
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に一時的に呼吸が止まってしまう病気です。
隣で寝ていた家族やパートナーのいびきが急に止まると、起こした方がいいのではと心配になる方も多いでしょう。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群で呼吸が止まってしまったときの適切な対処法を解説します。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状や合併症、治療方法、予防方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
無呼吸症候群で呼吸が止まっていたら起こした方がいい?

睡眠中に急に呼吸が止まるのは、睡眠時無呼吸症候群の症状です。
「呼吸が止まったらこのまま窒息死してしまうのでは?」と心配してしまう方も多いでしょう。
ここでは適切な対処について解説します。
無理に起こすのは控えたほうがいい
睡眠時無呼吸症候群になると睡眠中に呼吸が止まってしまうことがよくありますが、無理に起こすのは控えたほうがいいです。
この病気は深い眠りにつくときに一時的に呼吸が止まってしまう特徴があります。
体が低酸素状態になると自動的に目を覚ます『覚醒反応』があるため、睡眠時無呼吸症候群自体で窒息死を引き起こすことはありません。
無理に起こしてしまうと睡眠の質がさらに低下し、睡眠不足に陥ってしまう恐れがあるためなるべく控えましょう。
20秒以上呼吸が止まっているときは医療機関を受診すべき
ただし、睡眠中に20秒以上呼吸が止まっている場合は、なるべく早めに医療機関を受診すべきです。
体が長時間低酸素状態になると、睡眠の質が下がるだけでなく、さまざまな合併症を引き起こすリスクが高まります。
睡眠の質の低下によって日中に強い眠気や疲労感が現れることもあるため、なるべく早めに治療を行うのが望ましいです。
また睡眠時無呼吸症候群にはさまざまな原因があるため、原因に合った治療が行える診療科を受診する必要があります。
原因がわからない場合は、耳鼻咽喉科または呼吸器内科の診察を受けるとよいでしょう。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状

