入れ歯を使用している方のなかには、適切な手入れ方法がわからないと感じている方もいます。
また、入れ歯の手入れは面倒だというイメージがあることから、インプラントと入れ歯のどちらにしようか迷っている方も多いのではないでしょうか。
入れ歯は適切な方法でケア・メンテナンスをしなければ、口内はもちろん、全身のトラブルを引き起こしてしまうこともあります。
この記事では、入れ歯の正しいお手入れ方法と間違った方法について詳しく解説します。
入れ歯の手入れを怠ってしまうと?
失ってしまった歯の代わりとしての役割を担う入れ歯は。取り外しが可能で自分本来の歯でないからといって入れ歯の手入れを怠ると大きなトラブルに至ることがあります。
特に、食事によって入れ歯に食べカスや歯垢(プラーク)が付着し、これらの汚れを放置すると、雑菌が繁殖し不快な臭いを発することも。
また、カビの1種であるカンジダ菌による感染症や口内炎のリスクが高まることも不適切な手入れがもたらす問題です。
さらに、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)をはじめとした、呼吸器感染症の原因となる細菌の増殖も確認されています。
上記の他、入れ歯の手入れは行っているものの、その方法が不適切である場合もトラブルの原因に。
入れ歯はデリケートな器具であるため、不適切なメンテナンスによって変形や破損が生じ、装着した際に違和感を覚えたり、満足な咀嚼や溌溂とした発声ができなくなったりすることもあります。
入れ歯の正しいケア・メンテナンス方法
入れ歯はデリケートな器具であり、正しいメンテナンスを行わないと、変形や変色、破損してしまう恐れがあります。
ここでは、入れ歯の正しいケア・メンテナンス方法を5つに分けて紹介します。
入れ歯専用の柔らかい歯ブラシを使用する
入れ歯に傷が付いてしまうと、傷部分に細菌が入り込みやすくなり、嫌な臭いを発する原因となることがあります。
そのため、入れ歯に付着した汚れを取り除く際には、毛先が柔らかいブラシを用いるようにしましょう。
市販の歯ブラシでも問題ありませんが、入れ歯専用のブラシは毛先が柔らかく設計されていて、傷をつけにくいというメリットがあります。
柄も太く設計されているタイプも多く、力を入れて磨きやすくなっている点も、入れ歯専用ブラシの特徴です。
食後や服薬後の洗浄を欠かさない
健康な歯も食後に清掃が欠かせませんが、入れ歯自体も食事の度に洗浄する必要があります。
入れ歯に食べカスや粉薬などが付着している状態が長く続くと、細菌が発生し不快な口臭を発生させたり、歯ぐきとの間で痛みを生じさせたりします。
上記のトラブルを回避するために、食後は入れ歯の清掃を徹底するのがおすすめ。
外食時などは、入れ歯を水やぬるま湯ですすぐだけでも徹底するようにしましょう。
また、ブラッシングができる場合には、歯磨き粉に含まれる研磨剤による傷の発生を防ぐために、ブラシのみで細かな部分まで優しく磨き上げます。
日々の丁寧な手入れが、入れ歯を長持ちさせることにつながります。
外したら水やぬるま湯に浸ける
入れ歯に使用される素材は乾燥に弱く、乾燥状態にあると入れ歯の劣化を早めてしまいます。
特に、アクリル樹脂が素材で用いられている部分は、乾燥によるヒビ割れや変形のリスクが高いです。
ヒビ割れや変形は、装着時の違和感や痛みにつながります。入れ歯を外して保管する場合には、潤いを保てるように水やぬるま湯に浸けておくようにしましょう。
就寝前に入れ歯洗浄剤を利用する
入れ歯に付着した汚れを取り除く方法として、ブラッシングは徹底すべきお手入れの方法ですが、ブラッシングのみで入れ歯に潜む汚れや菌のすべてを除去することはできません。
そのため、ブラッシングに加え、毎日1回、就寝前に入れ歯洗浄剤を利用するようにしましょう。
入れ歯洗浄剤を活用することで、1日のうちに入れ歯に付着した汚れを取り除くことが期待できます。
注意点として、何らかの理由で洗浄剤を使えないからといって、熱湯や漂白剤による洗浄は行わないようにしましょう。入れ歯が変形、変色する原因となります。
定期的に入れ歯の調整を行う
入れ歯を毎日お手入れすることはもちろん、入れ歯を定期的に調整することも入れ歯を長持ちさせる秘訣となります。
調整の頻度は、入れ歯のサイズや装着部位に応じて多少異なるものの、1ヵ月に1度くらいのペースが望ましいです。
そして、定期的な調整という点では、入れ歯はもちろん残っている歯のメンテナンスも入れ歯同様に行うようにしましょう。
歯周病のリスクが高い患者さん、入れ歯に特別な調整を要する患者さんは、特に注意が必要です。
入れ歯の間違った取り扱い方
ここでは、入れ歯の間違った取り扱い方について解説します。
