
「いびきは危険」と聞いて不安に思ったことのある方も多いのではないでしょうか。
実はいびきにはいくつかの種類があり、すべてのいびきが危険なものではありません。
しかしいびきの種類の一つである『睡眠時無呼吸症候群』は注意が必要です。
この記事では、いびきと睡眠時無呼吸症候群の違いについて詳しく解説します。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状や原因、治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
いびきは大きく分けて3つの種類がある

いびきには大きく分けて以下の3つの種類があります。
- 単純性いびき症
- 上気道抵抗症候群
- 睡眠時無呼吸症候群
ここでは上記3種類の特徴についてそれぞれ解説します。
単純性いびき症
単純性いびき症は一般的ないびきの症状です。
睡眠中に無呼吸・低呼吸になることがなく、日中の眠気がないものがこのタイプに分類されます。
主にストレスや疲労、鼻づまり、飲酒などの一時的な要因によって引き起こされることが多く、原因を取り除けば改善します。
単純性いびき症は朝スッキリと目覚めていれば特に問題はありませんが、毎日いびきをかくようになったら注意が必要です。
上記のような原因のほかに体に何らかの不調が潜んでいる可能性も考えられるため、心配な場合は医療機関を受診するとよいでしょう。
上気道抵抗症候群
上気道抵抗症候群は、何らかの原因によって上気道が狭まることで起こるいびきです。
睡眠中に無呼吸・低呼吸になることはないものの、日中に疲労感や眠気を感じることがあります。
習慣的にいびきをかいているケースが多く、女性に多く見られるタイプです。
上気道抵抗症候群は疲労やストレス、肥満、飲酒・喫煙、鼻腔・口腔の異常、睡眠時の体勢など、原因が多岐にわたります。
これらの原因が複雑に組み合わさっていることもあり、いびきを引き起こしている原因を突き止めることが治療の要となります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に気道が完全に塞がり、呼吸ができなくなってしまういびきです。
習慣的にいびきをかいている方に多い症状で、睡眠中に無呼吸・低呼吸状態になるため、眠りが浅くなります。
その影響で日中に疲労感や眠気を感じるケースが多いです。
睡眠時無呼吸症候群は肥満の方に多く見られるほか、扁桃肥大や小顎・下顎の後退などが原因となっている場合もあります。
また睡眠中に何度も無呼吸状態が繰り返されるため、高血圧、心臓病、脳卒中といった合併症を引き起こす恐れがあり、早めの治療が必要となります。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状

睡眠時無呼吸症候群の主な症状は以下の通りです。
自覚症状 | 合併症 |
夜中に何度も目が覚める 口や喉が渇く 日中の疲労感や眠気が強い 集中力が低下する 夜間の尿量・回数が多い 夜間の発汗が多い寝相が悪い 性欲が低下する | 高血圧 心筋梗塞 脳卒中動 脈硬化不整脈 糖尿病 脂質代謝異常 |
ここでは自覚症状と合併症に分けてそれぞれ解説します。
自覚症状
睡眠時無呼吸症候群の主な自覚症状は以下のようなものが挙げられます。
- 夜中に何度も目が覚める
- 口や喉が渇く
- 日中の疲労感や眠気が強い
- 集中力が低下する
- 夜間の尿量・回数が多い
- 夜間の発汗が多い
- 寝相が悪い
- 性欲が低下する
睡眠時無呼吸症候群は、夜中に何度も目が覚める自覚症状が現れるのが特徴です。
この自覚症状を覚醒反応といい、これがあるため睡眠中に無呼吸になってしまっても窒息死することはありませんが、何度も目が覚めるため睡眠の質が著しく低下します。
さらに朝起きたときに頭が重たい感覚や日中に強い眠気や疲労感を感じやすく、集中力の低下も見られます。
この症状だけを見ると寝不足と変わらないように思えますが、睡眠時無呼吸症候群の場合は寝つき自体はとてもよい一方で熟睡感を得られない点が大きな特徴です。
そのほかにも夜間の尿量・回数の増加や発汗の増加、寝相の悪化、性欲の低下などがみられる場合もあります。
合併症
睡眠時無呼吸症候群は以下のような合併症を引き起こす恐れがあります。
- 高血圧
- 心筋梗塞
- 脳卒中
- 動脈硬化
- 不整脈
- 糖尿病
- 脂質代謝異常
睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に酸欠状態になるため、心臓や血管系に強い負担がかかり、高血圧や心筋梗塞、脳卒中を引き起こすリスクが高まります。
またインスリンをはじめとしたホルモンの働きも悪化することから、糖尿病や脂質代謝異常を招きやすくなることも明らかになっています。
上記のような合併症のリスクがあるため、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合はなるべく早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
睡眠時無呼吸症候群を引き起こす主な原因

睡眠時無呼吸症候群を引き起こす主な原因として、以下が挙げられます。
- 肥満
- 顎の形
- 鼻づまり
- アデノイドや扁桃肥大
- 飲酒
- 喫煙
- 睡眠薬の服用
ここでは上記7つの原因についてそれぞれ解説します。
肥満
睡眠時無呼吸症候群を引き起こす主な原因として、肥満が挙げられます。
肥満になると舌や喉周辺にも脂肪がついてしまいます。
これによって気道が狭まり、いびきや睡眠時無呼吸症候群を引き起こしやすくなるのです。
脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪がありますが、睡眠時無呼吸症候群を引き起こしやすいのは内臓脂肪が多い人で、特にりんご型肥満と呼ばれる体型に多く見られます。
また肥満は睡眠時無呼吸症候群だけでなく、糖尿病や高血圧などをはじめとしたさまざまな生活習慣病のリスクを高める原因となります。
肥満は『脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数(BMI)25以上のもの』と定義されているため、当てはまる人は注意しましょう。
顎の形
下顎が小さい人は、睡眠時無呼吸症候群を引き起こしやすいとされています。
下顎が小さいと舌根が喉のほうへ落ち込みやすくなり、気道を圧迫してしまうことがあるためです。
特に日本人は欧米人よりも下顎が小さい傾向にあり、肥満体型でなくてもいびきをかきやすい特徴があります。
鼻づまり
鼻づまりは睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因の一つです。
鼻が詰まっていると鼻呼吸がしづらくなるため、自然と口呼吸になります。
いびきは口呼吸をしているときに起こりやすくなるため、慢性的に鼻詰まりの症状がある人は注意が必要です。
鼻詰まりの原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 風邪
- アレルギー性鼻炎
- 副鼻腔炎
- 鼻中隔湾曲症
- 鼻腔ポリープ
上記のように原因となっている病気がある場合は、そちらの治療を行うことで口呼吸が改善され、いびきも少なくなる可能性が高いです。
アデノイドや扁桃肥大
アデノイド(咽頭扁桃)や扁桃の肥大により、睡眠時無呼吸症候群が引き起こされる場合があります。
子どものいびきの原因として多く見られるのが、アデノイド肥大です。
アデノイドは2歳〜6歳にかけて大きくなり、その後10歳ごろまでに自然と小さくなっていきます。
しかしこの一時的な肥大が原因でいびきを引き起こしたり、急性中耳炎や滲出性中耳炎などが起こる場合もあります。
アデノイド肥大は一時的なもののため、基本的には経過観察をする場合が多いです。
しかし呼吸障害や睡眠障害の症状が重い場合は、手術が必要となる場合もあります。
飲酒
睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因の一つとして、飲酒が挙げられます。
アルコールには筋肉をリラックスさせる作用があるため、飲酒をすると舌根が沈み込み、気道が狭まることでいびきをかきやすくなるのです。
また睡眠導入として飲酒をする人も少なくありませんが、寝つきが良くなっても睡眠の質が下がる可能性が高いため、なるべく控えることをおすすめします。
喫煙
喫煙は睡眠時無呼吸症候群を引き起こすリスクを高める要因の一つです。
タバコには気道を刺激する化学物質が多く含まれており、炎症を引き起こす恐れがあります。
喫煙によって気道で炎症が起こると空気の通りが悪くなり、結果としていびきや睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことがあるのです。
タバコを吸っている本人が吸い込む主流煙はもちろんですが、その周囲にいる人が吸い込む副流煙のほうが有害物質がたくさん含まれています。
