睡眠時無呼吸症候群の治療法でマウスピースは効果ある?詳しく解説

睡眠時無呼吸症候群の治療法の中に、症状が軽度な患者に適用されるケースが多いマウスピース治療があります。

この治療法についての理解が深まると治療選択の幅が広がるため、治療にかかる費用や留意事項についての情報を知ることが重要です。

この記事では睡眠時無呼吸症候群治療用のマウスピースについて徹底解説します。

そもそも睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は寝ている間に呼吸が停止するか非常に浅くなる症状を指し、その影響は睡眠だけでなく日中の生活にも及びます。

睡眠中の呼吸異常により体が酸素不足に陥ることがあり、結果として、日中に疲労感、集中力低下、気分の沈みなどの症状が現れ、生活の質が大きく低下する可能性があります。

また、長期間放置すると心臓病、高血圧、糖尿病、脳卒中などの健康リスクが増加し、生命にも危険を及ぼす重大な病気となります。

睡眠時無呼吸症候群は主に「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」と「中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)」の2つのタイプに分類され、それぞれ異なる原因と特徴があります。

マウスピースの特徴について解説

睡眠時無呼吸症候群の治療に、マウスピースが使われることがあります。

マウスピースとはどのようなデバイスなのか、そして治療にかかる費用はいくらなのかについて詳しく解説していきます。

マウスピースとはどのような器具なのか

睡眠時無呼吸症候群の治療に使用されるマウスピースはスリープスプリントとも呼ばれ、特定の方法で装着される装置です。

このデバイスは睡眠中に患者の下顎をわずか数ミリ前方に移動させ、

位置を固定する役割を果たします。この動きにより舌が喉に沈みにくくなり、気道が広がりいびきや無呼吸の発生を防ぐのです。

また、マウスピースを使用中は口呼吸が難しくなるため、鼻呼吸の習慣を促進するのにも役立ちます。

一般的なイメージとしてマウスピースはスポーツ選手が使用するマウスガードや、歯ぎしりを防ぐための市販のデバイスと混同されることがあります。

しかし、睡眠時無呼吸症候群の治療を目的としたマウスピースは異なり、通常は歯科医によって個々の患者に合わせて作成されます。

マウスピースは通常はいびきや軽度から中程度の睡眠時無呼吸症候群の症状を軽減するために使用されますが、重度の場合には効果が限定的なこともあります。

マウスピースの費用

2004年以降、睡眠時無呼吸症候群用のマウスピース治療は健康保険の適用対象となり、自己負担額は一般的に1万円から2万円ほどです。

ただし医師の診断に基づき、睡眠時無呼吸症候群と診断された場合に限ります。いびきの症状だけでは保険の適用対象外で、全額自己負担となります。

自費で睡眠時無呼吸症候群用マウスピースを製作する場合、一般的な価格帯は以下の通りです。

・ 下顎のみに装着するタイプ(上下顎一体型): 約4万円から6万円
・上顎と下顎の両方に装着するタイプ(上下顎分離型): 約20万円程度

これらの価格は医院によって異なり、治療内容によっても変動します。具体的な料金については事前に医院と相談し確認することが重要です。

重要なのは、睡眠時無呼吸症候群の度合い、個々の体質、健康状態に合った治療方法を医師と検討し、選択することです。

治療費用の詳細は、医療機関との相談を通じて決めることがおすすめです。

マウスピースで睡眠時無呼吸症候群を治療するメリット

睡眠時無呼吸症候群の治療には、マウスピースを使用することで多くのメリットがあります。

以下ではメリットを詳しく解説します。

身体的負担が少ない

マウスピース治療は他の治療法と比較して、身体への負担が非常に少ないという大きな利点があります。

マウスピースは下顎をわずかに前方に移動させることで、気道を開放し、睡眠時の呼吸をスムーズにします。

この簡単な動作により、いびきの減少や無呼吸の回避が可能になります。

またCPAP治療などの他の治療法に比べて、マウスピースは不快感が少なく睡眠中の快適さを損なうことが少ないため、患者にとって非常に使いやすい選択肢です。

定期的に通う必要がない

マウスピース治療のもう一つの利点は、一度マウスピースが作成されれば、定期的な通院の必要がないことです。

マウスピースは丈夫なプラスチック製で、通常は約5年間使用できる耐久性を持っています。

時折調整やメンテナンスが必要になることはありますが、これは長期間にわたって使用できることを意味します。

患者は定期的な医院への通院の手間や費用を削減でき、日常生活における治療の負担を大幅に軽減できます。

持ち運びできるので旅行時にも使用できる

マウスピースの小型でコンパクトなデザインは、持ち運びが非常に便利であるという大きなメリットを提供します。

治療中であっても、外出や旅行時にマウスピースを使用することが可能です。

他の治療法と比較して機材を持ち歩く必要がないため、荷物の増加を気にせずに治療を続けることができます。

