
インプラント治療を検討する際、年齢制限や自身の年齢による難しさを不安に感じる方も多いでしょう。
実際には、インプラント治療は20代から80代までの幅広い年齢層の方々に提供される治療法です。
この記事では、年齢とインプラント治療の関係について、統計データや医療現場の知見を交えながら詳しく解説します。
これからインプラントを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
インプラント治療に年齢制限はあるの?

インプラント治療には、年齢による制限よりも、患者さん一人ひとりの健康状態が重要になります。
『年齢制限はない』という表現は正確ではありません。実際には、治療開始の目安年齢があり、高齢者への配慮も必要です。
まずは、統計から分かる治療の実態と、年齢に関する重要なポイントを解説します。
年齢よりも個人の状態が重要
インプラント治療の成否を大きく左右するのは、実は年齢以外の要素です。
とりわけ重要になるのが、顎の骨の状態と全身の健康状態です。
例えば、若い方でも歯周病などで顎の骨が弱っている場合は治療が難しくなります。
反対に、高齢の方でも全身状態が安定していれば、治療を受けられる可能性が十分にあるでしょう。
医師は患者さんの状態を総合的に判断し、治療の可否を決定します。
厚生労働省の統計データが示す年齢分布
2022年の厚生労働省の調査によると、インプラント装着者の割合は年代によって大きな違いが見られます。
年代 | 装着者の割合 |
20代 | 2.6% |
30代 | 1.3% |
40代 | 0.7% |
50代 | 6.1% |
60代 | 8.1% |
70代 | 9.8% |
50代以降は年齢と共に増加傾向にあり、自分の歯を失う人が多くなるのが分かります。
興味深いのは20代の装着率が2.6%と、30代や40代よりも高い点です。
これは若い世代にもインプラント治療が必要となるケースや、治療に積極的な方が増えていることを示しているといえます。
20歳前後が治療開始の目安となる理由
インプラント治療開始を20歳前後を目安としているのには、医学的な根拠があります。
顎の骨は成長期には徐々に大きくなり、形も変化します。
この時期にインプラントを埋入すると、顎の成長に伴って位置がずれてしまう可能性があるためです。
また、20歳前後は親知らずが生えてくる時期でもあり、これによって歯並びが変化する場合もあります。
そのため、顎の成長が落ち着く20歳前後までは、原則としてインプラント治療は見送られます。
意外と知られていない!20代でもインプラントが必要になるケース

インプラントは中高年の治療というイメージが強いかもしれません。
しかし、実際には若い世代にもインプラント治療が必要となる場合があります。
若い世代でインプラントが必要となる主な原因と、その対応について説明します。
若年層のインプラント装着率の実態
2022年の厚生労働省の調査によると、20代のインプラント装着率は2.6%となっています。
これは30代の1.3%、40代の0.7%と比較すると、やや高い数値です。
20代の方がインプラント治療を選択する傾向にあるのは、インプラントの安定性の高さやメリットを理解している証といえます。
また、若いうちから長期的な口腔健康管理を意識する方が増えていることも、この数字に影響しているでしょう。
交通事故やスポーツ外傷での歯の損失
若い世代で歯を失う原因として多いのが、事故などによる外傷です。
交通事故やスポーツの衝撃によって歯が折れたり、歯根まで破損したりするケースが見られます。
このような外傷による歯の損失は、虫歯や歯周病による歯の喪失と異なり、顎の骨の状態は比較的健康なままです。
そのため、インプラント治療の成功率は高くなる傾向にあります。
重度の虫歯や歯周病による早期の歯の喪失
若い世代でも、虫歯や歯周病が歯を失う原因となり得るため注意が必要です。
虫歯を放置して重症化すると歯の神経が壊死し、最終的に抜歯が必要となる場合があります。
また、歯周病により歯を支える骨が溶けて歯を失うケースも見られます。
このような状態になる前に、定期的な歯科検診を受けることが大切です。
50代以降でインプラントを検討する際の重要ポイント

50代を過ぎると加齢に伴う歯の喪失が影響し、インプラント治療を検討する方が増えてきます。
しかし、インプラント治療を検討する際には、年齢以外にもいくつかの重要なポイントの確認が必要です。
治療を成功に導くために、50代以降の方が注意するとよい点について解説します。
なぜ50代からインプラント患者が増えるのか
2022年の厚生労働省の調査によると、インプラント装着率は50代で6.1%、60代で8.1%、70代で9.8%と、年齢と共に増加傾向にあります。
この背景にあるとされるのは、加齢による歯の喪失だけでなく、生活環境の変化です。
具体的には、40代までは仕事や育児に追われるシーンが多く、歯科治療に十分な時間を割くのが難しい状況が見られます。
一方で、50代以降になると時間的なゆとりが生まれ、自分の健康管理に意識を向けやすくなることが影響していると考えられます。
年齢別の成功率とリスク要因
インプラント治療の成功率は、年齢よりも全身の健康状態と顎の骨の状態が大きく影響します。
とりわけ50代以降で気をつけたいのは、骨密度の低下です。
加齢と共に顎の骨が徐々に弱くなり、インプラントを支える力が低下する場合があります。
また、高血圧や糖尿病などの全身疾患を持つ方も増えてきます。
これらの疾患は治療の成功率に影響を与える可能性があるため、かかりつけ医との綿密な相談が必要です。
治療例から見える注意点
50代以降の方のインプラント治療では、骨の状態に応じた対応が重要になります。
骨量が不足しているときは、骨移植や骨造成といった追加の処置が必要になるケースもあります。
また、治療後の回復に時間がかかる傾向にあるため、余裕を持った治療計画を立てるのが大切です。
インプラントと骨の結合には個人差があり、標準的な期間よりも長くかかる場合もあります。
治療開始前には、これらの点について医師としっかり話しあうことをおすすめします。
高齢者がインプラントを検討する際に確認したい点

