
「虫歯を放置していたら、気づけば歯茎が腫れてしまった……」そんな経験はありませんか。
歯茎(歯肉)の腫れは誰にでも起こり得るトラブルですが、「そのうち自然に治るだろう」とそのままにしていると、症状が悪化し、日常生活に支障をきたすこともあります。
この記事では、虫歯が原因で歯茎が腫れる理由に加え、虫歯以外に考えられる原因、自宅でできる応急処置、そして歯医者に行くべきタイミングについて詳しく解説します。
症状を放置するリスクや再発防止のためのセルフケア方法もまとめていますので、不安を解消し、健康な歯と歯茎を取り戻すための助けにしてください。
虫歯で歯茎が腫れる原因とは?

虫歯で歯茎が腫れる場合、虫歯が進行して菌が歯髄(歯の神経)にまで達し、歯の根の先端に膿が溜まっている可能性があります。
この状態では、歯茎の腫れに加えてズキズキとした痛みや顔の腫れなどが現れることも少なくありません。
歯は表面がエナメル質で覆われ、その内側に象牙質、さらに奥に歯髄があります。
初期の虫歯ではエナメル質が溶けるだけですが、進行すると象牙質や歯髄にまで感染が広がることがあります。
感染が歯の根に達すると、周囲の組織に炎症を引き起こし、歯茎が腫れてしまうのです。
このような症状は、『根尖病巣(こんせんびょうそう)』や『歯根嚢胞(しこんのうほう)』と呼ばれます。
虫歯以外で歯茎が腫れる6つの原因

歯茎が腫れると、虫歯によるものと思われがちですが、実は虫歯以外に原因があるケースもあります。
虫歯以外で考えられる主な原因は、下記のとおりです。
- 歯周病
- 親知らず
- 歯の根が割れている
- 口腔がん
- 歯茎が傷ついている
- 薬の副作用
ひとつずつ詳しく解説します。
歯周病
虫歯以外で歯茎が腫れる原因として、まず考えられる原因が歯周病です。
歯周病とは、歯の周囲にある歯茎や歯を支える骨が細菌感染によって炎症を起こす病気を指します。
口の中には約400〜700種類もの細菌が存在しますが、歯や歯と歯茎の境目の清掃が不十分だと、細菌が粘着性のある物質を作り出し、歯の表面に付着します。
これがプラーク(歯垢)と呼ばれるもので、粘着性が高いため、うがいだけでは除去できません。
プラークには約10億もの細菌が含まれており、これが歯周病の主な原因となります。
歯周病は、初期の『歯肉炎』から進行した『歯周炎』、さらに重度の『歯槽膿漏』へと段階的に悪化します。
歯肉炎では、歯茎が軽く炎症を起こし、ブラッシング時に出血するのが特徴です。しかし、歯周炎になると歯茎が腫れ、顎の骨が溶け始める場合があります。
さらに歯槽膿漏に進行すると、膿が出たり歯のぐらつきが見られるようになり、最終的には歯が抜けてしまうこともあるため早期の対処が重要です。
親知らず
親知らずは歯の一番奥に位置し、真っ直ぐに生えないケースも多いため、磨き残しが起きやすい部位です。
その結果、プラークや歯石が付着しやすく、これが原因で歯茎が腫れることがあります。
さらに、親知らずが完全に生えず歯茎の中に埋まっている場合、周囲の組織を圧迫して歯茎が腫れる原因となることもあります。
炎症が進行すると、痛みや腫れが強くなる場合もあるため注意が必要です。
親知らずの周囲に歯茎の腫れが見られる場合、その親知らずが原因である可能性が高いと考えられます。早めに歯医者を受診し、必要な処置を受けることが大切です。
歯の根が割れている
歯の根元にひびが入ったり、割れたりすると、歯茎が腫れる原因となることがあります。
これは、損傷によって歯の根が弱くなり、周囲の歯茎に炎症を引き起こすためです。
歯の根元が割れる主な原因には、下記のようなものがあります。
- スポーツや事故などで顔面を強打する
- 歯ぎしりや食いしばりによる過剰な力がかかる
- 歯の神経を抜いたことで歯が脆くなる
これらの状況により、歯の強度が低下し、歯の根元にダメージが生じるリスクが高まります。
口腔がん
歯茎の腫れの原因が、口腔がんによるものである場合もあります。
口腔がんの主な自覚症状としては、歯茎の腫れのほか、しこりや出血、口内の痛み、違和感などが挙げられます。
初期段階では自覚症状がほとんどないため、異変に気付いたときにはすでにがんが進行しているケースも少なくありません。
そのため、歯茎の腫れやしこりなど、普段と異なる症状が続く場合は、早めに歯医者に相談するようおすすめします。
歯茎が傷ついている
歯磨きの際に力を入れすぎたり、硬い食品を食べたりすることで歯茎が傷つくことがあります。
このような損傷は、歯茎の痛みや炎症の原因となることがあるため注意が必要です。
薬の副作用
服用している薬の副作用によって歯茎が腫れることもあります。
歯茎の腫れや肥大が起こりやすいとされている薬は、下記のとおりです。
- 抗てんかん薬(フェニトイン:商品名アレビアチン、ヒダントールなど)
- 高血圧治療薬(カルシウム拮抗薬:商品名ニフェジピン、アムロジン、アダラートなど)
- 免疫抑制剤(シクロスポリン:商品名ネオラール、サンディミュンなど)
特にフェニトインを長期間服用する場合、約半数の方に歯茎の腫れが発症するとされています。
歯茎の腫れが虫歯ではなく、薬の副作用によるものと考えられる場合、かかりつけ医に相談しましょう。
歯茎の腫れを放置した場合のリスク

