睡眠時無呼吸症候群の予防・対策方法は？病院での治療方法も解説

いびきが悪化すると『睡眠時無呼吸症候群』という、睡眠中に呼吸が一時的に止まってしまう病気を引き起こす恐れがあります。

睡眠時無呼吸症候群は普段の生活習慣を見直すことで予防可能です。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群の予防・対策方法について解説します。

睡眠時無呼吸症候群の症状や原因、病院での治療方法もまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に一時的に呼吸が止まる病気です。

医学的な定義としては10秒以上呼吸が停止する『無呼吸』や呼吸が弱くなる『低呼吸』が、1時間当たり5回以上発生する状態を指します。

睡眠時の無呼吸や低呼吸になる原因によって『閉塞性睡眠時無呼吸タイプ（OSA）』と『中枢性睡眠時無呼吸タイプ（CSA）』の2種類に分けられます。

閉塞性睡眠時無呼吸タイプ（OSA）

閉塞性睡眠時無呼吸タイプは、何らかの原因によって上気道が狭まったり完全に塞がったりすることで、無呼吸や低呼吸が発生する症状です。

睡眠時無呼吸症候群の患者のうち、大半がこちらのタイプに分類されます。

上気道が狭まったり塞がったりする原因としては、以下のようなものがあります。

• 扁桃・アデノイド肥大
• 口蓋垂
• 軟口蓋
• 舌根

口蓋垂や軟口蓋、舌根などは仰向けに寝たときに重力によって下に落ち込んでくるため、気道を狭める原因となるのです。

特に喉や舌に脂肪がついていると気道が狭まりやすくなるため、睡眠時無呼吸症候群の患者さんには肥満体型の方も多くみられます。

またそのほかの原因として、骨格自体に問題がある場合も挙げられます。

日本人は下顎が小さく後退しているケースが多くみられるため、舌根の落ち込みによって気道が狭まりやすくなるのです。

中枢性睡眠時無呼吸タイプ（CSA）

中枢性睡眠時無呼吸タイプ（CSA）は、上気道が狭まったり完全に塞がったりしていないにもかかわらず、睡眠中に呼吸が止まってしまう症状です。

脳からの呼吸指令が何らかの原因によって止まってしまうことで、無呼吸になってしまいます。

閉塞性睡眠時無呼吸タイプ（OSA）の場合は、体が低酸素状態になると脳が呼吸指令を出しますが、中枢性睡眠時無呼吸タイプ（CSA）の場合はその指令すら出せない状態です。

原因はさまざまですが、心臓の機能が低下した方の30〜40％程度に中枢性の無呼吸がみられるとされており、心不全との関連性も指摘されています。

また閉塞性睡眠時無呼吸タイプ（OSA）と中枢性睡眠時無呼吸タイプ（CSA）の症状が組み合わさった、混合タイプも存在します。

睡眠時無呼吸症候群の主な症状や合併症のリスク

睡眠時無呼吸症候群の主な症状は睡眠中の無呼吸・低呼吸ですが、そのほかにもさまざまな症状があり、日常生活にも支障をきたします。

また合併症のリスクもあるため、放置していると危険な病気でもあるのです。

ここでは睡眠時無呼吸症候群の主な症状と合併症のリスクについて解説します。

睡眠時無呼吸症候群の主な症状

睡眠時無呼吸症候群の主な症状は以下の通りです。

睡眠中の症状	呼吸が止まる 寝苦しい 夜中に何度も目が覚める 寝汗が増える 夜間頻尿
起床時の症状	口の中が渇く 熟睡感がない 疲労感や倦怠感がある 頭痛
日中の症状	倦怠感や疲労感がある 強い眠気がある 集中力が低下する 気分が沈む

睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に無呼吸・低呼吸の状態を繰り返し、何度も夜中に目が覚める特徴があります。

この『覚醒反応』と呼ばれる症状によって睡眠の質が低下し、日中の活動にも影響が及ぶのです。

睡眠時無呼吸症候群は事故を起こすリスクが高い

睡眠時無呼吸症候群になると日中に強い疲労感や眠気が襲うようになり、仕事が上手くいかなかったり交通事故を起こしてしまったりする恐れがあります。

睡眠時無呼吸症候群が原因による死傷事故も発生しており、過去には以下のような例があります。

• 名神高速道路でトラック・バスを含む多重事故により7人が死傷（2005年）
• 愛知県で大型トレーラーが赤信号の交差点に進入し、横断道路を横断していた男性が死亡（2008年）
• 関越自動車道で走行中のバスが運転手の居眠り運転によって防音壁に衝突し、乗客45人が死傷（2012年）