インプラント治療は、70代、80代の方でも受けられる可能性があります。
しかし、年齢を重ねるにつれて考慮したほうがよい健康上の課題も増えてくるため、事前に確認しておきたいポイントを詳しく説明します。
治療可否の判断基準
高齢者のインプラント治療では、以下の4つの観点から慎重に判断を行います。
- 全身の健康状態
- 顎の骨の状態
- 免疫力
- 口腔内の清掃状態
まず、全身の健康状態です。
高血圧や糖尿病、骨粗しょう症などの疾患がある方は、治療にリスクが伴う可能性があります。
次に、顎の骨の状態です。
骨密度が低下している場合、インプラントが安定しにくくなります。
3つ目は、免疫力です。
加齢により免疫力が低下すると、手術後の感染リスクが高まる恐れがあります。
最後に、口腔内の清掃状態です。
日常的な歯磨きやケアが十分に行えるかどうかが、治療を継続するための重要な条件となります。
かかりつけ医に相談するとよいポイント
インプラント治療を検討する際は、現在服用している薬についての確認が必要です。
なかでも骨粗しょう症の治療薬(ビスフォスフォネート系薬剤)は、顎の骨の治癒に影響を与える可能性があります。
また、抗血小板薬や抗凝固剤を服用している方は、出血のリスクについても検討が必要です。
これらの薬の服用状況は、必ず事前に医師に伝えましょう。
加えて、普段の体調の変化や、通院の負担についても具体的に相談することが大切です。
代替治療の選択肢
インプラント治療が難しいと判断された場合でも、ほかの方法による治療を選べます。
例えば、入れ歯は体への負担が少なく、必要に応じて調整や作り直しが可能です。
また、ブリッジも選択肢の一つです。
周囲の歯の状態が健康であれば、インプラントよりも短期間で治療を終えられます。
大切なのは、ご自身の状態にあった治療法を選ぶことです。
無理のない治療計画を立てれば、長期的に口腔の健康を維持できるでしょう。
インプラント治療の長期的な成功のために

インプラント治療は、一度の手術で終わりではありません。
長期にわたって快適に使用するためには、継続的なケアと管理が欠かせません。
年齢に関わらず知っておきたい、インプラントを長く保つためのポイントについて解説します。
定期メンテナンスの重要性
インプラントの平均耐用年数は10〜15年ですが、適切なケアを続けることでさらに長期間の使用が可能です。
定期メンテナンスではインプラント周辺の歯肉の状態確認、歯石の除去、清掃状態のチェックなどを行います。
これらは、インプラント周囲の歯肉や歯槽骨が炎症を起こす『インプラント周囲炎』を予防する重要な取り組みです。
メンテナンスの頻度は個人の状態によって異なりますが、一般的に3〜6ヶ月に1回の間隔で受診することが推奨されています。
年齢別の注意点
年齢によって、インプラントのメンテナンスで気をつけるポイントも変わってきます。
若い世代では、仕事や生活環境の変化に応じた柔軟なケアの調整が必要です。
中高年の方は、加齢による手指の機能低下に備え、清掃用具の選択や使用方法の工夫が大切です。
高齢になると毎日の細かな作業が難しくなる場合もあるため、家族のサポートを含めた継続的なケア体制を整えることをおすすめします。
治療費と保険の関係
インプラント治療は基本的に保険適用外の自由診療となります。
平均的な治療費は1本あたり30〜40万円程度です。
これに対し、保険適用となる入れ歯は5,000〜20,000円、ブリッジは20,000〜30,000円程度と、費用面では大きな差があります。
ただし、長期的な視点で見るとインプラントは耐久性に優れ、再治療の機会が少ないという特徴があります。
治療費の支払いについては、医療費控除の適用や、分割払いなどの方法も検討できるため、医院に相談してみるとよいでしょう。
インプラント治療を成功させる3つのポイント

インプラント治療を長期的に成功させるためには、事前の準備から治療後のケアまで、いくつかの重要なポイントがあります。
これまでの内容を踏まえ、年齢を問わず成功の鍵となる3つの要素についてまとめてみましょう。
年齢に関係なく重要な判断基準
インプラント治療の成否を決めるのに重要なのは、顎の骨の状態と全身の健康状態です。
治療前には、骨密度の検査や全身の健康状態の確認を通じて、慎重に治療の可否を判断します。
年齢による制限を気にするよりも、ご自身の体調と相談しながら決めていくことが大切です。
歯科医への相談の重要性
インプラント治療は外科手術を伴うため、事前の診査や診断が非常に重要になります。
歯科医師との相談では、現在の口腔内の状態はもちろん、服用中の薬や持病についても詳しく伝えましょう。
疾患がある場合は、治療計画に大きく影響する可能性があります。
また、治療後のケア方法や通院の必要性についても、具体的な説明を受けるのが大切です。
長期的な視点での治療選択
インプラント治療は、入れ歯やブリッジと比べて初期費用は高額です。
しかし、適切なケアを続ければ10〜15年以上の長期使用も可能です。
治療を選択する際は、初期費用に加え、定期的なメンテナンス費用や予想される耐用年数も含めて、長期的な視点で総合的に検討することをおすすめします。
また、定期的なメンテナンスに通える環境にあるかどうかも、重要な判断材料となります。
長期的な口腔の健康維持を目指し、ご自身のライフスタイルに適した治療法を選択しましょう。
まとめ
インプラント治療は年齢による一律の制限はなく、顎の骨の状態や全身の健康状態など、個人の状態によって判断されます。
20代から70代まで幅広い年齢層での治療実績があり、治療の成功には、適切な診断と治療計画、そして継続的なケアが欠かせません。
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