歯茎が腫れているのに、「歯医者に行くのが怖い」「面倒だ」と感じてそのまま放置している方もいるかもしれません。
しかし、先述のように歯茎の腫れにはさまざまな原因があり、その中には口腔がんや薬の副作用など、早急な治療が必要な場合もあります。
たとえ重大な病気でなくても、虫歯や歯周病が原因の場合、放置すると以下のような深刻なリスクを伴うことがあります。
- 口臭がきつくなる
- 激しい痛みが起きる
- 抜歯が必要となることがある
- 病気を引き起こす危険性
それぞれのリスクについて、ひとつずつみていきましょう。
口臭がきつくなる
虫歯や歯周病による歯茎の腫れは、自然と治ることはまずありません。放置していると、症状が進行して膿が出てきたり、出血したりすることがあります。
これにより細菌が繁殖し、強い口臭が発生します。口臭は周囲に不快な印象を与えるため、人間関係に影響を及ぼすこともあるかもしれません。
激しい痛みが起きる
歯茎の腫れを放置することで、炎症がさらに拡大し、激しい痛みを伴うようになります。
この痛みは、食事中の咀嚼を妨げるだけでなく、睡眠不足や集中力の妨げなど日常生活にも支障をきたすことがあるため注意が必要です。
抜歯が必要となることがある
虫歯による歯茎の腫れを放置していると、虫歯が進行してしまい、歯がボロボロになるおそれもあります。
その場合、処置としては抜歯しか選択肢がありません。
歯周病も同様で、歯周病が進行して歯槽膿漏になると、歯がぐらぐらして抜けてしまうことがあります。
病気を引き起こす危険性
歯茎の腫れを放置しておくと、細菌が血流に侵入するリスクがあり、脳梗塞や心筋梗塞といった重大な病気を引き起こす可能性があります。
これらは生死にかかわる深刻な事態を招くため、早めの対処が必要です。
虫歯で歯茎が腫れたときの応急処置方法

虫歯で歯茎が腫れた場合、「すぐに歯医者に行けない」「応急処置だけでもしておきたい」という状況もあるでしょう。
ここでは、虫歯で歯茎が腫れた際に自宅でできる応急処置の方法を詳しく解説します。
痛み止めを服用する
歯茎の腫れや痛みが激しい場合、市販の痛み止め(解熱鎮痛薬)を服用すると症状を和らげることができます。
具体的には、イブプロフェンやアセトアミノフェンなどの鎮痛剤がよく使用されます。ただし、用法・用量を守り、体質や持病に合わない薬は避けましょう。
痛み止めを飲むことで一時的に痛みを軽減できますが、これは根本的な治療ではありません。
あくまで歯医者を受診するまでの応急処置と考え、早めの診察を心がけてください。
患部を冷やす
腫れや痛みがひどい場合、患部を冷やすことで炎症を和らげることができます。
冷やしたタオルや保冷剤(氷)を包んだタオル、冷却シートなどを使用して、腫れた部分に軽く当てましょう。
ただし、氷や保冷剤を直接肌に当てると、凍傷のリスクがあるため注意してください。
うがい薬で口の中を消毒する
虫歯で歯茎が腫れている場合、口内環境が悪化していると考えられます。
ポビドンヨードなどの殺菌作用のある市販のうがい薬を使って、口の中を清潔に保ちましょう。
うがい薬が手元にない場合は、ぬるま湯に少量の塩を溶かした「塩水うがい」でも代用可能です。塩水は炎症を抑え、細菌の繁殖を抑える効果があります。
柔らかい歯ブラシでブラッシング
腫れている歯茎を刺激すると症状が悪化するため、硬い歯ブラシの使用は避け、柔らかめの歯ブラシで丁寧にブラッシングしましょう。
ただし、痛みがひどい場合は無理をせず、症状が和らいでから歯磨きを再開してください。
ブラッシングでは、歯間や歯の表面に付着したプラーク(歯垢)をしっかり除去することが大切です。
歯茎への負担を最小限に抑えながら、清潔な口内環境を維持しましょう。
刺激を避ける
歯茎が腫れているときは、少しの刺激が痛みを悪化させる可能性があります。
以下の点に注意しましょう。
- 香辛料を多く含む食べ物や飲み物を控える
- 冷たいものや熱いものを避ける
- 患部を舌や指で触らない
特に、指には細菌が付着しているため、患部を指で押したりつまんだりすると感染を広げる恐れがあるため厳禁です。
歯茎の腫れで歯医者に行くべきタイミング