睡眠中に呼吸が止まってしまうだけでなく、日常生活にも悪影響を及ぼす危険な病気です。

平成26年5月には『自動車運転死傷行為処罰法』が施行され、病気の影響によって起きた事故も飲酒運転と同様に処罰されるようになりました。

この対象となる病気には睡眠時無呼吸症候群も含まれており、病気の影響で事故を起こしてしまっても、民事責任・刑事責任を問われることになります。

睡眠時無呼吸症候群の合併症

睡眠時無呼吸症候群は、心筋梗塞や脳卒中などの合併症を引き起こすリスクがあります。

具体的には以下のような病気の発症リスクが高まります。

• 高血圧
• 糖尿病
• 心血管疾患（心筋梗塞や心不全、狭心症など）
• 脳卒中
• メタボリックシンドローム
• 発育障害

上記のほかにもさまざまな合併症があり、睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放置していると最悪の場合、突然死を引き起こす恐れもあるのです。

体にも悪影響を及ぼす病気のため、予防や早期治療が重要になります。

睡眠時無呼吸症候群の予防・対策方法

睡眠時無呼吸症候群の発症を防止するためには、以下のような対策方法が有効です。

• 規則正しい生活習慣を身につける
• 適度に運動する
• 過度な飲酒は控える
• 禁煙する
• 鼻呼吸に改善する
• 睡眠薬の服用は医師と相談する
• 寝姿勢を改善する

ここでは上記7つの方法についてそれぞれ解説します。

規則正しい生活習慣を身につける

睡眠時無呼吸症候群を予防するためには、規則正しい生活習慣を身につけることが大切です。

なぜなら睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因の一つに肥満があり、これは生活習慣の乱れによって引き起こされるためです。

肥満の定義は『脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数(BMI)25以上のもの』とされているため、当てはまる場合は生活習慣を見直し、適正体重まで減量しましょう。

ちなみにBMIと適正体重は以下の計算式で求められます。

• BMI＝［体重(kg)］÷［身長(m)2］
• 適正体重＝［身長(m)2］×22

肥満を防ぐための規則正しい生活習慣は以下の通りです。

• 栄養バランスの整った食事を摂る
• ゆっくり噛み食事に時間をかける
• 1日3食規則正しく食べる
• 適度な有酸素運動で基礎代謝を高める

特に男性の場合は30代を過ぎると脂肪がつきやすくなるため、生活習慣の乱れによって肥満体型に向かいやすくなります。

上記の生活習慣を意識し、健康的な体重・体型を維持しましょう。

適度に運動する

睡眠時無呼吸症候群を予防するためには、適度な運動習慣も大切です。

適度に運動することで肥満を予防できるのはもちろん、気道を確保する筋肉が鍛えられて睡眠中の呼吸が楽になるメリットもあります。

おすすめの運動は以下の通りです。

運動	運動時間/頻度の目安
ウォーキング	20分～40分程度/毎日
水泳	30分程度/週2～3回
サイクリング	30分程度/週2～3回
筋力トレーニング	各セッション15～20分/週2～3回

これまで運動習慣がなかった人は、ストレッチやウォーキングといった軽い運動から始めてみましょう。

上記の運動を習慣づけることで、基礎代謝の向上や筋肉量の増加といった効果が期待でき、睡眠時無呼吸症候群の予防につながります。

過度な飲酒は控える

飲酒は睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因の一つとなるため、過度な飲酒は控えましょう。

アルコールには筋肉をリラックスさせる作用があり、睡眠前に飲むと気道が狭まって、睡眠中の無呼吸・低呼吸のリスクが高まります。

さらにアルコールを飲むと脳の感度が鈍くなる点にも注意が必要です。

通常、睡眠時に無呼吸が起こると体が低酸素状態になるため、脳がそれを察知して覚醒を促します。

しかし飲酒をしていると感度が鈍ってしまい、覚醒までの時間が長引いてしまうのです。

無呼吸状態が長引くとさまざまな合併症のリスクが高まるため、過度な飲酒や寝酒は控えましょう。

禁煙する

タバコの喫煙も睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因の一つです。

タバコの煙には有害物質が多く含まれており、喉で炎症を引き起こして気道を狭める原因となります。

さらにタバコの煙に含まれるニコチンには覚醒作用があるため、夜中に何度も目が覚めたり眠りが浅くなったりする恐れがある点にも注意が必要です。

ほかにも化学物質の影響で喘息や慢性閉塞性肺疾患、結核などの呼吸器疾患を引き起こす原因になります。

鼻呼吸に改善する

睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因の一つに口呼吸が挙げられるため、鼻呼吸に改善するのも有効な予防方法となります。

