
寝ているときにかくいびきには危険ないびきがあることをご存知でしょうか。
それは睡眠時無呼吸症候群というもので、睡眠中に一時的に呼吸が止まってしまう病気です。
放置しているとさまざまな合併症を引き起こすリスクがあるため、なるべく早めに治療を行うことが大切です。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群のいびきと普通のいびきの違いについて解説します。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状や検査方法、治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に一時的に呼吸が止まる『無呼吸』や呼吸が弱まる『低呼吸』を1時間に5回以上繰り返す病気です。
睡眠時無呼吸症候群には『閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)』と『中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)』の2種類があり、それぞれ原因が異なります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、上気道が狭まることで無呼吸・低呼吸が起こるものです。
上気道が狭まる原因としては以下のようなものが挙げられます。
- 肥満
- 扁桃・アデノイド肥大
- 舌根沈下
- 顎が小さい
上記のような原因によって上気道が狭まると空気の通りが悪くなり、無呼吸または低呼吸に陥ります。
無呼吸・低呼吸を繰り返して体が低酸素状態になると、脳がそれを察知し、強制的に目を覚ます『覚醒反応』が起こります。
この覚醒反応があるため、睡眠中の無呼吸・低呼吸が原因で窒息死することはありません。
しかし睡眠の質が低下することで、脳が十分に休息をとることができず、日中の活動に悪影響が生じてしまう問題が起こります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は、気道自体には問題がなく、呼吸指令を出す脳に異常が生じることで呼吸が止まってしまうものです。
なぜ呼吸指令が止まってしまうのか、そのメカニズムは未だ明らかになっていませんが、心臓の機能が低下した方のうち30〜40%程度の割合でこの症状がみられることがわかっています。
睡眠時無呼吸症候群のいびきと普通のいびきの違い

健康的な人でもいびきをかくことはありますが、睡眠時無呼吸症候群のいびきと普通のいびきにはどのような違いがあるのでしょうか。
ここではいびきのメカニズムや睡眠時無呼吸症候群のいびきの特徴について解説します。
そもそもいびきとは
そもそもいびきとは、睡眠中に喉が狭まることで空気抵抗が大きくなり、喉の粘膜や軟口蓋が振動することで起こるものです。
いびきには喉いびきと鼻いびきの2種類あり、以下のような違いがあります。
- 喉いびき:舌根沈下などで気道が狭まることで起こるいびき
- 鼻いびき:鼻づまりなどが原因で起こるいびき
いびきをかいているときに鼻をつまんでみて、いびきが止まる場合は鼻いびきと判断できます。
鼻いびきは鼻詰まりの解消によって改善されることが多いです。
またいびきは誰にでも起こり得るもので、慢性的なものでなければそれほど心配する必要はありません。
しかし毎日のようにいびきをかいていたり、気道が完全に塞がって呼吸が止まったりする場合は医療機関での治療が必要となります。
睡眠時無呼吸症候群のいびきの特徴
睡眠時無呼吸症候群のいびきは、喉の気道が狭まることで起こるものです。
通常のいびきと異なるのは、激しいいびきの後に呼吸が一時的に止まり、その後あえぐような激しい息が続く点です。
低呼吸を繰り返すケースでは、いびきの強さが短時間に変動する特徴があります。
このことから、いびきの音が変化したり呼吸が止まったりする場合は、睡眠時無呼吸症候群が疑われるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状

