
親知らずの抜歯を検討している方の中には「できれば2本まとめて抜いてしまいたい」「左右両方一気に抜きたい」と考える方もいるのではないでしょうか。
何度も歯医者に通うのは、時間的にも精神的にも負担が大きいですよね。
この記事では、親知らずを2本同時に抜くことができるのか、メリットやリスク、費用などについて分かりやすく解説します。
親知らずは2本同時に抜歯できる?

結論から言うと、親知らずを2本同時に抜歯することは可能です。
実際に、患者さんの希望や状況に応じて、2本同時の抜歯を行っている歯科医院も多くあります。
ただし、2本同時に抜歯できるのは上の左右2本の親知らず、または上下どちらか片側の2本の親知らずの場合で、下の左右2本の同時抜歯は避けられるケースが多いです。
2本同時抜歯のリスクと注意点

親知らずを2本同時に抜くことには、いくつかリスクと注意点があります。
- 抜歯後の腫れで生活に支障が出る
- 麻酔の範囲が広く不快感がある
- 下顎の左右同時抜歯は呼吸困難のリスクがある
- 食事は片側しか使えなくなる
- 術後の痛みが複数箇所から発生する
それぞれ解説していきます。
抜歯後の腫れで生活に支障が出る
親知らずの抜歯後は、程度に差はあるものの腫れる場合があります。
1本だけの抜歯でも腫れることがありますが、2本同時に抜いた場合は、当然ながら2箇所が腫れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
腫れのピークは術後2~3日目で、その後徐々に引いていきますが、完全に腫れが引くまでには1週間程度かかることが一般的です。
顔の輪郭が変わるほど腫れることもあり、仕事や学校に影響が出る可能性も想定しておく必要があります。
麻酔の範囲が広く不快感がある
2本同時に抜歯する場合、麻酔を打つ範囲も広くなります。
局所麻酔ですが、歯茎だけでなく唇や頬にも麻酔するため、食事がしづらい、話しづらい、麻酔が切れるまでの時間が長いといった不快感を抱くことがあります。
麻酔の効果は数時間程度続き、麻酔が効いている間は熱いものを食べたり飲んだりすると火傷する恐れがあるため注意が必要です。
下顎の左右同時抜歯は呼吸困難のリスクがある
下の親知らずを左右同時に抜歯することは、多くの歯科医院で推奨されていません。
理由としては、両側が腫れると気道が圧迫され、呼吸がしづらくなるリスクがあるためです。
特に腫れがひどい場合は、呼吸困難を起こす可能性もあり、場合によっては入院が必要になることもあります。
そのため、下の親知らずは左右で日を分けた抜歯が一般的です。
食事は片側しか使えなくなる
親知らずを抜いた側では、しばらく食べ物を噛むことができません。
傷口を守り、治癒を促進するためにも、抜歯した側での咀しゃくは避ける必要があります。
片側だけの抜歯なら反対側で食事ができますが、左右同時に抜いてしまうと、どちら側でも噛めなくなってしまいます。
そのため、抜歯してから数日間はおかゆ、スープ、ゼリー、プリン、豆腐などの柔らかい食事にする必要があります。
術後の痛みが複数箇所から発生する
抜歯後麻酔が切れると痛みが出ますが、2本同時に抜いた場合、2箇所から痛みが発生し、痛み止めを飲んでも完全に痛みを抑えられないことがあります。
痛みのピークは術後2~3日目にかけてやってきて、徐々に和らいでいきますが、人によっては長引くことがあります。
→親知らずの痛み止めの種類は?痛みが生じる原因と悪化を防ぐ方法も解説
親知らず2本同時抜歯の時間と費用

親知らずの抜歯にかかる時間は、歯の生え方によって異なります。
正常にまっすぐ生えている親知らずの場合、1本あたり15分程度、2本で30分程度です。
一方、斜めや横向きに生えている場合は、歯茎を切開したり、骨を削ったりする必要があるため1本あたり30~60分、2本で60~120分かかることもあります。
費用についてですが、治療目的の親知らずの抜歯は保険適用です。
1本あたりの費用は、簡単な抜歯で2,000円~3,000円、難しい抜歯で3,000円~5,000円程度で可能です(保険適用3割負担の場合)。
2本同時に抜歯する場合は、検査代やレントゲン代、薬代なども含めて、総額で7,500円~13,500円程度が目安になるでしょう。
ただし、CTが必要な場合は、別途3,500円程度かかることがあります。
CTは、親知らずが下顎の神経に近い場合や、複雑な生え方をしている場合に必要となることが多いです。
親知らずは1本ずつ確実に抜くのがおすすめ

親知らずの2本同時の抜歯にはメリットもありますが、1本ずつの抜歯が推奨されています。
1本ずつの抜歯が推奨されている理由は以下のとおりです。
- 体への負担が少ない
- 日常生活への影響を抑えられる
- 万が一トラブルが起きても対処しやすい
- 食事がしやすい(反対側で噛める)
初めて親知らずを抜く方や不安が強い方は、まず1本抜いてみて、経過を見てから次の抜歯をおすすめします。
親知らずを抜いた後の注意点