睡眠時無呼吸症候群の主な症状は以下の通りです。
- いびき
- 無呼吸・低呼吸
- 何度も目が覚める
- 大量の寝汗をかく
- 寝起きに口が渇く
- 頭痛
- 強い眠気
- 倦怠感
- 集中力の低下
ここでは上記の症状についてそれぞれ解説します。
いびき
睡眠時無呼吸症候群は大きないびきが主な症状の一つです。
上気道がなんらかの原因によって狭まることで空気の通りが悪くなり、呼吸のたびにその部分が振動して音が鳴ります。
主な原因としては肥満や小さい顎、舌根沈下(舌の根元が落ち込むこと)などが挙げられるでしょう。
飲酒や鼻詰まりなどの原因でいびきをかくことは誰にでもありますが、毎日のように一晩中いびきをかいていたり、いびきの強さに波があったりする場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いです。
無呼吸・低呼吸
睡眠時無呼吸症候群の主な症状として、無呼吸・低呼吸が挙げられます。
10秒以上呼吸が止まる状態が『無呼吸』、換気が通常の50%以下になる浅い呼吸が10秒以上続く状態が『低呼吸』です。
1時間に5回以上無呼吸または低呼吸がみられる場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
無呼吸・低呼吸を何度も繰り返すと体は低酸素状態になって眠りが浅くなるため、後に解説する『何度も目が覚める』『日中に強い眠気や倦怠感を感じる』などの症状が現れます。
睡眠中の無呼吸・低呼吸の回数については、医療機関を受診して専用の装置を使用することで調べることが可能です。
何度も目が覚める
睡眠中に何度も目が覚めるのも、睡眠時無呼吸症候群の主な症状の一つです。
睡眠中に無呼吸・低呼吸になって体が低酸素状態になると、脳がそれを察知して強制的に目を覚まさせる『覚醒反応』が起こります。
何度も目が覚めるため当然睡眠の質は下がり、熟睡感が得られなくなります。
大量の寝汗をかく
睡眠時無呼吸症候群の主な症状の一つとして、大量の寝汗をかくことが挙げられます。
睡眠中に無呼吸・低呼吸を何度も繰り返すと自律神経のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなります。
そのため寝汗を大量にかいてしまうことがあるのです。
起きたときにパジャマやシーツがぐっしょりと濡れていたり、室温や湿度を調整しても寝汗を大量にかいたりする場合には、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。
ただし寝汗を大量にかくのは呼吸器疾患や甲状腺機能亢進症、自律神経失調症などの可能性もあるため、医療機関を受診して正確な診断をしてもらうことが大切です。
寝起きに口が渇く
睡眠時無呼吸症候群は寝起きに口が渇くことがあります。
これは睡眠中に口呼吸をしているために起こるものです。
また口呼吸をしていると口内が乾燥するだけでなく、ウイルスや細菌が体内に入り込みやすくなったり口臭の原因になったりする恐れがあります。
寝起きに口が渇いている=睡眠時無呼吸症候群というわけではありませんが、ほかの症状にも当てはまる場合は一度医療機関を受診することをおすすめします。
頭痛
寝起きに生じる頭痛も、睡眠時無呼吸症候群の症状の一つです。
睡眠中に何度も無呼吸・低呼吸を繰り返して体が低酸素状態になると、脳の血管が拡張して周りの神経が刺激され、頭痛が起こることがあります。
軽く痛みを感じる程度の人や、ズキンズキンと脈打つような痛みを感じる人など症状の強さにも個人差があります。
毎日寝起きの頭痛に悩まされている場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性があるため、医療機関を受診してみましょう。
強い眠気
睡眠時無呼吸症候群の主な症状として、日中に強い眠気を感じることが挙げられます。
これは睡眠中の無呼吸・低呼吸によって何度も目が覚めたり睡眠の質が低下したりすることで、十分に睡眠できていないことが原因です。
眠気の程度は人によって異なりますが、症状が悪化すると仕事中や運転中にも抗えないほどの強い眠気が襲うようになり、日常生活にも支障をきたすようになります。
実際、睡眠時無呼吸症候群による強い眠気が原因とされる交通事故も起きているため、早めに治療を行うことが大切です。
倦怠感
日中に感じる体のだるさも睡眠時無呼吸症候群の症状の一つです。
これも睡眠の質の低下や熟睡感が得られないことが原因で、慢性的な倦怠感を訴える患者さんも少なくありません。
集中力の低下
睡眠時無呼吸症候群によって睡眠の質が低下すると、日中の集中力が低下してしまうことがあります。
例えば「会議の内容が頭に入らない」「仕事や勉強に集中できない」「些細なミスが増えた」などを感じるようになったら、睡眠時無呼吸症候群による影響が疑われます。
熟睡感が得られなくなったり夜中に何度も目が覚めてしまうことが増えたりする場合は、一度医療機関を受診して正確な診断を受けましょう。
睡眠時無呼吸症候群は合併症にも注意が必要

睡眠時無呼吸症候群は睡眠中だけでなく日中にもさまざまな症状が現れますが、特に注意が必要なのが合併症のリスクです。
睡眠中に繰り返される無呼吸・低呼吸によって体が低酸素状態になると、心筋梗塞や脳卒中、高血圧といった合併症を引き起こすことがあります。
睡眠時無呼吸症候群により引き起こされる恐れがある合併症は以下の通りです。
- 心筋梗塞
- 脳卒中
- 高血圧
- 糖尿病
- メタボリックシンドローム
- 発育障害
特に心筋梗塞や脳卒中などは突然死のリスクも高い病気のため、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることが大切です。
睡眠時無呼吸症候群を発症する主な原因

睡眠時無呼吸症候群は主に『閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)』と『中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)』の2つに分けられます。
ここではそれぞれの主な原因について解説しましょう。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、気道が狭まることで無呼吸・低呼吸が起こるものです。
大半の患者さんはこちらのタイプに分類され、主に以下のような原因で引き起こされます。
- 肥満
- 小さい顎
- 舌根沈下
- 飲酒
- 鼻づまり
- 睡眠薬の服用
また睡眠時無呼吸症候群は大人だけでなく、子どもが発症することもあります。
子どもの場合はアデノイドや扁桃肥大が原因で発症することも少なくありません。
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は、気道には特に問題がなく、呼吸をする指令を出す脳に異常が生じることで無呼吸・低呼吸状態に陥るものです。
はっきりとした原因は未だに明らかになっていませんが、心臓の機能が低下している方に多く見られます。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法