歯茎が腫れて痛みがある場合、虫歯や歯周病、まれに口腔がんなどの可能性もあるため、できるだけ早めに歯医者を受診しましょう。
特に以下の症状がある場合は、早急な診察が必要です。
- 痛みや腫れが悪化している
- 高熱を伴う
- 飲み込みや呼吸に支障が出ている
一方、痛みがなく腫れが軽い場合は、2〜3日様子を見ることも可能です。ただし、症状が悪化する場合はすぐに歯医者に相談してください。
歯茎の腫れを放置すると、症状が進行し治療が難しくなることもあります。早めの対応を心がけましょう。
虫歯で歯茎が腫れたときの治療法

虫歯で歯茎が腫れた場合、歯医者では下記のように治療を進めていきます。
- 虫歯を除去する:虫歯部分を削り取り、感染を取り除く
- 歯の根の治療(根管治療)をする: 感染が歯の根にまで及んでいる場合、薬剤を使って歯の根の内部を洗浄・消毒しその後フタをして封鎖
- 人工歯を被せる:最後に、治療した部分に人工歯を被せる
歯茎に膿が溜まっている場合は、歯茎を切開して膿を排出する治療を行うことがあります。
親知らずで歯茎が腫れている場合
親知らずが原因で歯茎が腫れている場合、多くは抜歯が必要になります。
親知らずが真っ直ぐ生えている場合は抜歯を行わないことがあるものの、歯磨きが難しい位置にあることから磨き残しが生じやすいのが難点です。
そのため、歯茎の腫れが再発する可能性が高く、最終的に抜歯を選択するケースが少なくありません。
歯周病で歯茎が腫れている場合
歯周病が原因で歯茎が腫れている場合は、主に下記の治療を行います。
- プラークや歯石の除去:専用の器具を使って、歯周病の原因となる汚れを除去
- 歯磨き指導:患者さん自身が適切な口腔ケアを行えるよう、ブラッシング方法を指導
症状が進行している場合は、歯周ポケットを浅くする外科手術を行うこともあります。
歯茎の腫れの再発防止のためのセルフケア方法

歯医者での治療で虫歯などによる歯茎の腫れが治まったとしても、同じケアを続けていると再発する可能性があります。
以下のセルフケア方法を日々の習慣に取り入れて、再発を防ぎましょう。
正しい方法で歯磨きを行う
磨き残しは虫歯や歯茎の腫れの原因となります。次のポイントを意識して丁寧に歯磨きを行いましょう。
- 小刻みに磨く:歯1本1本を磨くつもりでブラッシングする。
- 歯と歯茎の間を丁寧に: 歯ブラシを45度の角度で当て、歯と歯茎の間をしっかり磨く。
- 裏側や奥歯も忘れずに: 特に磨きにくい部分は意識してケアをする。
フロスや歯間ブラシを使用する
歯と歯の間は、歯ブラシでは取り切れない汚れが残りやすい部分です。
デンタルフロスや歯間ブラシを使って、隙間に詰まった食べカスやプラークをしっかりと除去しましょう。
食生活を見直す
免疫力の低下や栄養不足だと、歯茎の腫れを引き起こしやすくなります。
栄養バランスの取れた食事を心がけ、歯茎の健康を守りましょう。特に以下の栄養素を積極的に摂取するのがおすすめです。
栄養素 | 期待される効果 |
ビタミンB群 | 細胞の再生や成長を助け、粘膜を保護する。口内炎の予防にも有効。 |
ビタミンC | 歯茎の主成分コラーゲンの合成を促進する。 |
ビタミンD | 歯を支える骨を強化し、歯周病リスクを低減させる。 |
ビタミンE | 抗酸化作用や血行促進効果によって歯周病の予防に寄与する。 |
また、虫歯の原因となる甘い物の摂取は控えめにしましょう。
ストレスを溜めない
ストレスは免疫力の低下を招くため、歯茎に細菌が繁殖しやすくなる要因となります。
次のことを意識して、ストレスをコントロールしましょう。
- 規則正しい生活を送る
- 定期的に運動する
- 休息を取り、疲れを溜めない
心と体をリフレッシュすることで、歯茎の健康も守れます。
歯医者で定期検診やクリーニングを受ける
虫歯がなくても、定期的に歯医者で専門医によるケアを受けることをおすすめします。
- 検診:歯や歯茎の状態をチェックし、磨き方の指導などを受けられる
- 歯のクリーニング:歯磨きだけでは落とせないプラークや歯石を除去できる
定期的に通院することで、より効果的に歯茎の腫れを予防することができます。
まとめ
虫歯による歯茎の腫れは、放置すると痛みや感染が広がり、深刻な症状を招くことがあります。
歯茎の腫れには虫歯以外の原因もありますが、いずれにしても早めに専門医を受診することが重要です。
歯医者にすぐ行けない場合は応急処置を試しつつ、なるべく早めの受診を心がけましょう。
「歯茎の腫れが気になる」「腫れの原因が虫歯かどうかわからない」とお悩みの方は、ぜひ下高井戸パール歯科クリニックにご相談ください。
痛みを抑えた治療と丁寧なカウンセリングを心がけていますので、お気軽にお問い合わせください。
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