
朝起きたときの頭痛に悩んでいる場合、その原因は睡眠時無呼吸症候群かもしれません。
睡眠時無呼吸症候群はその名の通り、睡眠中に一時的に呼吸が止まってしまう病気です。
無呼吸を繰り返すことで身体が酸素不足になり、健康にさまざまな悪影響を及ぼします。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群で頭痛が起こる理由について詳しく解説します。
睡眠時無呼吸症候群による頭痛の対処法や治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
寝起きに頭痛が起こる主な原因

寝起きに頭痛が起こる主な原因として、以下のようなものが挙げられます。
- 睡眠時無呼吸症候群
- 片頭痛・筋緊張型頭痛
- 高血圧
- 脳腫瘍
- レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
- 睡眠不足
- 乱れた食生活
- ストレス
ここでは上記の原因についてそれぞれ解説します。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群になると、寝起きに頭痛が起こることがあります。
ほかにもいびきや覚醒反応(何度も目が覚めること)、日中の強い眠気、疲労感などさまざまな症状が現れます。
さらに放置していると合併症のリスクもあるため、なるべく早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることが大切です。
片頭痛・筋緊張型頭痛
片頭痛や筋緊張型頭痛は慢性頭痛の一種で、それぞれ以下のような特徴があります。
痛む部分 | 痛みの特徴 | 原因 | |
片頭痛 | こめかみから頭の側面にかけて | ズキンズキンと脈打つような痛みを繰り返す | 血管の拡張や炎症 |
筋緊張型頭痛 | 頭全体 | 頭全体が締め付けられるような痛みが30分~7日間程度続く | 身体的・精神的ストレスによる首や肩の筋肉の緊張 |
片頭痛は寝起きに脳の血管が拡張することで起こるもので、筋緊張型頭痛は身体的・精神的ストレスによって起こるのが特徴です。
また片頭痛の場合は吐き気や嘔吐などの症状が伴うこともあります。
高血圧
高血圧によって血管に負担がかかると、寝起きに頭痛が起こることがあります。
高血圧には自覚症状がほとんどありませんが、悪化すると血管への負担が大きくなり、頭痛やめまい、耳鳴り、胸の痛みなどの症状が現れ始めるのです。
上記のような症状を自覚できるころには高血圧が進行している場合が多く、放置していると脳梗塞や脳出血、心筋梗塞などを引き起こすリスクがあります。
また高血圧には『二次性高血圧症』といってほかの病気が原因で血圧が上昇してしまうタイプもあるため、高血圧の疑いがある場合は早めに医療機関を受診することをおすすめします。
脳腫瘍
脳腫瘍があると、寝起きに頭痛が起こる場合があります。
腫瘍によって脳内の圧力が高まってしまうことが主な原因として考えられ、脳腫瘍初期では2割程度、進行すると7割もの患者さんに慢性的な頭痛がみられるのです。
ほかにも原因不明の吐き気や嘔吐、視力低下、しびれ・手足のまひ、聴覚障害といった症状が現れることもあります。
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
レストレスレッグス症候群はむずむず脚症候群とも呼ばれる病気です。
睡眠障害の一種で、片頭痛を持つ患者さんに多く見られます。
じっと座っているときや横になった時に、脚を中心にむずむず、ぴりぴりするような不快感が現れるのが主な症状です。
夕方から夜間にかけて症状が現れやすく、睡眠障害の原因となることも多いです。
この症状が原因で睡眠不足に陥り、自律神経の乱れによって頭痛やめまいといった症状が引き起こされる場合もあります。
睡眠不足
睡眠不足は頭痛を引き起こす原因になります。
片頭痛は睡眠障害によって引き起こされることも多く、十分に睡眠時間を確保することで痛みが解消されるケースがあります。
また筋緊張型頭痛も睡眠不足が原因で発症することがあるため、頭痛を予防するためには質の良い睡眠をとることが大切です。
乱れた食生活
乱れた食生活を送っていると、頭痛を引き起こしやすくなります。
暴飲暴食やアルコールの摂取など、頭痛を引き起こす原因には個人差がありますが、健康的な食生活を意識することで症状が改善される場合が多いです。
ストレス
ストレスが原因で頭痛が起こる場合もあります。
ストレスによって筋肉が過度に緊張することで筋緊張型頭痛が起きたり、ストレスによって血管が収縮・拡張することで片頭痛が起きたりすることがあるのです。
またストレス解消方法として、喫煙や飲酒、過度な睡眠といった行動を行っていると、その行動自体が片頭痛を引き起こしてしまう場合もあります。
睡眠時無呼吸症候群とは