親知らずを抜いた後、痛みや腫れなどの症状を悪化させないように次の注意点を把握しておきましょう。
適切にケアすることで、合併症のリスクも減らすことができます。
うがいは軽くゆすぐ程度にする
抜歯後24時間は、強いうがいは避けてください。
傷口にできた血の塊が取れてしまうと、治りが遅くなったり、ドライソケット(抜歯した穴が正常に治らず、強い痛みが続く状態)になったりすることがあります。
ドライソケットになると、激しい痛みが2週間以上続くケースもあるため、特に注意が必要です。
口をゆすぐ時は、水を含んで軽く動かす程度にとどめましょう。
抜歯当日は運動・飲酒・入浴を控える
血行が良くなると出血が止まりにくくなるため、抜歯当日は激しい運動、飲酒、長時間の入浴、サウナなどは控えてください。
できるだけ安静にして過ごすようにしましょう。
入浴はシャワー程度にとどめ、早めに就寝することをおすすめします。
食事は柔らかいものを選ぶ
抜歯してから数日間は、柔らかく刺激の少ない食事を心がけましょう。
おかゆ、雑炊、よく煮込んだうどん、スープ、味噌汁、ヨーグルト、プリン、豆腐、茶碗蒸しなどがおすすめです。
硬いもの、辛いもの、熱すぎるものは避けてください。
また、ストローを使って飲むのも、吸う動作が傷口の血の塊を剥がす可能性があるため避けましょう。
腫れは冷やしすぎに注意
冷却は痛みや腫れの緩和に効果的ですが、冷やしすぎは血行を悪くし、かえって治りを遅くすることがあります。
冷やす場合は、氷を直接当てない、冷たいタオルや冷却シートを使う、1回15分程度にとどめる、抜歯後48時間以降は冷やさないといった点に注意してください。
抗生物質は必ず飲み切る
処方された抗生物質は、症状が良くなっても必ず最後まで飲み切ってください。
途中でやめると、細菌が薬に対して耐性をつけてしまう可能性があります。
用法・用量を守って、指示された期間は薬がなくなるまできちんと服用し続けましょう。
もし飲み忘れた場合は、気づいた時点でまた服用し始め、次の服用からは指示通りのタイミングで服用するとよいです。
痛み止めは痛みが出る前に服用する
痛み止めは、痛みが出てから飲むよりも、痛みが出る前に飲む方が効果的です。
歯科医師の指示に従って、適切なタイミングで服用してください。
ただし、決められた量以上に飲むことは避け、痛みが強い場合は歯科医院に相談しましょう。
仕事復帰は2~3日後が目安
親知らずを2本同時に抜いた場合、腫れや痛みのピークは術後2~3日目です。
そのため、可能であれば抜歯後2~3日は仕事を休むか、軽い仕事にとどめることをおすすめします。
デスクワークの場合は翌日から可能なこともありますが、接客業や力仕事の場合は、もう少し長めに休養を取った方が良いでしょう。
4本同時抜歯は可能?メリットとリスク

結論から言うと、4本同時抜歯は技術的には可能ですが、一般的には推奨されていません。
理由としては、以下のような点が挙げられます。
- 両側が腫れることで食事が極めて困難になる
- 痛みが強く日常生活に大きな支障が出る
- 呼吸困難のリスクが高まる
- 全身麻酔が必要になることが多い
- 入院が必要になる場合がある
4本同時の抜歯が検討されるのは、海外赴任などで長期間歯科治療を受けられない、全身麻酔下での他の手術と同時に行う、医学的に急を要する場合など、特別な事情がある場合に限られます。
これらの場合でも、大学病院や総合病院の口腔外科での処置となることがほとんどです。
親知らずの2本同時抜歯に関するよくある質問

親知らずの2本同時抜歯に関するよくある質問をまとめました。
Q1:親知らずを抜歯した後、腫れはどのくらい続きますか?
腫れのピークは術後2~3日目で、その後徐々に引いていきます。
完全に腫れが引くまでには、個人差はありますが1週間から10日程度かかることが一般的です。
親知らずが深い位置にあったり、骨を削る必要があったりした場合は、2週間程度腫れが続くこともあります。
Q2:親知らずを1本ずつ抜く場合、次の抜歯までどれくらい空ける必要がありますか?
1本目の抜歯後、傷口が治るまでには約1ヶ月かかります。
そのため、次の抜歯までは1~2週間は空けることが多いです。
ただし、患者さんの回復状況や希望によって、もっと早く次の抜歯を行うこともあれば、もっと期間を空けることもあります。
Q3:親知らずを抜歯した後、運動はいつからできますか?
軽い運動(散歩など)は術後3~4日目から可能です。
ただし、ランニング、筋力トレーニング、球技、水泳などの激しい運動は1週間程度控えることをおすすめします。
運動を再開する際は、痛みや腫れの状態を見ながら、徐々に強度を上げていくようにしましょう。
まとめ
親知らずの2本同時抜歯は可能ですが、下の左右同時の抜歯は腫れによる呼吸困難のリスクがあるため避けられることが多いです。
2本同時の抜歯には通院回数を減らせるメリットはあるものの、術後は両側から痛みが発生し、食事も困難になるなど、日常生活への影響が大きくなることを理解しておかなければなりません。
こうした理由から、体への負担を抑えるために1本ずつの抜歯が推奨されています。
親知らずの抜歯で悩んでいる方は、専門医に相談することをおすすめします。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、経験豊富な口腔外科専門医が状態に合わせた抜歯を提案しています。
CTを用いた精密な診断と、痛みに配慮した処置を行える体制を整えています。親知らずに関するお悩みがあれば、まずはご相談ください。
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