーや名前、背番号を入れることも可能です。
費用は2万円〜4万円程度と高めですが、激しい接触のあるスポーツには最適です。
自分だけのオリジナルデザインにできるため、モチベーション向上にもつながります。
埋没填入タイプ
入れ歯を作るのと同じような方法で製作するスポーツマウスガードです。
細部まで精密に作ることができ、高いフィット感と耐久性を実現します。
費用は3万円〜5万円程度と高額ですが、長期間使用でき、プロ選手にも愛用されています。
対応できる歯科医院は限られていますが、高い品質を求める方にはおすすめです。
スポーツマウスガードの選び方

マウスガードを選ぶ際は、競技内容、年齢、費用対効果を考慮することが大切です。
適切なマウスガードを選ぶことで、ケガのリスクを抑えてスポーツに打ち込むことができます。
競技内容で選ぶ
マウスガードを選ぶ際は、競技に合ったものを選ぶことが大切です。
格闘技や激しい接触のあるスポーツ(ボクシング、ラグビー、アメリカンフットボールなど)では、厚みのあるラミネートタイプがおすすめです。
バスケットボールやサッカーなど中程度の接触があるスポーツでは、バキュームタイプで十分な保護効果が得られるでしょう。
野球やゴルフ、陸上競技など接触の少ないスポーツでは、薄めで軽量のタイプがよいです。
ただし、高校野球では白色か透明のみ使用可能という規定があるため注意が必要です。
年齢・成長期を考慮して選ぶ
成長期の子どもは歯並びや顎の大きさが変化するため、3〜6ヶ月ごとのチェックが必要です。
頻繁な交換が必要なため、成長期は比較的安価な市販品を使ってスポーツマウスガードに慣れ、成長が落ち着いてからカスタムメイドに切り替える選択肢もあります。
ただし、競技の種類やレベルによっては、機能の高さを優先して最初からカスタムメイドを選ぶことをおすすめします。
費用対効果で選ぶ
市販品は安価で手に入れることができますが、3〜6ヶ月で交換が必要です。
一方、カスタムメイドは初期費用が高くても、接触の少ないスポーツでは1〜2年使用できる場合もあることを考えると、長期的に見て費用対効果が高い場合があります。
また、歯の治療費を考えれば、良質なマウスガードへの投資は決して高くないと言えるでしょう。
スポーツ中に前歯が1本折れた場合、治療費が数万円から数十万円かかることもあります。
高品質なスポーツマウスガードは、将来発生しうる高額な治療費を防ぐ有効な予防策です。
スポーツマウスガードの効果

スポーツマウスガードを装着することで、さまざまな保護効果が期待できます。
外部からの衝撃を和らげる
スポーツマウスガードの主な役割は、衝撃を吸収・分散させることです。
ボールや相手選手との接触時の衝撃を和らげ、歯や顎、脳への影響を抑えます。
歯の損傷・破折を防ぐ
直接的な衝撃だけでなく、転倒時に上下の歯が強くぶつかることによる損傷も防ぎます。
特に前歯は折れやすいため、マウスガードの保護効果は大切です。
前歯が折れると、見た目の問題だけでなく、発音や食事にも支障をきたします。
顎関節を保護する
下顎への衝撃を吸収し、顎関節への負担を軽減します。
適切な噛み合わせの位置を維持することで、顎関節の負担軽減にもつながります。
特に格闘技やコンタクトスポーツの選手は、顎への打撃を避けることは難しいため、マウスガードによる保護は重要です。
脳震盪のリスクを軽減する
スポーツマウスガードが衝撃を吸収することで、脳震盪のリスクを低下させる効果があるとされています。
下顎への衝撃が頭蓋骨に伝わる際、スポーツマウスガードが一定の衝撃を吸収します。
ただし、完全に防げるわけではないので過信は禁物です。
スポーツマウスガードを使用するときの注意点

スポーツマウスガードを効果的に使用するためには、正しい使い方とメンテナンスが大切です。
ここでご紹介する内容を参考にして、機能を損なわないようにしましょう。
正しく装着する
上の歯全体をしっかりと覆い、ズレないように装着します。
カスタムメイドのスポーツマウスガードなら、正しく装着できていれば口を開けても落ちることはありません。
装着時に違和感や痛みがある場合は、無理に使用を続けず、歯科医院で調整してもらいましょう。
清潔に保管する
使用後は必ず流水で洗い、しっかりと乾燥させてから専用ケースに保管します。
週1〜2回は柔らかい歯ブラシで丁寧に洗浄しましょう。その際、熱湯での洗浄は変形の原因となるので避けてください。
汚れや臭いが気になる場合は、マウスガード専用洗浄剤や入れ歯洗浄剤も使用できます。
定期的に交換する
使用頻度にもよりますが、激しいスポーツでは3〜6ヶ月、そうでない場合でも1年を目安に交換しましょう。
また、ひび割れや変形、変色が見られたら、期間に関わらず新しいものに交換してください。
成長期の子どもは、3ヶ月ごとにフィット感をチェックすることが推奨されます。
使用時に気をつけること
スポーツマウスガードを装着したまま飲食することは避け、スポーツ中以外は外しておきましょう。
特に糖分を含む飲み物は虫歯の原因となります。
また、他の人とマウスガードを共有するのは避け、自分で改造や加工もしないようにしてください。
調整が必要な場合は、必ず歯科医院で行ってもらいましょう。
スポーツマウスガードについてよくある質問

スポーツマウスガードについてよくある質問についてまとめました。
Q1:歯ぎしり用とスポーツ用マウスガードの違いは何ですか?
歯ぎしり用は睡眠中の歯ぎしりから歯を守るため、硬く薄い素材(1〜2mm)で作られています。
一方、スポーツ用は外部からの衝撃を吸収するため、柔らかく厚い素材(3〜5mm)で作られています。
目的が異なるため、それぞれ専用のものを使用する必要があり、兼用はできません。
Q2:スポーツマウスガードを子供が使用する場合の注意点はありますか?
成長期の子どもは3〜6ヶ月ごとに適合性をチェックする必要があります。
合わないスポーツマウスガードを使い続けると、歯並びや顎の成長に悪影響を与える可能性があります。
定期的に歯科医院を受診して調整してもらうことが大切です。
Q3:スポーツマウスガードはどのくらいの頻度で交換が必要ですか?
激しい接触のあるスポーツでは3〜6ヶ月、接触の少ないスポーツでは1~2年程度が目安です。
ただし、ひび割れや変形、フィット感の低下が見られたら、期間に関わらず交換しましょう。
歯科治療を受けた場合も、スポーツマウスガードの適合が変わることがあるため確認が必要です。
まとめ
スポーツマウスガードには、市販品とカスタムメイドの2種類があります。
市販品にはストックタイプとボイル&バイトタイプがあり、手軽に購入できますが、フィット感が悪く保護効果も限定的です。
一方、カスタムメイドにはバキュームタイプ、ラミネートタイプ、埋没填入タイプがあり、個人の歯型にきちんとフィットするため高い保護効果が期待できます。
競技内容や年齢、費用対効果を考慮して選ぶことが大切で、格闘技など激しい接触のあるスポーツではラミネートタイプ、軽度~中程度の接触があるスポーツではバキュームタイプがおすすめです。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷でも、フルオーダーメイドのスポーツマウスガードを提供しています。
スポーツマウスガードの使用を検討している方は、まずはお気軽にご相談ください。