口呼吸から鼻呼吸に改善する方法としては、以下のような方法が挙げられます。

• 意識的に鼻呼吸をする
• 鼻呼吸テープを使用する
• 口周りの筋肉を鍛える
• 矯正治療を受ける
• 鼻に疾患がある場合は治療する

鼻で問題なく呼吸できるにもかかわらず口呼吸になってしまっている場合は、意識的に鼻呼吸をしたり鼻呼吸テープを使用したりして改善していくのがおすすめです。

また歯並びに問題がある場合は、矯正治療を受けて歯並びが改善されると鼻呼吸がしやすくなるケースが多いです。

口呼吸になってしまう原因はさまざまですが、鼻に疾患があり鼻詰まりが起きているケースもあります。

具体的にはアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症などが挙げられ、これらの症状で鼻詰まりが起きると自然と口呼吸になってしまうのです。

慢性的な鼻づまりに悩んでいる場合は、耳鼻咽喉科を受診して適切な治療を受けましょう。

睡眠薬の服用は医師と相談する

睡眠薬の中には筋肉をリラックスさせる作用を持つ薬もあり、それが原因で睡眠時無呼吸症候群を引き起こしてしまう場合があります。

寝つきが悪く睡眠薬を使用しないと眠れないという場合は、医師と相談のうえで睡眠時無呼吸症候群の発症を避けられる薬を処方してもらいましょう。

寝姿勢を改善する

睡眠時無呼吸症候群の発症を招く原因の一つに、寝姿勢も挙げられます。

仰向けになって寝ると重力の影響で気道が狭まってしまうため、睡眠時無呼吸症候群を引き起こしやすくなります。

横向きで寝ると睡眠時無呼吸症候群の予防につながるため、ぜひ試してみてください。

睡眠時無呼吸症候群の治療方法

睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は、医療機関を受診して専門的な治療を受けましょう。

医療機関で行う睡眠時無呼吸症候群の治療方法には、以下のようなものがあります。

• CPAP療法
• マウスピース療法
• 外科的手術

ここでは上記3つの治療方法についてそれぞれ解説します。

CPAP療法

CPAP療法は、専用の機械を使用して鼻に直接空気を送り込み、気道が狭まってしまうのを防ぐ治療方法です。

睡眠時無呼吸症候群の治療方法の中でも最も標準的な治療方法で、特に肥満体型の方で喉に脂肪がつくことで気道が狭まってしまうケースに効果的です。

CPAP療法のメリットは、いびきや睡眠時無呼吸の改善効果が高いことや睡眠の質を向上できることなどが挙げられます。

睡眠中の無呼吸・低呼吸が改善されることで睡眠の質が向上し、日中の眠気や疲労感などの減少を実感できるケースが多いです。

マウスピース療法

マウスピース療法は、オーダーメイドで作成したマウスピースを装着することで下顎を引き出した状態で固定し、舌根が喉の奥へ落ち込んでしまうのを防ぐ治療方法です。

治療効果はCPAP療法と比べると劣りますが、マウスピース自体が小さいため、旅行先などにも持ち運びできるメリットがあります。

軽度〜中度の睡眠時無呼吸症候群やいびきの改善に適した治療方法です。

外科的手術

外科的手術は、扁桃やアデノイドの肥大など気道を狭めている原因を手術によって除去する治療方法です。

手術療法には口蓋垂咽頭形成術や下顎骨移動術など、症状に合わせてさまざまな方法があります。

原因となっている部分を直接取り除くため、根本治療が可能な点が大きなメリットです。

ただし手術にはリスクが伴うため、その点も理解したうえで医師と相談して治療方法を検討する必要があります。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群を予防するためには、規則正しい生活習慣や禁煙、鼻呼吸への改善などの対策が有効です。

特に肥満体型になると睡眠時無呼吸症候群になりやすいため、規則正しい生活習慣と適度な運動により適正体重を維持することが大切です。

今回解説した対策をぜひ今日から取り入れてみてください。

下高井戸パール歯科クリニック・世田谷では、マウスピース治療によるいびき改善に関する無料相談に対応しています。

睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方やいびきにお悩みの方は、ぜひ当院まで気軽にご相談ください

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