睡眠時無呼吸症候群は主に以下の3つの治療方法があります。
- マウスピース療法
- CPAP療法
- 外科的手術
ここでは上記3つの治療方法についてそれぞれ解説します。
マウスピース療法
マウスピース療法は、マウスピースを装着することで下顎を引き出した状態で固定し、気道が狭まるのを防ぐ治療方法です。
睡眠時無呼吸症候群の治療に使用されるマウスピースには『上下顎一体型』と『上下顎分離型』の2種類ありますが、上下顎一体型の場合は保険が適用されます。
睡眠時無呼吸症候群に関する知識があり、マウスピースの作成に対応している歯科クリニックで治療を受けることが可能です。
CPAP療法
CPAP療法は専用の機械を装着して睡眠中も空気を送り続け、気道が狭まるのを防ぐ治療方法です。
睡眠時無呼吸症候群やいびきの治療方法のなかでも特にオーソドックスな方法で、軽度〜中等度の症状に有効です。
自宅に機械を持ち帰って使用しますが、月に1回程度通院してメンテナンスを受ける必要があります。
外科的手術
アデノイドや扁桃肥大、鼻中隔湾曲症など体の構造が原因で睡眠時無呼吸を引き起こしている場合は、外科的手術で原因を取り除く必要があります。
原因によって手術方法や手術費用が異なるため、詳しくは医療機関を受診して医師に直接相談してみましょう。
睡眠時無呼吸症候群の予防方法

睡眠時無呼吸症候群を予防するためには、以下の方法を取り入れましょう。
- 適正体重を維持する
- 口呼吸を改善する
- 横向きで寝る
- 寝酒や過度な飲酒は控える
- 睡眠薬の服用を控える
ここでは上記5つの治療方法についてそれぞれ解説します。
適正体重を維持する
肥満になると喉や舌に脂肪がつき、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすリスクが高まります。
そのため普段の食生活や運動習慣を見直して、適正体重を維持することが大切です。
BMI25以上の方は肥満と診断されるため、当てはまる場合はそれ以下まで体重を減らすようにしましょう。
ちなみにBMIは「体重kg ÷ (身長[m])2」の式で求められます。
適正体重は「(身長m)2 ×22」の式で求められるため、参考にしてみてください。
口呼吸を改善する
口呼吸になると舌根沈下が起こりやすくなり、睡眠中の無呼吸・低呼吸の原因になることがあります。
口呼吸が習慣になってしまっている場合は、鼻呼吸に改善しましょう。
口呼吸を治す具体的な方法は以下の通りです。
- 鼻呼吸を意識する
- 鼻呼吸テープを使用する
- 口周りの筋肉を鍛える
- 矯正治療を受ける
- 耳鼻咽喉科を受診する
慢性的な鼻づまりに悩んでいる場合、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など何らかの疾患にかかっている可能性が考えられるため、耳鼻咽喉科を受診して適切な治療を受けることをおすすめします。
横向きで寝る
仰向きで寝ると重力の影響で舌が落ち込みやすくなるため、横向きで寝るようにしましょう。
抱き枕やクッションなどを使用して横向きで寝ると、症状が改善されることがあります。
寝酒や過度な飲酒は控える
アルコールには筋肉を弛緩させる作用があるため、寝る直前に飲酒をすると、上気道が狭まり無呼吸・低呼吸の原因となることがあります。
寝酒や過度な飲酒はなるべく控えましょう。
睡眠薬の服用を控える
睡眠薬の中には、アルコールと同様に筋肉を弛緩させる作用を持つ薬もあります。
このような薬を服用することでいびきや睡眠時無呼吸症候群が悪化する恐れもあるため、医師と相談するのが望ましいです。
どうしても睡眠薬が手放せない場合は、影響の少ない薬を処方してもらうなど、医師と相談のうえで服用しましょう。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群になると、睡眠中に急に呼吸が止まってしまうため不安になる方も多いですが、無理に起こすのは控えたほうがいいです。
無理に起こすことでさらに睡眠の質が低下し、日中の活動にさまざまな悪影響が出る可能性があります。
しかし、睡眠中に20秒以上呼吸が止まっている場合は、なるべく早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
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