以下に取り上げるケア・メンテナンス方法は、入れ歯の劣化を早めたり、変色・変形の原因となります。入れ歯のトラブルが体全体へのトラブルへと及ぶ恐れもあるため、以下の方法は絶対に行わないようにしましょう。
熱湯でのお手入れ
一般的に手軽にできる消毒方法として煮沸消毒がありますが、入れ歯には絶対に熱湯を使用してはいけません。
熱湯による殺菌が期待できないわけではなく、熱湯によって入れ歯が変形するリスクがあるためです。
洗浄剤が無い場合は熱湯を使用するのではなく、水やぬるま湯によるすすぎを普段以上に入念に行うようにしましょう。
お手入れに歯磨き粉を利用する
入れ歯を入念にお手入れしようとした結果、歯磨き粉を使ってブラッシングする人もいますが、歯磨き粉は用いないようにしましょう。
特に、研磨剤入りの歯磨き粉は使用を控えてください。
本来の歯であれば問題のない研磨剤も、デリケートな入れ歯は傷を付ける原因となってしまいます。
最悪の場合、研磨剤によって入れ歯が削られてしまい、噛み合わせが悪くなったり、入れ歯の劣化が早まったりする原因に。
そうなると、入れ歯の再調整が必要となり、さまざまな面で負担を増やしてしまうことになるでしょう。
毛先の硬い歯ブラシや硬いスポンジで磨く
入れ歯を使い続ける中で、ブラッシングで簡単に落とせない汚れが付着することもあります。
しかし、そのような状況になったからといって毛先の硬い歯ブラシや硬いスポンジで入れ歯を強く擦ることはおすすめできません。
入れ歯はデリケートな器具であり、硬い素材のケアアイテムを使うと入れ歯が傷付いてしまう恐れがあります。
細かな傷の積み重ねが破損のリスクを高めたり、細菌増殖の温床を作り出したりする原因となってしまいます。
頑固で簡単に落ちない汚れが残ってしまった場合には、入れ歯専用洗浄剤に浸けて汚れを浮き上がらせてから、再度ブラッシングを試みてください。
それでも汚れが残ってしまう場合には、歯科医院に相談してみましょう。
長時間入れ歯洗浄剤を使用する
入れ歯洗浄剤に長く浸ければ浸けるほど汚れや細菌が取り除かれやすくなると考える人もいますが、過度に浸け続けることはおすすめしません。
長時間の浸け置きは、洗浄剤の中で細菌が繁殖するリスクがあり、かえって入れ歯の衛生状態を悪くしてしまう恐れも。
特に、就寝前に入れ歯を洗浄剤に浸け置きする際の使い回しは避け、常に新しい洗浄剤を使うようにしましょう。
漂白剤に浸ける
入れ歯の殺菌方法として漂白剤に浸けようとする人もいますが、これも間違った方法です。
漂白剤には、入れ歯からすると過度な洗浄能力を持つ化学物質が含まれており、入れ歯の表面や素材にダメージを与えるリスクがあります。
漂白剤の使用は入れ歯の変色や、入れ歯表面の荒れにつながります。
入れ歯のお手入れステップ
ここでは、入れ歯を実際にお手入れする際の手順を紹介します。
ステップ1:入れ歯の容器に水またはぬるま湯を張る
まずは、入れ歯を洗浄する際の落下等のリスクを回避するために、入れ歯の容器や洗面器に水またはぬるま湯を張りましょう。
入れ歯を洗浄する際は基本的に容器の中で作業を進めるようにしましょう。
ステップ2:市販の歯ブラシまたは入れ歯専用ブラシで磨く
次に、水やぬるま湯で入れ歯をすすぎながら、歯ブラシでブラッシングをしていきましょう。力を込めず、優しく丁寧に、細かな部分までブラシを当てるようにしましょう。
特に、歯肉に直接触れる入れ歯の内面、部分入れ歯のクラスプ(永久歯に入れ歯を引っかけるためのバネ)は汚れが残りやすいため、入念に洗浄が必要です。
ステップ3:入れ歯洗浄剤を溶かした水またはぬるま湯に浸ける
ブラッシングが済んだら、入れ歯洗浄剤を溶かした水やぬるま湯に入れ歯を浸け置きしましょう。
これによって、入れ歯のヒビ割れや変形、変色・着色、臭いの発生を防ぐことができます。
そして、入れ歯を洗浄剤に浸ける際には、毎回必ず新しい洗浄剤に浸けるようにしましょう。また、入れ歯が複数ある場合には、すべてをまとめて浸けるのではなく、ひとつひとつを個別に浸けることが重要です。
まとめ
入れ歯の正しいお手入れ方法と、間違った取り扱い方について解説しました。
本来の歯だけでなく、入れ歯も適切なケア・メンテナンスを行うことで、歯の健康寿命を延ばすことができます。
もちろん、入れ歯も長持ちするようになり、経済的にも優しいものとなります。
入れ歯を使っている方は、この記事を参考に快適なオーラルケアを叶えてみてください。
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入れ歯の調整・修理も受けているので、入れ歯を使おうとお考えの方、最近入れ歯の装着感が悪くなったと感じた方は、ぜひ相談にいらしてください。