睡眠時無呼吸症候群の主な症状は以下の通りです。
睡眠中の症状 | 無呼吸・低呼吸 いびき 何度も目が覚める 大量の寝汗をかく |
寝起きの症状 | 口が渇いている 頭痛 |
日中の症状 | 強い眠気 疲労感・倦怠感 集中力の低下 |
ここでは上記の症状についてそれぞれ解説します。
無呼吸・低呼吸
睡眠時無呼吸症候群の主な症状の一つとして、睡眠中の無呼吸・低呼吸が挙げられます。
『無呼吸』は睡眠中に10秒以上呼吸が止まること、『低呼吸』は換気が通常の50%以下になり呼吸が弱まった状態が10秒以上続くことです。
無呼吸・低呼吸は平均30秒程度ですが、人によっては2分以上続く場合もあります。
無呼吸・低呼吸を繰り返すことで睡眠の質が低下し、後に解説する『何度も目が覚める』『日中に強い眠気を感じる』などの症状が現れる原因となります。
いびき
大きないびきも、睡眠時無呼吸症候群の主な症状の一つです。
舌根沈下や肥満などが原因で気道が狭まることで、空気の通りが悪くなり、呼吸をするたびにいびきをかくようになります。
気道が狭くなるほど空気抵抗が強くなり、いびきの音も大きくなります。
また、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の場合、いびきの途中で呼吸が一瞬止まり、「プシュー」や「ガガッ」、「フガッ」といった音とともに呼吸が再開することがあります。
何度も目が覚める
睡眠時無呼吸症候群の大きな特徴として、寝ている間に何度も目が覚めることが挙げられます。
睡眠中の無呼吸・低呼吸により体が低酸素状態になると、体の防御反応によって自動的に目を覚ます『覚醒反応』が起こるのです。
この覚醒反応によって何度も目を覚ますことで睡眠の質が低下し、日中の強い眠気や疲労感・倦怠感、集中力の低下といったさまざまな悪影響を及ぼします。
大量の寝汗をかく
睡眠時無呼吸症候群になると、大量の寝汗をかくことがあります。
これは無呼吸・低呼吸によって心拍数や血圧が急激に変動し、交感神経が過剰に活性化してしまうことにより起こるものです。
交感神経が活性化すると体温が上昇するため、寝汗の原因となります。
室温や湿度を調整しても毎日のように大量に寝汗をかく場合、睡眠時無呼吸症候群が疑われるでしょう。
寝起きに口が渇いている
睡眠時無呼吸症候群の患者さんのほとんどは口呼吸を行っているため、寝起きに口が渇いていることがあります。
口呼吸は喉や口内が乾燥するだけでなく、ウイルスや細菌が体内に入り込みやすくなるため注意が必要です。
頭痛
睡眠時無呼吸症候群の症状の一つとして、起床時の頭痛が挙げられます。
睡眠中に無呼吸・低呼吸が繰り返されることで血中の二酸化炭素が増加し、脳血流量の増加により頭蓋内圧が上昇してしまうことが原因です。
睡眠時無呼吸症候群の頭痛の特徴としては、『起床時に起こること』『両側性であること』『30分以内に治まること』が挙げられます。
上記のような症状が1か月で15日以上確認される場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いです。
強い眠気
睡眠時無呼吸症候群になると、日中に強い眠気が襲うようになります。
これは睡眠中の無呼吸・低呼吸による自律神経の乱れや、繰り返される覚醒反応による睡眠の質の低下が主な原因です。
眠気の程度には個人差があるものの、仕事や生活に支障をきたすレベルで眠気を感じる人も少なくありません。
運転中に強い眠気が襲うことで交通事故の原因となる恐れもあり、早急に治療を行った方が良い理由の一つといえます。
疲労感・倦怠感
日中に感じる疲労感や倦怠感も、睡眠時無呼吸症候群の主な症状の一つです。
睡眠時無呼吸症候群になると何度も目が覚めることで睡眠の質が低下し、十分に睡眠をとることができなくなってしまいます。
睡眠の質が低下すると自律神経の乱れが生じ、日中に疲労感や倦怠感を感じる原因となるのです。
集中力の低下
睡眠時無呼吸症候群になると、集中力が低下することがあります。
これもまた睡眠の質の低下が主な原因で、仕事や日常生活に支障をきたすようになります。
熟睡感が得られない、仕事に集中できない、些細なミスを繰り返してしまうなどの自覚がある場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性が考えられるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群のいびきは放置しておくと危険

