
虫歯は多くの方が悩む口腔トラブルのひとつです。
予防法として真っ先に思い浮かぶのが歯磨きですが、なかには「ちゃんと歯磨きしているのに虫歯になってしまう……」と悩む方も少なくありません。
一度虫歯ができると治療が必要になり、悪化すれば痛みや費用の負担が大きくなるため、できるだけ虫歯を防ぐことが大切です。
この記事では、虫歯ができる原因をわかりやすく解説し、日々の生活にすぐ取り入れられる効果的な予防法を紹介します。
お子様から大人まで、すべての年代で役立つ情報を網羅していますので、ぜひ最後までお読みください。
虫歯とは?基礎知識を学ぼう

虫歯予防を効果的に行うためには、まず虫歯の正体を理解することが大切です。
ここでは、虫歯の発生メカニズム、進行段階についてわかりやすく解説します。
虫歯とは?
虫歯とは、口腔内の細菌が飲食物に含まれる糖分をエサに酸を作り出し、その酸によって歯が溶かされる状態を指します。
歯が溶ける現象は医学的に『脱灰(だっかい)』と呼ばれ、これが虫歯の始まりです。
虫歯ができる仕組み
私たちの口の中には、虫歯の原因となる細菌が常に存在しています。
しかし、唾液には歯を守る力があり、食べ物や飲み物の影響によって溶け出した歯の成分を元に戻す『再石灰化』という働きがあります。
そのため、唾液がしっかり働いていると虫歯ができにくくなりますが、脱灰と再石灰化のバランスが崩れると虫歯になってしまいます。
虫歯が発生する流れ
以下で、虫歯が発生する流れを詳しくみてみましょう。
1.食べ物の糖分をエサに細菌が酸を作る
虫歯の原因菌は、食べ物や飲み物に含まれる糖分を分解して酸を作ります。この酸が歯の表面に影響を与え始めます。
2.歯の表面から成分が溶け出す(脱灰)
作られた酸が歯に付着すると、歯の表面の成分(カルシウムやリンなど)が溶け出す『脱灰』という現象が起こります。
3.唾液の働きで修復される(再石灰化)
唾液は、溶け出した歯の成分を再び歯に戻す『再石灰化』という修復作業を行います。このバランスが取れているうちは、虫歯にはなりません。
4.バランスが崩れると虫歯が発生する
糖分を摂りすぎたり、唾液が十分に分泌されない状態が続いたりすると、『脱灰』が『再石灰化』を上回ります。この状態が続くと、歯に穴が開く虫歯が発生します。
虫歯の進行度と歯の状態
虫歯は進行度に応じてC0~C4の段階に分類されます。それぞれの状態は以下の通りです。
虫歯の段階 | 虫歯の状態 |
C0 | エナメル質の表面に白濁や軽い脱灰が見られる状態。 |
C1 | エナメル質の内部まで虫歯が進行した状態。 |
C2 | 虫歯が象牙質まで進行し、冷たい物や甘い物で痛みを感じる状態。 |
C3 | 虫歯が歯の神経(歯髄)まで達し、腫れや強い痛みをともなう状態。 |
C4 | 歯がほぼ失われ、根だけが残っている状態。 |
虫歯は初期段階(C0)であれば適切なケアで自然治癒できることがあります。
しかし、C1以上になると自然に治ることはなく、歯科医院での治療が必要です。
虫歯を放置するとどうなる?全身への影響も
虫歯を放置していると、進行が進むだけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
重度の虫歯(C4)では歯を失うだけでなく、細菌が血液に入り込むことで、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こすこともあります。
「虫歯は小さな問題」と軽視せず、予防を徹底するとともに、虫歯ができた場合は早期に歯科医院を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
虫歯ができる原因

続いてはなぜ虫歯が発生するのか、その原因についてみていきましょう。
不十分な歯磨き
歯磨きが不足している、または歯磨きをしていてもプラーク(歯垢)がしっかり除去できていない場合、虫歯の原因菌が活発に繁殖しやすくなります。
日々の歯磨きが不十分だと、それだけ虫歯のリスクが高まるということです。
糖分の多い飲食物の摂取
虫歯の原因菌は、飲食物に含まれる糖分をエサにして繁殖します。
甘い物を頻繁に摂取すると虫歯ができやすくなるため、注意が必要です。
唾液の分泌量が低下している
唾液には、歯に付いた細菌を洗い流す作用や、歯の再石灰化を助ける働きがあります。