つらい頭痛は、もしかしたら「睡眠時無呼吸症候群」が原因かもしれません。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に10秒以上息が止まる『無呼吸』と呼吸が浅くなる『低呼吸』を1時間に5回以上繰り返す病気です。
睡眠中に何度も無呼吸・低呼吸を繰り返すため、体が低酸素状態になり、健康にさまざまな悪影響を及ぼします。
ここでは睡眠時無呼吸症候群の主な症状や合併症、検査・診断方法などの基本的な知識について解説します。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状
睡眠時無呼吸症候群の主な症状は以下の通りです。
睡眠中の症状 | 無呼吸・低呼吸 いびき 何度も目が覚める 大量の寝汗をかく |
寝起きの症状 | 口が渇いている 頭痛 |
日中の症状 | 強い眠気 疲労感・倦怠感 集中力の低下 |
上記の通り、睡眠時無呼吸症候群は睡眠中の無呼吸・低呼吸だけでなく、寝起きや日中にもさまざまな症状が現れる病気です。
体が低酸素状態になると脳がそれを察知して強制的に目覚めさせる『覚醒反応』が起こるため、無呼吸・低呼吸が原因で窒息死することはありません。
ただし何度も覚醒反応が起こるため睡眠の質が低下し、日中に強い眠気や疲労感・倦怠感、集中力の低下などの症状が現れることがあります。
日中に現れる眠気の強さには個人差があるものの、仕事や運転などに支障が出る恐れがあるため注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群の合併症
睡眠時無呼吸症候群は以下のような合併症を引き起こす恐れがあります。
- 高血圧
- 糖尿病
- 脳卒中
- 心血管疾患
- メタボリックシンドローム
- 発育障害
- 認知症
- うつ病
- 心臓突然死
睡眠時無呼吸症候群の患者さんのうち50%にみられるのが、高血圧です。
高血圧は放置していると動脈硬化のリスクが高まり、脳梗塞の原因となることもあります。
突然死を引き起こす恐れもあるため、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は早めに医療機関を受診することが大切です。
睡眠時無呼吸症候群の検査・診断方法
睡眠時無呼吸症候群の検査は自宅で行う『簡易検査』と入院して行う『精密検査』の2種類があります。
それぞれの検査方法は以下の通りです。
検査名 | 検査方法 | 測定内容 |
簡易検査 (簡易終夜ポリソムノグラフィー検査) | 自宅に検査キットを持ち帰り、自分で機械を装着して検査する方法 | 鼻の呼吸、胸の動き、体位、酸素飽和度、いびきの音など |
精密検査 (終夜ポリソムノグラフィー検査) | 医療機関に1泊入院して行う検査方法 | 鼻の呼吸、胸の動き、体位、酸素飽和度、いびきの音、脳波、心電図、筋電図など |
仕事や育児などで忙しい場合は自宅で行える簡易検査がおすすめですが、精密検査の方がより詳細に測定できるため、1泊分の時間を作れる方は医療機関に入院して検査を行うとよいでしょう。
睡眠時無呼吸症候群になると寝起きに頭痛が起こることがある

睡眠時無呼吸症候群になると、寝起きに頭痛が起こることがあります。
睡眠時無呼吸症候群が原因で起こる頭痛は『睡眠時無呼吸性頭痛』と呼ばれるものです。
ここではこの頭痛の特徴や放置しておく危険性について解説します。
睡眠時無呼吸性頭痛の特徴
睡眠時無呼吸性頭痛は睡眠中に体が低酸素状態になることが原因で起こるもので、以下のような特徴があります。
- 起床時に頭痛がある
- 両側性である
- 30分以内に痛みが治まる
- 1か月に15日以上症状が現れる
上記に当てはまる場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠時無呼吸性頭痛は脳疾患の発症リスクを上昇させる
睡眠時無呼吸性頭痛は、脳疾患の発症リスクを上昇させる恐れがあるため注意が必要です。
睡眠中に無呼吸・低呼吸が繰り返されると身体が低酸素状態になり、脳は体内の血流を活発化させて心拍数を高めようとします。
これにより血圧が高まり、動脈硬化や脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などにつながる恐れがあるのです。
睡眠時無呼吸症候群自体が直接脳疾患を発症させるわけではないものの、間接的に合併症の発症リスクを高めるため、症状を放置しておくのは危険です。
なるべく早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。
睡眠時無呼吸症候群による頭痛の対処法