睡眠時無呼吸症候群のいびきは放置しておくと危険です。
日中の活動への影響だけでなく、さまざまな合併症を引き起こすリスクがあります。
具体的な合併症としては以下のようなものが挙げられます。
- 高血圧
- 心血管疾患
- 脳卒中
このほかにも、糖尿病や発育障害、動脈硬化、うつ病、EDなどさまざまな合併症のリスクがあります。
ここでは特に注意が必要な上記3つの合併症についてそれぞれ解説しましょう。
高血圧
高血圧は睡眠時無呼吸症候群の患者さんの約50%に見られるとされる合併症の一つです。
高血圧を放置すると動脈硬化を引き起こす恐れがあるため、注意しなくてはいけません。
また通常の高血圧は薬剤を使用することで血圧をコントロールできますが、睡眠時無呼吸症候群の場合は薬剤で改善が見込めない『治療抵抗性高血圧』になることが多いです。
治療抵抗性高血圧は薬剤が効かないため、食事療法や運動療法による治療が必要となります。
心血管疾患
睡眠時無呼吸症候群の合併症の一つとして、心血管疾患が挙げられます。
睡眠中の無呼吸や低呼吸によって血圧が急激に変動し、心筋梗塞や狭心症、心不全、不整脈などを引き起こすことがあるのです。
心血管疾患は死亡率を高める原因となるため、早めの治療が肝心となります。
脳卒中
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、健康的な人と比べて脳卒中を発症するリスクが約3倍高くなることが明らかになっています。
睡眠中の無呼吸・低呼吸によって、血液が詰まったり血栓ができたりするリスクがあるためです。
脳卒中は手足のまひやしびれなどが主な症状となりますが、症状が出ない場合もあるため注意が必要です。
脳卒中のリスクを下げるためには、なるべく早めに睡眠時無呼吸症候群の治療を行うほか、定期的に検査を受けることも大切になります。
睡眠時無呼吸症候群の検査・診断方法

睡眠時無呼吸症候群の検査・診断方法は『簡易検査』と『精密検査』の2種類あります。
ここではこの2つの検査方法についてそれぞれ解説しましょう。
簡易検査
簡易検査には、『簡易終夜ポリソムノグラフィー検査(簡易PSG検査)』と呼ばれるものがあります。
自宅に検査キットを持ち帰り、自分で機械を装着して検査を行う方法です。
鼻と指先に機械を装着することで、睡眠中の呼吸や胸の動き、体位、酸素飽和度、いびきの音などを測定できます。
検査キットを受診した医療機関に持っていき、測定データを解析してもらうことで、睡眠時無呼吸症候群の重症度を診断可能です。
精密検査
精密検査には、『終夜ポリソムノグラフィー検査』と呼ばれるものがあります。
これは医療機関に1泊入院して行う検査方法で、簡易検査よりも詳細な測定が可能です。
簡易検査と同様に息の流れやいびきの音、酸素飽和度が測定できるのはもちろん、精密検査では脳波や眼・顎の筋肉の動き、心電図なども調べられます。
日中に強い眠気があるなど、睡眠の質を確認する必要がある場合は精密検査を受けるのが望ましいです。
睡眠時無呼吸症候群のいびきの治療方法

睡眠時無呼吸症候群のいびきの治療方法は主に3つ挙げられます。
- CPAP療法
- マウスピース療法
- 外科的手術
ここでは上記3つの治療方法についてそれぞれ解説します。
CPAP療法
CPAP療法は、専用の機械につながったマスクを鼻に装着し、空気を送り続けることで睡眠中に気道が狭まるのを防ぐ治療方法です。
睡眠時無呼吸症候群のほとんどの患者さんに有効な治療方法とされており、睡眠の質の改善や日中の眠気・疲労感の解消などを自覚できる人が多いです。
治療効果が高くどの患者さんにもおすすめできる方法ですが、月に1回メンテナンスのために通院する必要がある点には注意が必要となります。
マウスピース療法
マウスピース療法は、オーダーメイドで作成したマウスピースを装着することで、下顎を引き出した状態で固定して気道が狭まるのを防ぐ治療方法です。
マウスピース自体がかなり小さいため、旅先などにも持ち運びできるメリットがあります。
ただし睡眠時無呼吸症候群の症状が軽い方に適した治療方法となっているため、重症度が高い場合は他の治療法が適しています。
外科的手術
アデノイドや扁桃肥大、顎の骨格などが原因で気道が狭まってしまっている場合は、外科的手術によって原因を取り除くことで症状を改善できます。
上下顎同時前進術や口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)、オトガイ舌筋前進術などさまざまな手術方法があります。
手術にはリスクが伴うため、手術方法や手術費用も含めて医師とよく相談して検討する必要があるでしょう。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群のいびきは、激しいいびきの後に急に呼吸が止まったり、不規則ないびきを繰り返したりする特徴があります。
このようないびきが慢性化している場合、医療機関を受診することをおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群を放置していると合併症を発症するリスクがあるため、なるべく早めに適切な治療を受けましょう。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、マウスピース療法による睡眠時無呼吸症候群の治療に関する相談を受け付けています。
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方は、ぜひ一度当院まで気軽にご相談ください。
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