唾液の分泌量が減少すると、細菌が繁殖しやすくなり、虫歯ができやすくなります。
毎日のケアでできる虫歯予防法

日々のケアで虫歯を予防することは可能です。虫歯を防ぐために実践したいポイントを紹介します。
正しい歯磨きで虫歯防止を目指す
食後は歯磨きをきちんと行い、食べカスやプラークをしっかりと除去しましょう。
正しい歯磨きの基本的なポイントは以下のとおりです。
- 歯ブラシの毛先を歯の面に当てる
- 歯ブラシを小刻みに動かして1本ずつ丁寧に磨く
- 毛先が広がらない程度の軽い力で磨く
1箇所を20回以上、ソフトタッチで磨くことが大切です。
特に寝る前の歯磨きは丁寧に行い、就寝中の口腔内の細菌繁殖を防ぎましょう。
磨き残しを防ぐポイント
時間をかけて歯を磨いても、磨き残しが生じることがあります。磨き残しを防ぐために、以下の点を意識しましょう。
- 歯磨きの順番を決めておく
- 歯並びが凸凹している場合は、歯ブラシを縦に当てて1本ずつ丁寧に磨く
- 歯と歯茎の境目は、歯ブラシを45度の角度に当てて磨く
- 背の低い歯は、歯ブラシを斜め横から入れて磨く
歯磨きの際は、右上奥歯の表面から左上奥歯の表面、左上奥歯の裏側から右上奥歯の裏側というように、磨く順番を決めておくと磨き残しを防げます。
また、歯ブラシが届きにくい部位については、歯ブラシを斜めに当てる、縦に当てるなど工夫することが大切です。
デンタルフロス・歯間ブラシを使う
特に磨き残しが起きやすいのが、歯と歯の間です。歯ブラシでは届きにくい部分なので、デンタルフロスや歯間ブラシを使ってしっかりケアしましょう。
これらを併用することで、虫歯や歯周病のリスクを大幅に軽減できます。
デンタルフロスの使い方
デンタルフロスは、歯と歯の間の汚れを取り除くのに効果的です。使い方の基本は以下のとおりです。
1.フロスを準備する
フロスを約40cmの長さにカットし、左右の中指に巻き付けます。指と指の間に10cm程度のフロス部分を確保しましょう。
2.歯間に挿入する
フロスを歯と歯の間にゆっくり挿入します。無理に押し込むと歯茎を傷つける恐れがあるため、慎重に行いましょう。
3.フロスを上下に動かす
フロスを歯の側面に沿わせながら上下に動かし、食べカスやプラークを落とします。
4.新しい部分を使って次の歯を磨く
1箇所の掃除が終わったら、使用した部分をずらして、新しい部分を使ってほかの歯間を同様にケアします。
歯間ブラシの使い方
歯間ブラシは、歯と歯の隙間が広い場合に効果的です。歯間に合ったブラシのサイズを選び、以下の手順で使用しましょう。
1.ブラシを挿入する
歯間ブラシを歯と歯の間にゆっくり挿入します。挿入時に力を入れすぎると、歯茎にダメージを与えることもあるため注意しましょう。
2.前後に動かす
ブラシを前後に動かして、汚れを取り除きます。1箇所につき数回動かすのが目安です。
なお、歯間ブラシにはI字型とL字型があります。
- I字型:前歯など手前の歯の掃除に適している
- L字型:奥歯の清掃に便利であるものの、I字型を折り曲げることで代用可能
フッ素入りの歯磨き粉で対策する
普段使っている歯磨き粉をフッ素入りのものに変えることで、虫歯予防効果を高めることができます。
フッ素には、以下のような効果が期待できます。
- 虫歯の原因菌の働きを抑制する
- 歯を強化し、虫歯への抵抗力を高める
- 歯の再石灰化を促進する
歯磨き粉によってフッ素の濃度は異なりますが、日本で販売されているものの中では、最高濃度の1450ppmの商品を選ぶのがおすすめです。
ただし、6歳未満のお子様にはフッ素濃度1000ppm以下のものを選びましょう。また、小さなお子様は誤って飲み込むリスクもあるため、適切な量で使用することが大切です。
虫歯対策にうがい薬を使用するのも効果的
虫歯の予防や対策として、市販のうがい薬を使用するのも効果的な方法です。
うがい薬は、製品によって機能に違いがありますが、一般的に以下の効果が期待できます。
- 殺菌効果
- プラークの繁殖や付着を予防する効果
うがい薬は主に2種類に分類されます。それぞれの特徴と使い方を理解し、目的に応じて使い分けましょう。
うがい薬の種類 | 特徴 |
マウスウォッシュ(洗口液) | 液体を口に含んで洗い流すタイプ。基本的に歯磨き後に使用する。手軽に口内の清潔を保つことができるため、忙しいときにも便利。 |
デンタルリンス(液体歯磨き) | 液体を口に含んでうがいしたあと、通常どおり歯を磨く必要がある。ペースト状やジェル状の歯磨き粉と同じように使う。 |