睡眠時無呼吸症候群による頭痛の対処方法は以下の5つです。
- 適正体重を維持する
- 寝酒や過度な飲酒を控える
- 禁煙する
- 睡眠薬の服用を控える
- 横向きで寝る
ここでは上記5つの対処法についてそれぞれ解説します。
適正体重を維持する
睡眠時無呼吸症候群は肥満が原因で引き起こされることが多いため、適正体重を維持することが大切です。
日本肥満学会では、BMI25以上が肥満と定義されているため、この基準を超えている場合は生活習慣の改善や運動習慣を取り入れるなどして減量しましょう。
BMIや適正体重は以下の式で計算できます。
- BMI=体重kg ÷ (身長m)2
- 適正体重=(身長m)2 ×22
自力でのダイエットが難しい場合は、医療機関での薬物療法や脂肪吸引などの施術を検討するのも選択肢の一つです。
寝酒や過度な飲酒を控える
アルコールには筋肉をリラックスさせる作用があるため、寝る直前に飲むと睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因となります。
なるべく寝酒や過度な飲酒は控えるようにしましょう。
またアルコールそのものが頭痛や吐き気、動悸などの原因にもなるため、頭痛に悩まされている場合は禁酒をするのが望ましいです。
禁煙する
タバコの煙に含まれる有害物質が気道の粘膜を刺激して炎症を起こすことで、睡眠時無呼吸症候群を引き起こす場合があります。
症状をさらに悪化させてしまう原因にもなるため、禁煙するのが望ましいです。
自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して医療の力に頼るのもおすすめです。
睡眠薬の服用を控える
睡眠薬には筋肉をリラックスさせる作用を持つ薬もあり、そうした薬を服用することで睡眠中の無呼吸・低呼吸の原因となることがあります。
睡眠薬はなるべく控えるのが望ましいですが、どうしても手放せない場合は医師と相談して筋弛緩作用のない薬を処方してもらうとよいでしょう。
自己判断で服用を中止したり、市販薬を購入したりするのは避けてください。
横向きで寝る
睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因の一つに、寝姿勢が挙げられます。
仰向けになって寝ると重力の影響で舌根沈下が起こりやすくなり、睡眠中の無呼吸・低呼吸の原因となるのです。
横向きで寝ることで症状が改善される場合があるため、普段仰向けで寝ている人はぜひ今日から試してみてください。
睡眠時無呼吸症候群の医療機関での治療方法

睡眠時無呼吸症候群の医療機関での治療方法は以下の通りです。
- マウスピース療法
- CPAP療法
- 外科的手術
ここでは上記3つの治療方法についてそれぞれ解説します。
マウスピース療法
マウスピース療法は医療機関で作成したオーダーメイドのマウスピースを装着し、下顎を引き出した状態で固定することで気道が狭まるのを防ぐ治療方法です。
睡眠時無呼吸症候群の症状が比較的軽い場合に適用される治療方法で、後に解説するCPAP療法と比べて持ち運びができるメリットがあります。
睡眠障害を専門とした医療機関でなくても、睡眠時無呼吸症候群に関する専門の知識がありマウスピース作成に対応している歯科医院であれば治療が可能です。
CPAP療法
CPAP療法は専用の機械につないだマスクを鼻に装着し、空気を送り続けることで気道が開いた状態を維持する治療方法です。
睡眠時無呼吸症候群のほとんどの患者さんに適用できる治療方法で、比較的高い治療効果が期待できます。
ただし月に1回程度機械のメンテナンスのために通院する必要があるため、近くにCPAP療法に対応している医療機関がない方は注意が必要です。
外科的手術
アデノイドや扁桃肥大、骨格などが原因で睡眠時無呼吸症候群が引き起こされている場合には、外科的手術により症状を改善することが可能です。
上気道手術や口蓋垂軟口蓋咽頭形成術、レーザー治療などさまざまな手術方法があります。
それぞれメリット・デメリットやリスクがあるため、医師と相談のうえで治療方法を検討するとよいでしょう。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は『睡眠時無呼吸性頭痛』という頭痛を引き起こすことがあります。
この頭痛は起床時に起こる、両側性である、30分以内に痛みが治まる、1か月に15日以上症状が現れるなどの特徴があります。
普段寝起きの頭痛に悩まされていて上記の特徴に当てはまる場合、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群は、頭痛だけでなく健康にさまざまな悪影響を及ぼすため、なるべく早めに医療機関を受診することをおすすめします。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療に関する相談を受け付けています。
「寝起きの頭痛がつらい」「睡眠時無呼吸症候群かもしれない」とお悩みの方は、ぜひ当院まで気軽にご相談ください。
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