
インプラント治療を受けた後、食事のときに噛むと痛みを感じることはありませんか?
せっかく自然な歯を取り戻せると期待していたのに、食事のたびに痛みを感じるのはつらいはずです。
この記事では、インプラント治療後に起こる痛みの原因から対処法、さらに痛みを予防するための方法まで、わかりやすく解説していきます。
噛むと痛い症状に悩まされている方はぜひ参考にしてください。
インプラント治療後に噛むと痛い原因とは?

インプラント治療後に噛むと痛みを感じる原因はさまざまです。
痛みの原因を知ることで、適切に対処できるようになるため、まずは主な原因について詳しく見ていきましょう。
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎は、インプラントの周りの歯茎や骨に炎症が起こる病気です。
インプラント周囲炎になると、以下のような症状が現れます。
- 歯茎が赤く腫れる
- 歯磨きのときに出血する
- 歯茎から膿が出る
- 噛むと痛みを感じる
- インプラントがぐらつく
インプラント周囲炎の主な原因は、インプラント周りにたまった歯垢や歯石に潜む細菌です。
毎日の歯磨きが不十分だったり、定期的なメンテナンスを怠ったりすると、細菌が増殖して炎症を引き起こします。
噛み合わせのバランスが悪い
噛み合わせのバランスが悪いと、特定のインプラントに過度な力が集中してしまい、噛むたびに痛みを感じる場合があります。
さらに、状態が続くと顎の筋肉にも負担がかかり、筋肉痛のような痛みを感じることもあります。
インプラントの位置がズレている
インプラントの位置がズレている場合、噛むたびに痛みを感じることがあります。
手術時の技術的な問題によるもので、インプラントが神経に近すぎる位置に埋入されていたり、周りの歯との位置関係や角度が不適切だったりすることが原因です。
また、骨の質や量を十分に考慮せずに埋入された場合も、痛みを引き起こす要因となります。
位置のズレは、レントゲンやCTスキャンで確認でき、状況によっては再手術が必要になることもあります。
ネジが緩んだり部品が壊れている
インプラントはインプラント体、アバットメント、人工歯の3つから作られています。
パーツを固定しているネジが緩んだり、部品が破損したりすると痛みの原因になります。
部品のトラブルが起こりやすくなる状況は以下のとおりです。
- 硬い食べ物を頻繁に噛む
- 歯ぎしりや食いしばりの癖がある
- スポーツなどで強い衝撃を受けた
- 長期間使用による経年劣化
ネジの緩みは比較的簡単に締め直すことができますが、部品の破損の場合は交換が必要になる場合があります。
インプラントと骨がうまくくっついていない
インプラント治療の成功には、インプラント体と顎の骨がしっかりと結合することが不可欠です。
しかし、結合がうまくいかないと、噛む際に安定せず揺れが生じたり、骨との接触で痛みが出ることがあります。
結合に問題が起きている場合の主な原因は以下のとおりです。
- 骨の質や量が不十分
- 喫煙による血流の悪化
- 糖尿病などの全身疾患
- 手術後の歯の感染症
- 治療後すぐの強い力
生活習慣や無意識の癖
生活習慣や無意識の癖もインプラントの痛みの原因になることがあります。
とくに注意が必要な習慣は以下のとおりです。
- 歯ぎしりや食いしばり
- 片側だけで噛む癖
- 硬い食べ物を好んで食べる
- 爪を噛む癖
- 喫煙
- 不規則な生活やストレス
上記の習慣は、インプラントに過度な負担をかけたり、治癒を妨げたりする可能性があります。
インプラントで噛むと痛い時の対処法

インプラントで噛むと痛みを感じた場合、適切な対処をとることで症状の改善が期待できます。
ここでは、すぐにできる対処法をご紹介します。
痛みを感じたらすぐに歯科医院へ
インプラントで噛むと痛みを感じたら、優先すべきは歯科医院の受診です。
放置すると状態が悪化する可能性があります。歯科医院では以下のような検査や処置を行います。
- 必要に応じて応急処置
- レントゲンやCTによる検査
- インプラント周囲炎の有無を確認
- 噛み合わせのチェック
- 部品の緩みや破損の確認
早めに受診することで、問題が小さいうちに対処でき、大がかりな治療を避けられる可能性が高くなります。
痛みがある部分で噛まないようにする
歯科医院を受診するまでの間、痛みのある部分に負担をかけないようにしましょう。
食事の際は以下の点に注意するとよいです。
- 反対側の歯で噛むようにする
- 柔らかい食べ物を選ぶ
- 食べ物を小さく切ってから口に入れる
- 熱すぎる、冷たすぎる食べ物を避ける
- ゆっくりと優しく噛む
無理に痛い部分で噛み続けると、症状が悪化したり、インプラントにダメージを与えたりする可能性があります。
市販の鎮痛剤で一時的に痛みを和らげる
急な痛みに対しては、市販の鎮痛剤を使用して一時的に痛みを和らげることができます。
ただし、あくまで応急処置で、根本的な解決にはなりません。
鎮痛剤で痛みが一時的に治まっても、必ず歯科医院を受診して、治療を受けることが大切です。
インプラント周りを清潔に保つ
噛むと痛い症状の原因がインプラント周囲炎の場合、歯科医院でのメンテナンスに加えて、自身での毎日のケアが必要です。
ケアは以下のポイントを意識して行うとよいです。
- 柔らかめの歯ブラシを使用する
- 歯とインプラントの境目を丁寧に磨く
- 歯間ブラシやデンタルフロスで歯間を清掃する
- 殺菌作用のあるマウスウォッシュを使用する
- 力を入れすぎず、小刻みに動かす
患部を冷やして炎症を抑える
炎症による痛みの場合、患部を冷やすことで一時的に症状を和らげられる可能性があります。
冷やし方のポイントは以下のとおりです。
- 清潔なタオルで保冷剤を包む
- 頬の外側から優しく当てる
- 10~15分程度を目安にする
- 直接氷を口に含まない
- 冷やしすぎに注意する
ただし、冷やすことで痛みが増した場合は、すぐに中止して歯科医院に相談してください。
インプラントの痛みの再発を防ぐ方法