どちらのタイプも正しく使用することで、虫歯のリスクを低減できます。自分や家族の生活スタイルに合わせて最適な製品を選びましょう。
生活習慣を改善する
食事や睡眠などの生活習慣に気を付けることも、虫歯予防につながります。
日々の生活を見直し、口腔内の健康をサポートしましょう。
食事で予防する
糖分は虫歯の原因菌のエサとなるため、摂取量をコントロールすることが重要です。
ただし、糖分を完全に避けるのは難しいため、以下の工夫を取り入れましょう。
- 糖分の摂取を減らすお菓子や甘い飲み物の量を意識的に減らすことが効果的です。
- 甘い物を食べた後はすぐに歯を磨く食後に歯磨きが難しい場合は、水で口をゆすぐだけでも効果があります。
- 飲み物を工夫する甘い飲み物の代わりに、カテキンなどの殺菌成分を含むお茶(緑茶や烏龍茶など)に置き換えるのも良い方法です。
睡眠をしっかりととる
睡眠不足は免疫力の低下を招くため、口腔内で細菌の増殖が進み、虫歯や歯周病のリスクが高まる可能性があります。
虫歯予防のためには規則正しい睡眠を心掛け、1日7〜8時間の睡眠時間を確保しましょう。
ストレスを溜めない
ストレスが溜まると、唾液の分泌量が減少し、口腔内で細菌が繁殖しやすくなります。
また、ストレスが長引くと食生活が乱れたり、睡眠不足に陥ることもあり、それも口腔内の環境悪化につながります。
自分に合ったストレス解消法をみつけて、定期的にストレスを発散しましょう。以下に挙げる事柄はストレス発散に効果的です。
- 趣味や運動など、自分がリラックスできる時間を持つ
- 十分な休息をとり、心身をリフレッシュする
- ストレスで辛いときは信頼できる人に相談する
歯科医院での虫歯予防ケア

セルフケアに加え、歯科医院で定期的にプロによるケアを受けることは、虫歯予防に非常に効果的です。
以下に、歯科医院で受けられる代表的なケアを紹介します。
定期検診で行う虫歯予防法
虫歯の有無にかかわらず、定期的に歯科医院で検診を受けるのは虫歯予防におすすめです。
定期検診を受けることで、以下のようなメリットがあります。
- 早期発見・早期治療……自覚症状がない段階で虫歯や歯周病の兆候を見つけられる
- 歯石やプラークの除去……専用の器具を使い、セルフケアでは取り除きにくいプラークや歯石を除去できる
定期検診は3ヶ月〜半年に1回程度が目安ですが、歯科医の指示に従って受診間隔を調整しましょう。
フッ素塗布で虫歯を防ぐ方法
歯科医院では、高濃度のフッ素(約9000ppm)を歯に直接塗布して、虫歯予防を行うことができます。
フッ素塗布によるケアに期待できる効果は以下のとおりです。
- 歯の強化……フッ素が歯に浸透し、虫歯の原因菌に対する抵抗力を高める
- 歯の再石灰化を促進……エナメル質が溶け始めた初期虫歯の自然治癒をサポート
この施術はお子様によく行われるケアですが、虫歯リスクが高い成人にもおすすめです。定期的に受けることで、虫歯予防効果が持続します。
シーラントで虫歯を防ぐ方法
シーラントは、奥歯の溝など虫歯菌が溜まりやすい部分をプラスチック樹脂でコーティングする予防法です。
この施術には以下のメリットがあります。
- 虫歯菌の侵入を防ぐ……奥歯の溝に樹脂を埋めることで、虫歯のリスクを低減
- 柔らかい歯を保護……生えて間もない大人の歯は柔らかく虫歯になりやすい状態のため、シーラントが特に効果的
主に大人の歯が生えてきているお子様の奥歯に行われる処置ですが、大人の方でも必要に応じて施術を受けることができます。
まとめ
虫歯は日々のケアや生活習慣の改善でしっかりと予防することが可能です。
正しい歯磨きやデンタルフロスの活用、フッ素入り歯磨き粉の使用など、この記事で紹介した予防法をぜひ取り入れてみてください。
また、セルフケアに加えて、定期的に歯科医院でのケアを受けることで、より効果的に虫歯を防ぐことができます。
もし虫歯予防やお口の健康についてお悩みがある場合は、下高井戸パール歯科クリニックにお気軽にご相談ください。
当院では、患者さま一人ひとりに合わせた丁寧なケアを行い、虫歯予防から治療まで幅広く対応しております。
下高井戸パール歯科クリニックで、安心して笑顔になれるお口の健康を目指しましょう。
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