そのため家族や職場の人など、身近でタバコを吸っている人がいる場合も同様に注意が必要です。
睡眠薬の服用
睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因の一つとして、睡眠薬の服用が挙げられます。
睡眠薬の中には筋肉をリラックスさせる作用を持つものもあり、これを服用すると喉の筋肉が緩むため、気道が狭まりやすくなるのです。
睡眠薬を処方してもらうときはいびきの症状が悪化しないか、医師に相談してみましょう。
いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療方法

いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療方法は以下の通りです。
- 減量
- 生活習慣の改善
- 鼻や喉の病気の治療
- CPAP療法
- マウスピース
- 外科手術
ここでは上記6つの治療方法についてそれぞれ解説します。
減量
肥満が原因で睡眠時無呼吸症候群を引き起こしている場合は、減量によって症状が改善される可能性があります。
方法は一般的なダイエットと同様、食事制限や運動などにより減量を目指します。
ただし過度な食事制限は、ストレスなどによりいびきが悪化する恐れがあるため注意しましょう。
生活習慣の改善
睡眠時無呼吸症候群は生活習慣によって引き起こされることもあります。規則正しい生活習慣を身につけることで、症状の改善を目指しましょう。
睡眠の質を高める生活習慣としては、具体的に以下のようなものが挙げられます。
- 栄養バランスの整った食事を摂る
- 適度に運動する
- 決まった時間に就寝・起床する
- 寝る2~3時間前に入浴を済ませる
- 寝る前にスマホやパソコンの画面を見ない
生活習慣をすぐにパッと切り替えることは難しいため、できる範囲から少しずつ改善していきましょう。
鼻や喉の病気の治療
鼻や喉の病気が原因で睡眠時無呼吸症候群が起きている場合は、原因となっている病気の治療を行います。
治療が必要になるケースとして、以下のようなものが挙げられます。
- 扁桃が大きい
- 顎周りの形に問題がある
- アレルギー性鼻炎
- 副鼻腔炎
- 鼻中隔湾曲症
- 鼻腔ポリープ
上記のような病気を治療することで、自然といびきや睡眠時無呼吸症候群が改善される場合があります。
鼻や喉の病気が疑われる場合は、耳鼻咽喉科を受診して適切な治療を受けましょう。
CPAP療法
睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療方法として、CPAP療法が挙げられます。
専用の機械を使用して鼻から肺へ強制的に空気を送り込むことで、睡眠中に気道が狭まってしまうのを防ぐ治療方法です。
睡眠中に息苦しさを感じることがなくなるのはもちろん、睡眠の質が高まることで日中の疲労感や眠気も改善されます。
主に中等度~重度の睡眠時無呼吸症候群に有効な治療方法とされていますが、機械のメンテナンスを行う関係上、月1回程度の通院が必要になる点には注意が必要です。
マウスピース
いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療方法として、マウスピースを装着する方法もあります。
下顎にマウスピースを装着することで舌を前方に引き出し、気道の圧迫を防ぐ治療方法です。
中等症以下の睡眠時無呼吸症候群やいびき症の治療に有効とされており、CPAPのように大きな機械を用意する必要がないため、旅先などでも使用できるメリットがあります。
外科手術
睡眠時無呼吸症候群の原因となるアデノイドや扁桃肥大、鼻中隔湾曲症などの症状がひどい場合、外科手術を行う場合があります。
外科手術は治療したい箇所や症状によってさまざまな内容があり、費用も大きく異なります。
詳細については受診する医療機関に確認してみましょう。
まとめ
いびきには単純性いびき症、上気道抵抗症候群、睡眠時無呼吸症候群の3つの種類があります。
この中でも特に注意が必要なのが睡眠時無呼吸症候群で、症状が悪化すると高血圧や心筋梗塞、脳卒中などの合併症を引き起こす恐れがあります。
睡眠時無呼吸症候群は医療機関で専門的な治療を受けることで改善されるため、思い当たる節がある人はなるべく早めに受診しましょう。
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