インプラントの痛みを一度経験したら、同じことを繰り返さないよう、予防に努めることが大切です。
次の方法を実践することで、痛みの発生予防だけでなく、より長くインプラントを使える可能性が高くなります。
→インプラントの平均寿命は?長持ちさせる方法やNG習慣・再手術について解説
3~6ヶ月ごとに定期検診を欠かさず受ける
インプラント治療後の定期検診は、トラブルを早期発見・早期治療するために欠かせません。
一般的には3〜6ヶ月ごとの受診が推奨されています。
定期検診で行われる内容は以下のとおりです。
- インプラント周囲の状態チェック
- レントゲンによる骨の状態確認
- 噛み合わせの調整
- 専門的なクリーニング
- ネジの緩みなど部品の確認
定期検診を継続することで、小さな問題のうちに対処でき、大きなトラブルを防ぐことができます。
正しいブラッシング方法を身につける
インプラントの長期的な健康維持には、正しいブラッシング方法が不可欠です。
天然の歯とは少し違った注意点があるため、しっかりと身につけましょう。
インプラントのブラッシングのコツは以下のとおりです。
- 歯ブラシは45度の角度で当てる
- 歯とインプラントの境目を重点的に磨く
- 力を入れすぎず、優しく小刻みに動かす
- 1本につき20回程度ブラッシングする
- 歯磨き粉は研磨剤の少ないものを選ぶ
歯科医院で、自分に合ったブラッシング方法を指導してもらうことをおすすめします。
歯間ブラシ・デンタルフロスの併用
歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れを完全に除去することはできません。
インプラント周囲炎を防ぐためには、歯間清掃用具の使用が必須です。
使うときの注意点は以下のとおりです。
- 歯間ブラシは適切なサイズを選ぶ
- 無理に押し込まず、優しく入れる
- 前後に動かしながら汚れを除去する
- デンタルフロスは歯に沿わせて使う
- 1日1回は行う
歯間の清掃を習慣化することで、インプラント周囲炎のリスクを減らすことができます。
硬い食べ物を避ける
インプラントは丈夫ですが、過度な力がかかると破損や痛みの原因になります。
硬い食べ物は避けるか、インプラントで噛まないように注意して食べるようにしましょう。
避けたほうがよい食べ物は以下のとおりです。
- 氷
- 飴玉
- 殻付きのナッツ
- 硬いせんべい
- するめ
上記の食べ物を完全に避ける必要はありませんが、インプラントで直接噛まないよう工夫することが大切です。
歯ぎしり・食いしばりへの対策
無意識に行う歯ぎしりや食いしばりは、インプラントに大きな負担をかけます。
特に寝ている際の歯ぎしりは自分では気づきにくいため、家族に確認してもらうとよいでしょう。
対策方法は以下のとおりです。
- マウスピースの使用
- ストレス管理
- 就寝前のカフェイン摂取を控える
- 顎の筋肉をマッサージする
- 日中の食いしばりに気をつける
マウスピースは歯科医院で自分に合ったものを作製してもらえるため、違和感なく装着できます。
禁煙・節酒など生活習慣の改善
喫煙や過度の飲酒は、インプラントの健康に悪影響を与えます。
特に喫煙は血流を悪化させ、インプラント周囲炎のリスクを高めるため、禁煙が強く推奨されます。
生活習慣改善のポイントは以下のとおりです。
- 禁煙外来などを利用して確実に禁煙する
- 飲酒は適量にとどめる
- 十分な睡眠時間を確保する
- バランスの良い食事を心がける
- 適度な運動を習慣化する
健康的な生活習慣は、インプラントだけでなく健康にも良い影響を与えます。
インプラントの痛みに関するよくある質問

インプラントで噛むと痛い症状について、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
Q1:インプラント周囲炎になりやすい人の特徴はありますか?
インプラント周囲炎になりやすい方の特徴として、歯周病の既往歴がある、喫煙習慣がある、糖尿病などの全身疾患がある、口内状態が悪い、定期検診を受けていないなどが挙げられます。
該当するリスクをもつ方は、定期検診と毎日の丁寧なケアを心がけることが大切です。
Q2:噛むとインプラントが痛いのですが放置しても大丈夫ですか?
インプラントで噛むと痛い症状を放置することは避けましょう。
放置するとインプラント周囲炎が進行して骨が溶けたり、最悪の場合インプラントが抜け落ちたりする可能性があります。
早めに治療を受けることで、インプラントを長く使い続けることができる可能性が高まるため、痛みを感じたらすぐに歯科医院を受診してください。
まとめ
インプラント治療後に噛むと痛みを感じる原因は、インプラント周囲炎、噛み合わせの不良、位置のズレ、部品の緩みや破損、骨との結合不全などさまざまです。
噛むときに痛みを感じたら歯科医院の受診が大切です。
受診前や治療が完了するまでは、痛む部分での咀嚼を避け、患部を清潔に保つことが大切です。
下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、インプラント専門医による診断と治療で、快適な生活を取り戻すサポートが可能です。
噛むときの痛みや違和感がある方は、お気軽にご相談ください。