旅行や出張などでマウスピースを持参することにより治療を一時的に中断する必要がなく、治療の効果を維持することができます。

患者はどこにいても一貫した治療を受けることが可能になり、生活の質を維持しながら症状を管理が可能です。

睡眠時無呼吸症候群用マウスピースの種類

睡眠時無呼吸症候群の治療に使用されるマウスピースには、主に以下の2つの種類があります。

それぞれ詳細に解説していきます。

上下顎一体型

上下顎一体型のマウスピースは保険が適用されるため、比較的低い自己負担で作成できるメリットがあります。

通常1万円から2万円程度の費用で作成できるため、財布に優しい選択肢と言えます。

日本では、多くの睡眠時無呼吸症候群患者がこのタイプのマウスピースを選んでいます。

また、上下顎一体型のマウスピースは外見が比較的小さく目立ちにくいため、見た目に違和感を感じにくいという利点もあります。

そのため外出時や旅行中にも気軽に使用できます。ただこのタイプのマウスピースは、一部の患者にとって使い勝手が難しいことがあります。

例として圧迫感や閉塞感を感じることがあるほか、嚥下や咳がしにくい場合があります。

歯並びが悪い場合は、痛みや違和感が生じやすいかもしれません。

上下顎分離型

上下顎分離型のマウスピースは、上顎と下顎の両方に装着するタイプです。

このタイプのマウスピースは患者に合わせて下顎の位置を微調整できるため、

適切な調整が可能。耐久性が高く劣化しにくい素材で作られており、長期間にわたって使用できるのが特徴です。

注意点として上下顎分離型のマウスピースは自由診療であり保険が適用されないため、費用面での負担が上下顎一体型に比べて大きいです。

装着時に大きく目立つため、恋人や家族と同居している方は、見た目に違和感を感じる可能性があることも留意する必要があります。

そのため患者の状態や優先する要因に応じて、適切なマウスピースの種類を選択する必要があります。

マウスピース治療ができない人

マウスピース治療は多くの場合に効果的ですが、残念ながら全ての人に適しているわけではありません。

特定の条件を満たさない方々にはマウスピース治療が推奨されず、他の治療法の検討が必要となります。

以下の状況に該当する方々は医師と相談し、他の治療法を検討する必要があります。

・歯の数が少ない人

・睡眠時無呼吸症候群の症状が重い人

・小学校・中学校以下の学生

治療ができない理由とその代替方法についてもそれぞれ詳しく解説していきます。

歯の数が少ない人

マウスピース治療は装置を歯に固定して行うため、十分な数の歯が必要です。具体的には、歯が20本未満の方には適していないとされています。

歯が不足しているとマウスピースが適切に固定されず、治療効果が得られない可能性が高まります。

このような場合、患者様はインプラントやブリッジなど他の歯科治療を検討する必要があります。

これらの治療法は歯の数や質を補い、機能的な咬合を回復させることができます。

睡眠時無呼吸症候群の症状が重い人

睡眠時無呼吸症候群は睡眠中の呼吸停止や浅い呼吸が繰り返される病態です。

軽度から中等度の症状にはマウスピース治療が効果的ですが、重度の場合は異なります。

重度の睡眠時無呼吸症候群には、CPAP(持続的陽圧呼吸療法)などのより積極的な治療法が必要です。

CPAPは一定の圧力で空気を気道に送り込むことで、呼吸の安定を図ります。

またライフスタイルの変更や手術など、症状に応じた多様な治療オプションが存在します。

小学校・中学校以下の学生

小学生や中学生など成長期にある子供たちには、マウスピース治療は推奨されません。

これは彼らの骨格や筋肉がまだ発育途中であり、マウスピースによる治療が成長に影響を与える可能性があるためです。

通常高校生以上がマウスピース治療の対象とされています。成長期の子供たちには、成長を妨げない矯正治療法が選ばれることが一般的です。

これには取り外し可能な矯正装置や、成長を促進するための特別な装置が含まれます。

以上のように、マウスピース治療は多くの患者にとって有効な選択肢ですが、全ての人に適しているわけではありません。

歯の数が不足している方、重度の睡眠時無呼吸症候群を抱える方、成長期の子供たちなどは、他の治療法を検討する必要があります。

これらの条件に当てはまる方々は、専門の医師と相談し最適な治療法を見つけることが重要です。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が停止するか非常に浅くなる症状です。

この症状は日中の生活にも影響を及ぼし、長期間放置すると心臓病や高血圧などのリスクが増加します。

治療法の一つとしてマウスピースがあります。このマウスピースは下顎を前方に移動させ気道を広げることでいびきや無呼吸の発生を防ぎます。

治療には身体的負担が少なく、持ち運びが便利で定期的な通院の必要もありません。

ただマウスピースでの治療が全ての人にできるわけではないので、専門家と相談して決める必要があります。

下高井戸パール歯科クリニックでは、個々の患者の状態に合わせたマウスピースを提供し、適切な治療を行います。

睡眠時無呼吸症候群に悩む方は、ぜひお気軽にご相談ください。

下高井戸パール歯科クリニック・世田谷

大原庸子